side相模南
戸部「はっ!」
葉山「大丈夫か?戸部」
戸部「隼人くん、俺、どうしたん?」
葉山「脅かされて慌てていたんだろ?転んで頭を打って気絶していたんだ」
東方会長は一般人である翔くんにはそういうことにして事件の事を誤魔化す事に決めたらしい。
流れとしてはまずアーシスの人達を治療、次に役者さん達を治療、最後に翔くんを治療。
役者さん達にはジョジョちゃんが催眠を施して何事もなかったように記憶を弄くって、その間に壊れたあちこちを東方会長がクレイジー・ダイヤモンドで直す。
防犯カメラの方も財団の力でなんとか誤魔化すらしい。映画村が契約している警備会社も財団の傘下という事でどうにかすることが出来たのだとか。
戸部「隼人くーん!ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいやびゃあ!お化け達がジェイソンのように襲ってくる夢みたんだよー!」
翔くんが隼人くんに抱きついて泣きながらまくしたてる。
海老名「ぐへっ♪」
姫菜ちゃん……。いつも通りで安定だね。
静「ちっ!催眠が甘かったか……」
催眠って………。
いつどこでやられてるかわからないね。うちも気を付けよう……。
結衣「あたし、こういうの本来は苦手だったんだけどさ。昨日からリアルホラーの連続だったから、何かお化け屋敷が怖くなくなっちゃったし………」
わかるよ……結衣ちゃん。
スタンド使いの戦いってさ。何っていうか、完全にホラーのそれだもんね。
いきなり群衆がゾンビのように襲って来て、何度倒しても復活してくるなんて、洋物ホラーじゃん。和風ホラーのお化け屋敷なのに内容は洋物ホラーって…。
戸部「え?え?え?みんな何で平然としてんの!?何で俺だけ怖がってんの!?」
うん。ごめんね。
こんな作り物なんかよりもさっきまでのリアルホラーの方が何十倍も怖かったからさ。もうアトラクションとして楽しむことも出来ないっていうか…。白けちゃったっていうか……なんかそんな感じ。
翔くんってさ……。何か全てが裏目に出ちゃってるよね。完全にうちらに巻き込まれてるんだけどさ。
仗助「ま、まぁ、その分よぉ、戸部はお化け屋敷を存分に楽しめてるってことで良いんじゃあねぇか?童心をいつまでも忘れねぇってことは素晴らしいじゃあねぇか」
海老名「うんうん!ホントにそうだよ!男の子同士で距離感ないって童心はいつまでも大切……あだ!」
スパーン!
優美子ちゃんのスリッパが姫菜ちゃんに見事にヒットする。優美子ちゃん、もうツッコミ用に持ち歩いているんだね。
確かにどこでスイッチ入るか分からないけどさ。
静「お化け屋敷の幽霊なんて怖くないよ。怖いのは意思を持つ人間じゃない?」
結衣「出たぁ、スタッチのひねくれ。安定の女ヒッキーだよ。ウルフスが出てくる前なら頼りになったけど」
ジョジョちゃんが持論を展開すると結衣ちゃんが呆れたような声を出す。
葉山「そうかな。俺はあっさり何事も無かったように裏まで後始末をするジョースター家の方が怖いけど」
結衣「あー、それある」
静「誉めちゃいやん♪」
空条先生がいたらゲンコツ落ちてるよ?ジョジョちゃん。
そんな事を言いながら先に進むと、お化けが「ぶるぅ」とか言いながら飛び出してきた。ジョジョちゃんがビクゥ!とかなって何か大袈裟に転倒。
ポロ
え?手首が切断され……
静「キャアアアアア!手首が!手首がぁ!痛い!痛いいいいいい!」
ジョジョちゃん!また新しいウルフス!?
相模「ワァァァァァァ!ジョジョちゃん!」
仗助「落ち着け。いつもの事だ」
手首が切断されるのがいつもの事のワケがないじゃん!何で落ち着き払ってるのよ!
静「私の手首が……手首が……ある!私の手首がある!」
良くみたら転がった手首はゴムで出来たオモチャだった。本物の手首はジョジョちゃんのアクトン・クリスタルで透明にしていただけだったみたい。
静「いやぁ♪肝試しとか人が脅かし役をやるお化け屋敷に入ったら1度はこれをやらないと♪」
脅かして来たお化け役を逆に脅かし返して楽しむとか性格わるっ!しかも小道具まで用意してあるとか!やはり静・ジョースターのお化け屋敷の楽しみ方はまちがっている!
トリッシュ「静……。ねぇ、これどうすんのよ」
トリッシュさんが声をかけてきたのでそっちを見ると…お化け役の役者さんが泡を吹いて気絶していた。
確かにジョジョちゃんの痛がり方の演技、かなり上手だったからね……。役者さんが罪悪感に押し潰されて気絶しちゃったよ………。御愁傷様です。
スパァァァァン!
