sideトリッシュ・ジョバァーナ
いろは…。
あたしは戦いながら動かなくなったいろはを見る。
最初に出会ったのは10年前。新しいジョースターの家族としてジョルノが紹介して来たとき。
亜麻色の髪が特徴的なチャーミングな女の子だった。
今のジョースター家の始まりとも言えるジョナサン・ジョースターの妻、エリナ・ジョースターの転生と聞かされた時には度肝を抜かれたわ。
奇妙だとは思っても、あり得ないとは思っても、そういうこともあるかも知れないと思える。
あたし達スタンド使いはそう言うことが当たり前の日常を余儀なくされてるんだから。
そして接している内に彼女達がいる日常が当たり前になってきていた。
いろはは比企谷兄妹と比べると、比較的接しやすい相手だった。ジョースター特有の独特の価値観はあるものの、いろはは3人の中で一番普通の考えを持っていたからかもしれない。
あたしは3人の中ではいろはが一番好きだった。
そのいろはが……。
トリッシュ「こうまで来たからには、あたしはトリッシュ・ウナじゃあないわ。パッショーネのトリッシュ・ジョバァーナよ。一般の人達を巻き込むことになるけど。そんなものはもう関係ない!」
あたしはスパイス・ガールを伴って奴等に突撃をかます。いろはの死が、あたしから冷静さを奪っていた。
パッショーネはギャングだ。ギャングはそれこそ軍隊の兵士以上に死と隣り合わせの生活を送っている。
昨日お互いに笑い合っていた者が、翌日には無惨な死体となっていることなんてしょっちゅうだ。
ブチャラティ、ナランチャ、アバッキオ……彼らもそうだった。そんな生活を10年以上も送っていれば、涙なんてとうに枯れてしまっている。そう思っていた。
だけど、あたしの涙は枯れていなかった。家族の死。
いろははディアボロなんかとは違う、あたしの本当の家族だった。そのいろはの死は……予想以上にあたしから冷静さを奪うには充分過ぎた。
ライフタウン「……………」
杖も持った欧米系の男があたしをちらりと見る。そして、その杖を逆さに持ったと思ったら………。
トリッシュ「え?」
突然、空に向かってあたしの体が
トリッシュ「何これぇぇぇぇ!」
突然の事であたしは混乱する。あの男がスタンド使いというのは何となくだけど理解した。だけど、自分の身に何が起きているのかまるで分からなかった。
そして、建物五階分の高さまで持ち上げられると、上への落下が止まり、そして……今度は地面に向けて落とされる。
トリッシュ「うわあああああああ!」
五階分の高さからの落下。
空挺部隊の人間でも、この高さからの落下は助からない。無事でいられるとするならば、小町達波紋の戦士くらいのものだ。
やられた………いろはがやられたあの攻撃も、この能力を使った物だったんだ……。
操られている者の中に、スタンド使いがいることを視野に入れるべきだった……。いろは………ジョルノ……ごめん。
side広瀬由花子
由花子「トリッシュ!ラブ・デラックス!」
私は落下してきたトリッシュをキャッチしようと髪の毛を伸ばしてみるものの……
ドサッ!
間に合わず、トリッシュは地面に叩きつけられた。
小町「トリッシュお姉ちゃん!」
雪乃「トリッシュ姉さん!姉さんまで………うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
トリッシュまで……あの高さからまともに落とされては、普通なら助からない………。
種はわかったわ。あの杖のスタンド使いの仕業。あれがいろはちゃんやトリッシュを……。
よくも………よくも二人を………。理性では操られてやってしまった事だと理解は出来る。だけれど、理性ではわかっていても、それで大人しくしてられるほど行儀の良い性格はしていないの。
トリッシュは数少ない嫁友だったもの……。
由花子「このどぐされがぁぁぁぁぁ!よくもいろはちゃんやトリッシュをぉぉぉぉぉ!」
私がラブ・デラックスを伸ばすと、奴は杖を横に向けたわ。逆さにする余裕が無かったのね?今度は私が水平よりやや上に飛んでいく。
由花子「あたしにその攻撃は通用しないわ!この場所ならばねぇ!」
ラブ・デラックスで鳥居を掴み、落下を止める。伏見稲荷に無数にある鳥居。いろはちゃんに致命傷を与えたこの鳥居が、今度はあたしの命を救う事になるなんて…。
由花子「杖よ!杖を持っているあの男が操られているスタンド使いだわ!奴の能力は重力の向きを狭い範囲で任意に変える能力なんだわ!杖の傾けた方向が、対象にかかる重力を変える能力なのよ!」
それで岩を落としたり、トリッシュあの高さまでを持ち上げて地面に叩きつけたのよ!
side雪ノ下雪乃
小町「サンシャイン・ルビー!」
小町さんが波紋使いのあり得ないスピードであの欧米人に向かって走っていく。
小町さんだけに任せてばかりいられないわ。私だってトリッシュ姉さんや一色さんの仇を取りたいもの!
