side比企谷八幡
2年前の俺達………を模した何かは仗助αを残して全て炎となって消えた。
なんというか………純粋に気持ち悪かった。まだ平行世界の自分の方がましなまである。そうなると存在そのものですら許容したく無かった。
仗助も同じ気分だったのだろうが、仗助には耐性があった。間田さんのサーフィス、そして平行世界に現れた偽物(4-4)だ。
仗助「あれに比べたらこっちの方がましだぜ?あっちはコミュニケーションそのものが不可能だったからよぉ」
……ということらしい。
もっとも、兵藤丈城の世界に現れた偽仗助というのがどういう感じだったのかは実際に戦った仗助か、それとも兵藤丈城にしかわからないことだし。
……て言うか、どちらにしても同じ能力を持つ敵である事には変わらないので、どっちもどっちだとは思うのだが。
え?俺か?オペレーションRGS(リゲイン・ジェムストーンの略)で唯一参加していないのが偽仗助戦ですけど何か?だってその時は次元の狭間であの龍神に連れ回されていたし、ふ菓子のように噛みつかれていたし。
仗助α「……負けちまったものはよぉ、仕方ねぇけどよぉ、俺は間違っても口は開かねぇぜ?」
仗助「そんならそれで構わねぇぜ?葉山、頼むわ」
仗助に言われ、葉山がアンジェロ化した仗助αに触れる。
これで仗助αは嘘が吐けなくなる。
仗助「おめぇら、一体なにもんだ?」
仗助が仗助αに問いただす。
すると、仗助αはニヤリと笑った。
仗助α「俺達は八幡が言っていたよぉ、ウルフスの酉のフェニックスによって作られた過去の鏡像でよぉ……ハッ!」
恐らく嘘を言おうとしたのだろう。そうなると踏んで葉山のオーラル・シガレッツをけしかけたんだが。
仗助「ほう?フェニックス……ねぇ?鳥の伝説にこいつらを生み出す力はあるのか?」
鳥の伝説……ねぇ。
挙げてみるとフェニックスと言うからには不死鳥フェニックスの事だろう。
蓬莱の力を持ったアルミラージの例もあるから不老不死の力を持っているかも知れない。
仗助α「グリンカムビのユグドラシルの力だって言ってたぜ?」
ユグドラシル?ユグドラシルのグリンカムビと言えば…。
八幡「ユグドラシル……世界樹の呼び名の1つじゃあないか!グリンカムビ世界樹の力を使って英雄達を呼び覚ます力を持っているって言う……」
仗助α「そうそう、そのグリンカムビの力と復活の能力を使って俺達の鏡像が作られたって訳だぜ!」
仗助「グレート!よくその名前に行き着いたな!八幡!」
だとしたら相当厄介だな。偽物を作りたい放題と言う訳じゃあないか!
仗助α「何でだ!何で俺はさっきから余計な事をペラペラ喋っちまっていやがる!どういうグレートな能力にはまっちまっているんだ!?」
静「炎の力はフェニックスの炎、又は鳳凰や朱雀の炎と見て間違いない?お兄ちゃん?」
仗助α「そうだぜ?くそっ!」
陽乃「隼人の能力は自白剤のような能力だからねぇ」
オーラル・シガレッツの能力はバレていないのであれば案外簡単に引っ掛かる。嘘が吐けないとばれなければ自白剤の能力と誤認させられると言うことだ。
ある意味では嘘では無いしな。(ゲス思考)
八幡「その調子で知っていることをとことん話して貰おうじゃあないか。偽仗助」
仗助α「くそっ!いろはさえいればよぉ!こんなものすぐに治してくれるのによぉ!」
どうにもならない。いろはの力をもってしても葉山のオーラル・シガレッツの嘘を吐けなくなる能力を解除することは不可能だ。
自白剤の効果ならそれは一種の毒だから効果はある。しかし、オーラル・シガレッツの効果は病気ではない。自白剤の効果を生み出す毒により思考力を低下させられている訳ではないからな。