優美子ちゃんのスリッパがジョジョちゃんの頭にヒットした。
三浦「ジョジョ。オメェも性悪を自重しろし…何であーしがあんたのツッコミまでしなくちゃならねーし」
激しく同意。空条先生ぇぇぇ!早く戻って来てぇぇ!
必要なのは見回りよりもジョジョちゃんの見張りだよ!絶対に!
海老名「被害はあっちにもあるよ?」
姫菜ちゃんが指を指すと、慌てた結衣ちゃんと隼人くんがジョジョちゃんに駆け寄ろうとしてお互いの頭をぶつけたみたいで、結衣ちゃんは頭を押さえて踞っているし、隼人君もかなり痛そうにしゃがんでいる。
葉山「っつー…………」
結衣「いったぁ………」
二人とも本当に痛そう。
結衣「ごめん……」
葉山「いや………これはジョースターさんが悪い」
隼人くんは少し怒ってる。
静「あー……これは想定外。いつもなら身内は誰も驚かないから……」
ジョジョちゃんは二人の頭に手をおいてさする。
多分、波紋の治療をして痛みを和らげてるんだと思う。
静「痛くなかった?」
結衣&葉山「超痛かったんだけど……」
普段だったら結衣ちゃんも隼人くんも気にするなとか言うけれど、これは事故とかじゃなくて完全にジョジョちゃんのイタズラのせいだもんね。まったく……。
三浦「ほら結衣。掴まりなよ。一緒に行こう」
結衣「優美子……ありがとう」
優美子ちゃん……相変わらずおかん!
結衣ちゃんははにかみながら優美子ちゃんの手を取って立ち上がると、「えへへ~」と優美子ちゃんと手を握りながら歩き出した。
姫菜ちゃんは「性別が逆ならおいしいのに……」とかいつもの発作が起きていた。
あ、今なら……。
相模「隼人くん、大丈夫?立てる?」
うちは隼人くんに手を差し出す。うちもせっかく戦いで勇気を出せたんだから、その勇気を戦い以外でも振り絞らないと。
葉山「ああ……ありがとう、南」
隼人くんはうちの手を握って立ち上がった。立ち上がると隼人くんはすぐに手を離しちゃった……。名残惜しいなぁ……。
と、うちが残念に思っていると、隼人くんの手がうちの頭に置かれた。
葉山「南。聞いたよ。さっきは凄い活躍だったってね。助けてくれてありがとう」
相模「う、うん………うちにもやれたよ。隼人くん」
葉山「ああ……。自慢の仲間だよ。南……」
かぁぁぁぁぁ………。
顔が熱い。うちは自分の顔が真っ赤になってるのが分かる。
勇気を出して良かった……。戦いでも、今も……。
葉山「行こう、南。置いていかれちゃう」
隼人くんはまたうちの手を握ってみんなを追いかけた。何かすごい幸せ……。戦いは大変だったし、怖かったけど……。
あれ?何かを忘れてるような。
トリッシュ「結局、どうするのよ……この人……」
ジョルノ「放っておいて良いんじゃあないか?静に脅かし返されて気絶するくらいの役者じゃあ、目がないよ」
トリッシュ「それもそうね。BYE-BYE、チャオ」
お化け役の役者…役者として
side静・ジョースター
ー出口ー
結衣「お、終わった……疲れた………」
三浦「結衣、お疲れ。ほら、ベンチまで頑張って」
結衣「優美子、ありがとう……」
三浦「ホントはヨシオの役割だろうけど、この場にいねーから、あーしで我慢するし」
結衣「ううん!いつも面倒見てくれて優美子には本当に感謝してるよ!我慢なんてとんでもないよ!」
仲が良いなぁ。
由比ヶ浜はふらふらとベンチを求めて歩き出し、三浦がそれを支える。
本当に頑張ったよ、由比ヶ浜。
職員「ちょ、ちょっと!そこの君!役者を目指す気は無いか!?」
静「ん?」
映画村の現場の監督らしき人が声をかけて来た。
職員「お化け役を脅かし返したあの演技力!埋もれたままなのは惜しい!うちの従業員にトラウマを植え付けたのは思うところがあるけど、そんな事はどうでもいい!是非とも東映でその演技力を!」
仗助「すごいですよね?うちの妹の演技力は」
お兄ちゃんが私を庇うように前に出た。
