side比企谷八幡
棒倒しの競技が始まるまでのわずかな時間、俺とジョジョは救護班のテントでチバセンの健闘を称えていた。
特に大金星のいろはにはナデナデを進呈。
帰ったら特に労ってくださいと言われた。
やる気がムンムンとするじゃあないか!
頼んだぞ、戸塚、材木座、泉。
すると、実況席がまた交代したのだろう、三浦のアナウンスが聞こえてくる。
三浦「続いての種目は男子による棒倒しでーす」
さて、こうなったら諦めて応援に徹するしかない…。
これから行われる棒倒しは至ってシンプルなルールの競技だ。お互いの陣地に棒が立っており、相手の棒を倒したほうが勝ちとなる。
海老名が考えたにしては案外普通だったなとちょっと拍子抜けな感すらある。などと思っていたら、スピーカーから低く小さい声で、気持ち悪い笑いが漏れていた。
海老名「ぐ腐腐腐、だ、男子がくんずほぐれつ棒を倒すだなんて、ひ、卑猥……」
近くの放送席ではいつもの如く、三浦がスリッパを用意してスパーン!と景気の良い音を鳴らして頭を叩いていた。
やっぱりこの女、おかしいわ。
side戸塚彩加
材木座「戸塚殿」
材木座君が僕に近付いて来た。
戸塚「これ、何でこんなにたまってんの?」
僕より前にここに来ていたのなら何か知っているのかもしれない。尋ねてみたけど材木座君はふむぅと首を捻る。
材木座「はて、先に何かあるやもしれぬな」
戸塚「ふーん」
材木座「相変わらず、我には塩対応だな…戸塚殿」
戸塚「そういうつもりは無いんだけどね」
とりあえず、わからないなら確かめて見よう。進んだ先には………不良がいた。
一昔前の長ランに白いシャツ、ボンタンに破れた学帽、学ランには金色の鎖が垂れている。
その不良を中心に空白域のようになっていた。そりゃあ、ただでさえ学ランってだけでも特殊なのに、そんなのがデン!っと立っていたらみんな引くよね……。
材木座「あれって………八幡がよく着ている……」
戸塚「空条博士の学生時代の学ランだよね……」
なんぞと思って目を凝らしてみると、空条博士の学ランを着ていたのは泉君だった。
白組の葉山くんは白い学ランを着ているから、大将は学ランを着ることになっているのはわかるんだけど、何で泉くんは空条博士の学ランなんだろうか。
近付くと泉君は僕達に気がいた。
泉「戸塚」
困ったような顔をして苦笑いする泉くん。
戸塚「泉君。何で空条……いや、八幡の学ランを着ているの?」
泉「大将を頼まれたから受けたんだが、ジョジョに…比企谷にこれを着ろって言われたんだ……三代目ジョジョが着ていた由緒正しい学ランだから比企谷の代わりにこれを着て戦えって。力を入れるときはオラオラって掛け声をかけろって……」
本気で困り果てているなぁ………
戸塚「それ、ジョースターさんの玄孫で、空条先生のお父さん、空条承太郎博士が学生時代に着ていた学ランそのものだよ。それを着て承太郎博士はDIOを倒したんだ」
泉「そうなのか……空条先生のお父さんの……似合うかな?変ではないか?」
泉君は体格が良い。八幡サイズに直されたその学ランは、とてもよく似合っている。
少しコワモテタイプのイケメンな泉くんは八幡よりも承太郎博士に似ているように思える。
戸塚「似合ってるよ!全然変じゃあない!すごくカッコいいよ!泉君!」
僕がそう言うと、何故か泉君は顔を赤くしてブツブツ言っていた。
泉「そうか……変ではないか……むしろ恋」
材木座「人が恋に落ちる瞬間を初めて見てしまった…」
戸塚「もう、なに言ってるの?泉君に失礼だよ?」
失礼だよ。自分なんて恋に落ちるどころか、恋人だっているくせにさ。
キングクリムゾン!
