やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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原作崩壊のタグが大仕事をします。
アバババババ!


言うまでもなく比企谷八幡は小町といろはの逆鱗に触れる?

side比企谷八幡

 

嫌な朝だ。

澄み切ったような晴天、そしてことことと穏やかに揺らす肌寒い風。部屋の中には微睡みを誘う暖かな空気。

まったく嫌な朝だ。

修学旅行から帰ってきて、休日を挟んだ月曜日。

月曜日というのは常に憂鬱な気分にさせられる。もっとも、昨日と一昨日は会社にいたんだ。休日という感じはあまりしなかったがな。

朝の訓練を終わらせた俺は、洗面所へ向かった。

昨日と一昨日の事で疲れを残していたまま鏡をじっと見る。そこにいるのは毎度おなじみの俺である。

……うむ、いつも通りだな。

拍子抜けするほどに、まったく普段と変わらない。

あんまり学校に行きたくないのも、部活という仕事に行きたくないのも、家を出る前からホームシックなのも、どれもすべて平素の俺である。

ただ、顔を洗う水だけが以前よりもほんの少し、冷たくなった気がした。

秋は既に去り行き、季節は冬と呼んで良いだろう。11月も終わろうとし、今年も残すところ1ヶ月とほんの少し。俺が関東支部の支部長という役職を降りるのもそこまでだ。

両親は通勤ラッシュを避ける為に早めに家を出ている。これからの季節、出社ギリギリの時間やちょっと遅めの時間だと余計に混んでいるんだとか。

………俺の決心を伝えたかったが、うちの両親も日本支部の1つの課では役職もある。昨日はじっくり話をする時間も無かったしな。

ただ、俺達がこの千葉を離れるまでの残された時間はあと僅かだ。時間にして一年と半年足らず。

鏡に映る顔はやはり控え目に見ても並以上には整っていて、それでいて鋭く、どんよりとした瞳は並どころか超高校生級に腐っていた。

それでこそ俺。比企谷八幡。

高校生でありながらこの年で社畜であり、この年でギャングであり、この年でエージェント。

夢や希望を抱く高校生でありながら、裏社会も知っているというこの矛盾。こんなのを経験しているのは俺達以外ではジョルノとエンポリオくらいだろう。あとは平行世界のあいつらか?

これまでと変わってしまった自分に一抹の不安を感じつつも、俺は洗面所を後にする。

リビングに入ると、妹の小町と嫁のいろはがキッチンに立っている姿が目に入った。湯沸し器の前で仁王立ちしている。怪訝な目を俺に向けながら。

俺が何故昨日は家に不在だったのか、二人は知らない。

俺が会社にいたのは出社の為ではない。ある話をするために……ジジイと承太郎、仗助、ジョルノ、ジョジョに俺の決心を伝えるために会社に行ったのだから。

両親や一色さんが朝食を済ませた後の為か、既に本日のメニューは出揃っている。後は二人がお茶を出してくれればそれで準備完了だ。

がたりと椅子を引くと、ちょうどお湯が沸き、急須にお湯を注いでいた小町がぱっと顔をあげる。

 

小町「あ、お兄ちゃん……おはよ」

 

いろは「おはよう……ハチ君」

 

八幡「ああ。おはよう」

 

朝の挨拶を返す。少し元気が無いのはオロチとの戦いが実質的に敗北であることを引きずっているのか、それとも直後の俺の行動を俺が二人に語っていない事に対する不審からか………。

千葉村の時もそうだったからな。

パタパタとスリッパを鳴らしながら二人はお茶を運んでくる。

椅子に座り、三人で手を合わせると、いただきますと唱和した。

前世がイギリス人の俺達であるから胸の前で手を組み、天におります我らが主よ……とでもやると思ったか?

残念ながら両親は両家とも生粋の日本人だ。それ故に慣習は一般的な日本人のそれである。

食事もそうだ。基本的にはイギリス式やアメリカ式の食事が並びやすい我が比企谷家も冬場は暖かいご飯や味噌汁が朝食に上がりやすい。味噌汁で体を暖めてから外出をしましょうということなのだろう。かーちゃんの愛って奴だな。

中身はともかく体は純粋な日本人の俺達にとって、やはり日本の食事は体に合うのだろう。実に馴染む!馴染むぞぉ!