職員「す、SPWジャパンの東方仗助社長!ではこちらは噂の才女の静・ジョースターさん!?」
静「静・ジョースターです。初めまして」
職員「い、いやしかし、今日はSPW財団の視察があるなんて聞いていないのですが……」
仗助「今日はプライベートですよ。私も別の視察も兼ねた家族旅行で、妹は修学旅行です。だから変に畏まる必要はないですよ」
確かにお兄ちゃんは口調をよそ行きに変えて対応する。この辺りの切り替えは余裕だ。
職員「そ、そうですか。いやはや静・ジョースターさんのお噂はかねがね……」
静「酷い噂ばかりですのでお恥ずかしい限りです」
どうせ碌な噂じゃあないでしょ?青ざめてる顔がそう言ってるよ。
職員「いえいえ!そんな事は……。ただ、うちの職員にトラウマを植え付けるのはちょっと………」
静「あらあら、これは失礼を。プライベートでしたので羽目をはずしすぎてしまいましたわ♪あまりに楽しかったものですから♪オホホホ」
天の声『オホホホじゃあない!』
職員「そ、そうですか……何故あのような……」
静「趣味ですわ♪」
職員「そ、それは……ご高尚なご趣味で……我々には少々ばかり理解し難い趣味ですが……」
やかましいっつーの。
仗助「では我々はもうよろしいですか?妹の友人を待たせていますので」
職員「あ、お時間を取らせてしまって申し訳ありません。どうぞ今後とも東映太秦映画村…しいては東映グループをご贔屓に」
これ以上、うちらとは関わりを持ちたく無かったのか、係長らしきお化け屋敷の人は去っていった。お兄ちゃんがいてくれて助かったー。多いんだよねー。難癖つけてスカウトしてくる奴。イヤンなビデオの出演とか。
仗助「たくぅ。気を付けろよ?お前は大事な俺の…」
そこでお兄ちゃんは顔を赤くする。
て・れ・や・さ・ん♪
静「ありがと……お兄ちゃん」
仗助「いつもそう、カワイければ良いんだけどよぉ」
静「え?お兄ちゃんの前ではいつもカワイイ妹じゃん?」
仗助「八幡と揃えば途端に性悪になるだろうが…始末に負えねぇよ。あのバカ…」
いやぁ、それが趣味だし♪
天の声『イヤな趣味だな!』
仗助「おや?あれはジジイ達か?どこに行ってたん…いや、ありゃあ……戦闘があったな。服が結構ボロボロだぜ。あっちにもウルフスが現れたのか。この旅行…気ぃ引き締めねぇとその内犠牲が出ちまうぜ…」
パパ!マーチ!大丈夫なの!?
静「パパ!大丈夫!?」
見るとパパが一番疲労が強そうに見える。
ジョセフ「大丈夫じゃ。レクイエムはちとキツかったがのう」
レクイエム!?あれを使った後の疲労感は知っている。
高齢のパパが使ったのなら……。
静「パパ!何だってそんな無理をしたの!?」
ジョセフ「そうでも無ければどうしようも無かったんじゃよ。辰のヒュドラは……。それに、カッコ付けたかったんじゃよ。孫同然の小町の前でのぅ。リサリサ先生に見直して欲しかったんじゃ」
小町「………カッコ良かったよ。ジョセフ」
バカ!それでハッチみたいに砕けたら大変どころの騒ぎじゃなかったじゃん!
仗助「カッコ付けてたのかよ。相変わらずだなぁ?ジジイらしいけどよぉ」
ジョセフ「お前らに誇れる父親でいたいからのう」
キョトンとする私とお兄ちゃん。
仗助「ワザワザそんな事アピールするんじゃあねぇよ。ジジイ」
ジョセフ「ワハハ……今さらじゃのう。ワシは情けない姿ばかり見せてきたからのぅ」
パパが少し落ち込んでる。
葉山「東方会長……それはちょっと……」
結衣「待って。隼人くん……。違うよ?見てて…」
葉山がお兄ちゃんにつっかかろうとするのを由比ヶ浜が止める。
仗助「まったくだ。ジジイ、今さらなんだよ。何年親子をやってるんだっての。今さらカッコつけなくたってよぉ、俺はジジイがカッピョいいのは知ってんだよ」
お兄ちゃんが私の肩を抱いて引き寄せる。え?何?嬉しいけど、何で私を引き寄せたの?
