やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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真実をも手駒にする戦いの年季

side比企谷小町

 

ヒュドラは撤退した……でも、それはヒュドラの本体だった男が撤退しただけ。まだ小町達はヒュドラのスタンドの中にいる。

あのヒュドラは能力だけじゃあない。狡猾で頭が回る。

出てきたのは気紛れか、それとも小町達の力を直接確かめに来ただけ。

その気になったらどんな事をしてくるかわからない。

 

沙希「くっ!このままではいつかやられる!」

 

棘の攻撃や落とし穴とかの攻撃は未だに続いている。

沙希さんの言うとおり、いつかは小町達がやられる。

手持ちの食糧はいつかは尽きるし、何より絶え間なく続いている攻撃の嵐によって精神がやられる。

ウルフスのヤバさは解っていたけど、ヒュドラはそのなかでもやっぱり別格だよ。

 

ジョセフ「………この空間から逃げ出す事は出来んのかのう?どこかに弱点はあるはずなんじゃ……。完璧な能力など、どこにもありゃあせん」

 

そうは言ってもさ……現状で打つ手が無いじゃんか。

入り口はバリアで守られてるし、壁や天井、床もサンシャイン・ルビーをもってしても破壊できない。

どこかに弱点があるなら、とっくに弱点を見極めてるよ。

 

ジョセフ「………これを持ってきていて正解じゃったな」

 

ジョセフは懐からそれを取り出す。それは……

 

小町「矢!?まさか……レクイエムを……」

 

ジョセフ「現状でこの事態を打破できるのは、これしか思い付かんのでな。問題は………誰が使うかじゃ」

 

このメンバーの中にはレクイエム・キャリアはいない。

お兄ちゃんはお姉ちゃんと一緒だし、ジョルノお兄ちゃんとジョジョお姉ちゃんは結衣さん達と先に行ってしまった。

だとしたら……ここは小町が……。

 

小町「貸して!ジョセフ!」

 

小町はジョセフから矢を取り上げてサンシャイン・ルビーに刺してみる。

だけど………

 

小町「すり抜ける……何で!?」

 

小町は強く願ってる!レクイエムを使うと心の友底から思ってるのに!

 

ジョセフ「無駄じゃよ小町。お前さんはまだ至っておらんのじゃ。レクイエムがサンシャイン・ルビーを拒んでおるのじゃよ」

 

陽乃「じゃあわたしが!」

 

陽乃さんがアヌビス神に試して見るけど……。

やっぱりすり抜けてしまった。レクイエム化出来ない!

何でなのさ!小町達の何が気に入らないんだよ!レクイエム!小町達にだって覚悟はあるはずなのに!何でなのさ!

戸塚さんでも、沙希さんでもレクイエムは拒まれてしまっている!今が必要なのに!今こそレクイエムが必要なのに!

 

ジョセフ「………拒まれて当然なのじゃ。何故なら、現状ではお前さん達はレクイエムに頼りきっている。そのような精神では、レクイエムは応じてくれる事は無いんじゃ」

 

ジョセフは小町達から矢を奪い返す。

 

ジョセフ「小町や………もしかしたら死んでしまうかも知れんから……その時は仗助達によろしく伝えておいてくれ」

 

小町「ジョセフ………何を………」

 

ジョセフ「レクイエムは危険じゃ。ザ・ジュエルのあの悲惨な状態を見たじゃろう。一番レクイエムに慣れとる八幡ですらああなってしまうのじゃ。もはや完成されきってしまっておるワシが使うのは、命その物を使ってしまうかも知れん。それくらい、危険な物なんじゃ」

 

わかってるよ……。だから小町だって……。

 

ジョセフ「小町や。今、お前さん達がレクイエムに拒まれておる理由は、真実に到達するまで至っておらんのもあるかも知れんが、まだその時じゃあないからやも知れん。もし、そうならばじゃ。ここでレクイエムを使うべきは……」

 

ジョセフはハーミット・パープルを出現させる。

ジョセフが………使う?

