side比企谷八幡
さて、徐倫いじりも終わり、生徒会長選挙をどうするかという話を本格的にするべきなのだが……。
まず俺とジョジョ、いろはは却下された。純粋に財団の勤務もあるし、何より先程の公約を本当にやりかねないということでだ。
八幡「まぁ当然だよな」
静「あれでもまだ私達を推薦しようとするなら正気を疑うまであるよね?」
ゴンッ!×2
徐倫「自覚あるなら止めなさいよ。毎回ツッコミをするのだって疲れるんだから」
これはもはや様式美だ。俺達のライフワークと言えるまである。
ちなみに承太郎とジョルノ、康一さん、陽乃さんは帰っていった。今日は内辞を伝えに来ただけだからな。
八幡「葉山か三浦辺りならどうだ?」
葉山「勘弁してくれ。言っただろう?国立を狙っていると。戸部の進路もかかっているし、全力で取りかかりたいんだ」
三浦「あんさー、あーしらのほとんどが例のジョースター家が推奨する大学を受けるんっしょ?大多数が生徒会長なんてやっている暇なんてないと思うんだけど?」
ですよねー。となると……
雪乃「比企谷君?何故依頼しないのかしら?私ならば適任ではないかしら?」
そう、上級幹部の特待生として大学進学が確定しており、なおかつ俺達のように業務に追われていない存在は雪ノ下と戸塚しかいない。
しかし……
八幡「良いのか?お前は研究者志望だろ?管理職志望なら」
雪乃「研究者志望だからとはいえ、研究室長とかの中間管理職が無いわけではないわ。経験を積んでいくに越したことは無いはずよ」
積極的なことで……。
めぐり「良いの?雪ノ下さん……」
なるほど。キャリア幹部候補生である雪ノ下は将来的にはどこかの研究室長とかをやる。ならば学校の生徒会長をやることも経験になるだろう。
結衣「ねぇ……ヒッキー。これってゆきのんが部活を辞めるってこと?」
八幡「ん?別に辞めなくても良いんじゃあないか?」
結衣「だって、それだとゆきのんは生徒会の方ばかりに行っちゃってこっちに顔を出すことなんて無くなっちゃうじゃん!」
八幡「どうするかは雪ノ下次第だな。俺はその辺は強要する権利はない」
俺だったら手段を講じるがな。そこに気が付くかどうかは雪ノ下次第だ。
誉められた手段では無いのだしな。
雪乃「辞めるわけでは無いのだから、ちゃんと顔を出すわよ。現段階で仕事もしているのだし」
八幡「へー………」
結衣「でも……両方なんて無理だよ。きっと責任感が強いゆきのんは生徒会に一生懸命になっちゃう……せっかく仲良くなったのに、あたしはそんなの……いや!」
静「ほー……」
雪乃「…………あなた達。私は結構真面目な話をしているのだけれど……」
やれやれだ。麗しい友情だが、肝心な事を忘れているぞ?二人とも。
八幡「俺とジョジョ、二人とも生徒会長をやろうとしていたんだが?」
雪乃「そう言えばそうね。あなた達ならどうしていたのかしら?」
静「私たちならここを動かずに生徒会室をここに持ってくるかな?」
雪乃&結衣「はい?」
まったく……察しの悪い奴等だ。さっきその話をしていたじゃあないか。
基本世界の雪ノ下はこう考えていた。
雪ノ下が生徒会長をやり、由比ヶ浜と比企谷八幡も生徒会役員をやってもらうことにより、奉仕部を生徒会として機能させて存続させる事を。
しかし、この世界の奉仕部は違う。三人だけの部活なんかじゃあない。
ならばどうするか?水族館だ。
ちょっくら例を出すか。
八幡「ジョジョ、今日の仕事の内容は俺には苦手な分野だ。交渉とかの類いは得意じゃあ無いんでね。これくらいでどうだ?」
俺はジョジョに対して右手の人差し指をたて、左手で三本立てる。
静「少ないね。せめて指一本増やしてくれないと」
仗助「ちょっと待てよ。おめぇの仕事とジョジョの仕事はすぐにわかる。俺にも欲しいところだぜ?」
八幡「どれくらいだ?」
仗助「ジョジョと同じくらい……かな?」
八幡「給料が吹っ飛ぶわ!」
雪乃「どういうことかしら?」
静「ハッチは私に仕事の代行を頼んだ。100ドルでね。だけど、それじゃあ足りないから1000ドルで手を打とうと交渉した」
つまり一万円払うから仕事を代行してくれという交渉したが、ジョジョは10万円で手を打つと言ってきた。
右手の数字が数字で左手の数字は桁。
単位はドルだ。
仗助「けど、八幡の仕事とジョジョの仕事。その差は流石に俺にはわかる。それを見てみぬ振りをして欲しければ同額を払え。GDstではこんなやり取りがよくされていたらしい」
雪乃「……つまりこういう事かしら?」
雪ノ下は徐倫に向き直る。
雪乃「空条先生」
徐倫「やり直し」
雪乃「………徐倫姉さん」
徐倫「なに?」
ああ、もう家族扱いは絶対なんですね?