赤組と白組、それぞれの整列を終え、入場する。いよいよ棒倒しの開始だ。
海老名『まずは両軍の大将の紹介です!白組はサッカー部部長の葉山隼人くん!赤組はテニス部副部長の
海老名さんによる紹介のアナウンスが流れ、観衆の注目が両軍の大将に向けられる。
葉山くんは手を上げて歓声に応え、対する泉君は完全に歓声等に答えずに大将という名に相応しいくらいにどっしりと構えている。まるで空条博士みたいに。
凄いなぁ、僕だったら慌てるか、そこまでならなくても緊張していたかも知れないのに。
あと、泉君の下の名前は正純って名前だったんだ。初めて知ったよ。名字と揃えるととても綺麗な名前だなぁ。
大将の雰囲気は周囲にも影響を与えるのか、白組は葉山くんを主軸として士気が高く、円陣を組んでいる。
対して赤組も負けていない。どっしりと構えている泉君同様に落ち着き、まるで軍隊のようにピシッと静かに闘志を高めていた。
そんな中でも特に材木座君は大将の脇に控えている副将のように隣で軍隊の休めの姿勢になって微動だにしない。
さすがは元ナチスのエリート将校。妙に様になってるなぁ。頭の中では実際の戦国の作戦を倣って陣形でも組もうとしているのか、両翼の陣とか島津義弘の敵中突破とか釣り野伏とか言っているけど、棒倒しで伏兵をどうやってやるんだろう……。
でも、陣形とかはともかく、その威容は中々雰囲気が出ていて赤組の陣営の士気は悪くない。
それに、青葉君、関内君、伊勢崎君、瀬谷君のテニス部主力メンバーが揃っているのも頼もしい。
戸塚「材木座君、作戦とかはどうするの?」
材木座「ふむ。この競技は先のチバセンに比べると戦略ではなく、純粋な力と力のぶつかり合いの競技といった感じであるが……そうであるな……」
材木座君は僕に作戦の内容を伝える。
内容については理解した。チバセンと違って男子のスタンド使いは葉山隼人ただ一人。しかも能力はまだ判明していないので、さすがにスタンドを使う気にはなれないようだ。
材木座「さて、泉。檄を飛ばすのだ」
泉「俺が?」
材木座「貴様が総大将であろう?貴様がやらねば誰がやる」
うわー。また無茶振りをするなぁ。
泉君はため息をついて前に出ると、静かに声を出した。
太く、それでいてよく通る声。
そういうところも空条博士に似ているね。
泉「さて、みんな。女子の頑張りによって赤組にもチャンスが出てきた。ここで俺達が踏ん張らなければ女子に顔向けが出来ない。あまりにカッコ悪い」
言われるとぐぐっと赤組男子全員に闘志が沸き上がる。
泉「みんな、女子にカッコいいところを見せよう。負けるにしても、死力を尽くすんだ。余裕を残してクールにしている者よりも、やれるだけやって無様に泥にまみれた者の方がカッコいいと思う。敵は葉山隼人ただ一人。白組の強さは彼一人が支えている。逆を言えば葉山隼人を撃破すれば彼らは瓦解する!みんな、力を合わせて逆転をするぞ!」
上手いね。
この年の若者は異性の目が気になって仕方がない。
そこをついたんだ。
そうだね。せっかく女子が頑張ったんだ。勝つにしても負けるにしても、それに応えられないのはあまりにもカッコ悪いよね。
それが赤組男子にもわかっているのか、泉君の雰囲気も相まって赤組の男子達はビシッ!とした士気へと昇華される。
白組の上げ上げの士気と、赤組の緊張した士気。どちらも気持ちでは負けていない。
泉君は白組のポールへと……正確にはその下にいる白組大将の葉山くんへと視線を向ける。
葉山くんは泉くんと……そして僕と材木座君にも気が付き、ニッと笑う。
八幡なら卑屈に卑怯に陰湿に………
だけど、僕達は策で、力で、技で……正々堂々と行く!
