やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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露伴と徐倫の逆襲

side比企谷八幡

 

屍生人ばりに腐った将来の親戚が運び出されていった。

この隙に俺が赤組大将になる案は潰しておこう。まぁ、俺が潰さなくても皆が反対してくれるだろうけど。

 

八幡「俺は運営委員会があるんで無理っすね。っつーわけで、この棒倒しをやる場合には他の候補を探しましょう」

 

めぐり「ん?別に大丈夫だと思うけど?まぁ、まずはどれをやるか決めないといけないね?」

 

えー、のって下さいよー。可能性を潰して下さいよー。

 

めぐり「じゃあ、相模さん、決を取ろうか」

 

相模「はい。じゃあ、騎馬戦がいい人~」

 

パラパラと手が上がる。

 

相模「じゃあ次ね。棒倒しが良いと思う人~」

 

言いながら相模が手を上げている。こちらもパラパラと先ほどと同じような人数の手が上がっていた。

拮抗していたがわずかな差で棒倒しの方が優勢だろうか。葉山の活躍が見れるのは棒倒しのほうだし、別に意外でもない。

 

めぐり「ほぼ同数だね」

 

数えためぐり先輩がそう言う。

このまま棒倒しに決めてしまってもいい。多数決を取った場合にはそれが許されている。少数意見も、ほぼ同じでわずかに劣る約半数の意見であっても、それを拒絶することができる。母数が増えれば増えるほど、切り捨てられる人の数は増える。

これが多数決だ。このシステムには致命的な欠陥があるといっていい。つまり、まちがっている。ということは逆説的に、少数決の方が正しく、要は俺みたいな少数派が常に正しいって事じゃあねぇの?ほら、国会の決議案だって結局は与党のごり押しで大抵が決まるじゃあないか。そうか、俺が正義だったのか。邪悪の化身が正義になってしまったのか…。

 

相模「じゃ、男子の方は棒倒しってことで」

 

相模は特に深く考えることもなく、決断を下す。一応、分実の経験から俺の方をチラリと見る。

多数決論は俺の持論に過ぎないから、特に反対する理由もない。良いんじゃあないの?と、頷く。

 

相模「で、騎馬戦は女子の目玉競技にしてどっちもやりませんか?」

 

おお、挙手の数がほぼ同数だったことを考えて自分の意見を出してみるか。成長したな……相模。

 

めぐり「おー、なるほど」

 

めぐり先輩は納得してぽんと手を打つ。そして、朋子さんと徐倫に視線を向ける。二人もうんと頷いた。あくまで生徒の自主性に任せるらしい。まぁ、何かあればこの二人なら責任を取るだろうしな。

その事を確認すると、めぐり先輩が会議室全体に視線を巡らせる。

 

めぐり「みんなもどう?」

 

めぐり先輩の投げ掛けにも特に否やの声は上がらない。

半分の意見を黙殺する、その事をどう対応するか、多数決の場合はそのアフターケアのほうが重要だ。

その点で言えば、相模の対応は充分に及第点といえる。

判断としても間違っているとは思わない。騎馬戦もコンセプト、アイデアともに棒倒しに劣っているわけではないし、現に生徒会を主体とする首脳部側は賛成だ。

だが、会議室内の反応は鈍い。

ざわりと、一瞬嫌な空気が走った。

ぞわりぞわりと虫の足音みたいに這い寄るのは囁き声。

その前兆めいたものをアーシス組は敏感に察した。

そう言うのを感じとるのは得意だからな。

俺達はその方向を見る。未だに相模は気付いていなかったが、既に空気は変わってしまっている事に俺達の様子で気が付いたようだ。

 

G・S「そのまま押し通せ。こいつらの悪意の矛先は俺だ。正確には俺達奉仕部だ。お前はとばっちりを受けているに過ぎない。俺達に良いように使いっ走らされている風を演じろ」

 

俺はザ・ジェムストーンを出して相模に話しかけ、相模もスタンドで返答する。

 

L・N「う、うん。でも良いの?うちは……」

 