雪乃「部室を臨時で生徒会室も兼用できるようにしたいのだけれど」
徐倫「ただでは無理ね。あたしだけならプライスレスで構わないけど、校長がそれでは動かないわ。これくらいは必要よ?」
徐倫が左手を全部立てる。1万ドル……つまりは100万は必要だということだ。
雪乃「私の今の給料では無理ね。やっぱり絵空事だったのよ……」
いまの雪ノ下に支払われている給料では確かにこれまでの支給額を全てつぎ込んでも無理だろう。
だが……
いろは「元々はわたしのトラブルが原因でしたから?30万出しましょう」
八幡「奉仕部のトラブルは奉仕部で解決するべきだ。30万出す」
静「部長の私が部員よりも少ない訳にはいかないってね。40万出すわ」
ジョセフ「ワシらの都合も考えればワシからも出さねばならんじゃろ。50万出そう」
仗助「だったら、俺も次期財団会長兼ジョースター家の当主として出す必要性ありだな。50万出すぜ?」
徐倫「合計したら200万。妥当なところね」
雪乃「なっ!何で仗助兄さんやジョセフおじいさままで!」
雪ノ下は驚きの表情を浮かべている。
ま、最初からそのつもりだったんだけどな。
静「奉仕部の問題はアーシスの問題。今、アーシスは団結の力が必要な時期。だから私達が分散されているのは非常に危ない」
八幡「それに、こういう金の使い道というのも世の中にはあるって事を教えるのにちょっとな。案外必要なんだよなー」
雪乃「必要?」
ジョセフ「例えばじゃ。こんな場合があるんじゃ。雪乃が研究を重ねた集大成を発表しようとする。それをライバルが雪乃の部下を買収して横取りしたりとかの」
仗助「ヒットマン寄越して来たり、酷いときにはテロリストを雇ったりしてくるからな」
それも同じ財団の奴等から。今の本部長代理とか怪しいしなぁ……。再来年からは本部の大掃除から始まりそうだわ。
八幡「賄賂とかも身を守る手段の1つって事だな。綺麗事だけじゃあ、世の中回らん」
ジジイ、ジョルノ、徐倫はジョジョ時代にそれを身をもって知っている。仗助や承太郎は世界に出てからそれを身をもって知った。
俺達も………世界の表と裏の両面から見てきた。
雪ノ下はこれからそういう世界を見ていくことになる。
今回見せたのはその一部に過ぎない。
警察だってその例外ではないぞ?葉山。
オーラル・シガレッツで真実を暴けたとしても、それはより大きな力で握り潰されるからな。
正しいことをやりたければ……って奴だ。
偉くなる過程で正しさを保っていられれば…だがな。
相良「…………」
葉山「どうした?南」
相良「あ、うん。うちも迷ってたんだ……立候補しようかどうか」
ああ、相模も文化祭実行委員や体育祭運営委員で場数をこなしているもんな。
意気込みは買うが、ここは雪ノ下に譲って欲しい。
雪ノ下が進む道とて簡単な道ではない。
ジジイ達や仗助の庇護下で鍛えられる時に鍛えておくのが理想だろう。
それに相模も目指す進路次第では受験勉強が必要だしな。推薦はするが、確実に合格できる訳ではない。
今日の人事発表が一年半前という異例の発表だったのも受験が控えている為というのも理由だ。
朋子「めぐり。雪ノ下雪乃で生徒会長の告知をお願い。他の副会長とか書記、会計に関しては立候補が揃ってるのよね?」
めぐり「はい。会長だけが不在でしたから」
八幡「いっそその副会長の奴を脅して会長に出馬してもらえば良かったんじゃね?」
ゴンッ!
