やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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生徒会長候補の不在

side比企谷八幡

 

朋子「お邪魔するわよー」

 

部室に朋子さんが入ってきた。開け放たれた扉から風が吹き込んできた。

朋子さんのセミロングの艶やかな黒髪が揺れ、つかつかと床を鳴らしながら中へ入ってきた。

 

いろは「あ、朋子さん。処理してくれました?」

 

朋子「骨が折れたけどね。それに付随して頼みたいことがあったんだけど……」

 

言いながら俺達を眺めまわす。

 

朋子「何かあったの?」

 

そう問いを投げ掛けてくる。

 

仗助「何でもねぇぜ。SPW財団の人事発表があっただけだ」

 

朋子「充分大した事じゃあないの。何?八幡達が辞任するの?」

 

現職務は辞任しますね。栄転ともいうが。

 

八幡「一応は配置換えになります。日本支部の本部になりますが。まぁ、勤務地は同じ建物になりますね。それよりも何か?」

 

簡潔な言い方をしたが、朋子さんは苦笑する。何があったのかはさっせないにせよ、何かがあったことだけは理解したらしい。

将来的にはSPW財団としての表向きの役職を辞任するなんて言ったならば、正気を疑われるだろう。約束された将来を放棄するんだからな。普通ならばその立場を捨てようだなんた思わないだろう。

 

朋子「改めた方が良い?」

 

いろは「むしろ結果を教えて下さい。話は終わりましたから」

 

まぁ、明日も明後日も地獄の訓練と勉強、それにクリスマスに向けての調整しかない。

 

朋子「そう。めぐりちゃん。あの件のこと、話して良いかしら?」

 

ああ、この時期か。

俺が覚えているということは基本世界のいざこざは起きないと見て良いのか?

 

めぐり「ああ………そうですね。事が大きすぎて忘れてたよー」

 

いろは「まぁ、財団の人事発表が行われてそれどころじゃあ無かったですからね?」

 

めぐり「私もこっちが本題で呼ばれたのかと思ったからねー」

 

めぐり先輩としては大事だからな。

そう、今日は基本世界における一色いろはと比企谷八幡が初めて出会った日だ。

正確には一色いろはが比企谷八幡を初めて認識した日とも言える。

 

八幡「生徒会選挙の事ですね?」

 

めぐり「すごぉい!比企谷君、よくわかったね?」

 

八幡「基本世界を見てきたんで……」

 

うーん………確かに気になる。

あの人は基本世界とは違う形になるし、その騒動にはならないと言っていたが……。

どこからどこまでが本来の歴史と違うのか……。

 

雪乃「生徒会選挙?そう言えば変ね。普通ならば既に選挙は終わっていて、城廻先輩はもう引退しているはずだと思うのだけれど、選挙どころか立候補者の開示すらもされていないなんて……」

 

めぐり「だって………会長の立候補者がいないんだもん………」

 

めぐり先輩が涙目のルカになって答える。

そう。生徒会選挙に必要な肝心要の立候補者がいないというのだ。

 

めぐり「そしたら一色さんが立候補してくれたと言うから凄く喜んだのに………」

 

いろは「わたしの名前を騙った立候補と推薦人の捏造ですよ」

 

あれ?何で基本世界と同じ状況が発生してるのん?

 

八幡「何で基本世界と同じことが?」

 

雪乃「どういうことかしら?出来れば教えてもらいたいのだけれど………」

 

八幡「実は基本世界ではな………」

 

俺はアーシスの面々に基本世界で起きた生徒会選挙にまつわる事柄を説明する。

一色いろはという女がどういう女で、どういった経緯で同学年の女子から疎まれるようになってしまったのか。

そして奉仕部に関わるようになり、比企谷八幡の口車と捏造によって唆され、生徒会長に祭り上げた経緯を話す。

 

雪乃「初めて知ったわ。基本世界の比企谷八幡という人物を。あなたよりはマシな感じだとは思うけれども」

 

悪かったな。性悪で。

でも、何で基本世界と同じ事象が発生し、なおかつ俺がそれを覚えているんだ?