 

ジョセフ「カッコつけさせてくれんか?戦いの年季のジョセフ・ジョースターの、命を懸けた生きざまを、大切なリサリサ先生やツェペリさん、陽乃にスピードワゴンのじいさんに見てもらいたいのじゃ。特にリサリサ先生の転生である小町とスピードワゴンのじいさんにな。あのどうしようもないジョセフが、ここまで成長したという生きざまを見てもらいたいんじゃ」

 

ジョセフは優しい瞳で小町達を見る。

そんなの………そんなの……

 

小町「カッコ良いよ!リサリサにとっても素敵でじまんの息子だよ!だから……変なカッコを付けないでよ!死ぬ覚悟なんて、ここじゃあ要らないよ!」

 

ジョセフ「じゃが、現状ではワシしかおらん!」

 

小町「ジョ……ジョセフゥ……うう……」

 

小町は、あまりの無力感に涙が止まらなかった……。

 

sideジョセフ・ジョースター

 

泣かんでくれ。小町や。

死ぬかも知れんという覚悟が決まっただけで、犬死にするつもりなど到底ないわい!

ワシのレクイエムの能力はわかっておる。

真実の投影。

これが状況の打開に繋がるハズじゃ!

ワシのハーミット・パープルの能力成長は既に限界に達しておる。スター・プラチナどうように、これ以上成長をすることは無いじゃろう。したがって、ワシが真実に到達することは恐らくはない。

歳は取りたく無いものじゃな。もう少し精神的に若ければ到達できたやも知れんのにのう。

1つのスタンドのレクイエムでも、支えきれずに八幡のように砕けるやも知れん。

じゃがな、希望は捨てんぞ?ワシがしぶとく生きておるのは、何もウルフスが現れたからだけじゃあ無いんじゃ。

是が非でも、静や八幡達の子供を見て、この手で抱くまで生き抜いてやるのじゃ!

その為ならば、どんな手でも使うんじゃ!ワシをなめるじゃないぞ!?レクイエム!

 

ジョセフ「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

小町「ジョセフゥゥゥゥゥ!」

 

ワシは……矢をハーミット・パープルに刺した!

刺さったぞ!さぁ、ドンと来いじゃ!意地でも耐え抜いてやるぞ!

 

 

sideレクイエム

 

やれやれ……無茶をするものだ。限界まで成長したハーミット・パープルをレクイエム化させるとはな。

さて、真実の投影。これでジョセフ・ジョースターは何をさせるつもりなのか……。

ザ・ジュエルでハーミット・パープル・レクイエムの能力はわかっているのだが、これで何をさせるつもりなのか全くわからん。

 

ジョセフ「……………」

 

やはりジョセフ・ジョースターは真実には到達することは叶わなかったか。完全に意識を私に乗っ取られている。

む?

ジョセフ・ジョースターは携帯と呼ばれる物に何かを念写していた。文字………?

 

レクイエム『……フ、フハハ………フハハハハ!』

 

小町「何がおかしいのさ!レクイエム!」

 

レクイエム『おかしいさ。真実には到達出来ずとも、流石はジョセフ・ジョースターよ!真実に到達出来ずとも、私を操作することは叶わずとも、こんなことを考え付くとはおもわんわ!』

 

私はハーミット・パープルをストーン・フリーのように編み上げて紫の人形スタンドへと変化する。

 

レクイエム『なるほど!真実の投影は、隠された物を見るという解釈も出来るか!考えたな!ジョセフ・ジョースター!』

 

私はこの空間に隠された物を見る。

見えた!

 

レクイエム『浮かび上がれ!ヒュドラの隠した物よ!』

 

私は一見何もない空間に茨を伸ばす。

 

ヒュドラ『ギャアアアア!』

 

そこには巨大な黄金の球体が浮かび上がる。

ジョセフ・ジョースターはこう考えていた。自らの体内に比企谷小町やジョセフ・ジョースターを取り込んだ以上は、そのどこかに弱点は必ず存在する。

ヒュドラは入り口にバリアを張っているだけで無く、その弱点にもバリアを張っているはずだと。

ハーミット・パープル・レクイエムならば、それを見破れるはずだと踏んでいた。

さらに………

 

ジョセフのメモ『奴は常にそこにバリアを張り続けられるのか?それは非効率的じゃ。そして、全体を守れるのか?それならば既にこの空間全域にバリアを張っておるハズじゃ!そうはしないということは、何らかの弱点があるハズじゃ!それを見極めろ!真実の投影ならば出来るハズじゃ!そして、みんなを上手く使うんじゃ!』

 

私に指図するか………。ジョセフ・ジョースター。

分かっている能力の、更なる応用を考えるか!真実に到達できなくとも、ある意味で私を使いこなすか!

