やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

393 / 731
康穂編から体育祭編へと戻ります。


世界一ぃぃ!

side比企谷八幡

 

アルミラージ戦からいくばくかの時を経たとある放課後。

体育祭運営委員会の会議室は異様な雰囲気に包まれていた。

ついに、決戦の時が来たのである。

東、元ドイツ軍人、材木座義輝。

西、法王の緑、海老名姫菜。

クソオタゲルマン軍人対ハイスペック腐女子という、悪夢のようなドリームマッチが幕を開ける。図らずもマッチメイキングしてしまった俺達は会場のセッティングをしていた。会議室前方のロールスクリーンを下ろし、プロジェクターの暖気をし、パソコンの接続を確認。実際に投影をチェック、とそれぞれの仕事をこなす。

企画班の下っぱのみなさん。いつもお疲れ様です。雑用の仕事の重要さをしみじみ噛み締めた。

最後に雪ノ下がレーザーポインターのオンオフを確認すると、ジョジョに合図を送る。

それを確認したジョジョは、めぐり先輩に声をかける。

 

静「めぐり先輩。こちらの準備終わりました」

 

めぐり「つーん!」

 

静「あの……めぐり先輩?」

 

めぐり「つーん!」

 

めぐり先輩は先日のアルミラージ戦の宴に呼ばれなかった事を拗ねており、まだ怒っている。

 

八幡「おーい、めぐりセンパーイ?」

 

めぐり「週末の集まり、呼んでくれなかった冷たい人達なんて知らないもーん」

 

露伴「まったくだ。康穂を讃える祝宴に僕達を呼ばないなんて……僕は君を信じていたというのに…」

 

あちゃー………確かに急だったからとはいえ、声をかけなかったのはまずかったか…。忘れていたとも言えないしなぁ。

 

いろは「ごめんなさい。今度はちゃんと呼びますから!ほら、露伴先生は忙しいですし、めぐり先輩との夫婦の時間は大切だと思いますし…」

 

露伴「誰が夫婦だ!一色いろは、勘違いを吹聴されては迷惑だ!名誉毀損で訴えるぞ!」

 

めぐり「そ、そんな露伴ちゃん!酷い!私とは遊びだったの!?ヨヨヨヨヨ……」

 

上手いないろは。これを狙って夫婦と言ったのなら、抜け目のない策士と言わざるを得ない。

 

露伴「くっ!人聞きの悪い!一色いろは!お前は東方仗助並みに僕の敵と認識した!」

 

いろは「えー、そんなことをないですよー?わたしは露伴先生とめぐり先輩の幸せを願ってますしー、露伴先生だってめぐり先輩を大切にしてるじゃあないですかー。もう立派に夫婦だと思うんですよねー?」

 

露伴「く………この女は………肯定しても否定しても地獄じゃあないか!」

 

いろは「いえいえ、露伴先生?めぐり先輩を逃がしたら、もう結婚出来ないですよー?杉本鈴美さんが、憧れのお姉ちゃんが他の男の人の物になっても良いんですか?」

 

露伴「うぐ………」

 

口をつぐむ露伴先生。

 

めぐり「露伴ちゃん………私がいなくなっても…もう露伴ちゃんは良いの?杉本鈴美がいなくなって寂しいって言ってくれたのは…嘘だったの?」

 

露伴「!!!ええい!覚えてろ!一色いろは!ああ、寂しいよ!僕だって君にいなくなってもらいたくないさ!」

 

カチッ!

ボイスレコーダーを見せて露伴先生に見せるいろは。

あちゃー、言質取られたよ露伴先生。

 

いろは「婚約成立です!プロポーズ、頂きました!」

 

めぐり「露伴ちゃん………嬉しいよぉ!」

 

ガバァ!

おーい、そろそろ人が集まり出すんですけどー?

 

露伴「くっ!一色いろは!貴様、嵌めたなぁ!今すぐそれを寄越せ!ヘブンズ・ドアーを…」

 

いろは「ボイスレコーダーを返せば、許してくれるんですかー?」

 

露伴「もちろんだ、「でも断ります♪」なにぃ!」

 

元祖「だが断る」の露伴先生にこれをやるか!

