やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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決戦の地は嵐山?

side比企谷八幡

 

先に東福寺を出た葉山達とは違うルートから嵐山を目指す。途中、川崎の希望でもあった北野天満宮に寄った。

川崎は北野天満宮に参拝し、お守りを買って、ついでに絵馬を書いていた。

家族に対しては惜しみなく金を使う川崎に微笑ましく感じる。流石は……

 

静「妖怪ブラコーン」

 

八幡「怪奇シスコーン」

 

沙希「だからアンタらがそれを言うんじゃあない」

 

因みにこの北野天満宮は学問の神が有名なところであるが、他にも農耕の神、正直・至誠の神、冤罪を晴らす神、和歌・連歌の神、渡唐天神、芸能の神、厄除の神等としても御利益があるのだとか。

それを聞いた材木座と由比ヶ浜(芸能や和歌?)も参拝を始めた。

俺?北野天満宮に関する御利益に俺に相応しいのってあるとでも思う?

例えば正直・至誠……あり得ん。

冤罪を晴らす……むしろ犯してる犯罪数知れず。

和歌・芸能……才能が無いにも程があるレベル。

厄除……すがりたいところではあるが、俺自身も祓われそうで怖い。

 

DIO『うぐおぁぁぁぁ!何故京都は仏閣神殿ばかりなのだぁ!浄化されてしまうぅぅぅぅ!』

 

……お前は悪魔か。頼むから浄化されるんじゃあ無い。

今、ザ・ワールドが無くなったらどうするんだ。少しでも力が欲しいんだぞ!

 

雪乃「奉られている神は大宰府天満宮と同じく菅原道真ね。右大臣菅原道真が左大臣藤原時平の讒言にあって左遷され、延喜3年(903年)に大宰府で没した後、平安京では落雷などの災害が相次いだそうよ。これが道真の祟りだとする噂が広まり、御霊信仰と結びついて恐れられたの。そこで、没後20年目、朝廷は道真の左遷を撤回して官位を復し、正二位を贈ったと言うわ。天慶5年(942年)、右京七条に住む多治比文子(たじひのあやこ)という少女に託宣があり、5年後にも近江国の神官の幼児である太郎丸に同様の託宣があったそうよ。それに基づいて天暦元年6月9日(947年)、現在地の北野の地にあった朝日寺(東向観音寺)の最鎮(最珍)らが朝廷の命により道真を祀る社殿を造営し、朝日寺を神宮寺としたみたい。後に藤原師輔(藤原時平の甥であるが、父の忠平が菅原氏と縁戚であったと言われる)が自分の屋敷の建物を寄贈して、壮大な社殿に作り直されたのが北野天満宮のそもそもの始まりらしいわね」

 

流石はユキペディアさん。

道真没後の京都の災厄については結構有名なところではあるが、

 

八幡「ん?でも雪ノ下は興味ある事以外の博識さはそれほどでもないよな?ってことは……」

 

陽乃「正解だよ八幡君。当然ここも建造物に関する事があるわね。特にこれかな?」

 

陽乃さんがパンフを取り出す。

 

パンフレット『現在の社殿は1607年豊臣秀頼によって造られ、本殿、拝殿、石の間、楽の間の合1棟、八棟造、権現造りと言われ、とても珍しい造りの社殿です』

 

建造された平安時代じゃあなく、安土桃山時代の建造物に興味を惹かれた訳ね。そして歴史も調べ直したと…。

ユキペディアになる位にはとことん調べ尽くした訳か。

いや、純粋に凄いけどね。

 

沙希「待たせて悪かったね。行こうか」

 

結衣「全然!ね!ヨッシー!」

 

材木座「うむ!」

 

雪乃「もう少し見ていきたかったのだけれど、今度はゆっくり来ることにするわ。では、行きましょうか。嵐山」

 

ぞろぞろと繰り出す俺達。

嵐山は京都の景勝地として知られる。

春の桜、夏の新緑、秋の紅葉、冬の雪化粧と四季折々でそれぞれの魅力を見せてくれ、かつ温泉もあるという、まさにこの国の良いところを詰め合わせたみたいな場所である。

嵐山までは京福電車で移動……といきたいところだが、今回は既に電車で移動中に襲撃を受けている。路面電車の時代かかった車体の旅情を味わいたかったが、いつものマイクロに乗り込む。

 

いろは「ちょっ!ハチくん!?何でずっとガッチリホールドしてるんですか!」

 

八幡「お前は今日は死にかけたんだ……絶対に離すか!」

 

いろは「いつも死にかけてるハチくんに言われても…まぁ、抱きつかれて嬉しいですけど……」

 

いろはの髪をすくように……その存在を確かめるようにナデナデする。

 

いろは「ん~~……たまには危険な目に遭ってみるものですね~……」

 

八幡「や、もう遭ってもらいたくないんだよな~……」

 