N・E「それが我々の協定ですよ?相模先輩」

 

相模が困惑した表情で返すと、いろはが俺の援護をする。

要は簡単だ。解雇組の逆襲ということなのだろう。

 

相模「え、えっと……反対意見も無さそうだし、じゃあ女子の方は騎馬戦に決定という事で…。後は割り振りを決めましょう」

 

一抹の不安を感じながらも相模は自身の案を押し通した。

 

相模「プログラム一覧を配ります。各自希望するものを前に書きに来て下さい」

 

相模が指示を出す。すると、生徒会の役員達がプリントを配布し始めた。ここからしばらくは自由に考え、決まり次第ホワイトボードに書きに行く。

俺も何か決めないといけないのかとプリントを見ていると、めぐり先輩がとことこと歩み寄ってきた。

 

めぐり「みんなは当日、比企谷君とジョースターさん以外は運営本部として働いてもらうつもりだから、担当は持たなくて大丈夫だよ」

 

ちょい待て。

 

雪乃「はい。では、私達は統括側の割り振りをしますか?」

 

雪ノ下が頷き、首脳部側個別での打ち合わせを提案する。

 

静「ちょっと待ってください。私とハッチ以外は別ってどういう事ですか?」

 

そう、そこが引っ掛かる。

 

めぐり「あれ?ジョースターさん達波紋の戦士は一般生徒とは違う別の競技に参加するって言うのを空条先生から聞いているよ?中級クラス以上の波紋の戦士ってことで、ある意味での目玉競技として」

 

八幡「なぬっ!聞いてないですよ!?」

 

静「私も!どういう事ですか!?空条先生!」

 

俺とジョジョはぐりんっと徐倫を見る。

 

徐倫「ああ、あんた達にはこれに出てもらうから」

 

徐倫がプリントを俺達に渡してきた。

 

『稲毛町クロスカントリー』『障害部屋』『棒登り玉割り』『勝ち抜き格闘』

 

こ、これは……

 

八幡「俺達が冗談で考えたヤツじゃあないか!」

 

静「私達に死ねと!?」

 

それを言うと、徐倫はニヤリと笑った。

 

徐倫「それを提案したってことは……あんた達なら出来るってことよね?やる覚悟があったって事よね?人にやれって事は、逆に自分達がやれと言われる覚悟が常にあったって事よね?」

 

うわっ!パッショーネ方式で攻めて来やがった!確かに出来るよ?出来るけどさ!

 

露伴「任せておきたまえ。コースとかルールは既に僕の方で考えてある。僕が空条徐倫から任されていたのはそこだ。観客達に満足してもらえるような特殊コースやルールを考えておいてある」

 

ろ、ろ、露伴先生!?

 

朋子「いやぁ、あんた達はやっぱり特殊ルールでやってくれないと面白くないわ」

 

静「マ、ママ!?ちょっ!それっ!やめて!」

 

徐倫「ちなみに、八幡?これ、ジョルノ君から預かってるから」

 

ん?ジョルノのヤツ……何を……

 

ジョルノ(便箋)『君達の覚悟は見せてもらった。僕は楽しみにしている。君には貸しがあったはずだよね?』

 

ジョ・ル・ノォォォー!文化祭の借りをここで使えと!案外カワイイ内容で助かったと言うべきか!逃げればまた芥子畑潰しとか敵対組織とのドンパチに巻き込まれるんだろうなぁ………乗るも地獄、反るも地獄かよ…。泣けてきた。

 

静「何で私まで!?」

 

徐倫「あれ?あの時はあんた達二人がジョルノ兄さんに借りを作ったような物じゃないの?爆弾鬼ごっこが無くなっただけでも良心的だと思うけど?」

 

静「イヤァァァァァ!」

 

八幡「相棒………死ぬときは一緒だぞ……」

 

静「ハッチィィィィ!」

 

そして互いににらみ合う。

 

八幡「クロスカントリーでボコにしてやる」

 

静「障害部屋でワナにはめてやる」

 

八幡「玉割りは(たま)割りで良いよな?」

 

静「格闘はスタンドあり?」

 

八幡「柔道大会のような生ぬるい技で終わると思うんじゃあ無いぞ?」

 

静「全部やってやるよ!ハッチィ!」

 

がルルルル!