ジジイに対して「次にお前は…と言う」を言うのと同じくらいの型破りだぞ!

 

いろは「わたしがもっとも好きな事の1つに、自分が強いと思っている者に対してノーを突きつける事です♪大体、ダメですよー?矯正施設の試験官が、スタンドの悪用をしてしまったら示しが付かないですよー?」

 

露伴「ぐぐぐ………前から思っていたことだが、一色いろは……僕は君のことが嫌いだ」

 

いろは「上等ですよ~?」

 

おかしい。いろはってこんなキャラだったっけ?

 

露伴「八幡くん!今すぐこの女とは手を切るべきだ!」

 

八幡「いや、それ、すごく困るんですけど…」

 

もう今さらいろは以外は考えられないんだよな~。

だって、もう完璧に俺達って夫婦じゃん?一緒にいる時間もそうだし、下手な夫婦よりも夫婦してるじゃん?

留美、けーちゃんくらいの子供がいてもおかしく無いくらい一緒にいるじゃん?

それを今さら別れろって言われてもさー…。いくら露伴先生でもそれは聞けないですよ。

 

徐倫「これってジョルノ兄さんが仗助兄さんの外堀を完全に埋めた手段(第二章参照)……類は友を呼ぶ…よね」

 

ガラガラ!

 

あれ?仗助?

ポン♪

 

仗助「ようこそ、ジョースケの世界へ……」

 

スタスタ…

ガラガラ、ピシャッ!

 

仗助よ……それを言うためだけに来たのか?

 

いろは「もちろん、アーシスには拡散完了です♪」

 

露伴「東方仗助!一色いろは!」

 

八幡&静「南無……」

 

チーン♪っと、俺達は露伴先生に対して八幡が手を合わせる。もう、この流れは無理。止められない。おそらくはもうジジイあたりが式場とか日取りとかの手配を指示していてもおかしくない。

 

露伴「本当に君達は良いコンビだな!むしろ君達がくっつけば良いんじゃあないか?」

 

八幡&静「え?いや、それすごく困る。今さら無理」

 

もうアチコチ通知出してるしなぁ。俺といろは、仗助とジョジョ。

いやいや、そこらのカップルと同じように扱われても困るんですけど。

俺達二人って、政治経済界にも影響ありますからね?俺達の結婚って政略的な部分も含まれてますから、別れるにしたって手続きとか面倒だし、損害が大きいですからね?

今さらくっつけと言われても方々に迷惑がかかるし、何より互いにその気が無いんだよなー。何だかんだでいろはといるのが一番楽だし、落ち着くんだよなー。

 

いろは「と、言うことで、これでオッケーですか?めぐり先輩?」

 

めぐり「ありがとー!いろはちゃん!もうバッチリ許しちゃうよ!?」

 

露伴「ちょっと待て!僕は納得しないぞ!城廻めぐり」

 

ポン♪

俺が露伴先生の肩を叩く。

 

八幡「露伴先生……夫婦の先輩として言います。嫁にはですね、勝てないんですよ……」

 

露伴「ぐ………」

 

ここで露伴先生はガックシ項垂れる。

いや、もうね。ハーレムとか作ってる比企谷八幡にもの申したい。

嫁には勝てないんだよォォォ!

惚れた弱味というのもあるけど、どうあがいても嫁には頭が上がらないんだよォォォ!

勝てない存在を沢山作ってどうすんの?マゾなの?

武家社会とかでも裏では嫁に勝てなかったんだよ?

 

めぐり「露伴ちゃん?」

 

露伴「何だ……」

 

めぐり「私、幸せだよ?」

 

露伴「うっ!」

 

落ちたな……露伴先生。めぐりっしゅされたな。婚約、おめでとうございます。

ここでタイミングよく役員達がぞろぞろ入ってくる。

 

めぐり「それでは、みんな揃ったことだし、相模さん。お願いするね?」

 

相模「え、ええ。そ、そうですね……」

 