ジョジョが基本世界とは違ってスタイルが良いように、やはり俺達にとっても日本の水や食事が肌に合う。

再来年から日本を離れる予定である俺達としては不安な要素である。

 

小町「……ねぇ」

 

八幡「ん?」

 

短く相槌をうち、視線で言葉の先を促した。まぁ、来るだろうとは思っていたが。

 

いろは「何かあったんですか?」

 

…………確かこの時期からだったか?基本世界の様子を見たのは。基本世界の俺はこの朝の会話で小町とケンカをしたんだったか………。それで小町は平行世界が嫌いになった。

その原因は………。

 

八幡「…………『なんでもねぇよ。むしろあれだな。逆に俺の人生は何かありすぎてどれの事を言って良いのかわからないまである。天下太平事もなしが良いって言うが、ホントにそんな人生とは無縁だ。吉良吉影は植物みたいな平穏を望んだというが、まさにそれだと言いたい』」

 

小町&いろは「……………」

 

悲しげな顔をする二人。

千葉村や文化祭までの俺だったらそう答えて煙に撒いていたかも知れない。だが、同じ轍を踏まないともう決めた。

 

八幡「………と、前の俺なら言っていたかもな。千葉村の時みたいに。基本世界の俺もそうだったっけ?」

 

小町&いろは「!!」

 

二人は目をパチクリと目を瞬かせた。

意外だったのだろう。

 

八幡「言うよ、素直に」

 

小町「どしたの?お兄ちゃん」

 

いろは「ウルフスにでも乗っ取られたのですか?」

 

八幡「おい待て何だその反応は?ケンカをしたくないから素直に言ったのに………まぁ、素直に言ってもケンカになるような内容かも知れないがな……」

 

小町「あ、お兄ちゃんも思い出してたんだ。基本世界の事」

 

いろは「わたし達だけだと思ってハラハラしてたんですよ。良かったぁ……」

 

安心するのはまだ早いぞ?結構イヤな内容だからな?

 

八幡「実はな?昨日は会社に行ってたんだよ。今後の俺の人生で決めたことがあってな。早ければ今日にでもジョジョを通じてバレる事だし、そうなれば今しゃべらなければいろは達が怒り出すと思ったから素直に喋るが…」

 

キングクリムゾン!

 

小町「…………お兄ちゃん、本気?」

 

眉に皺を寄せて小町が聞き返してくる。

いろはは驚いている顔だ。

 

八幡「………まぁ、本気だ。もっとも、ここまで育ててくれた恩を返してから……という話になるがな」

 

いろは「ジョセフや仗助達は何て?」

 

八幡「最初は反対されたよ。何の為にここまで俺に詰め込んだんだ……ってな」

 

小町「………だろうね?ジョセフ達は小町やお姉ちゃんはむしろオマケ。本当はジョナサンお父さんやDIOの転生であるお兄ちゃんが目的だったと思うし」

 

だろうな。ジジイ達からしてみれば必要だったのはディオのその悪魔的な発想だったであろうからな。だから子供の頃から英才教育を施していたんだろうし、ブラッディ・スタンドやウルフスの件がなければ今頃は総武高校に通っている事も無かっただろう。

全ての予定が前倒しにされ、今頃の時期に千葉に帰って来ていたはずだ。

 

八幡「今も言ったが、すぐに………という話じゃあない。ウルフスの件が方が付いた後だとしても、早くて十年後……予想としては15年後って見積もっている。それまではジョースター家の意向に従うつもりだ。ジジイ達もそれで一応は納得してくれた」

 

小町&いろは「……………」

 

二人は何かを言いたげな顔をして、そしてため息を吐く。

 

小町「いつから?」

 

射抜くような鋭い視線を小町が向けてくる。こんな大事なことを家族に黙っていた事に対する怒りだろう。

 

八幡「………前々から漠然と燻ってはいた。でも、ハッキリと決心を固めたのは修学旅行中。形を成したのが孫悟空との戦いの時で、決心を固めたのがオロチとの戦いで敗北した時……だな」