 

いろは「推薦人の名前をよく見て下さい」

 

言われて推薦人のリストに目を通す。そこに示されている名前は………

 

八幡「………ほとんど男子?」

 

静「あー……イーハってモテるからねぇ。告白とかはそれなりに受けてるんだったっけ?」

 

ガタッ!

よし。そいつらを二重の意味で殺しにいこう。

耳を削ぎ、目を潰し、小指から一本一本切断してから舌を切り落として………

 

ゴンッ!

 

徐倫「一般人相手には止めなさい。ギャングの尋問じゃあないんだから」

 

おっと、ギャングモードに突入してしまった。

スタンド使いかギャング、若しくは本当の意味での敵以外にはそんな事はしないようにしてるんだった。

 

いろは「全部断るか、もしくは最初から無視するかしてますので安心してください。もっとも、わたしも容赦ない言葉を浴びせて撃沈させていましたから、その腹いせがこれ………なんですけどね?」

 

つまりフラれた男達のやっかみ………と。

 

結衣「一部女子も混じってない?」

 

朋子「いろはにフラれた男の事が好きな女子達の仕業よ。と言うより、そいつらがむしろ発案ね」

 

おいおい。基本世界の時から思っていたけど、本当にどうなってるんだよ?総武高校は。

 

いろは「まったくです!いっそ生徒会長になって総武高校をパッショーネの要請機関にしようかと思っちゃいましたよ!」

 

コラコラ。始末者多数で廃校になりかねないじゃあないか。

 

八幡「で?どうなったの?」

 

いろは「この人達には始末(指導)しましたよ?今後の人生、陽の目を見れれば良いですね~♪壁に向かってブツブツ話しかける人も出てきましたから」

 

心にダメージを刻んでるよ、この子。

 

徐倫「指導するを通り越してカウンセリングが必要じゃあないのよ………何してんの!?」

 

いろはを怒らせたら怖いからな。

心を折る手段なんか一番心得ている。

 

いろは「担任に話を持って行ったら行ったでなんかやる気になっていて全然話を聞かない人だったんですよー。何て言うんですか?スクールウォーズ的なあれです」

 

たしか基本世界のいろはの担任もそんな感じだった。

普通の生徒ならば諦めがはいるだろう。教師に逆らう生徒などそうそういない。ましてや総武高校ならば尚更だろう。

ところがうちのいろはは甘くない。

 

いろは「仕事の事とかも含めて取り下げるように言ったんですけどー。なんか全然話を聞かないですし、何か俺が応援するから頑張れとか言ってましたけど、支援してくれるならともかく、応援だけされたって仕方がないですよ」

 

朋子「で、あたしから話したわけ。取り下げろって。ちょっと気合いいれちゃったけど、まぁ問題ないでしょ」

 

気合い入れたって……そんな昭和的な。

 

雪乃「立候補の取り下げって校則には無かったと思いますけど…」

 

甘いな雪ノ下。

 

朋子「ああ?そんなの簡単よ。校則に無いんなら、作れば良いんじゃない」

 

雪乃「作れば良いって……」

 

朋子「あのねぇ。何事も前例は必要だし、なければ前例になれば良い。大体、他者からの嫌がらせでいろはちゃんの立候補が勝手にやられてんのよ?そっちの方を許す方が問題でしょ?だからあたしが取り下げを許したのよ。もう校長の認可は下りているわ」

 

葉山「待ってください、東方先生。そんな簡単に早く校則を変える種類の問題が校長の一存で決まるわけがないと思いますが………」

 

普通ならそうだ。ましてやこの総武高校は私立ではなく、公立高校。校則に則っることが出来ない種類の決定に関しては校長だけでは判断できない。

だが、朋子さんが関わらば話が変わってくる。

 

朋子「葉山。あたしは文科省から直接派遣されてきた職員なの。こんないじめに近い嫌がらせなんて、こっちからしたら攻撃してくれって言わんばかりよ?」

 

葉山「随分とこちらの都合の良いようにしますね……ジョースター家は好き放題ですのに……」

 

葉山はオーラル・シガレッツで朋子さんを触る。

 

朋子「まぁね。校長とかキャリアの職員とかは既に買い取ってあるから。まぁ、大人の世界の…それも上部の世界なんて似たようなものよ」

 