号砲が鳴り響くと、両陣営が飛び出す。
だけど、赤組はそこで途中で止まる。ポールのある中央を突破せんと企む白組前衛を守りの姿勢で迎撃する体勢に入る。
伊勢崎「踏ん張れ!中央は死守するぞ!」
関内「スクラムだ!味方を信じろ!」
中央に群がる大群をそれよりも少ない人数で死守する赤組守備陣。
関内君はそこにラグビーの技を使った。
隣り合う人達と一列横隊で肩を組み、低い姿勢で突進するスクラムアタックだ。
大和「な、スクラムだと!?ラグビーのスクラムを何でテニス部が知っている!」
白組の猛攻を食い止める関内君。
だけど、それは多勢に無勢でいつかは破られる。
だけど……。
青葉「スクラム第2波!突進!関内隊と伊勢崎隊は下がって体勢を建て直せ!いくぞ、瀬谷!」
瀬谷「ええっ!任せて下さい!青葉キャプテン!」
大岡「鉄壁のガチ防御かよ!打ち破れ!」
海老名『おおっと!中央突破を目論む白組に対して赤組の中央は2チーム交代での防壁で防ぐ!押しも押されぬ攻防!これは良い!これこそが男と男のぶつかり合い!』
スパァァァァァン!
またしても海老名さんの暴走が始まったみたいだね。また三浦さんがスリッパで叩いたんだ。
さて……僕も行こう。
赤組の傘形隊形から僕の部隊が左翼から躍り出る。
そして守備陣も僕達を進めやすいように左翼の白組選手達を押さえ込んでくれる。
葉山「回り込み作戦!守りに徹するように見せて回り込んでの攻撃か!考えたのは材木座君かい?!」
戸塚「そうだよ葉山くん!」
僕がそう言うと、葉山くんはフッと笑った。
葉山「読んでいたさ。スピードワゴンとシュトロハイム……君達の素性を知っているならば、バカ正直に力押しや守備に徹するだけの戦いはしないってね!戸部!頼んだぞ!」
戸部「分かったっしょー!戸塚くんは押さえるわー!」
やるね!葉山くん!伊達に学年でも上位にいない。
戸部くんを中心にした迎撃部隊が僕達を押さえ込んで来る!やっぱりそう簡単には行かないよね……。
戸塚「うわわわわ!迎撃部隊を残していたなんて!」
葉山「白々しいよ、戸塚。仕掛けて来るのは彼かな?」
葉山くんは右翼から回り込んで来ている部隊の迎撃に入る。
それも読んで来るなんて!彼はなんて勝負勘を持ってるんだ!
泉「まさかこれも読んでくるなんてな。葉山」
葉山「泉、ここて君が出てくるなんてね!けど、俺が君をマークして無いわけが無いだろ?」
泉「現代戦なら司令官が前線に出るなんて、愚の骨頂だけど、これは盛り上がらせる為のエンターテイメントだ。大将同士のぶつかり合いなんて、これ以上に燃えるシチュエーションは無いだろ?葉山!」
葉山「望むところだ。この時を待っていたよ、泉!だけど、作戦は潰させて貰う!回り込み作戦を、逆に利用させてもらうよ!」
白組は逆に僕達の通って来た回り込みのルートを利用して赤組の本陣を目指してくる。
く………っ!回り込み作戦を読んだ上で逆に利用するなんて………!
泉くんはゆっくりと手を上げた。
葉山「降参かい?」
この状況ではそう見えるだろうね。
泉「いや、俺の今年の体育祭に一編の悔いはないよ。だが、無念だな」
葉山「面白いことを言うね。無念なのか一編の悔いも無いのか、どちらなんだ?」
泉「どちらだろうな?」
泉「材木座の作戦が上手くいきすぎて一編の悔いは無いのだが、お前との決着を付けることができないのは無念だなと思うぞ?葉山」
葉山「なんだって?まだ伏兵がいたのか…?」
左右の僕達の通ってルートを利用してくる……そこに戦力を投入してくると言うことは………
材木座「今だ!中央!全軍突撃だぁ!」
泉「騙し合いでは俺達の勝ちだ!俺はお前を釣り出すための餌に過ぎなかったんだよ!伏兵は……最初から目立っていた中央の守備隊だ!葉山!」
葉山「しまった!囮の囮!回り込みが本命と見せかけて、守備に徹していた中央が本命!こんな目立つ伏兵なんて普通はやらないぞ!まずい!みんな頼む!」
戸塚「行かせないよ!」
泉「奉仕部ブードキャンプで鍛えられたのは俺達だけじゃあない!俺や比企谷に拘りすぎたのがお前の敗因だよ!葉山!」
僕が大岡君を、泉くんが葉山くんを押さえる。
材木座君、青葉君、伊勢崎君、瀬谷君、関内君達本命の突撃を、手薄になった白組の者達が止められるはずもなく、フォローに入った戸部君、大和君も……
材木座「慌てて入ったフォローが間に合うものか!数で押し通る!どっせぇぇぇぇぇい!」
青葉「テニス部は泉だけじゃあない!それを見せてやる!」
二人率いる僅かな敵部隊を加速とパワーで押し退けてポールへと突撃!