いろは「普段のわたしがそう思ってるんですけどね~」

 

危険な旅の途中だというのに今を楽しむかのようにまったりとした時間を過ごす。

………多分、ウルフスはこのままおとなしくしているわけがない。明日には俺達は千葉に帰る。千葉の待機組と分断されているこのチャンスを逃すとは思えない。

絶対にあと何回かは襲撃が来るだろう。だからこそ、今だけはいろはの存在を確かめたい……。

だが、楽しい時間というのはすぐに終わる。目的地の嵐山に到着したようだ。

バスを降りると、紅葉のモザイク壁画とグラデーションの山並みが見える。

ああ、なるほど。これぞ日本の自然の美と言うものか。邪悪の化身である俺ですら感動を覚えるくらいだ。

いろはも黙って感激している。

 

ジョセフ「……Oh my god……」

 

いつも騒がしいジジイですら声を失うほどだ。

一旦、渡月橋のあたりまで行き、オルゴール館など覗いてから、嵯峨野方面へと足を向ける。

人力車が威勢よく行き交い(気のせいかオインゴが引いてアンさんとボインゴが楽しく乗っていたような…)、やがてさまざまなお店が軒を連ねる通りへと繋がる。

ちょっとお洒落じみた感じの小綺麗な道々に、ファーストでジャンクな感じの食べ物屋が並んでいた。通りがかると香ばしい匂いに誘われる。

由比ヶ浜が。おいおい、今朝はあんな目に遭いかけたばかりだろう。

 

シーラ「我らがジョジョ。検疫は全て終わらせてあります。安心して飲食を……」

 

シーラさん、先回りして検疫していたのかよ…。本業を上司のフーゴさんに任せきりにして大丈夫なんですか?

 

結衣「わぁい♪」

 

由比ヶ浜がはむっとコロッケを齧り、唐揚げを食い、牛しぐれまんを頬張る。まぁ、お昼を食べてないから仕方ないよね?これが昼飯代わりみたいなところあるもんね。

俺達も普段は屋台ものを食えない関係で少しは買い食いをしているし。

その有り様を戦慄の表情で見ていた雪ノ下だったが、何か言わねばと思ったのだろう。

 

雪乃「夕食、入らなくなるわよ……」

 

三浦ばりのおかんみたいなことを言われた由比ヶ浜は、はっとした顔になる。それからおずおずと材木座にジャンクフードたちを差し出す。

 

結衣「え……、じゃあヨッシーにあげる」

 

材木座「う、うむ……」

 

モジモジモジモジ……

うん、甘酸っぱい。

 

小町「お兄ちゃん達が長年連れ添ったおしどり夫婦なら、結衣さん達は初々しいできたてカップルだよね……ごちそうさま」

 

うん。当然だろう。

 

八幡「小町はエンポリオにでも……」

 

陽乃「こーまっちちゃん!一緒に食べよ♪」

 

俺は小町とエンポリオを近付けるように促そうとするが、その前に陽乃さんが小町に今川焼を半分こにして食べ始めてしまった。

 

エンポリオ「雪乃。買いすぎちゃったから僕の分も食べてよ」

 

雪乃「え、ええ……す、少しだけなら……」

 

ああっ!陽乃さんのせいでエンポリオが小町にじゃあなく雪ノ下にジャンクフードを渡してしまったじゃあないか!エンポリオ義弟計画が!

だが、恥ずかしそうにハムッと頬張る雪ノ下の姿は珍しい。まぁ、義理の親戚同士の交流もたまには良いだろう。うん、そう納得することにしよう。

 

いろは「ハチくんも手伝って下さい♪はいっ」

 

むぐ。

いろはが俺の口に半分にした牛しぐれまんを口に突っ込んでくる。雪ノ下を微笑ましく見ていたから嫉妬でもしたのか?

 

八幡「出来ればいろはが口つけたところをだな…」

 

いろは「うわっ!間接キスをねだるなんてそれは流石にあり得ないんですけど。バカなんですか?普通にキモいんですけど……」

 

八幡「ぐふっ!」

 

酷い!いろは酷い!

各々が食べ歩きしながら嵐山の道を行く。

天龍寺へと入る道を曲がらず、さらに先へと進んでみることにした。

すると、左手側からざざっと風の通る音がする。

仰ぎ見れば、青々とした竹が鬱蒼と茂り、その葉を鳴らしていた。

いったい何本生えているのか見当もつかないほどに、長く、そして互いが肩を寄せ合うようにどこまでも続いていく竹のトンネル。

隙間から差し込む陽光は和らぎ、涼やかな音も相まって、小路全体にひんやりとした空気が漂っている。

嵐山の観光ガイドやテレビでも見かける、竹林の道だ。

道順そのものはシンプルこの上ないのだが、果てが見えないほどに立ち並んだ竹林に吸い込まれてしまいそうでこの道を迷宮のように仕立てあげている。

 

結衣「すごいね、ここ………」

 

