やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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じわじわと戦力が削られていくアーシス。
無事に修学旅行を終わらせる事が出来るのか!
原作七巻も折り返し!
逆を言えばまだ修学旅行編はまだ半分!
どうなる!?アーシス!


虎の子渡し

side静・ジョースター

 

海老名「で、さきさきが枕投げで本気出しちゃって、ジョジョっちと優美子が切れちゃってさー。本気で部屋を壊しかねなかったよ……」

 

沙希「それ、言わなくても良いでしょ……」

 

海老名「宮ヶ瀬さんとか丹沢さんも泣き始めちゃったじゃん……わたしまで空条先生の拳骨もらったし」

 

うん。あれは我ながら大人気無かった。騒ぎを聞き付けて駆け込んできた徐倫お姉ちゃんにまとめて拳骨もらっちゃった。

でもさ、さりげなくエメラルド・スプラッシュを混ぜて枕投げしてきたのがそもそもの原因じゃん。

 

結衣「孫悟空に襲われている間、そんなことをしていたんだ」

 

静「だって半分はいなかったしさ。まさか外に出ていて襲われるなんて思わないっつーの」

 

仗助「オメェらよぉ……少しは普通にしてくれよ。特にジョジョ。おめぇは中学の時までは普通に過ごして来たんだからよぉ。何で今年に入ってから普通に出来なくなってるんだよ」

 

あれ?普通だったかな?

 

結衣「いや、普通じゃあ無かったから。時々おかしかったから」

 

ですよねー。

窓から出入りしたり……特に三階とか。

でも、最近はよりカオスになってきてるような気がする。まぁ、ウルフスの件が終わったら単位が取れ次第、学校からは姿を消すことになるだろうし、はっちゃけられるのもそれまでだと思うしなぁ…。

 

戸塚「枕投げ、恐ろしそうだね。男子でも禁止かな?こっちは麻雀してたりウノをやったりしたけど。あ、八幡が負けたのにジョルノさんに連れていかれたりさ」

 

ジョルノ「何も八幡は言わなかったしね。大丈夫かと思っていたんだ」

 

陽乃「ジョルノ兄さんに言われたら付いていくしか無いじゃん……」

 

ホントだよ。まぁ、ハッチが行かなければ相当危なかったという話だけど。相当綱渡りの状態だったらしいし。

昨日の夜の事を色々と話ながらバスは仁和寺までのミチを進んでいく。

油断している訳じゃあ無いけれど、どうやらこの京都はドンパチの連続が宿命付けられているらしい。

それならばつかの間の移動の間だけでも普通の旅行を楽しみたい。

 

天の声『ジョースター家が乱入している段階で既に普通の旅行からはほど遠いだろ!』

 

キングクリムゾン!

 

仁和寺と言えば、教科書でよくお目にかかる『徒然草』第五十二段に出てくるうっかりハゲで有名の仁和寺だ。

失礼?私、クリスチャンだし。

ここは秋よりは春の方が人気スポットだと思う。春には桜が一面に咲き乱れる。そこにウキウキしてくる辺り、私は育ちはアメリカだけど、血は日本人だよね。

晩秋の今の時期でももちろん観光客はいるし、寺も庭も見所はある。私達アメリカ人からしてみたらオリエンタルなこの雰囲気に圧倒されるのだが、生粋の日本の高校生からしてみたらその限りにあらず。

みんな「すごいねー」「ねー」「なんかほんとすごーい」という会話しかしていない。映画村のような分かりやすいアトラクションじゃあないと楽しめないのかも知れない。

ほら、地元にいるとその観光スポットの光景が当たり前で、その素晴らしさが中々分かりにくいって言うじゃん?日本人にとっては日本の文化の素晴らしさが当たり前っていうか……。

といっても、私だって人生の半分は日本で生活しているので昔ほど寺社の詫び錆びについて真新しさを感じていることは少ない。そういうのを感じているのは雪ノ下の方だろうね。

結局は何が言いたいのかと言うと……。特に仁和寺についてはあまり深い知識があるわけでもなし、徒然草だねぇ……というのと、平安時代に建てられ、応仁の乱で一度焼失したということ位しか知識がない。さらにその時に別の場所に建て直され、再度江戸時代にも場所を変えているのだとか、御本尊様は昔からの物だとか……うん、そんなところかな?