二人でメンチを切り合う。

 

雪乃「良いんですか?既にめちゃめちゃ言ってますけど……」

 

朋子「良いんじゃない?より面白くなりそうだわ」

 

徐倫「もう好きにやらせるわ。こいつららしいじゃないの?」

 

雪乃「この二人限定なのは?」

 

徐倫「コイツらとあんたらじゃあ、勝負にならないでしょ?後は川崎くらいだけど、釣り合う波紋使いがいないじゃない。後は弟の大志とジジイとマーチと陽乃くらいだから、話にならないでしょ?」

 

雪乃「確かに……」

 

この競技を二人だけでやれと……鬼だわ。

 

結衣「ちょっとちょっと!それどころじゃあなさそうだし!」

 

由比ヶ浜に声をかけられて見てみると、相模は文実のヨッ友である書記(解雇組)の二人の所にいた。

 

相模「あ、あのさ………担当なんだけど、うちと同じで棒倒しに参加して欲しいなって……」

 

文実の時でも解雇になる前はつるんでいたのだ。この体育祭運営委員会でも近付くのは必然と言っても良い。

だが、相模もわかっているのだろう。以前とは距離感が違うと……。

遥とゆっこはちらと互いに目配せすると、図ったように同じ事を言った。

 

遥「え、うちらは…」

 

ゆっこ「部活もあるから、準備が大変そうなのはちょっと……」

 

分かっていたのだが、開いてしまっていた距離に相模ももの悲しい顔になる。だが、負けじとすぐに笑顔を張り付けた。

 

相模「え……えー?でも、そうすると後の結構ショボいよ?」

 

相模が言うと、ふたりは同期していたように、まるであらかじめパート分けでもされていたかのように、やんわりと断っていくための手を打つ。

 

ゆっこ「うん、そうなんだけど。大会とかあるし、さ」

 

ハッ!だったらこっちは社員の命を預かった社畜だっての。

 

遥「やっぱり次官の融通がききづらいから派手目な方のはちょっと…」

 

ゆっこ「あ、でも、南ちゃんは気にしないで好きなのやっていいよ」

 

相模が手を出せない、部活という領域の問題を繰り返し繰り返し持ち出し、最後は相模に対する気遣いを見せて噺を強制終了させる。

その手順はどこか詰め将棋じみていた。

 

静「まぁ、ここに来させられている段階で部活内での立ち位置なんて見てとれるってものだけどね。いてもいなくてもどっちでも良い存在じゃあないの?案外、部活の方もいなくてせいせいしてるかもね?退部届けの書き方、教えてあげよっか?モンキーみたいだし」

 

遥「誰達のせいだと………」

 

ゆっこ「あんたらのせいでうちらは………」

 

文実解雇組の怨嗟の目がこちらに向く。

はっ!また圧力をかけられたいか?

 

静「あれれぇ?誰達のせいだってぇ?真面目に文実をやらなかった人達のせいだよねぇ?つ・ま・り・自分達のせ・い♪オッケー?」

 

うわぁ、ヒラヒラと良い笑顔で手を振って答えやがった。二人のヨッ友の顔が屈辱で歪む。

 

遥「くっ!」

 

静「あ、図星?ごめんねー」

 

まったく謝罪をする気がないジョジョのかるいごめんねーは余計に相手の神経を逆撫でする。

 

結衣「す、スタッチがヤバい!相手に手を出させて返り討ちにしようとしているヒッキーみたいだ!」

 

よくわかったな?俺がやるかジョジョがやるかの違いだわ。うん、ジョジョは主人公に格上げして最近出番がうなぎ登りだな。仗助の時は扱いの難しさでそれほど出番なかったけど。

 

結衣「おーい、さがみん。打ち合わせー!スタッチもだよ!」

 