ゆらりとポールが揺れた。観衆はどよめき、そして息を飲む。ポールがゆらりと揺り返す。誰もが口ではなく、目を見開き、ポールの動きを見ていた。
ぐらりと……ポールが倒れた。
材木座「う………うおぉぉぉぉぉぉぉ!」
雄叫びをあげる材木座君。
葉山「完敗だ……まさか作戦で負けるなんてね…」
泉「そうでもしなければ、勝てそうになかったからな。葉山隼人には」
葉山「ふっ………」
葉山くんと泉くんは互いに握手を交わし合う。
海老名『おおっと!これは麗しい友情!これでご飯がさらに………ブハァ!』
海老名さん……そろそろ生活指導から色々言われると思うよ?
それにしても、読み合いと策と策、力と力のぶつかり合い……いい戦いだったと僕は思う。
僕が救護班のテントで拘束を解かれている八幡の方を見ると、奉仕部の赤組の人達と共に勝利を喜びあっていた。
静ちゃんは悔しそうにしていたけどね。
side比企谷八幡
秋も本格化してきたのか、部室の中を通る風も肌寒く感じるようになってきた。マッカンもホットが美味しくなる時期になったか。
机の上ではティーカップから湯気が立ち上っている。
こうして部室で全員が揃い、仕事やら勉強やら修行やらをして過ごす放課後というのも久しぶりだ。だが、すぐにまた修学旅行というイベントが待っているが。
それでも体育祭の余韻はわずかであるが残っている。
いろは「まさか負けになるとは思いませんでした」
静「試合には勝ったけど」
いろは「まさかスタンドを使ったのを反則として取られるとは思ってもみませんでした……」
まぁ、棒倒しはともかく、チバセンはスタンドを使ってしまったのが反則として取られてしまった。
双方ノーコンテストとし、赤組は減点。結果として引き分けとして体育祭は幕を閉じた。
相模「チバセンですが、赤組白組双方に反則行為、危険行為が確認されたため、ノーゲームとします」
運営委員長の相模のたんてきな一言で打ち切られた。
これでも大分譲歩したのだろう。
もちろん反発の声が上がった。実際にどんな反則が行われ、誰がやったのかを追及する声もあった。
だが、スタンドを使った反則を事細かに説明するのは難しい。ただでさえ頭の中身が疑われる俺達が、余計に頭を疑われる事になるだろう。これは幽霊や宇宙人のように存在するか否かもわからないものに証拠を出せと言うようなものだ。
幽霊(ポルナレフさん)も宇宙人(未起隆さん)も存在するのだが。本来、立証責任は反則を監督する側である委員会にあるのだろうが、スタンドによる立証が出来ない以上はスタンド使い以外には真実はわからない。
結衣「ま、まぁほら!めぐり先輩、喜んでくれたし!」
唯一の救いはそこだ。
赤組が負けはしたものの、めぐり先輩にとっては楽しい思い出になってくれたらしい。まぁ、俺達にとっては苦い思い出になったが。
八幡「まぁ、こんな滅茶苦茶な体育祭なんて二度とないだろう」
俺達の祭りは終わった。また再び社畜と訓練の日々に戻ることになるだろう。
俺はみんなが体育祭のことでああでもないというやり取りを背中越しに見ながら、部室を出た。
秋風が特別棟を吹き抜けていく。
開け放した窓からは運動部の掛け声が聞こえた。体育祭も終わったことで、彼らもまたいつも通りの生活に戻っているのだろう。
遥もゆっこも、この体育祭のこと、相模との間のことを有耶無耶にしてその輪の中にいるだろう。いや、有耶無耶とは違うかも知れない。対立した後に和解を果たし、そして雨降って地固まったのかもしれない。同じ騎馬で由比ヶ浜と戦ってたのだから。