ひとしきりお堂や庭を見て回ると、ジョルノ兄さん夫婦以外のメンツに漂い始める「そろそろ良いんじゃあない?」って感じの雰囲気。

それを敏感に感じ取った由比ヶ浜が皆を促す。

 

結衣「んじゃあ、次行こう!」

 

ジョセフ「そうじゃな。ここでの襲撃もなさそうじゃし、次の龍安寺にでも行こうじゃあないか」

 

ジョルノ「そうですね。彼女も待ちくたびれているかも知れません」

 

一部を除いて出るときの方がみんな元気って…。皆が由比ヶ浜に続いて仁和寺を後にした。

パパがいったとおり、次は龍安寺だ。辰のウルフスに襲われたばかりだから、あまり気は進まないけど。

仁和寺から龍安寺までは歩いて10分。

道なりにてくてく歩き始める。

紅く色づいた葉が、はらりと舞う。

集団行動の時、特にこう言った戦いが前提の時の波紋の戦士は背後からの襲撃に備えて一番後ろを歩いていると、先行していたはずの由比ヶ浜が徐々に速度を落としてきて、気付けば並んでいた。

背後は危険だぞ?由比ヶ浜。

 

結衣「なんかさぁ。うまくいかないよね?あたし達は普通に修学旅行を楽しみたいのにさ」

 

少し落ち込んだ様子でぽりょりと呟く。由比ヶ浜が言っているのは修学旅行にちゃっかり参加しているパパ達の事なのか、それともウルフスの事なのか…。

 

静「敵はこっちの都合なんか関係ないからね。パパ達がいて助かったと言うか……」

 

結衣「ホントだよね……。最初はさ、学校の修学旅行に付いてくるなんて正気を疑ったんだけどさ。まさかこんなに敵が襲ってくるなんて思わなかった……」

 

静「それに、戸部も不運だよ」

 

結衣「……だね」

 

戸部の依頼を受けていなくて良かった。

ハッキリ言って、依頼どころじゃあない。

元々可能性は低い。戸部の生来のキャラクターもあるけれど、海老名の眼中に戸部が入っていないこともあるけれど、これだけ連続で敵襲が出てると、それどころではない。

巻き込まれている戸部は本当に不運としか言いようがない。

 

静「まぁ、戸部の事は優しく見守ろう」

 

結衣「スタッチが優しくって言うと裏がありそうで怖いんだけど」

 

悪かったね。性悪で。

話ながら歩いていると、前の方でパパ達が待っていた。どうやら龍安寺の前まで来ていたらしい。

拝観受付を済ませて敷地内に入っていくと、大きな池が見渡せた。鏡容池というらしく、敷地面積のおよそ半分をしめていて、平安の貴族達がここで舟遊びに興じていたらしい。

参道沿いには竹で編まれた垣根が設けられ、石段を上っていく。

方丈と呼ばれる、まあひらたくいえばお堂なわけだが、そこへ入っていくと、いよいよロックガーデンこと石庭とご対面だ。

枯山水。

水を使わず、石とかでそれを表現する庭園様式のことである。

この白砂が水面をあらわしているのかな?岩の同心円なんて波紋っぽいし。

これを見ると、空条家の庭を枯山水にしてみたいなんて思ってしまう。波紋の一族にはぴったりだし。

やめとこう。空条家の庭はあれはあれで味があるからなぁ。ホリィお姉ちゃんに頼んだらノリノリでやっちゃいそうだけど。

歩いて……というよりは、度重なるドンパチで疲れたのか、みんな座ってぼーっと石庭を眺め始める。私もそれに倣ってよっこらせっと端の方に腰かけようとする。

すると、横の人がちょっとスペースを開けてくれた。ああ、これはどうもなんて手刀切りつつ軽い会釈をして隣に失礼すると、声をかけられた。

 

雪乃「あら、奇遇ね」

 

我らが仲間、雪ノ下雪乃である。

 

静「枯山水の勉強?」

 

雪乃「ええ。龍安寺の枯山水は見事よね。とても勉強になるわ」

 

相変わらず勉強熱心なこと。

見ればお連れさんとおぼしき清楚系、というよりはおとなしそうな感じの女の子の一団が並んで座っている。私の方を意図的に一切見ない態度が居心地悪いんだけど。まぁ、噂のジョースターと雪ノ下の取り合わせというのもなかなか奇妙だろう。なんならそのまま冒険に連れてくよ?

 

雪乃「比企谷くんは?」

 

静「承太郎おじさんとイーハ、ヤッチに任せて太秦に置いてきた。あのままじゃあ危険だったから」

 

雪乃「そう……。それだけレクイエムの副作用が酷かったのね……」

 

「レクイエム?麻薬?」ヒソヒソ

「あの性悪コンビならあり得る?」ヒソヒソ

 

静「あ?」

 

雪乃「あの男ならやりかねない雰囲気があるけど、そうではないわ。一種の病気よ。だって私の兄がそういうのが大嫌いだもの。そんなものをやったら殺されるわ」

 

うん。間違いなく殺されるね。比喩でもなんでもなく、本気で大西洋に沈められるね。

 

「雪ノ下さん、お兄さんがいるの?」

 

雪乃「いいえ、兄のように慕っている親戚よ」

 

「え?カッコいいの?」

 

雪乃「とても厳しいけれど、素敵な方よ。あそこにいるあの金髪の人がそうよ」

 

「ど、独特な人だね…。確かにカッコいいけど…。あれ?一緒にいる人って雪ノ下さんにそっくり……」

 

独特で悪かったな。

 

雪乃「あれは私の実の姉よ」

 

雪ノ下の班員はジョルノ兄さんと話している陽乃さんを見て「カッコいい……」「あれが噂の雪ノ下さんのお姉さん……」「あの二人……すごいお似合いの美男美女よね…」とうっとり眺める。さらにパパを見ては「すごいダンディーなおじ様……」と言い、お兄ちゃんを見ては「東方会長も渋いしカッコいい…」と言い、「葉山君もあの中で引けを取ってない……すごい」とか言ってる。ふふん、我がジョースター家は美男美女揃いだからね。ハッチも本当なら目以外はそれなりにイケメンなんだけどね?