雪乃「エンジェル・ダスト!よくも……トリッシュ姉さんや一色さんをぉぉぉ!」
小町「え?雪乃さん……まさか本気で……」
冷静さを欠くなんて私らしくなかったわ。
本当に落ち着いて考えれば………。
ライフタウン「…………」
あの男が杖を横に倒す。
雪乃「しまっ……!」
波紋の技術で壁に立つことが出来る小町さんならばともかく、なりたての波紋の戦士である私では壁に立つことは出来ない。
そのまま私は真横に落下してしまう。その先には鳥居が!
静「………ったく。世話の焼けるっつーの」
透明になっていたジョースターさんが落ちる私を掴み、落下を止めてくれた。
静「頭を冷やせ雪ノ下。そこの鳥居で」
ジョースターさんは私を鳥居の方に向けて落とした。
ちょっと!確かにこのくらいの高さなら何とかダメージを受けずにしがみつけるけど、さすがに適当では無いかしらっ!?しがみつくのに失敗したら……。あら?私が鳥居にしがみ付いた瞬間、元通りに重力が働き、普通に地面に落下する。
静「イーハが最初に落とされた時を思い出せっつーの。奴の能力の射程は大体10メートル。射程外から出されたイーハはそのままただ真下に落下した。射程が無限ならば、イーハはその段階で終わっていた。トリッシュ姉さんは無限の空に吸い込まれていた」
………大した観察眼だわ。ジョースターさん。それが分かっていたら、一色さんは……
あら?そう言えば一色さんは……?私が今座り込んでいる場所は一色さんが……。
静「カモーン、種がわかっちゃえばあんたなんてコケコッコーのクックドゥドゥドゥだっつーの」
チキン野郎って言いたいのね?ジョースターさん。
コケコッコーって…。
ジョースターさんの手招きに反応したのか、男はジョースターさんを引っ張ろうと杖を横にする。
小町「小町を忘れてたらダメダメだよ?ニワトリさん」
小町さんが背後からしかける。同時にジョースターさんも攻めるけれど、相手が杖を逆さ持ちにする。
上に舞い上がる二人。ああ……二人同時に持ち上げられるなんて……これではトリッシュ姉さんと同じ結果になってしまうわ……。やっぱり相手を殺さずに倒すなんて無理だったのかしら……。
静「やっぱりそうなるね。だから、この戦いは私達の勝ちだよ。クックドゥドゥさん」
小町「やっちゃって!お姉ちゃん!」
え?
N・E「エクセスラッシュ!無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理!無理ぃ!」
ライフタウン「!!!!!」
この声は………一色さん!?
一色さん、生きていたの!?
いろは「ハチ君得意の死んだ振りですよ。あそこまで完全に致命傷をもらってしまえば、普通なら死んでいますからね。死んだことにしてしまえば、わたしは警戒されずに済みます。お忘れですか?即死、もしくは致命傷を受けた上で気を失いさえしなければ、わたしはいくらでも復活出来るんです。良い演技でしたよ?ジョジョちゃん」
静「なんのなんの♪騙されてたのはトリッシュ姉さんと雪ノ下だけみたいだったしね♪」
10メートルの高さなんて何でもない二人、ジョースターさんと小町さんが落ち着いて着地する。
波紋を極めれば本当に化け物よね。
小町「トリッシュお姉ちゃんも途中で気が付いていたみたいだよ?だって、おんなじように死んだ振りしてるもん」
え?トリッシュ姉さんも?
トリッシュ「なんだ。気が付いてたの?」
トリッシュ姉さんもむくりと起き上がる。
トリッシュ「とっさに地面を柔らかくしてクッションにしていたのよ。そこでそのまま死んだ振りをしてチャンスを伺っていたの」
……心臓に悪いわ。敵を騙すなら、まずは味方から…と言うけれども、作戦だとしても性格の悪いやり方ね。このやり方、嫌いだわ。実戦だから仕方がないとは思うのだけれども。
side一色いろは
時は私が致命傷を受けたところに戻ります。
いろは(エメラルド・ヒーリング!)
気絶してはダメです!気を失えばわたしは本当に死んでしまいます!
不意討ちをもらった怒りで正気を保ちつつ、わたしは自らを回復させました。
危ないところでした。やられたのがわたし以外でしたら、本当に死んでいたところです。
心臓をやられても、人間はすぐには死にません。意識だけはしばらく持つのです。脳をやられさえしなければ。
静「イーハ!」
ジョジョちゃんがわたしの容態確認をしに来ます。
いろは「大丈夫ですよ。ダメージが大きすぎてしばらく動けませんが」
ジョジョちゃんに声をかけますが、聞こえていないのか、ジョジョちゃんはわたしの首に手を当てます。
ジョジョちゃん?