相模「あ、うん、いくいくー。ジョースターさんも早く早く!」

 

相模が由比ヶ浜の意図を察してジョジョの袖を引っ張って首脳部側に戻ってきた。

 

静「チッ!始末するチャンスだったのに…」

 

二人「ビクッ!」

 

殺気を送ったな?二人の顔が青ざめている。

興味を無くしたのかジョジョは相模に連れられるまま、戻ってきて俺達も打ち合わせを始めようとする。

 

材木座「のう、八幡。我はいったいどうすればいいのかな」

 

八幡「まぁ、騎馬戦の事も詰めるし、いてもらった方が都合良いんじゃね?」

 

答えると、材木座は頷き、手近な椅子にどかっと座る。まあ、材木座はこれで良いが、海老名はどうするか…。ちょっと強めに波紋を流したから気絶から覚めてないかもな。戻られても困るけど。

相模とジョジョが席に就くと、首脳部側の打ち合わせが始まる。

必要な役職を確認し、担当を決めていく。各競技を行う際の人員整理あたりは現場班に任せてしまってもいい。

問題となってくるのはその他、救護や放送、また当日までの製作物製作や会場設営あたりだ。これについても首脳部だけで回すことはできないので、それなりの量を現場班の方に仕事を回す必要がある。

めぐり先輩が例年の内容を参照しつつ、説明すると、相模が頷いて次の議題に移ろうとする。

 

相模「じゃあ、ほかに必要な役職をものは…」

 

雪乃「目玉競技は全校規模なわけだし、現場総動員することになるわね。これについては、男女それぞれ全員が動員ということで良いかしら?」

 

相模「あ、そうだね」

 

雪ノ下に言われて気づいた相模がすっと立ち上がる。既に現場は玄蕃で割り振りを決めにかかっている。早めに伝えて仕事量の総量を伝えておかねばならない。

 

相模「すいませーん。目玉競技については全員参加でお願いします。担当は持たなくてそれ以外のものを選んで書いてくださーい」

 

相模の言葉に、現場班が少しざわっとした。あまりモチベーションが強くないのか、そのざわめきには否定的なニュアンスの方が強い。

その中で、ピタリと動きを止めるものがいた。

さっきまで相模と話をしていた、遥とゆっこだ。二人はそっと囁きを交わし、何かを確認して頷き合う。

二人が呼吸を合わせるようにして、一歩前に出た。

 

ゆっこ「あのさ、南ちゃん。うちら、それ反対だから」

 

←To be continued




今回はここまでです。

文化祭同様に波紋が広がっています。オーバードライブ並に波紋が広がっています。

これも原作同様です。救われないことに…。


それでは原作との相違点。

八幡の大将選出潰しにめぐりも同意→八幡なら問題ないだろ?的な理由で大丈夫ではないかという。大分毒されました。

相模の女子目玉競技に騎馬戦を提案するのは原作通り

相模は不穏な空気に気が付かない→ウルフスとの戦いに二度も身を投じたせいか、少しは空気が読めた

相模は空気を読めず、自分の意見が通った事で上機嫌に議事を進める→八幡が押し通せと無理矢理進めさせる。理由は再び決を取る時間も惜しければ、新しい案を考える時間も無いため

八幡と静が熱○行進曲と○血新記録の競技を単独でやることになった。ドッヂボールやサッカー、ホッケーをやらなくてすんだだけでもマシ?なお、二人用の特別競技に関しては近くのスポーツセンターで、康一や陽乃達が建築部門を使って準備する。完全に職権濫用

静の挑発

遥達が否定的なのは相模の遅刻から始まった不信感から→八幡達へのアンチテーゼ。悪意を集めるのは確実に成功しているが、体育祭運営委員会で障害になるとは…

別に文実の人間は解雇されていない→文化祭の編で展開した大粛清のせいで解雇組が発生。運営委員会に回されたのはその末に部活でも立場を失ったもの達が大半。当然逆恨みをされている。

それでは次回もよろしくお願いいたします。


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