 

ジョルノ「Piacere di conoscerti(初めまして)。僕は雪乃の親戚のジョルノ・ジョバァーナ。雪乃の事は妹のように思っている。いつも雪乃が世話になっている」

 

「は、はい!ゆ、雪ノ下さんは私達の憧れで…」

「お、お世話になってるのは私達の方で……」

 

雪ノ下は総武高校のカリスマ的な存在だ。だから崇拝する対象にされることがよくある。

 

ジョルノ「熱心にここを見ているけど、何故だい?」

 

雪乃「虎の子渡しの庭、という別名があるのよ」

 

ジョルノ「どの辺が虎なのか、わからないな……」

 

うん。昔調べた事がある気が……。それに、虎かぁ。新学期が始まるときも昨日もマンティコアが襲って来たから印象が悪いんだよねぇ。

 

雪乃「虎は、3匹の子供がいると、そのうち1匹は必ずどう猛で、子虎だけで放っておくと、そのどう猛な子虎が他の子虎を食ってしまう。そこで、母虎が3匹の虎を連れて大河を渡る時は次のようにする。母虎はまず、どう猛な子虎を先に向こう岸に渡してから、いったん引き返す。次に、残った2匹のうち1匹を連れて向こう岸に行くと、今度は、どう猛な子虎だけを連れて、ふたたび元の岸に戻る。その次に、3匹目の子虎を連れて向こう岸へ渡る。この時点で元の岸にはどう猛な子虎1匹だけが残っているので、母虎は最後にこれを連れて向こう岸へ渡る、という中国の説話なの。この石の配置がそれを現しているから、そう呼ばれているそうよ」

 

すごっ!雪ノ下すごっ!

 

「雪ノ下さん…すごい…」

 

雪乃「建設の事を勉強するにあたって、当然枯山水の事は勉強するわ」

 

ジョルノ「なるほど。ましてやここはその異名があるから是非とも来たくて、調べたんだね」

 

虎も猫科だから?

 

雪乃「そしたらこの枯山水を大河に、石を虎や小虎に見立ててその情景が浮かんできて……クスクス…♪」

 

陽乃「成る程ね。勉強が実を結んで、旅行も楽しめてるわねー♪旅行って、本来はそういうものだから、全力で修学旅行を楽しんでるねー♪雪乃ちゃん♪」

 

すごいな……。そういう深い楽しみ方をするなんて。この枯山水を作った人はそれを意図したんだろうか?

虎の子渡しという名前を付けた人は、それを想像していたんだろうか?雪ノ下と同じような情景を浮かべていたんだろうか?

言われて見ると、私もその情景が浮かんできた。

白く敷かれている波打つ石が川に…所々に置かれている岩が虎……虎に変わっていない岩は中州…。

それらが川を渡っている虎の姿へ変わり、何往復もする情景が浮かぶ……。

すごいな雪ノ下。一緒にいた全員がその世界に引き込まれていく。

作った人や名付けた人と意識をシンクロできる…。

思考の究極到達点に達する。

コレが究極の観光……。

 

エンポリオ「……楽しい時間だった。この場所には美しい石庭というイメージしか無かったのが、まるで動物のドラマでも見ているような気分になった。ありがとう、雪乃」

 

エンポリオがキラキラした目で雪ノ下を褒め称える。雪ノ下は今まで見たことの無いような良い笑顔をエンポリオとジョルノ兄さんに向ける。

なんか、兄と弟をいっぺんに取られた気分だよね……。

でも、確かに楽しかったよ。雪ノ下。

 

←To be continued




はい!今回はここまでです。

原作との相違点。

移動は2台のタクシー。葉山、三浦、戸部、海老名の車と八幡、由比ヶ浜、戸塚、沙希→ジョースター家のバスで、八幡は不在

枕投げは沙希が本気を出して三浦を泣かせた→三浦と静まで本気になった

仁和寺についての知識を加筆

雪ノ下は虎の子渡しの知識は乏しい→枯山水の事を勉強していた際に知識を得た。将来の目標を見据えた上の勉強から更に修学旅行を楽しんでいる

それでは次回もよろしくお願いいたします!

追伸!
今年もロックフェスの祭典、ラブシャ(sweet love shower)が当たったぜー!
去年は最終日、今年は二日目ですが……。きゃりーぱみゅぱみゅを今年も見たかったですが……。去年はONE OK ROCKやキック・ザ・カン・クルー、きゃりーぱみゅぱみゅ、あいみょんとか楽しめましたが、今年はどうなりますかね?
それでは!

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