徐倫「そういう物騒な発想が生まれる辺り、あんたはホントにパッショーネに染まっているわよ……」
パッショーネか………悪くないな。
アーシスに専念するならば、パッショーネの肩書きは強みになる。
パッショーネ構成員、DIO。
うん、悪くないな。
依頼が終われば後は思い思いの時間であった。俺達は財団の仕事をやり、勉強だったりジジイの修行、普通に雑談だけしている時もあった。
これまでは。
だが、ウルフスに敗北したという事実がこれまでの奉仕部のあり方を一変させた。
俺達が仕事をこなすことはもちろん必要だが、それプラスアルファも同時にこなす。
結衣「あれ?この隅っこに置かれている椅子ってスタッチやヒッキーの椅子だよね?あれ?でもヒッキー達は普通に席に座ってるし………あれ?」
甘いな。普通ならば絶対に出来ない姿勢を今、俺やジョジョ、小町にジジイはしている。
戸塚「み、見るんだ由比ヶ浜さん!八幡達は右足の小指だけを支えにして空気椅子をやっている!それもその小指の下にあるのは画鋲!画鋲の先端に右足の小指だけで体を支えているんだ!仕事をやりながら波紋の修行を同時にこなしている!しかも波紋のマスクを付けながらだなんてッ!」
実はこの体勢、部室に入ってからずっとやっていた。
雪乃「ちょっと!比企谷君とジョースターさんの上履きは何!?画鋲が入っているのだけれど?」
八幡「それ、俺が自ら入れた画鋲だから。土踏まずのみで体重を支える日常系の波紋の修行だから。雪ノ下もそろそろ初級の訓練に入る頃だな。小町ぃ、近々第7倉庫地下の1/5ヘルクライムピラーの出番じゃね?」
小町「まだ早いかな?とりあえず部室ではこれを足に付けて放課後は過ごして貰います」
小町は洗面器を2つ用意し、雪ノ下に足を突っ込ませる。
小町「それを波紋で靴のように維持して一滴も水をこぼさずに部室を100周回って下さい。一滴でも溢したら最初からですよ?慣れたら洗面器無しで水のみを靴の代わりにして貰いますので」
これはこれで地味にキツい修行だな。
俺達もその内針の下に水を置いてやってみるか。
小町「はい、葉山さん。これがテニス部で採用された訓練メニューです。加えて葉山さんは基礎波紋のマスクを着用して貰います。沙希さんと大志君は中級用のマスクを着用しながら剣山の上で波紋の呼吸立ちをしながらお勉強。めぐり先輩は剣山の中敷きの上履きを履いて生徒会の仕事をして下さい。気を抜くと足が穴だらけになりますから気を付けて下さいね?」
ちなみに仗助はただの空気椅子をしながらコップ満水の水を両肩と頭の上に乗せながら、一滴もこぼさずに仕事をしろという内容をやらされている。
波紋の第一人者の小町による波紋の戦士用のメニューが各人ごとに指示を出されていく。
波紋の戦士だけではない。波紋に適正が無い人間には人間用にどんどん修行が課されていく。
今日は精密性の強化に重点を置いた訓練だ。
スタンドにおける重要な要素であるパワー、スピード、射程、持続力、精密性。
その中でも俺達は精密性に関してはタイプに限らずある程度の強化は可能だと考えている。
例えば人型スタンド使いは勉強も書き取りはスタンドのみでやったり、目隠しをしてスタンド越しで勉強をしたり……などである。
戦闘訓練や連携訓練はまた別の日に予定されている。
これまで以上に訓練に主眼を置き、そして同時に勉強や仕事をこなすという濃密な内容。
俺達にこれ以上の負けは許されない。オロチに敗北していながら、犠牲者が出なかったという事は幸運以外の何者でもなかった。
もう負けは許されない。今の仲間達を失いたく無ければ力を磨け。技術を磨け。スタンド能力を鍛えろ…。
ウルフスはそう遠くない内にまた仕掛けてくる。
いや、ウルフスだけじゃあない。普通のスタンド使いだって油断は出来ない。
かつてディオが金をちらつかせて沢山の刺客を承太郎達に向けたように……。
←To be continued
はい、今回はここまでです。
汚い部分を語る回でしたね。
そして生徒会長はいろはではなく雪乃。
同時に玉縄達は最初からチーン♪でしょうが。
そして修行や訓練も本格化してきました。
特に波紋の戦士達の修行が。
1/5ヘルクライムピラー……とんでもなさそうですね(^_^;)
それでは次回もよろしくお願いいたします。