side一色いろは
いろは「オラオラはやりすぎじゃあないですか?承太郎?わたし的にはむしろウェルカムだったんですし」
もう。一緒にお風呂くらいは良いじゃあないですか…。その為に水着も持ってきてるんですし……。
承太郎「何か言ったか?」
いろは「いいえー♪何も言ってませんよー?」
地獄耳……。
ただでさえ強面なんですからギロッ!っと睨まないで下さいよ。
承太郎「普段なら何も言わないけどな。一応、徐倫は総武高校の教師で今回の旅行の引率者だ。それも生活指導の役目も担っているからな。風紀を乱すのは親としても困る」
いろは「でもでもー、承太郎は高校生の頃はバリバリのヤンキーだったじゃあ無いですかー。自分が校則とか破りまくっていたくせに、風紀を乱すとかまったく説得力が無いんですけどー?徐倫だってレディースでヤンチャをしてましたしー、自分達の時には風紀を持ち出すとかあり得ないです」
承太郎「む……痛いところを突く……。だが、いろは。お前もエリナおばあちゃんだった時にはアメリカで教師をやっていたと聞いたが?」
むむっ!そう来ますか。
確かに晩年のわたしは……エリナ・ジョースターは看護師では無くて学校の教師をしていましたからね…。
もっとも………。
いろは「アメリカで修学旅行が行われるようになったのは1990年以降……つまり承太郎が大学卒業するかしないかの頃の話なので、わたしが教師の時代には修学旅行なんてありませんでしたので解りませーん」
承太郎「野郎………言っているのがお前じゃあ無ければ怒鳴り散らかしているところだぞ」
でしょうね。承太郎は本来、わたしみたいな性格の女の子が嫌いなタイプですものね。特に基本世界のイッシキ・イロハなんて一番苦手なタイプなんじゃあないですかねー?
取り敢えずハチくんを膝枕しながらエメラルド・ヒーリングです♪
八幡「ううー………ハッ!」
いろは「ハチくん?気分はどうですか?」
八幡「いろはの膝枕が最高すぎて天国にいる気分」
まぁ!ハチくんたらいけない人です。
これ以上わたしをキュンキュンさせてどうするつもりなんですか!
二人の顔がだんだんと近付いていき………
ガシィッ!
承太郎「少しは人目を気にしたらどうだ?ここは部屋の中じゃあなくて廊下だ。二人きりの世界を作り出すんじゃあない」
承太郎のお邪魔虫!良いじゃあないですか!相思相愛なんですから!
承太郎「それと八幡。総武高校はもうじき夕食の時間だろう。いろはとイチャイチャしていて食いっぱぐれても責任は持たないからな」
八幡「やべっ!ごめんいろは!また後で来るわ!」
いろは「はいっ!」
承太郎「オラァッ!」
ゴン!
承太郎がハチくんの頭に拳骨を落とします。
承太郎「どさくさに紛れて変な約束をしているんじゃあない。夜の自由時間は接触禁止だ」
八幡&いろは「チッ!」
承太郎「飯抜きで説教をしても良いんだぜ?オラオラ付きでな」
八幡「今すぐ飯に行ってきます!」
クルッ♪ダッ!
八幡「逃げるんだよォォォ!」
ハチくんは脱兎の如く逃げていきました。
承太郎「ヤレヤレだ。元々足は速いが、逃げ足は更に速い野郎だ。廊下は走るなと学校で教わっていないのか。アイツは」
承太郎は呆れ返ってため息を吐きます。そして、デスク付きキャンピングチェアーと書類ケースを持って立ち上がり、わたしの隣の客室のドアを開けました。わたしの隣の客室が承太郎の客室、更に隣の部屋が仗助の客室です。
ハチくんとジョジョちゃんの性悪コンビ対策の為にこの部屋割りになっちゃいました。
承太郎「あれだけお灸を据えたんだ。今日はもう、アイツは来ないだろう」
次に仗助の隣の部屋からジョルノが2つ、スーツケースを持って出てきました。
ジョルノ「代わりますよ。承太郎さん」
ジョルノはスーツケースをゴールド・エクスペリエンスでドーベルマンに変え、キャンピングチェアーに腰掛けます。
承太郎「時間にして後30分から一時間後だろう。静の野郎は必ず来る。八幡以上に厄介だからな、気を抜くんじゃあないぞ」
ジョルノ「分かっています。この犬は静の臭い以外には反応しないようにしました。外からの壁には蜂を配置しています」
うわぁ………。対策バッチリじゃあ無いですか。
確かにハチくん以上にジョジョちゃんの方が厄介ですからね。
御愁傷様です。わたしは十字を切ってから部屋に戻りました。昼間にたっぷり寝ちゃいましたから、眠れるでしょうか?