あくまでもこれはスタンド能力により精神に呪縛をかけているに過ぎない。
嵌まらないようにするには嘘では無い部分を小出しに出して誤認を誘導するか、完全に黙るしかない。
小町「で?他にはどういう能力があるのかな?仗助お兄ちゃん♪」
仗助α「鳥の伝説はよぉ、結局種類が多いわりにはフェニックスやグリンカムビと似たような力しか無くてよぉ、復活の力や世界樹の力を使うくらいしかねぇんだよ」
要は屍生人ではないバージョンの大岡のアイシング・シルクと仗助、ジョルノの力を持っている……と言うことか。単純なだけに却って厄介だな。
それも英雄縛り……と。俺達が英雄?何の冗談だろうな。俺達は英雄とは程遠いと言うのに。
………だが、これからは仲間を疑ってかからなければならないっていう点ではふざけるなとしか言いようが無いよな。
仗助「知りてぇ事は大体分かったぜ。もう良いよな?ジョジョ」
静「オッケー。後はお兄ちゃんに任せるよ」
仗助「グレート。それじゃ遠慮なく……」
大事な決定な時、仗助はジョジョに最終確認をすることが多い。ジョジョは参謀的なポジションにいることもさながら、仗助の嫁だ。
旦那は嫁には逆らえない。家庭において一番の強者はいつだって嫁だ。
俺もいろはに勝てた試しはない。SPW財団やジョースター家の将来はジョジョが握っていると言っても過言ではない。
仗助α「マジかよ……」
仗助「おめぇが心配することじゃあねぇぜ?ああ、最後に1つだけ」
相棒の杉下さんかよ!
仗助「てめぇ、最初は何て嘘を吐こうとしたんだ?」
仗助α「閣下が肥大化するジョースター家を疎ましく思って始末しようとしていた………ってことを捕まったら答えろって言われたぜ」
仗助「そうか………」
C・D「ドラララララララララララララララララララララララララララララララララララ!ドラァ!」
クレイジー・ダイヤモンドにより、今度こそ仗助αは炎と変わり、消滅し、埋め込まれていた千葉大学の門は元に戻された。
さすがはクレイジー・ダイヤモンド。物理的な事後処理にかけては右に出るスタンドはいないな。ザ・ハンドによる被害は除く。
仗助「閣下はよぉ、良くも悪くも自国優先主義なんだよ。テメェらウルフスが知的生命体の敵である限りはよぉ、それはアメリカにとっての凶であるって事なんだぜ?少なくとも対ウルフスの主戦力がアーシスっつぅ今の段階じゃあよぉ、閣下が敵になることなんてねぇんだよ」
ウルフスがいるという段階では閣下が俺達の敵に回ることはまずない。
俺達は俺達で閣下の怖さと非情さを良く知っている。あの人はどこまでもアメリカという国の歯車だ。アメリカという国の為ならば、閣下は個人の私情をあっさりと捨てる。
故にSPW財団もその事は重々承知をしており、無用な野望は抱かないように心掛けている。
それが前提での同盟関係だ。
閣下と俺達の同盟にヒビを入れようと戦略的小細工を仕掛けて来たところで無駄だ。無駄無駄。
陽乃「厄介な相手だよねー。今後は偽物の存在も視野に入れなくちゃならないんだ……」
陽乃さんはボソッと言う。俺達が英雄扱いをされる可能性を視野に入れなくちゃならないなんてな。
ともすれば考えられる時期は……。
八幡「俺達が英雄扱いをされるとしたら?」
いろは「5年前のフロリダ……」
静「今回みたいに天国に到達したDIOを倒した2年前のEOH事件……」
小町「千葉村の時期も危ないよね。そこから続く平行世界の事も」
平行世界の事まで持ち出されたら手の打ちようがないぞ?
あいつら全員が英雄と捉えられたらマジで危ない。
6つの世界の中でもこの世界の戦力が一番基本スペックが低いんだから。
葉山「ウルフスの事に関しては微妙だな」
仗助「肝心な事を忘れてるぜ?」
肝心な事?
