やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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戸部翔の依頼

side比企谷八幡

 

奉仕部のドアを叩いて入ってきたのは戸部、大和、大岡の三人組だった。

誰の紹介で来たのかわからないが、三人は物珍しげに部室を眺め回す。

まぁ、普通の高校に校長室以外のこんな高級オフィスみたいな部屋があるなど普通はあり得ないだろう。

と、彼らの視線が俺、いろは、ジョジョのところで止まる。

彼らが何を思っているのか、言わなくてもわかる。文化祭、体育祭の粛清王として校内で特に有名な三人だ。三人一様に不思議そうな顔をした。

だが、不躾で不思議そうな顔をしているのは俺達も同じだ。

何故ブラッディースタンド三兄弟がここに来たのか…そして向こうは覚えていないが、因縁もある。

何でこいつらがここにいんの?

その疑問はアーシスの誰もが同じ気持ちであり、顔に緊張が走っている。

 

静「何かご用ですか?」

 

ジョジョがハッとなって営業用のスマイルで応対する。だが、今更だ。ジョジョの厳しい本性と、人間離れした運動能力は既に全校が知るところだ。

ジョジョが話しかけても戸部達はガヤガヤヒソヒソとやっており、「ほら……戸部……」とか言っている。

 

大和「えっと…噂で聞いたんだけど、この部活って生徒のお願いを聞いてくれるって聞いたんだけど……」

 

静「内容次第によりますよ?何でも聞くわけじゃあありません」

 

ジョジョの返答にまたもやヒソヒソと始める。

漏れ聞こえる声からは戸部の内容らしい。

 

大和「ほら、戸部」

 

大岡「言っちゃえよ」

 

横の二人に促され、戸部は口を開きかけるが、むぅと考え込むように唸って黙ってしまう。まぁ、悩み事なんて普通は誰かに弱味をさらけ出すことだ。中々口にすることは難しいだろう。気長に話してくることを待っていると……。戸部はブルブルと首を振った。

 

戸部「いや、やっぱないわー。ヒキタニ君やジョースターさんやいろはすに相談とかないわー」

 

八幡&いろは&静「なら帰れば?」

 

思わず口にしてしまった。ケンカのバーゲンセールか?まとめて買うぞこら。お前らのスタンド能力なんてもはや敵じゃあねぇ。

戸部の攻撃の反射は時を止めてぶっ叩く。大岡の屍生人はこの面子ならもはや敵じゃあねぇ。大和の文字攻撃だって種が割れれば何のことはない。

ガンを飛ばすと、三人はヒッと後ずさる。大和と大岡は早く謝って用件を話せ!と言い始める。

部室のアーシス全員の顔も凍りついていた。仗助に至ってはキレる寸前だ。

 

仗助「おい………相談事があって来たのはそっちだろ?なのにその態度は何だ?」

 

戸部「や、でもPTA会長~。ヒキタニくんやジョースターさんやいろはすにはこういうこと話せないでしょ~、信頼度ゼロだわー」

 

あ………やば………

 

小町「ムカッ!」

 

俺の心情をわざわざ言ってくれてありがとう。でも、小町が本人達より先に反応した。

 

結衣「戸部君さぁ、その言い方なくない?もうちょっと言い方ってあるでしょ?」

 

戸部「いや、でもさー」

 

仗助「おい。じゃあよ、出てってくんねぇかなぁ?おめぇらよぉ」

 

八幡「了解。行くぞ、ジョースター、一色」

 

立ち上がると仗助がそれを止めた。

 

仗助「待てよ。おめぇらじゃあねえ」

 

ジョセフ「出ていくのはお前らじゃ。小僧ども」

 

戸部「へ?」

 

俺達だけではなく、戸部達も固まる。

 

ジョセフ「礼儀も知らん、礼節も弁えん。そんなガキどもの頼みを必要なぞこれっぽっちもなかろう?早くお引き取り願えんかのう?」

 

口調こそ穏やかだが、ジジイの無表情な仮面の下には鋭い眼光が光っているように思える。仗助も櫛を取り出してオールバックを整え始める。ガチでキレかけているのを必死で押さえ込んでいる時の癖だ。