静「良いから寝てろっつーの。しばらく動けそうに無いなら、死んだ振りして敵のターゲットから外れてて。いざとなったらイーハが切り札なんだから」
わたしが切り札?ああ、そう言うことですか。エクセス狙いですね?わたしへの不意討ちは明らかにスタンド能力。ならば、敵のスタンド使いと能力を見極めてエクセスを打ち込めば良いわけですか。死んだことになったわたしならば、ダメージが引くのを待っている間に見極めも出来る。その役目を託してくれたわけですね?
静「イーハ!ちっくしょぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
首を横に振り、大袈裟に喚いて嘆くジョジョちゃん。
相変わらずの抜群の演技力ですが……見ていると騙されてるのはトリッシュさんと雪乃先輩だけみたいです。マチちゃんと由花子さんは気付いたみたいですね。
たぶん、わたしでも気が付きます。本当にわたしが死んでいたら、今のジョジョちゃんならモリオン化します。
だからマチちゃんも由花子さんも冷静に、そして演技に便乗したんですね。
雪乃「……一色さん、もう誰にもあなたを傷付けさせない。あなたを必ず故郷へ帰すわ。あなたの美しい姿のまま……」
涙を流しながらわたしに言ってくる雪乃先輩。
ごめんなさい。雪乃先輩……生きてます。すごく心が痛みますねー。
今は演技中なので、ピクリとも動いてはいけません。我慢です!我慢!
そして戦いは激化します。次の犠牲はトリッシュさん。
でも、トリッシュさんも地面に激突する寸前でスパイス・ガールを発動。柔らかくした地面をクッションにしてそのまま寝た振りをしました。そこでうつ伏せに倒れたまま、わたしに目を向けてきます。
トリッシュ(アイコンタクト)(いろは。あんた、生きてるでしょ?)
いろは(アイコンタクト)(ですです。ジョジョちゃんからの指示です)
トリッシュ(横牛を片付けたら、説教よ。ホントに心配したんだから)
すると、透明になっていたジョジョちゃんがわたしに近付き、わたしを透明にし、寝た振りをしているわたしを引き摺り始めました。あの、痛いんですけと……。
もう誰もがわたしを気にしていません。空気になったわたしを透明にしてタイミングを見計らうつもりでしょう。そして、由花子さんが敵のスタンド使いを見抜きます。そして、雪乃先輩がわたし達の方へ落下してきます。そこでジョジョちゃんは雪乃先輩を掴みました。
これでバレましたね。ジョジョちゃんは自分の透明化を解きました。でも、わたしの透明化はそのままです。
そして、マチちゃんとコンビで相手に向かっていくジョジョちゃん。わたしを引き摺りながら。だから痛いんですってば!
そして、マチちゃんとジョジョちゃんが敵の攻撃に嵌まり、上に落とされようとしています。そこでジョジョちゃんは相手の足下にわたしを投げました。
相手が指定したもの以外は射程内でも能力にはまることはない。わたしが見えておらず、ましてやわたしが生きているとは思っていなかったのでしょう。敵の操られているスタンド使いの能力は、わたしには適用されませんでした。
ごめんなさい。巻き込まれた一般のスタンド使いさん。
エクセスはしばらく痛いでしょうが……死なない程度に免疫力を抑制しますので、我慢して下さいね?
止めは貰います!皆さん!
いろは「ナイチンゲール・エメラルド!エクセスラッシュ!」
N・E「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理!無理ぃ!」
ライフタウン「ぐはああああああああああああ!」
ライオット・ライフタウン(スノウ・パウダー)…
そして時は戻ります。
雪乃「相変わらずの性悪な作戦ね?ジョースターさん、一色さん……」
いろは「それよりも承太郎達です!まだ周りの雑魚を倒しただけなんですから!」
承太郎達は移動したのか、姿が見えません!
横牛を倒しに向かわなければ!
←To be continued
はい。今回はここまでです。
いろはが本当に死んだと思った方はいらっしゃいますか?
前回、わざと
一色いろは(ナイチンゲール・エメラルド)…死亡
を書かなかったので、死んだ振りだと気付いた方もいらっしゃるかと思います。
二度目のマンティコア戦でも
由比ヶ浜結衣(リバース・タウン)…
を書きませんでしたので、同じやり口だと思った方もいらっしゃるとは思いますが。
いろはという本作のメインヒロインを殺しやがった!本城のバカ野郎ーーーー!
と思った方、騙してごめんなさい。本城淳はこういう奴です。
例えばこういう事を現実でやる奴ですから。
同僚が机の上に財布を忘れて席を立つ。
本城が拾う。適当な雑誌、または失敗して印刷してしまった破棄書類を財布の上に被せ、財布を忘れた同僚が戻って来たときに……
本城「これ、いる?」
同僚「いえ、いりませんけど……?」
本城「本当に?」
同僚「いりませんってば」
本城「じゃあ貰うわ」
同僚「ええ。どうぞ?」
上の物をどかして財布を見せる。
本城「じゃ、毎度♪」
同僚「わぁぁぁぁぁぁ!いりますいります!返してくださぁい!」
本城「机の上に財布を放置すんなよー。危ないからなー」
という事をやります。
さて、次回は承太郎対横牛戦です!