葉山が息を飲む。

 

八幡「おいおい。俺達を見てればわかるだろ?クリーン差なんて物とは無縁だって」

 

徐倫「GDstだって金が物を言ったわね」

 

ジョルノ「パッショーネは政府機関にも深く食い込んでいますね」

 

ジョセフ「ワシもインドからの国際指名手配を解除するのに金の力を使ったのう」

 

承太郎「俺もだ。それも雪ノ下夏樹県議会議員に対して袖の下を渡したな」

 

つまり、そう言うことだ。

これまでここまで好き放題していて俺達がお縄になっていないのは、そう言うことだ。

 

葉山「将来的に君達とは絶対に敵対するな…」

 

間違いなくな。もっとも、協力しあう事もあるだろうがな。ウルフスが片付いたとしても一般のスタンド使いがいないとも限らない。

 

八幡「某刑事ドラマの受け売りだけどな?正しいことをやりたければ偉くなれってやつだ。偉くなれば偉くなっただけしがらみとか酷いけどな」

 

某ドラマとは亡くなった元ミュージシャンであり、コメディアンがサブ主人公的な存在として出演していた刑事ドラマだ。「相棒」ではない。

 

めぐり「でも、一色さんの立候補が取り止めになったことで生徒会選挙の方が白紙になっちゃってね?それで学校側も凄く困っちゃってるんだ」

 

チラッ!チラッ!と俺を見てくるめぐり先輩。

そのやり取り、何べんやれば気が済みます?

 

八幡「俺はしませんよ?確かに支部長は来月いっぱいで降りますけど、それでも次の仕事があるんですからね?」

 

日本支部の総括営業とかの多忙ではないポジションで無いことが幸運だが。どちらかと言えば経歴に傷が付きにくく、観察するのも元々自分の部署であった関東支部を監査する役目だ。本部勤務をするまでの腰掛けのようなポジション。ウルフスに本腰をいれろという暗黙の配置換えだ。

それ故に対ウルフスに集中すべきだろう。

 

めぐり「じゃあ……」

 

静「だが断る!」

 

めぐり「まだ何も言ってないよぉ!」

 

八幡「次に城廻先輩は……」

 

静「『比企谷君もジョースターさんも意地悪!もうおうちに呼んであげないんだからねッ!』と言う」

 

めぐり「うううっ!比企谷君もジョースターさんも意地悪!もうおうちに呼んであげないんだからねッ!ハッ!」

 

Yeah!

パアン!ピシッ!ガシッ!グッ!グッ!

 

徐倫「仲間をいじって遊んでる場合じゃあないでしょ。実際めぐりにとってもピンチなんだし、推薦が決まっているとは言っても流石に引退くらいはさせてあげなさいってば」

 

そうなんだよなぁ。ここに来たって事はおそらく次期生徒会長になってほしいという内容か、もしくは誰か生徒会長になってくれる人材はいないかというところなんだろうが……。

 

仗助「コイツらを生徒会長にするのはよした方が良いぜ?城廻よぉ。したらしたでとんでもないことになるしかないぜ?」

 

八幡「もちろん!修学旅行はエア・サブレーナー島で波紋の修行!」

 

ゴンッ!

 

徐倫「一応、うちは一般の公立だ!海外に行けるほどの予算が降りるわけねぇだろ!しかも内容がとんでも無さすぎるわ!死人が出るだろ!」

 

静「制服は学ランとセーラー服!しかも後頭部が破れた学帽着用を義務化!長ランとボンタンはOK!」

 

ゴンッ!

 

徐倫「時代を逆行してどうするんだ!うちの学校は制服がカワイイことで人気があるんだぞ!ただでさえ少子化が深刻化して生徒の数が年々減ってきているのに余計に入学生徒が減るだろ!」

 

陽乃「入学試験にライターの火を1日消さなければOKという一芸入学試験を採用する?」

 

ゴンッ!