そのまま時が凍りついたように固まる部室。ザ・ワールドがかかったように誰もが動かなかったが…

 

戸部「いや、もう後にはひけないでしょ、これ。……それにヒキタニ……」

 

八幡「俺は比企谷(ヒキガヤ)だ。俺達は親しく無いものにあだ名で呼ばれることはこの上なく侮辱だ。次にそのあだ名で呼んだらマジで帰れ」

 

戸部「べー……」

 

静「話すなら早く話してくれませんか?」

 

戸部「わ、わかったべー。あの……」

 

ようやく語られる戸部の悩み。さほど気になるものでも無いのだが、というかまるっきり興味が無いのだが、皆が静かにきいている。

 

戸部「あのー………」

 

まだ言わないのかよ!引っ張るなよ!時間の無駄無駄無駄無駄だよ!なに?最近のバラエティー番組なの?

何で何回もCM挟むんだよ、しかもようやくCMが明けたと思ったらまた直前からやるし。タイムリープ?バイツァ・ダスト?時間が経つと爆発しちゃうの?

 

戸部「あの、実は俺……」

 

戸部は散々引っ張った挙げ句に、ようやくのことで話し始めた。

 

戸部「俺、海老名さんのこと、結構いいと思ってて?で、まぁちょっと修旅で決めたい的なことなんだけど」

 

半分くらい暗号というかほとんどニュアンスで話をされた。何て言うか、こいつに営業とか管理職とか受付とかその類いの仕事をやらせては絶対駄目だな。

 

結衣「マジ?」

 

由比ヶ浜が無表情で反応する。

夏休み、千葉村で露伴先生のヘブンズ・ドアー(正確には砕けた魂が入り込んだ仗助の記憶)で書かれていたことは本気だったか。

戸部の言いたいことが理解できたのは記事を見たジジイと仗助、徐倫、そして間接的に見た俺だけだ。

雪ノ下他何名かの人間は理解できずに首をひねっている。

何とか理解できた何人かはわからなかった者達に耳打ちをして教えていた。

 

八幡「つまり、あれか?海老名に告白して付き合いたいと、それで協力して欲しいということか?」

 

思春期男子にとってはこっぱずかしい単語を交えて聞いてみると、戸部は襟足をさらっとかきあげて俺の方を向いて指差してきた。

 

戸部「そうそうそんな感じ。さすがに振られるとかキツイわけ」

 

「ごめん。それ、受けられない」

 

俺じゃあないよ?

いまのだが断るは俺じゃあない。

一番その手の類いにはホイホイ乗りそうな奴、由比ヶ浜結衣の口から発せられた言葉だ。

 

静「悪いですけど、私も断らせてもらいます」

 

まぁ、他の面々もウンウンと頷いている。

 

戸部「べー。そりゃないべぇ。比企谷くん、いや、比企谷さん、オナシャス!」

 

八幡「いや、それ何語?」

 

戸部「べー………なんだべそれ~」

 

意外だったのがこういう色恋沙汰にすぐに食いつきそうな由比ヶ浜が真っ先に断ったことだな。

 

結衣「戸部君。多分、大人の人達も含めて、この依頼は誰も受けない。姫菜があたしの友達だからとかじゃあないよ?」

 

ああ。海老名が俺達の仲間だからとかじゃあない。

 

戸部「じゃあなんだべ?俺は真剣で言ってるんだって!」

 

その言葉で由比ヶ浜は首を振った。

 

結衣「うん。真剣なのはわかるんだけどね?あたしも色々と苦労して、考えさせられたからわかるんだ。確かに女の子はコイバナとか好きだし、あたしもそういうのは好きなんだけどさ。だからこそ、これってあたし達が簡単に入り込んで良いのかなって……確かに振られるのは怖いから戸部くんの気持ちもわかるけどさ…あたしが姫菜の友達だから、中立でいたいってのもあるし」

 

戸部は由比ヶ浜が怒ったことで冷静になったのか、先ほどまでの勢いが無くなった。

 