 

レクイエム『ハーミット・パープル・レクイエム!』

 

私は比企谷小町、川崎沙希、戸塚彩加、雪ノ下陽乃の体の一部に茨を巻く。

 

小町「な、何を!何をするんだよ!レクイエム!」

 

ジョセフ「コォォォォ……」

 

ジョセフ・ジョースターの本体に波紋の呼吸をさせ、私の体に波紋を通す。そして、操る波紋で四人を操る。

 

ジョセフのメモ『みんなを使え!ワシ自身すらも!』

 

散々驚かせてくれたお礼だ。ジョセフ・ジョースター。

ここで期待に応えねば、究極の力と言われた私の沽券に関わる。

 

戸塚「か、体が勝手に!ホール・シンクス!」

 

沙希「好きに操られるか!レクイエム!」

 

小町「サンシャイン・ルビー!」

 

陽乃「アヌビス神!」

 

ふ………それが狙いだ。三人よ。ジョセフ・ジョースターの策略に見事に嵌まったな。

私は更に4本の茨を出して四人のスタンドを拘束する。スタンドを取り押さえてしまえば、本体共々スタンドを操れる。ディアボロがトリッシュに対してやったようにな。

 

レクイエム『これもジョセフ・ジョースターの狙いだよ。なるほど……ウルフスが第1に倒すべき存在だと危険視するのも頷ける。この私すらも策に取り組むとはな。この存在をここで失うのは惜しいものだ』

 

戸塚「ホール・シンクスが勝手に!」

 

パコーン!

 

沙希「パパウパウパウ波紋のカッター!あ、あたしが波紋で操られるなんて!」

 

陽乃「く、ジャンプさせて何をさせる!」

 

3人に龍玉を攻撃させる。バリアを展開させる為に…。

 

小町「でも、小町は何で動かさないのさ!」

 

それはお前がやはり切り札だからだよ。サンシャイン・ルビーがな。

さぁ、真実の投影よ………バリアの穴を見極めろ!

ジョセフ・ジョースターの目論見どおり、展開されたバリアは全周囲を覆っている。

だが、完璧ではない。穴は確かに存在した。ナノレベルで人間の目には見えないわずかな穴。

こんな小さな穴を抜く方法はあるのか?

正解は『ある』。

そしてその手段はジョセフ・ジョースターが編み出していた。川崎大志との戦いで披露したジョセフ・ジョースターの幻影の波紋の更なる応用、レンズの反射理論を幻影の波紋で代用する手段。

 

小町「サンシャイン・ルビーの指先が………勝手に!」

 

その指先の先に、茨の輪を展開する。

バリアの綻びは、直接では狙えない。反射を複雑に繰り返し、その上で狙える位置にある。

 

レクイエム『ルビーレーザー』

 

ピッ!

例え光速のレーザーでも、私にはその軌跡を見ることが出来る。

反射の波紋の繰り返しが、私の描くレーザーの反射を正確に描き、目標の位置へと導く。

だが、このままではまだ太い。そこで私はジョセフ・ジョースターの描いた策に、更に色を付けることにする。

レンズは光を反射させるだけなのか?

否、更に収束させる力を持つ。

波紋のレンズを通過し、レーザーは更に収束し……

そしてナノレベルの綻びの穴を通過する!

レーザーは龍玉を貫き、そして更に自らのバリアでレーザーを乱反射させ、内側で何度も龍玉を蜂の巣にする。

 

ヒュドラ「何が起きたのです!私のバリアが破られるなんて!う、う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

レーザーの光は光速の槍。収束され、射抜かれた光は目に見えない。

ヒュドラはおろか、私以外の誰にも何が起きたのか理解できないだろう。

ジョセフ・ジョースターよ。レクイエムが終わり、意識が現実に戻った時………驚くが良い。

お前の更に上を行った私の力を………。

さらばだ、ジョセフ・ジョースターよ。

次に会ったとき、再びお前との勝負を楽しみにしているぞ?

私は食えないこのジジイに対し、畏怖の念と敬意と…そして確かなライバル意識を持ってレクイエムを終わらせる。

これだから面白い………。

 

sideジョセフ・ジョースター

 

ジョセフ「ハッ!」

 

カラン………

矢の落ちる音が甲高く響く。

生きておる……。ワシは死ぬことも、魂が砕ける事もなく、自分の足で地を踏んでいた。

上手く行ったようじゃな……。レクイエムはワシの描く策を実行してくれたようじゃ………。いや、それを更に応用しおったか……。

真実に到達しておらぬ者がレクイエムを発動したときはその記憶は残らない。

残らないはずなのに、レクイエムはわざとその記憶をワシに残して去っていきおった。

ワシに対するささやかな意地とでも言うのじゃろうか。

 

ヒュドラ「く………今回は私の敗北です……ですが、次はこうは行きませんよ……ジョセフ・ジョースターさん。改めて思い知りました……DIOよりも、空条承太郎よりも、東方仗助よりも、エリザベス・ジョースターよりも………やはり、真っ先に倒すべきはあなただ!あなたこそ、一番危険な存在!次こそは必ずあなたの首を取ります!その首を洗って待っておくことです!ジョセフ・ジョースター!ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

ガラガラガラガラ!