今日から相模一人に進行は任される。その様子は緊張というよりは怯えているように見える。うん。わかる。

相模が怯えている理由は一人で進行を任されるというポジションじゃあなく、横にいるやる気満々の海老名のせいだ。うん、俺も怖い。こう、なんだろ。普通のやる気満々ならまだわかるんだよ。でもさ、なんか違うんだよな?笑い方もディオとタメはれるくらいの邪悪さを秘めているし。

 

相模「ね、ねぇ……こいつ、ひなちゃんだよね?先日のアルミラージと凛々しく戦ったひなちゃんだよね?」

 

八幡「いつもの事だ……もう諦めた方が良い」

 

海老名の早く早くというプレッシャーにドン引きして顔の色んな部分をひくつかせる相模。うわぁ、俺だってイヤだー。この議事進行。

 

相模「じゃ、じゃあ、ひなちゃんと材木座君、よ、よろしく……」

 

海老名「まかせて!」

 

材木座「ふん!我がプレッシャーに飲まれると思うでないわ!」

 

そう言うということは、既にプレッシャーを感じていると周囲に公言していると同義である。

すげぇ。ウザさに定評がある材木座ですら海老名のプレッシャーを与えてるのかよ。海老名すげぇ。だが、スクリーンの横に移動すると、さすがに前世で揉まれただけあって材木座も普段通りになり、互いに顔を合わせると不敵な顔になる。

なんかデジャヴ。何だろ?

 

いろは「センパイとジョースター先輩が何かで争うと、大抵ああいう顔になりますよ?」

 

徐倫「それが更に被害を拡大させるのよねぇ。不敵に笑えば笑うほど…困ったことに」

 

知りませーん。

いよいよプレゼン対決が始まる。

まず先手を取ったのは材木座だ。

大抵、こういう場合って先手を取った方が負ける感じなのだが。ほら、究極と至高の対決も大抵そうでしょ?

材木座はスクリーンの前に立ち、咳払いを1つ。

へこっとした首だけ下げる礼をすると、パワーポイントで作ったレジュメを表示させた。そこには『体育祭競技提案』と案外まともなタイトルがある。筆文字っぽいフォントだが、それ以外は凝ったところがなさそうだ。

とはいえ、わざわざプレゼン用に作ってくる辺り、真面目にやってきたんだなと感心する。

 

材木座「諸君!提案する内容はこぉちらだぁぁぁぁ!」

 

いきなりシュトロハイムモードに入るんじゃあない!やかましい!騒がしい!マイク無しなのにスピーカー以上に部屋中に響く音ってなにっ!?

直前まで静かだったところにこの騒音!これは耳にダメージがくる!エコーズact1並みにくる!広瀬親子の話は終わったよね!?

思わず皆が耳を塞ぐ。

 

材木座「千葉市民対抗騎馬戦!略してぇぇぇ!チバァセェェェェン!」

 

み、耳を塞いでいてもうるせぇぇぇぇ!

 

材木座「そのむかぁぁぁし、千葉では里見氏と北条氏の争いがぁぁぁぁあったぁ!その歴史性を考慮した素晴らしい競技だァぁぁぁぁ!我の考える競技はせかぁぁいぃぃいちぃぃぃぃ!」

 

あかん、完全にシュトロハイムモードだ。

 

八幡「やかましい!鬱陶しいぞ!ド阿呆が!大体当時はこの辺、海だっただろうが!で?そこまで力説したからにはルールとかも固めてあるんだろうなぁ」

 

俺は次のスライドを出そうとエンターキーを叩こうとすると、材木座がその手を止めて来る。

 

材木座「あ、いや、待て八幡!ほら、ちょっとなんか恥ずかしいから!そのスライドまだちゃんと出来てないから!途中段階で落書き!落書きだから!」

 

ええい!うるさい!押してやる!押してやるぞ!今だ!

 

八幡「あ、ポチッとな♪」

 

本体の手をつかんでも無駄無駄無駄ぁ!