静「戸部君。帰ってくれませんか?残念ながらそのような依頼には無責任に受けることはできません。力になれるとも思えませんし、何よりそういうのは自分の力でそういうのは勝ち取るからこそだと思いますし」

 

ジョジョが静かに戸部に告げる。

まぁ、俺達って特殊すぎるしな。

 

戸部「あ~…冷静になってみればそうだわ~…ごめんな結衣。自分の力だけでやってみるわ~……」

 

戸部は力なく俺達に頭を下げる。

 

静「安心してください。個人的な話の内容なので海老名さん本人には言いませんし、私たちは聞かなかったことに致します」

 

八幡「まぁ、色々と厳しいことは言ったが、告白する事自体は悪いことじゃあないし、応援そのものはするわ。協力は出来ないけど」

 

戸部の告白を受けるかどうかは海老名次第だ。色々とあれなやつだが、汐華の呪いから解放された戸部達は悪い奴ではないと俺は思っている。

そんなとき、廊下からバタバタと音を立てて葉山と相模が入ってきた。

 

葉山「戸部!」

 

葉山は厳しい表情を戸部に向ける。

普段の葉山からは想像できない表情だ。

 

戸部「あ、隼人くん。隼人くんが言ったように、断られたわー」

 

葉山「だから言っただろ?止めておけって」

 

戸部「だべー。……でも、少し目が覚めたっしょー。自分の事なのに頼りきろうとしてたのが情けないわー」

 

戸部は妙にスッキリした表情をして葉山に言った。

あそこまで言われたら、怒って捨て台詞を吐いて去っていくものもいる。なのに戸部はそうはしなかった。

うざい奴ではあるが、良い奴ではあるのかもな。

それ考えるとウルフスの呪いってすごいな。葉山といい、相模といい、雪ノ下といい、ああも狂わすんだから。まぁ、柱の一族すらも狂わす奴等だしな…。

 

葉山「そうか……それでどうするんだ?」

 

どうするとは今後、海老名への告白をするのかどうかの事だろう。

俺としては戸部に協力はしない。だが、告白そのものに対しては協力もしなければ邪魔をするつもりはない。

それは戸部と海老名の二人の問題だ。

無関係の俺達はもちろんのこと、グループのリーダーである葉山だって口出しをする事じゃあない。

 

戸部「自分の力で何とかして見せるわ~。ごめんな、奉仕部のみんな」

 

静「ええ。ご健闘をお祈りしております」

 

ジョジョがそう言うと、戸部達三人は帰っていった。

彼らが帰ると、相模も安堵したような顔をする。

 

相模「良かったよ。もしかしたら戸部の依頼を受けるんじゃあないかって思ってたんだ」

 

葉山「君達の場合は特殊すぎて、色々とひっかき回しそうだったしね。明後日の方向のアドバイスとかしたり。下手したら姫菜、怒ってまた敵になっていた可能性があったと思うよ?優美子も。いや、間違いなく」

 

正解。

いや。まぁ、元々ここは日常生活のアレコレとかちょっと特殊な悩みの解決の手助けはするけども、恋愛相談とかそういうのは違うんだよなぁ。

そもそも、言ってはなんだが彼氏彼女持ちは多いけれど特殊な環境で成り立ち過ぎてるから何の助けにもならないどころか、絶対に逆効果だろ。

失敗する未来しか見えん。

 

仗助「葉山のそれ、正解だぜ。だって俺よぉ、康一と由花子の仲をひっかき回した過去があるしよぉ」(ジョジョ第4部参照)

 

八幡「自慢じゃあないが、その一族と家族ぐるみの仲だしな」

 

いろは「まったくこの人たちは…」

 

ジョセフ「いやいや、いろはよ。お前さんだってエリナおばあちゃんだった時はギャングにワシをけしかけたクセに何を言っておるんじゃ?」(ジョジョ第2部参照)

 

葉山「ホントに断られて正解だったんだな…戸部」

 

いやぁ。

…………役立たずですいません。

 

←To be continued


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