仗助「歴代ジョジョの事全てが当てはまるって事だ」
捉え方次第では確かにそうだ。ジジイ達を初めとしたジョースター気が関わる全てが英雄の偉業と考えることも出来る。
考えただけで胃がキリキリするな………。
葉山「もう早速被害を受けているしな」
ん?どういうことだ?
葉山「陽乃さんの偽物がやったことで俺とヒキタニは既に被害を受けているって言ったんだ」
偽陽乃さんの被害?何だろ?
葉山「忘れたのか?折本さんと仲町さんだっけ?彼女達と遊びに行く約束をしてしまったじゃあないか」
あ…………
八幡「おいおい。それはお前だけの被害であって、俺には全く関係ないじゃあないか」
何を言ってるんだ?葉山大明神。
折本と仲町の遊びの誘いはお前だけに関係している事であって、俺には関係ない。
八幡「あれには俺は誘われていない。俺は遊びに行くとも往かないとも言っていないし、俺の回答なんて求められていなかった。だから俺は折本達と遊びに行く義務も義理も全くない」
そう、あの約束に俺が行くことなんて視野に入っていなかった。あそこでの俺は完全に空気と化していた。
何よりだ………あいつらと遊びに行くなんて事になってみろよ。その後がどうなるかなんて分かりきっているだろう?いわばダブルデートだぞ?ダブルデート!
そう考えただけで俺にとっては地獄以外の何物でもない!
横の状況を見てみろ!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
いろは「(ニッコリ♪)」
ヒイイイイィィィィィィィィ!
超恐い!エマージェンシー!エマージェンシー!
隣に佇むいろはの迫力が半端じゃあない!笑顔の裏に見えるその般若が恐い!
君、スタンド2つ持ちじゃあ無いよね!?
いろはの背後に阿修羅像が立っているように見えるのは気のせいだよね!?
陽乃「でもそれってさ、結局八幡くんが行くのが一番自然じゃあ無いかな?」
はい?どういうこと?この陽乃さんも偽物かしらん?だって俺が行く意味がないもん。
陽乃「確かにあの録音を聞く限りじゃ八幡くんは誘われてないから普通なら行く義務も無いんだけどさ、隼人や相模ちゃん、雪乃ちゃんの置かれている立場を考えると……さ?」
葉山達の立ち位置?
静「元ブラッディ・スタンド使い……確かにウルフスが狙う対象であると同時に護衛対象……」
仗助「そうなると葉山が遊びに誘われているときに一緒にいた八幡が行くのが一番自然………」
八幡「ちょっと待て。じゃあ何か?俺は痛い奴にならなくちゃいけないのか?」
そうなると折本達の視点から見た俺はこうなる。
『こいつ、誘ってないのに来ちゃったよ……ウケる。プークスクスクス』
八幡「………イヤだー!どうせダブルデートするなら相手はいろはが良い!何で好意もへったくれもない奴とデートに行かなければならんのだ!俺といろは、葉山と仲町、仗助と折本で良いだろ!」
静「あ?却下」
ですよねー。
いろは「ハチ君?」
ドドドドドドドドドドドドドドド
だらだらだらだら………
いろはから呼ばれ、顔をそちらに向ける。気のせいか首がグリースも潤滑油も塗っていない錆びた重機の動力部のように、動きが鈍く、ギギギギと音がしているように感じる。
いろは「どうぞ楽しんで来て下さいね?あ、しばらく口は利きませんので。婚約も考え直さないといけませんよね?由花子さんと康一さん、やっちゃんにもこの事を伝えないと。ジョルノや露伴先生にも連絡を入れないといけませんかね?おやすみッ!」
そう言って一人でズンズンと歩いて行ってしまう。
八幡「ノォォォォォォォォ!待ってくれッ!誤解だッ!護衛だッ!そこに何の下心も無いんだよォォォッ!話を聞いてくれぇぇぇッ!」
結局その日、いろはが口を利いてくれることは無かった上に、怒った小町が作った晩御飯はまたしてもメザシご飯と冷やしトマト(しかも嫌いな粗悪品)だった。
フェニックス!偽物どもぉぉぉッ!この恨みは必ず返すからなぁッ!覚えてろォォォッ!
←To be continued