なお、一時間後にジョジョちゃんの悲鳴が廊下に響いたのは言うまでもありません。アクトンは姿は消せても匂いまでは消せませんから、ドーベルマンが反応したんでしょうね。
side比企谷八幡
大広間での夕食は実ににぎにぎしかった。
どうして高校生男子は修学旅行に行くと夕食でご飯をよそうとき、日本昔話に出てくるような盛り方にしちゃうんでしょうね?
おかげでこっちまで飯が回ってこなかった。仕方がない。俺は懐にしまってあるカロ○ーメイトを取り出して…………。
…………京都に来てまでこれは味気ないな。何か買って食うか。ご当地もののヤツ。
今頃、部屋では大麻雀大会が開かれていることだろう。夕食の席で昨晩の過ごし方が話題に上がり、どこの部屋でも誰かしら麻雀をやっていたらしい。
おかげで今日はその最強の座を決めるのだそうだ。俺は参加権が無いけどね!
今部屋に戻ると、たぶんその麻雀退会の余波に巻き込まれ、風呂に入れまい。
ならばしばらく戻らなくても良いだろう。
俺は小腹を満たすために、ふらっとホテルの外へ出た。
由花子「どこへ行くのかしら?八幡君?」
八幡「飯ですよ。小腹が空いてますんで」
由花子「あら。夕飯の食事が足りなかったのかしら?」
八幡「ええ。後の人の事を考えずにご飯をバカ盛りする奴が沢山いたんで、最後の俺まで回って来なかったんで」
由花子「それは災難ね。でも、今ホテルを出たら怒られるんじゃあないかしら?」
八幡「幻影の波紋で姿を消して行きますよ」
何でそもそもこの人が俺を見張ってるのん?
由花子さんは髪をユラユラ揺らして俺を見据えている。顔は穏やかだが、これは豹変寸前だ。扱いを間違えると大変な事になる。
由花子「祇園とかには行かないのよね?」
八幡「何でわざわざそんなところに行かなくちゃいけないんですか。適当なコンビニで済ませますよ。ウルフスに襲われでもしたら終わりですし」
そうだ。
ウルフスの事を考えたら……。
八幡「由花子さん。一緒に付いてきて貰えますか?一人で出歩くのは危険ですので」
由花子「ええ。良いわよ?夜遊びの監視にもなるから」
おいおい。信用ねぇな。
八幡「………康穂を振ったんです。あんな素晴らしい娘を袖にしたのに……いろはがいなければ、あの娘と未来を歩んでいた俺が、見ず知らずの女と夜遊びをするとでも思いますか?」
俺の心はとっくの昔に決まっていた。いつかはハッキリさせなければならない事だった。それが今日だった。それでも、心に痼が残らないわけじゃあない。
ジョルノは言っていた。みんな囲えば良いと。噴上さんのようにハーレムを作ってしまえば良いと。
だけど、それは俺の心が許さなかった。
多分、何があっても友愛、家族愛以上の感情は康穂にも、小町にも、陽乃さんにも持つことはない。
みんな素敵な女の子達であるのはわかっている。俺には勿体なさすぎる女の子達だ。だが、異性として…恋愛対象として…下品な言い方をしてしまえば性欲の対象として見ることが出来る相手は……いろはだけなんだ。
噴上さんは三人の女性に対して本気で愛を向け、分け隔てなく接しているからこそ、成り立っている関係だ。俺にはそれは出来そうにない。
あの妹の小町は論外としたって、あの3人を振るのは可哀想だとか、そんな表面的な事を言ったってそれは本当にあの三人の為にはならない。一時的に傷つくのを見たくない為だけの欺瞞。結局は自分の為だけに相手の心を踏みにじるただの偽物。
それでも良いなんて言っていたけれど、いろはしか見れない俺の近くにいたのでは、いつか破綻する。本当の意味で彼女達を失う事になるだろう。
ならば、こうしてハッキリさせるべきだったんだ。もっと前に……。
大人ぶったって、悟りきった気になったって、蓋を開けてみれば俺もまだまだ子供だった。クソッ!