龍玉が崩れ落ち、空間が歪む。

ワシは急いで矢を回収した。無くしてしまっては事じゃからのう。

ヒュドラを倒した事により、ワシらは吐き出される。

そして………

 

ジョセフ「ぬおおおおおお!」

 

気がつけば、ワシらは噴水の恐竜から吐き出され、浅い池の水の中に座り込んでいた。

ダメージこそ少なかったものの、恐ろしい相手じゃった。矢を八幡から受け取っておって正解じゃったわい。

 

承太郎「ジジイ………陽乃……小町……お前ら、良い歳をして池の中に入り込んで何やってんだ?公共の場の池の中で水遊びは止めとけ。身内としては恥ずかしい」

 

二人きりを邪魔したく無かったのか、気分転換なのか、外に出て池の畔にいた承太郎が呆れた表情でワシらを見ておった。

いつもそうじゃ。苦労して敵を倒してもオチはいつもこうじゃ。

 

ジョセフ「割りに合わんのう……」

 

小町「大丈夫。小町達だけはジョセフのカッコいい所をしっかりみたよ。ジョセフおじいちゃん♪」

 

戸塚「僕も」

 

沙希「悔しいけどあたしも」

 

陽乃「流石は、ジョセフだよね♪」

 

ふ……うれしいものじゃな。孫同然の者に誉められるのは。

 

ジョセフ「うひひひひっ!どんなもんですかい!ワァッハッハッハッハッハ!」

 

小町「誉めると付け上がるところがなければ、ホントにカッコいいんだけどね……」

 

戸塚「それよりも早く上がろうよ。風邪をひくよ?」

 

そうじゃな。やれやれ……疲れたわい。肉体的にも精神的にもな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

sideヒュドラ

 

私は恐竜のオブジェにしがみつき、身を潜めていました。

甘いですね。あれはあの空間を維持するだけの装置のようなもの。私のスタンド本体だと勘違いし、しっかりと私を倒さなかったのは迂闊としか言いようがありませんね。

まぁ、そう思わせるように演出したのですが。

しかし、ジョセフ・ジョースター。やはり彼は危険な男ですね。

そして………

 

?????「こっぴどくやられたみたいだね。ヒュドラ」

 

ヒュドラ「フェニックスですか。助かりました。私の再生能力では、この傷の再生は時間がかかりますからね」

 

フェニックス「えー?僕に治させるの?」

 

ヒュドラ「その方が手っ取り早いですので……」

 

フェニックス「仕方ないなぁ。永久に感謝しなよ?」

 

エリザベス・ジョースターのルビーレーザー。あれも相当な物です。危うく偵察でやられてしまうところでしたよ。この私が孫悟空のように全力を出さずにやられてしまっては、笑い話にもなりませんからね。

 

フェニックス「じゃあ、今度は僕が遊んで来て良い?」

 

ヒュドラ「止めておいた方が懸命ですよ。あなたではやられないにしても、返り討ちに遭うのが落ちです。それに、彼らは私の獲物です。横取りは許しませんよ?ああ、また彼はやられたようですね。これだから……」

 

私の偵察を兼ねた足止めすら、無駄にしますか。

私は飛んでいく奴の魂を見て、呆れ返ってしまいました。東方仗助だけでもせめて始末出来れば良かったのに…。

私はフェニックスを伴い、現場を撤退しました。

 

ヒュドラ(私以外の者に敗れないで下さいよ?ジョセフ・ジョースター、エリザベス・ジョースター)

 

伊勢崎黄金(ヒュドラ)…撤退

武山武司(フェニックス)…撤退

 

←To be continued




はい、今回はここまでです。

ジョセフのレクイエムと、それを手玉にとる様を描いてみましたがいかがでしたしょうか?
もう完成しているであろうハーミット・パープル。
それをいきなり制御できほど、レクイエムは甘くありません。
ですが、ジョセフがレクイエムに良いように操られるなんて姿も想像出来ませんでした。何がなんでも周囲を驚かせてきたジョセフですから。
行き着いた結論がこれです。
ジョセフとレクイエムの勝負……という形ですね。

それでは次回は一方その頃?です。

それでは次回もよろしくお願いいたします。


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