side比企谷八幡
2年F組は普段からわりと騒がしい部類のクラスだ。その主たる要因は学年でもトップカーストにいるであろう葉山隼人のグループがクラスの中核にいるからだと思う。そして最近では注目されている相模南もだろうか?活発な彼らが集まれば自然と笑い声がこだまし、明るい笑顔が咲き誇る。
そんな我がクラスがまた一段と騒がしかった。
原因は修学旅行のグレープ決めである。LHRの一時間を割り当てられているが、実際、班決めにそんな時間はかからない。
普段から仲良くしている連中は一瞬でぱっと固まることが出来るからだ。では、何故一時間も取られているかといえば、それはボッチへの優しさ故であり、拷問でもあるからだ。どこと組めば良いのかキョロキョロするための一時間だ。
中学時代までは俺もそうだった。大抵の行事はジョジョと組むわけだが、修学旅行となるとそこは男と女。本人達はかまわなくても周囲がそうはさせない。だから適当に余ったグループに入れさせてもらうしかない。
高校の場合は少し違った。まずは女子。三浦、海老名、相模のいつもの3人組。そしてジョジョ、由比ヶ浜、川崎のグループに相模グループのメンバーが一人ずつ入る形だ。そうなればアーシス女子グループと相模グループのメンバーが自然と同じ行動をするようになる。
一方で、俺と戸塚の方にも変化があった。せめてテニス部の誰かがいればなぁ……的な事を言っている所に、最近ではそれなりに俺達に馴染みがある奴が話しかけて来た。
葉山「やぁ、ヒキタニ」
戸部を引き連れた葉山だ。
八幡「いつものメンバーはどうしたんだ?」
葉山「たまには君達とも交流を持ちたくてね。メンバーがまだだったなら、混ぜてくれないか?」
珍しいこともあるものだ。確かに最近はアーシス関連…というよりは相模とウルフス関連で放課後に顔を合わせることは少なくない。それに、葉山病院への技術提供のストップも千葉村を最後に止めた……というよりは、葉山病院は財団の傘下に落ち着いたしな。それに関する事で何かと相談を受けている。
八幡「依頼なら受けんぞ?」
俺は戸部に対して一言釘を刺す。
なしくずし的に受けることになっていたなんて事は御免だからな。
戸部「いやいやいやいや、それはもう頼まねーっつーか、東方会長の友達の話を聞いたら頼む気なくなるっつーか……自分から頼んでおいて何だけど、無かったことにしてほしいわー」
戸塚「それは懸命な判断だね。上手く行くのも多分拗らせるよ?八幡達じゃ」
それ、仲間に言うことじゃあ無いよね?
葉山「半分は純粋に俺がヒキタニと行動したいんだ。ほら、色々と世話になってるしね」
まぁ…確かに文化祭以来はそれなりに裏で行動を共にすることは多いし、互いに秘密を共有し合っている仲だけどさ。後の半分は何だよ。
葉山「まぁ、協力はしないけれどもチャンスだけは与えてあげられないか?このグループに入れば、必然的に姫菜との接点は出来るから。後は自力で何とかするってことで」
まぁ、それは構わない。いくら仲間だとは言ったって、海老名の交遊にまで口を挟む権利は無い。戸部が海老名にアタックするのを阻止する権利はない。
八幡「まぁ、こっちもあと二人、適当な所に混ぜてもらうつもりでいたから、知らない仲じゃあないお前がいてくれるのは助かるけどな。ただ……」
戸部「ただ?」
八幡「海老名は俺達の仲間だからな。海老名が嫌がる素振りを見せたら、流石に俺も止める」
たまに別の意味で怖いけど、それでも未来の親戚だ。花京院典明には、俺も借りがある。3年前に別の平行世界の本人とも約束したしな。
いくつかのグループが決まりだし、中には大和と大岡のグループも決まっていた。気楽なお喋りタイムに突入しているらしい。
いつぞやの事件の時が嘘のようだ。
戸部「わかってるよ。比企谷くん。チャンスをくれるだけでも、感謝するよ」
戸部がいつになく真面目な表情と、口調で俺に礼を言ってきた。
ゾクリ………。
イヤな気配を感じて背後を振り返ると……。海老名が腐の呪い満載でこちらを見てきていた。最近のマイブーム、ハヤハチを妄想しているのだろう。
本気でやめて欲しい。
三浦はそれを感じ取って、スイッチをオフにするためにいつものスリッパで頭を叩く。
席が近い川崎も、ホントにどうしようもないらしく、深くため息を吐いていた。
戸部……お前の想い人はあれだぞ?