前世を間違えたから、今度こそは間違えない…そう思っていたのに、気がつけば間違えているじゃあないか。情けない…。
振った俺がこうなんだ。振られた康穂は……。
由花子「………康穂を出されては信用しないわけにはいかないわね。気にすることは無いわよ。いずれはこうなることだったのよ。大丈夫。今のあの子は強い子だから。八幡君達と関わって、黄金の精神を持った強い子だから。すぐにいつもの康穂に戻るわ。心配いらなかったわね。八幡君なら、いつかこうしてハッキリさせると信じるべきだったのよ。いろはちゃんも、安心ね」
八幡「俺にはいろはしかいないんです。そんなことはとっくに答えが出てました。今日までそうしなかったのは、単に俺が弱かっただけなんです。知ってますか?ぞっこんなのは、むしろ俺の方なんですよ。エリナは…半世紀以上も俺がいなくても頑張っていけましたが、俺は無理です。いろはがいなければ、俺は耐えられません」
そんな俺だと知っているからこそ、聖女エリナの転生であるいろはは、一緒にいてくれる。俺がいろはを縛り付けているようなものだ。
いろは「うんうん♪そうですかそうですか。ハチくんはわたしがいないとダメですか。ぞっこんですか」
八幡「い、いろはっ!」
由花子さんの体の中からいろはがバシュンと現れる。やられた……ココ・ジャンボか。
いろははガッシリと俺に抱きつき、うっすらと涙を浮かべている。相変わらず最高に可愛いじゃあないか。
由花子「良かったわね?いろはちゃん。八幡君の口からハッキリ聞かされて」
いろは「はい……ハチくん?わたしもぞっこんなんですよ?ハチくんに負けないくらいに……」
癒される……。ありがとうな?いろは。こんな俺に付いてきてくれるなんて。
由花子「それじゃ、行きましょうか。コンビニに行くのよね?ココ・ジャンボの中に入っていけば、見つかることは無いわよ?幽霊が一人、居座ってるけどね」
ポルナレフ『仕方がないだろう?私はこの中でしかこの世にいる術は無いのだ。八幡、いろは。おどろおどろしくて申し訳ないが、中に入ると良い。お茶も出せない殺風景な場所ではあるがね』
殺風景だなんてそんな……。高級サロンのように良い場所じゃあ無いですか。ポルナレフさんの遺体が冷凍保存されているカプセルが異彩を放ってるけど。
それに、こんなユニークな幽霊なんてまずいないですよ。
ミスター・ブレシデントの中に入り、高級感が漂うレトロなソファーに俺といろはは腰を落ち着かせる。
ポルナレフ『陽乃との関係を清算したんだってな』
八幡「ええ。そう言えばポルナレフさんは……」
ポルナレフ『ああ。陽乃の前世、アヌビス神と戦った。奴は強かったし、私自身も油断して乗っ取られ、承太郎に助けられた。今となっては懐かしい思い出だよ。陽乃が味方になったから、そう思えるようになったのかも知れない。五年前、アヌビス神が仲間になったと聞いたときは正直警戒したものだがね』
ポルナレフさんは少し懐かしむような目で天井の出入り口の外を眺めた。
ポルナレフ『陽乃か……思えば互いにゆっくり話す機会が無かったな。リゲイン・ジェムストーン事件でも、互いに別々の世界に行ったしな。この旅行でゆっくり話せれば良いが……』
ポルナレフさん?
ポルナレフ『多分、そう遠くない内にお別れの時がやってくる。ココ・ジャンボは頑張って生きてくれているが、もう間もなく寿命が訪れるだろう。いつまでジョルノが日本に滞在するかわからないが、陽乃と雪乃…二人とゆっくり話したいものだ』
八幡「寂しい事を言わないで下さい。陽乃さんや雪ノ下には伝えておきますよ」
気休めだとは分かっている。ココ・ジャンボもそろそろ寿命の時が近付いている。亀は長生きだと聞くけれど、旧パッショーネ時代にジョルノの手に渡り、十四年。
元々の年齢は分からないが、相当の高齢であることは確かだ。
それに、ジョルノの話では細胞からスタンド能力ごと複製することが可能だそうだが、ポルナレフさんはこのココ・ジャンボと共に成仏するつもりらしい。
死人がいつまでも現世に留まっているのは自然の摂理に反する……だとか。
ポルナレフ『めぐりの前世、杉本鈴美もそうだっただろう?私は十分に幽霊として留まり続けたのだ。もう充分だ。生きていれば陽乃も雪乃も放ってはおかなかったがね』
ハハハハ………。そう言えばポルナレフさんはホルホース程では無かったにせよ、女の子が大好きでしたね。
素敵な女の子を見付けて口説かない男はパリシャンじゃあ無いとか。二人とも絶世の美女だからな。
ポルナレフ『放ってはおかないと言えば、アヴドゥルや花京院の転生もだな。特に優美子は良い女だ。あの娘は怖がられていると聞くが、その本質はその名が示す通り、優しく美しい子だ。姫菜の面倒を見ている姿なんて特にな。総武高校の生徒達は見る目がない。私が死んでいなければ、絶対に口説いていただろう』
八幡「一度殺されかけているんでノーコメントで。確かにポルナレフさんの言うことには同意ですがね」
いろは「ハチくん?」
八幡「いてててて!つねるな!」
頬を膨らませたいろはがももをつねる。
いやいや、仲間としての客観的な意見だよ!
おかんモードの三浦は良い女だろ!
八幡「仲間としての率直な意見だって!実際に強いし、頼りになるし、面倒見が良いし!他意はねぇって!」
面と向かって言えば、キモがられるから普段は言わないだけだよ!
あー痛かった………。
由花子「八幡君、いろはちゃん。外に出たわよ?」
さて、腹ごしらえ腹ごしらえっと。
←To be continued
はい、今回はここまでです。
原作との相違点は八幡が一人でコンビニに出かけるところをいろは、由花子、ポルナレフと一緒に出かけた事くらいですね。
それでは次回もよろしくお願いいたします。