 

いろは「わたし達に相談しなかったのは何故ですか?」

 

いろはが悲しそうな表情を見せる。家族であると言うこと以上に、将来は夫婦になる俺達だ。決心を固めてジジイ達に言う前に話して欲しかったのだろう。

 

八幡「1つはさっき言ったように今すぐに決定する話ではなく、最終的な決断はその時になってから決めるっていう事でジジイ達を納得させるつもりだったから。二つ目は結局はジョースター家と深く関わる事に変わりは無いだろうから。千葉村の時の前のように人知れず消えようだなんて考えはもうない。ジョースター家と共に生きようって気持ちは変わらないからかな……」

 

いろは「でも、それでも何で急に話を進めたんですか!?」

 

八幡「…………時間が無かったんだよ。実際、ギリギリだった。ジジイ達が何を進めようとしてたか、知っていたからな。だから修学旅行の帰りの新幹線でその事をジョジョに確認を取ってみた。ドンピシャだったよ」

 

そう、俺も偶然知ってしまっていた。あの地獄の説教の中で、急がないと間に合わなくなると……。

俺は小町といろはに伝える。ジョジョに確認を取った直後に、俺は帰って来た翌日にジジイ達を集めろって言ってしまっていた。

その理由を含めていろは達に伝える。時間的な問題でいろは達に説明する間もなく動いてしまったことの謝罪も含めて。言い訳にしかならないが。

 

小町「…………そういう話が出ていたんだ……。確かに小町達が関わる事じゃあ無いもんね………」

 

いろは「家族と認められていても、財団的には一介の中間管理職………。知らされていないのは当たり前ですね。それもその辞令が今日発表される事になっていたなんて………」

 

八幡「二人には……いや、ジョースター家のみんなには済まないと思ってる。どんなに怒られても仕方がないと考えている……突然決めてしまった事に巻き込んでしまうことも重々承知だ………」

 

俺は土下座して頭を下げる。罵倒なりなんなりされても仕方がない。

 

小町「…………お兄ちゃん。頭を上げて」

 

八幡「…………ああ。ケドゥ!」

 

頭を上げた俺に待っていたのは小町からの強烈なキックだった。

俺が小町に勝てる訳もなく、うつ伏せにダウンさせられる。

そして顔をグリグリと踏まれる。

 

小町「もう、ホントにどうしようもないゴミぃちゃんだよ。こうだと決めたら突っ走っちゃうなんて、どこまでジョースターなんだろうね?周りの気持ちも考えないで相談もせずにさ」

 

グリグリグリグリ……。

波紋を流されながら踏みつけられる俺。

タコスゥゥゥゥゥゥ!

 

いろは「まぁ?内容が今すぐの判断じゃ無いって事ですから?そこまでわたし達も怒っていませんしぃ?千葉村の事に比べれば何倍もマシですけどぉ?普通に考えたら大事ですよ?普通、家族に最初に相談しませんか?」

 

いろはは俺の背中に乗り、俺の両足を脇に固める。蠍固め。別名スコーピオン・デスロック。

うえぁぁぁぁぁぁぁぁ!

小町の波紋を流されて身動き出来ない状態でのいろはのサソリ固めはきつすぎるぅぅぅぅッ!

 

小町「お姉ちゃん、甘いよ?ジョースター家が一度宣言したことを簡単に撤回することを許す一族だと思う?または安易な気持ちで決心した……なんて言葉を口にする事自体を許すと思う?仮にジョースター家が許してもジョルノお兄ちゃんが絶対に許さないよ?」

 

それもそうだ。その時になったらもう一度考えてみろ、それまでは規定通りだ……なんて猶予を与えてくれている事自体がジジイ達にしてみれば甘い決断だ。その場で縁を切られていても不思議ではない。

まぁ、そこまでの覚悟をもってたからこそ、ジョルノに話をしたのだが。

 

小町「お兄ちゃんの考えている事は賛成とも反対とも言えないけどさ。ホント、めんどくさい兄だよ。百年の恋も醒めちゃったっていうかさ……」

 

八幡「ふ、普通の兄弟に戻れ………アバババババ!」

 

バリバリバリバリ!