スタンドでエンターキーを押します♪またまたやらせて頂きましたァん♪

 

材木座「ドジこいたぁぁぁぁぁぁ!」

 

材木座が絶叫し、絵と写真のコラ画像っぽいものが写し出されるが………。普通のよくある騎馬戦の写真に、鎧武者が上に乗ってるえらく雑な絵ヤツが………。

 

露伴「絵の才能は恐ろしく無いんだ……僕の弟子だというのに情けない。そのくせものつくりは得意というのがより訳のわからなさを強調させる」

 

うん、一生懸命書いたのはわかるよ……わかるんだけどさ、クオリティが恐ろしく低い。まぁ、この際絵の出来なんてどうでも良い。材木座がザ・ワールド中に先に進めることにした。

 

八幡「えっと?ルールは普通の騎馬戦とほとんど同じだが、鎧を着てコスプレした大将騎を複数決め、その大将騎を倒した数で勝敗が決します。これにより、通常の騎馬戦よりも戦略性が増し、見た目のインパクトを演出することが可能です。…絵はともかく、ルールの方は結構まともじゃあないか」

 

最後に書かれていた「大将桜に浪漫の嵐」の部分はさすがに可愛そうだったのでやめてあげた。期待通りのクオリティじゃあないか。絵を露伴先生に書いてもらえばより完璧だったが、さすがにこの人が書くとは思えんしな。むしろフリーズしたあとの悶絶ぶりをスケッチしているくらいだし。さすがは露伴先生!

 

めぐり「さすがは義輝くん♪シンプルで分かりやすいし、イメージもしやすいね♪露伴ちゃんの弟子なだけあるよぉ♪」

 

材木座のその才能は露伴先生云々というよりかはシュトロハイムの発想力なんですけどね?

そしてめぐり先輩が言うにはクオリティはともかくとしても雑コラもも概略を伝えるには充分だったらしい。パチパチとめぐり先輩が拍手をすると、それが会議室全体に薄く広がっていた。

まぁ、なんだ。ちゃんとやってもその表現の仕方が間違っていると評価されないことが多々ある。本来、その表現の仕方をきちんと教えてやるべきだと思う。そうすれば授業でトラウマを作ることが少なくなるだろう。

そしてこいつは誉めると調子に乗るところは盟友のジジイにそっくりだ。ここも戒めてやるべきだろう。

 

材木座「我がプレゼン能力は世界一ぃぃぃぃ!」

 

せっかく高い評価を受けたと言うのに、拍手がピタリと止み、ヒソヒソとキモいとか言われてしまう始末。

 

八幡「やかましい!せっかく悪くなかったから感心していたのに鬱陶しいぞ!このターミネーター!」

 

悦に入った材木座の首根っこを掴んでズルズルと席に戻した。

 

露伴「なるほど。コレが調子に乗った栄光とその転落の末路か。良い絵が描けそうだ」

 

この人もね。

コレがなけりゃあ、ホントに良い師弟なんだけどな。変なところで残念なのはなんでだろ。

 

天の声「お前が言うか!」

 

←To be continued




はい。千葉戦の材木座編です。

ただのキモオタ材木座をシュトロハイム風にまとめてみましたがいかがでしょうか?

また、露伴先生が嵌められました!婚約おめでとう!


それでは原作との相違点を。

プレゼン準備の段階でメンバーは揃っている→その段階で準備が整っていないなんて言語道断!集合前。

雪ノ下に声をかけられてすぐに会議を始めるめぐり→ホテルロイヤルオークラに呼ばれなかったのを拗ねている。本当はアルミラージ戦に加わる予定だったのを忘れていた。めぐりファンの皆さんすみません。

相模が海老名に怯えていたのは原作通りだが、更に海老名が暴走している。

相模は材木座を知らない→知っている

材木座は緊張しながら前に出る→海老名にドン引き

材木座は緊張して喋れなかった→シュトロハイムモードに突入した

八幡が通訳→突っ込みに回る。ついでに承太郎と戦○無双の北条○康ネタも入れた

八幡がエンターキーを押したのは事故→わざと

材木座は写真を雑にコラった→鎧は自作の絵だが、露伴が諦めるほど才能なし

八幡はサクラ大戦ネタを無視した→流石にあわれだったので止めてあげた。性悪にしては珍しく

拍手されて材木座がキョドる→シュトロハイムモードなので「世界一ぃぃ!」

キモい満足の仕方で会場の拍手が止む→「世界一ぃぃ」に会場全体がドン引きする。更に露伴の観察


それでは次回もよろしくお願いいたします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。