ついでに言えば、まがり間違って結婚でもすることになったら、俺も親戚付き合い確定なんだけど?
まぁ、良いけどさ。別に戸部が嫌いって訳じゃあないし。千葉村では色々あったけど、あれは肉の芽と柱の一族の仕業だったしな。
応援はできないけど、せめて見守ろう。
キング・クリムゾン!
奉仕部では教室同様に修学旅行に浮かれ、じゃらんやら色々な旅雑誌を広げてはああでもないこうでもないと行き先を決めあっていた。
三浦「みなみぃ、この旅程じゃあ時間的に間に合わなくない?」
三浦が提案されたコースをデコったスマホで確認しながら相模に言っていた。
相模「うーん……でも回ってみたいんだよねぇ。うち、でも優美子がこういうの得意だって知らなかったよ」
海老名「前世の影響だよね~。日本からエジプトまでの旅程ってアヴドゥルさんとジョースターさんがほとんど決めていたから」
それを先読みして刺客を送り込んでいた俺がいる。
DIO『貴様ではなく、このDIOが2重3重に罠を張っていたのだがな!人の功績をさも自分の功績のようにいうんじゃあない!』
結局俺の前世だから良いじゃあねぇか!
どのみち負けたんだし!
三浦「ほとんどジョースターさんだけどね。今はスマホがあるから調べんの楽っしょ?この計画じゃあ碌に回れずに終わるんじゃあない?」
葉山「計画の練り直しが必要だね」
さりげなく混じってる葉山。奉仕部の中ではある意味で葉山グループが復活していた。以前のような一方通行の友情感覚では無く、互いを認めあった上での集まりだ。
流石は三浦。アヴドゥルの懐の広さは相変わらずだ。
葉山「でも優美子がそういうの得意だってのは驚いたよ」
三浦「アヴドゥルもジョースターさんも伊達に前世で世界中渡り歩いてないから。それよりも隼人。あんた馴染むの早すぎ」
それが葉山のリア王たる特技だな。汐華の呪いや肉の芽が無ければ普通の良いやつだし。
仕事の手を止めて観察してると、意外な奴が近付いて来た。海老名だ。
海老名「ヒッキターニくん♪隼人くんをじっと見ちゃってるけど、どうしたの?ユー、目覚めちゃった?やらないかとか言っちゃう?」
君は相変わらずの病気ですね。ホントに戸部、告白が成功したのだとしても苦労するぞ?今のところは望み薄い気がするけど。
八幡「言わねぇよ。三浦が言うとおり、単純に馴染むのが早いなって思っただけだ」
海老名「優美子のお陰かもね。アヴドゥルさんは元々ポルナレフとかも気にしていたでしょ?」
ほう、では三浦は葉山が気になるってところか?
そしたら相模と取り合いにならね?似たような話が身近にあるような気がするが……
ジョナサン『君といろはと小町じゃあないのかな?後は康穂と陽乃。早く何とかしないとまた由花子が怖いよ?』
言うなジョナサン。康穂はともかく小町と陽乃さんは本気で悩んでいるんだ。
海老名「う~ん。それはどうだろうね~?基本世界の優美子は隼人くんに御執心だって聞いたけど、アヴドゥルさんの転生の優美子ってどちらかと言えばダメな子ほどかわいいとか思うタイプじゃん?ポルナレフとか」
言われたい放題だな……ポルナレフさん。それに今のポルナレフさんは頼りになるすごい人じゃあないか。相模とか救ったわけだし、決して強くない能力でウルフスと渡り合ったわけだし。
海老名「そういった意味では、どちらかと言えば隼人くんは違うんだよね~。人としてはヒキタニ君より出来てるじゃん?」
八幡「悪かったな。性悪で」
長年ジジイやジョルノと一緒にいてみろ。イヤでも影響されるわ!
八幡「じゃあ何か?人としてダメな俺を三浦は狙ってんの?」
海老名「隼人くん以上にそれはないよ?前世がDIOだしそれが無くても性悪すぎ」
太鼓判押してくれてありがとね?でもワザワザ性悪を強調する理由も無いよね?何なの?俺を泣かせに来たの?