八幡「ああ。ここならドンパチを仕掛けるには最適な場所かもな。特に迷宮系の能力なら使われてもわからないまである。ここでアルミラージが来なくて良かった」

 

静「確かに……ここで不思議の国のアリス(仮称)をやられていたら気がつかない内に殺られていたね……」

 

いろは「確かにそうですけど、結衣先輩はそういう意味で言ったんじゃあないと思いますよ?」

 

仗助「京都に来てからずっと戦いっぱなしだったからな……完全に頭がドンパチ脳になってるみてぇだぜ?」

 

ほんと、こうまでドンパチまみれだったのは千葉村からの平行世界騒動以来だよな。『ジョースターが旅に出るとドンパチに当たる』はもう諺にするべきだと思うまである。

ソースは俺。

これまでイタリアにしろアメリカにしろ平行世界にしろ、安全で終わった旅は一度もない。必ず1つか2つはドンパチがある。

 

結衣「なんだか恐ろしくなってきたよ……ヒッキーとスタッチのせいで……」

 

雪乃「由比ヶ浜さん。気を取り直して足元を見てはどうかしら?」

 

雪ノ下は柴垣にそっと歩み寄り、自分の足元を指さす。

 

八幡「灯籠か……」

 

雪乃「そう。夜になると、竹林自体もライトアップされるのだそうよ。1つの勉強になるわね」

 

静「建築の勉強に全てを注いでるね」

 

青白い竹林と暖色系の光を放つ灯籠。そのコントラストは夜の嵐山にさぞ映えることだろう。ちらほらと旅行雑誌で見た覚えのある光景が浮かぶ。

それは他の面々も同様のようで、由比ヶ浜なんかははしゃいだ様子でくるっと回った。

ちなみに空気を読まないものも約2名。当然、それは俺とジョジョだったりする。

 

八幡「めぐり先輩のシンデレラ・ハーヴェストなんかが潜むには最適のポイントだな……」

 

静「シンデレラ・ハーヴェストだけじゃあないよ。遠距離タイプのスタンドなんかは小さくして潜ませるのに最適かもね」

 

八幡「近距離型も小さくは出来るが、本体が近くにいないといけないから逆に俺達は使えないな」

 

静「アクトンで透明化すればいいんだから私がいる場合に限っては無用な潜伏作戦かもね」

 

結衣「また戦術の事を考えているし……」

 

沙希「しかもいつもの悪ふざけとかじゃあなくて、本気で考え込んでいるのが逆に質が悪いね……」

 

戸塚「既に修学旅行とか楽しんでないよ…この二人」

 

ぶっちゃけて言えばもうホントに対ウルフスのことしか考えていません。通算9回も襲われてるんだぞ?既に俺達にとってこれは学校行事じゃあなくてウルフスとの戦場として京都に来ている気分だ。

 

結衣「でも、夜のここって雰囲気が良いよね。ムードがバッチリって言うか……」

 

まぁ、恋愛脳に思考を傾ければそうなるかもな。

さっきから仕事脳になっていたけれど……

スッと俺はさりげなくいろはの手を握る。

 

いろは「…………」

 

いろはも満足げに笑って俺の手を握り返して来た。

見れば材木座と由比ヶ浜も手を握っている。

小町と陽乃さんももう吹っ切れたのかヒューヒューと囃し立てて来た。

 

いろは「みんながいますから、あまり派手な事をされると困りますけど、このくらいなら丁度良いですよ?」

 

結衣「そうそう、ヒッキーも少しは楽しまないと。まだ完全に治って無いんでしょ?いろはちゃんと触れあって少しでも回復しなくっちゃ!これも仕事仕事♪」

 

由比ヶ浜のクセにこういう時はもっともらしい事を…。

…………少しだけお言葉に甘えるとしよう。

 

←To be continued




はい、今回はここまでです。

修学旅行クライマックスもあとわずか。修学旅行編の最後を飾るのは偽告白のあそこです。

それでは原作との相違点を。

北野天満宮でお守りと合格祈願をするのは八幡→川崎

北野天満宮のスポットにユキペディア発動。建築に関することも加筆。

DIOが仏閣に苦しむ。実は毎回苦しんでいました。元ネタは『ケン○チ』の新島○雄

移動は電車→襲撃の予感を感じてマイクロ。イチャイチャ加筆。

感嘆の声を漏らすのは雪乃→ジョセフ

由比ヶ浜が食べ物を渡すのは雪ノ下と八幡→材木座

雪ノ下はエンポリオと、八幡はいろはと食べ物をシェアする。

竹林に感動する八幡→もう完全にアーシスとしての考え方しかできなくなっている。3日間で9回も襲われればそりゃそうもなりますわ……

由比ヶ浜が戸部の告白スポットとして提案する→依頼を受けていないので自分達がイチャイチャしはじめる。

それでは次回もよろしくお願いします。

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