階段を下り、角を曲がったところで下から感じていた相模と三浦と海老名とはちあう。
相模は固い表情で紙束を抱えて固まる。その一枚には体育祭という文字が踊っている事から三人で体育祭の事後処理をしていたのだろう。
あれから相模とは必要最小限の会話しかしていない。
仲間となる前以上に関わりが無くなったと言ってもいい。
八幡&相模「…………」
俺は視線を会わせず、無言で三人とすれ違う。と、不意に相模が話しかけて来た。
相模「ねぇ……」
八幡「…………」
話しかけては来たが、相模は俺と視線を合わせては来ない。まだ怒っているのだろう。
相模「あんたらのやりすぎの行動はうち、今でも許せない。だけど………」
それで良いと思うけどな。
だが、続きがあるのだろう。俺は足を止める。
相模「………あんたらがうちの為に行動してくれたというだけは……わかる。だから、優美子達に免じて、ほんの少しだけ、ありがとう……とだけは言っておく」
八幡「別に良いんだけどね?ラスト・ノートをやらなければ」
スパーン!……と、三浦がスリッパで俺をはたく。
え?それ、常備してるの?持ち歩いてんの?
三浦「またそう言うことを言うし。それに、バカな事をした罰だよヒキオ」
海老名「相変わらずのDIOだね~。南っちはこれで手打ちにしようとしてるんだよ」
そうなの?よくわからなかったわ。
そういう自分に向けられる感情ってよくわからんわ。
悪意しか向けられたことないから。
三浦「でもヒキオ。もう、ああいうのは無しにしろし?また千葉村みたいなことになったら、今度は助けないからね?元々あーしらは敵だし」
八幡「わかってるよ。徐倫や朋子さんからは散々言われたわ。どうしてお前らはそうなんだってな。しかし、敵とか何とか言いながら、結局はいつも助けてくれる三浦達には感謝しているよ」
三浦「うっわ、キッモ!DIOから感謝されるとかマジあり得ねーし」
このアマ…
八幡「人が素直に礼を言ったらこれかよ」
三浦「あ?やんの?受けて立つし」
海老名「はいはい、ストップストップ。ほら、もうこの先は修学旅行くらいしかイベントないし、そんな事よりもウルフスを探す事に集中しなきゃだし。それまでは協力してあげるから」
逆を言えばそのあとはまた敵になるってこと?
だが、確かにアルミラージ以外はまだウルフスは倒していない。
今後は本腰を入れてウルフスと相模を貫いたという金色の矢を破壊しなければならない。学校行事にかまけて遊んでいる暇はない。本業を忘れてしまっては本末転倒だろう。
八幡「まぁ、頼りにさせてもらうわ。相模の護衛を頼んだぞ?バイト代ははずむから」
三浦「バイト言うなし。仕事じゃあなくても相模は守るし」
八幡「そうだったな。おかんめ……」
三浦「はぁ?バーニング・ファイヤーやんよ?」
おおこわっ。燃やされたらたまらんから早々に退散させてもらおう。
俺は言葉とは裏腹にゆっくり歩き出す。三浦達もお喋りをしながら離れていく。目的は奉仕部だろう。
遠ざかる足音を背に歩を進める。
取り返しのつかないことは輝かしい未来を持つ命が消えることだ。人間関係で取り返しのつかないことはあっても、黄金の精神が無くなるよりはましだろう。
だから…輝かしい未来を持つ者達を守る為に……俺の戦いの日々は終わらない…。
俺達の戦いは……これからだ。
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