海老名「どちらかと言えば優美子は……」
…………そこで切るな。気になるじゃあないか。
八幡「で?わざわざ俺の所まで来てコイバナしに来たの?自分で言うのもなんだが、話す相手間違えてるんじゃあないの?」
海老名「だよね~♪ほら、ヒキタニ君が仕事を止めて隼人くんを見てるからさ、これはもしかして…ってね♪」
何を考えてるんだこの女。そもそもいろはは前世の従妹姪だろ。一応は家族扱いになったじゃあないか。前世の親戚の応援しろよ。腐のカップリングを押し付けるんじゃあない。
八幡「……で、何しに来たの?何か確認しに来たんじゃあないの?俺に個人的に話に来るなんて珍しいことをするくらいだからな」
海老名「…………」
海老名は何故かここで黙る。何かあるな?
わざわざDIOである俺の所に来たんだ。集団での中でならともかく、個人としては海老名は滅多に関わっては来ない。一度は本気で殺し合いをしているしな。
どちらかと言えば三浦の方が気さくに話しかけて来るくらいだ。
海老名「ねぇ、本当にジョースターさん達歴代ジョジョ達は旅行に着いてくるの?」
八幡「それは間違いない。特にジジイと仗助は間違いなく来る」
海老名「承太郎やジョルノさんも?」
八幡「普段は来ないだろうが、今回は来るみたいだ。特に承太郎は別行動で動くみたいだしな」
俺は今日、珍しく奉仕部に来ている承太郎に目を移す。
承太郎は雪ノ下を呼んで何かを話しているみたいだ。承太郎と雪ノ下の取り合わせも珍しい。雪ノ下はジョルノと親戚関係である分、歴代ジョジョの中ではジョルノに特になついて……いや、最近はよく徐倫とも話しているか。その事か?
承太郎「雪乃。それについては俺は口を挟めない。だが、あいつはそう言うのはあまり興味ないし、下手をすれば俺以上に鈍感だ。シスコンを拗らせているしな。陽乃は何を言っている?」
雪乃「………特には。気付いているようではあるみたいですが………」
陽乃さんにシスコン?はて、何の話をしてるんだ?
まさか、雪ノ下も俺に!?いや、それはないか。ハッキリ何度も否定されてるしな。
承太郎「それと雪乃。修学旅行では少しだけ、俺に付き合って欲しい」
なにっ!?承太郎が雪ノ下を!?どういう意味でだ!?
雪乃「どういった内容なのでしょうか?」
承太郎「安心しろ。ジジイにジョルノや徐倫、仗助も一緒だ。とある人物と会う約束をしていてな。先方が雪乃と会いたいそうだ」
…………そういう事か。
ビックリした。そうだよな。承太郎が雪ノ下に変な事をするはずが無いよな。
海老名「うん♪歴代ジョジョ達が来るのは確実だね♪ヒキタニ君♪修学旅行中でもジョジョハチとハヤハチの美味しいの、期待してるね♪」
八幡「………期待するんじゃあない。大体、浮かれすぎてウルフスに襲われてもしらないぞ?」
海老名「うん。わかってるよ?ここのところ、わたしって負けてばかりだしね。気を引き締めないと。でも、それはそれ、これはこれだよ?」
結局は最後にはそこにたどり着くのかよ。
何か引っかかる気もするわけだけどな。少なくとも戸部の一件とかは関係なさそうだ。
そして海老名は呪いだけをかけて俺の所から離れ、三浦達の方へ帰っていく。その過程で俺は三浦と葉山と相模が視界に入ってくるのだが…。
三人ともどういう訳か、俺を見ていた。何でせうか?少なくとも俺は呪いをかけられただけだぞ?
戸部の依頼(断った)を知っている葉山と相模はわかるとして……何で三浦が?
葉山「前途多難……だな、戸部も」
葉山は深いため息を吐いて話に戻った。
ところでサッカー部は良いの?
いろは「今日は休みみたいですよ?」
何でいろはが知ってるのん?嫉妬に狂っちゃうよ?
いろは「サッカー部が練習している音が聞こえないからですよ」
あ、そう言うことね。八幡無駄に嫉妬しちゃったぜ。
←To be continued
今回はここまでです。
次回から修学旅行に行ければいいなぁ(^_^;)