 

徐倫「パッショーネの入団試験じゃあねーか!ポルポはもう死んでるだろ!つうかその屍生人を殺したのはお前だろ!それに何か?再点火したら矢で刺すのか?ただでさえスタンド使いの数を減らしたいのに増やすのか?適正無い奴が死んだ後の責任はどうとるんだ!?そもそも公立で一芸入試が通るわけ無いだろ!」

 

八幡&静「課題を忘れたり赤点を取った生徒はパッショーネ送り。趣味が勉強、愛読書は宮沢賢治、好きな音楽はクラシックという理想の生徒にならなければ始末!」

 

ゴンッ!

 

徐倫「ギャングと提携する公立高校がどこにある!いや……もう既にギャングと提携してるようなものだけどさ……それでもペナルティが始末とか恐ろしいわ!何度も言うけどどっかのバカどものせいでただでさえおかしな噂が絶えなくて今年の入学希望者が少なくなると言われてるんだ!これ以上入学希望者を減らすんじゃあねぇ!」

 

静「わかった!じゃあ入学した生徒の夢が『ギャングスター』になるように洗脳する!」

 

ゴンッ!

 

徐倫「もっとたちが悪いわ!卒業生が全員ギャングになりました……なんてなったら総武高校が廃校になるだろ!」

 

八幡&静「これらを公約にして生徒会長に立候補する!信任投票じゃあなく、どちらかを選ばなくてはならないから全てが実現される!総武高校の生徒がパッショーネの構成員になるから財団の人材確保は決まったも同然!総武高校にとってもSPW財団にとってもどちらにとってもWIN-WINなナイスアイデア」

 

ゴンッ!×2

 

徐倫「どちらにとってもマイナスしか無いわ!帰ってきて早々にこれかよ!」

 

八幡「修学旅行ボケは大丈夫みたいだな?徐倫」

 

静「キレッキレのツッコミ、ナイスだったよ?徐倫お姉ちゃん」

 

ゴンッ!

 

徐倫「好きでやってるわけじゃあ無いわ!」

 

いやぁ、久々すぎて徐倫の扱いを忘れかねなかったからな。修学旅行ボケは早く直さないと。

 

仗助「……………と言うわけだ。実際にやりかねないぞ?コイツらなら」

 

気が付くと俺と歴代ジョジョを除く全員が顔を真っ青にしている。

あっるぇえ?おかしいぞぉ?名案だと思ったんだけどなぁ?

 

←To be continued




はい。今回はここまでです。

いろは登場編、最初から原作をぶち折りました。
いろはが嫌がらせで立候補に擁立されてしまうのは同じですが、それで黙っているいろはではありません。
最悪は気合いを入れるかしますよね?
あ、犯人を始末してますか……。

いろは「あなた、覚悟があって来てる人ですよね?わたしに対して嫌がらせをしてきたということは、逆に自分が嫌がらせを受けるという覚悟を常に持っている…という事ですよね?覚悟は出来てますか?わたしは出来ています」

嫌がらせ犯人達「ぎゃああああああああああああ!それ、既に嫌がらせとかじゃあ……」

いろは「いやですよー♪嫌がらせの範疇ですって♪翌朝に死体が花見川に浮いていないだけでも充分にわたしとしては嫌がらせの内ですよ?パッショーネ的には♪死体が残るだけでもまだ良心的なほうですかねー?」

嫌がらせの犯人達「ひいいいいいいいいいい!」

いろは「大丈夫です♪警察とかの躾は終わってますから♪」

嫌がらせの犯人達「それはそっちにとっての大丈夫であって俺(私)達には破滅しかみえないぃぃぃぃ!助けてぇぇぇぇぇぇ!」

…………恐ろしい…………。

それでは原作との相違点。

いろはと八幡の出会い→既に出会っている上に婚約者同士の間柄

いろはは生徒会選挙出馬は確定しており、「上手く負ける」為に相談に来た→仕返しは終えている。この場にも既にいる

いろはの担任はサクセスストーリーを展開しており、まったく話を聞かず、平塚先生も教師間の関係から強く出ることが出来ない→朋子が気合いを入れた

立候補取り消しの規約はない→無ければ作れば良い

依頼は生徒会選挙に誰か出て!

八幡の考えは応援演説等の案→性悪コンビの黒い公約。どちらを選んでも地獄が総武高校を支配する暗黒時代の到来である(徐倫が止めた)

それでは次回もよろしくお願いいたします。

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