やめてー!溶けるから!これ以上の強烈な波紋は吸血鬼や柱の一族じゃあなくても溶けるから!

鉄板に落とされ、だらしなく広がって消え、べとつく砂糖の塊になるアイスクリームのようにジュワワワワワーーー!って蒸気をあげて無惨に溶けるからぁぁぁ!

殺す気か小町ぃぃぃぃぃッ!

 

小町「調子に乗んないの!わかってる?ゴミぃちゃんだよ?ゴミぃちゃん。もしコレが今聞かされてなかったら基本世界のようなケンカ以上に小町は怒っていたからね?どんなに蹴ってもゴロゴロ転がって同じ体勢にしかならないダルマのように手足を溶かして体の形を変えていたからね?この程度で済ませているだけでもかなりマシだってわかってる?ねぇ?」

 

恐ろしい!何が恐ろしいってそれが不可能じゃあ無いだけの力を持ってる事が恐ろしいんだぜぇぇぇぇ!

ごめんなさい!許して!

アババしか言えなくなるぅぅぅぅ!世界に反骨精神を高らかにシャウトするラッパーになるぅぅぅぅ!

アババ!アバババ!アババババ!

 

いろは「ホント、あなたの早計さに怒って良いのか悲しめば良いのか呆れて良いのかわかりません。1つ言えることは………今度やったら婚約を解消するかも知れませんので。とりあえず、後の事はちゃんと責任、取ってくださいね?」

 

それは俺に死ねと言っているのと同義だぞぉぉぉ!いろはぁぁぁぁ!アバババババ!

 

バァン!

 

静「遅いっつーの!いつまで待たせれば気が………面白い事をしてるじゃん?さては聞いたね?イーハ、マーチ?」

 

いろは&小町「YES YES YES YES YES!」

 

八幡「Oh my god……」

 

バリバリバリバリ!

 

前世はイギリス産まれ♪ジョースター育ち♪

血を吸う奴は大体友達♪

柱の一族と大体同じ♪

裏の道♪歩いて来た♪ロンドンの街♪

イギリス♪エジプト♪そう青春も早々に♪

世界征服にぞっこんに♪

人間♪やめてきた♪石仮面♪

マジジョジョ(ジョナサン)に迷惑かけてきた♪

ザ・ワールド♪

だが時は経ち転生し♪今じゃザ・ジェムストーン♪

そこらじゅうで性悪振り撒く♪MU DADA♪

徐倫いじりならマジでNo.1♪

総武高校トップランカーだ♪

そうこの千葉この国に生を預り♪

小町に無敵の波紋を預り♪

仲間達家族達ジョースター家♪

今日も感謝して♪

社畜ロード♪

アバーバーバー♪アバーバーバー♪

アバーバーバー♪アバーバーバー♪

(そこから全てアバババ♪)

 

その後、怒っていながらもいつも通りに律儀に迎えに来たジョジョも参入し、俺達は珍しく意図的に遅刻する以外の、本当の意味での遅刻をし、小町を除く俺達が徐倫から拳骨を貰った。

ちなみに俺の意識は放課後までキング・クリムゾンだったということも追記しておく。

 

←To be continued




ちなみに静からはキャメルクラッチを食らっています。

波紋を流されながらスコーピオン・デスロックと
キャメルクラッチ………背骨が死にますね。



それでは久々の原作との相違点。

比企谷家の光景は八幡と小町→プラスいろはなのはいつもの光景である。

小町の何かあった?に対して煙に撒く発言をする→そうするポーズをするも、素直に話す。

そのうち「しつこい」と言って小町が怒り出す→勝手に色々な事を決めた八幡にいろはと小町が怒り出す。

小町は滅多に怒らない反面怒りが持続する→その場でお仕置きをして溜飲を下げる


かなり無理矢理でしたが小町とのケンカは回避させました。もともとそれが小町の平行世界嫌いに繋がっていましたので。

さて、八幡は何を決心したのでしょうか?
pixiv版を見た方はご存じかも知れませんが。

それでは次回もよろしくお願いいたします。

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