仗助「こいつと初めて会ったあの時から、ジジイはカッピョ良いってのは知ってたんだよ。今よりもずっとヨボヨボで、杖が無ければ満足に歩けなかったあの時でもよ、こいつを助けるために命を張って、死ぬかも知れない真似までしちゃってよ」
お兄ちゃんはパパを引き寄せて、私との間にいれる。
仗助「自慢の親父じゃあねえかよ。気付いてたか?あんときから、俺はジジイをジジイって呼んでいたのをよ。出会った時は俺やお袋を何年も放っておいた奴だと思って、ゼッテー親父なんかと思うかって思っててよぉ、生涯ジョースターさんって呼んでやるって思ってたんだぜ?それがよぉ、あんなカッコ良いところを見せられてよぉ。ジジイって呼び方はよぉ、承太郎さんと一緒で信頼と甘えの感情を込めてるんだぜ?ジジイ」
そうだよ。私も自分の出生を知って、ジョースター・コンプレックスに悩んでいたときは、もうパパなんて呼べない。本当の娘じゃあないんだって悲しかった。だけど、命を張ってまで私を助けてくれたって知ったときは…やっぱりこの人がパパじゃなきゃ嫌だっておもったもん。パパはカッコいい。それは生涯変わらないよ。
お茶目なところもあるけどね。
仗助「それが今さら改めてカッコなんかつけなくたってよぉ。俺は……いや、俺やジョジョ、それにここにいる誰もがジジイがカッピョ良いってのは知ってるんだぜ。今さらカッコつけるんじゃあねぇよ。ジジイ」
決めるなぁ、お兄ちゃん。思わずウルッてきちゃったよ。
結衣「そうですよ!ジョセフさんはカッコ良いです!」
三浦「前世でも知ってたし」
戸塚「若いときからカッコ良かったよ。ジョジョ」
葉山「心配いらなかったかな……これは」
相模「素敵な親子だよね……ジョセフさん達って…」
仗助「それによ、八幡だってそうだぜ?俺達歴代ジョジョ全員に対してアイツはなついて『さん』付けせずに名前を呼び捨てする生意気な奴だけどよぉ、その中でもジジイは別格なんだぜ?俺達と同じようにジジイ呼びしてるところが、甘えてる証拠なんだよ。アイツもな」
あ、お兄ちゃんも気づいてたんだ。ホント、おじさんもお兄ちゃんもハッチも、素直に甘えられないよね?
葉山「あのヒキタニの失礼なジジイ呼びにそんな甘えが込められてるなんて…。聞いてみないとわからないものだね」
ふふん?ビックリしたでしょ?ああ見えてハッチはパパに対しては結構甘えてるんだよ?
ジョセフ「ふふふ……ワシがカッコ良い?ハリウッド俳優みたいにシブイじゃと?ガァハッハッハッ!そりゃ誉めすぎじゃ!仗助!」
コレが無ければね。そのすぐ調子に乗るところはマーチ風に言えば、静的にポイント低い……かな?
相模「ああいう人だったんだね……ジョセフ・ジョースターさんって……」
ジョセフ「おおっ!南よ!聞いとるぞ!お前さんも今回は大活躍じゃったらしいのぅ!?大したものじゃ!お前さんも、もう立派に仲間じゃな!今後も頼りにしておるぞ!南!」
相模「うちが……立派な仲間……ぅぅ……ぅぐ……ひぃぃぃぃん……」
相模がパパに誉められて泣き始める。
ジョセフ「へ?ワシ、何かいけないことでもいったかのう?」
三浦「喜んでるんですよ。ジョースターさん。私やポルナレフが尊敬する二代目ジョジョに認められたんですから」
ん?三浦が私?あーしじゃあなくて……。
ジョセフ「……優美子や……今、喋ったのは…アヴドゥルか……?アヴドゥルなのか?」
三浦「はぁ?ジョースターさん、あーしは前々からアヴドゥルの転生だって言ってたっしょ?今さら何を言ってるんだし」
三浦の口調は元に戻っていた。
ジョセフ「そうじゃったな………一瞬でも会えて…嬉しかったぞ……アヴドゥル……」
三浦「ちょっ!何を言ってるし!しょっちゅう会ってるじゃん!ちょ、どうしたの!?ジョースターさん!ねぇちょっと!」
混乱する三浦。まだ嬉しそうに泣く相模。
あーあ、カオスだよね。
あれ?海老名は?
お土産屋さんの方に目を向けると、海老名と戸部が新撰組グッズの所にいた。戸部も頑張っているようだが……お前、マジでそれがいいの?
海老名「ぼ、木刀……はぁ、はぁ……」
………………海老名。
最近は病気が加速してない?
さっき再起不能になったばかりだよね?
もうちょっと……こう、何かあるんじゃあないの?
戸部「木刀かー!たけー!」
戸部………お前も気持ちの切り替えが早いな……。
何だか異様に疲れた私達だった。
色々とぶち壊しだよ!
←To be continued
はい、今回はここまでです。
ここで映画村編は終わりです。
次は龍安寺編ですね。
さて……次回も。
いろは「もしもーし!」
はい?
いろは「わたしたち、置いていかれてませんか?この流れだと置いていかれていますよね?」
…………それでは、次回もまたよろしくお願いいたします。どジャアアァァァン!
いろは「待って下さい!本城じゅううううううううん!」
承太郎「やれやれだ………」