やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

382 / 731
城廻めぐりからの依頼1

side比企谷八幡

 

目は口ほどにものを言う。というが、より正確に言うならば口よりもよほどうるさいのは視線だ。

既に授業を終え、帰りのSHRの時間になっていた。小学生風に言うと帰りの会。

今日も粘りつくような視線を感じてちらりと目線だけで後ろを向く。波紋の戦士をやっていると、こういうのには非常に敏感になってしまう。長所と短所は表裏一体。ままならぬ物だ。

視線の主はクラスの女子達のもの。なんだよ、人気者なのかよ?モテ期到来でもしたのん?…と思うかも知れないが、実態は違う。

視線は俺だけじゃあなく、隣のジョジョ(席替えした)にも向けられており、視線の種類も侮蔑や嘲笑が含まれているからだ。中には海老名、三浦、戸塚、川崎にも向けられているのがチラホラある。

もっとも、メインは俺達コンビに向けられているが。

 

静「わかっていたけれど、ウザイね?」

 

八幡「中学の時と同じだろ?前は折本。今は相模」

 

静「救いが無いのは両方とも本人のせいじゃあ無いという点だよね」

 

八幡「そうだな」

 

今の状況は折本の時と非常に酷似している。

主な視線の主は相模の取り巻きの女子グループ。相模本人はこの状況に罪悪感を感じていて、俯いている。それがまるで傷付いています凹んでますと言っているように見えるのが余計に取り巻き達をヒートアップに拍車をかけている。

本人は「違う」「比企谷達はうちに何もしていない」「逆に助けてくれた」と言いたいのだが、この状況は俺達がむしろこうなるように意図的に仕向けている。だから、相模は俺達を庇うこともできない。それが相模を余計に暗くさせてしまっているのだから申し訳ない気持ちになる。

 

葉山『あまり、こういう空気は好きじゃあないな。俺は君達を守りたい』

 

と、葉山に言われた事もあるが、絶対に止めろと頼んだ。特に雪ノ下が。

 

雪乃『止めなさい葉山君。これも作戦なのよ。それに、あなたが動いてしまっては、また繰り返すわ。そうなれば、もっと私達への悪意は強くなる。自然に悪意が無くなるのを待つのがベストなのよ。今のあなたなら、わかってくれるでしょ?』

 

葉山『済まない……俺はまた繰り返す所だった。アーシスのみんな。俺に何か出来ることがあったら言ってくれ。出来る限りの事はする…済まない』

 

八幡『違うだろ。俺達はもう、運命共同体だ。済まない……なんて言葉は聞きたくない』

 

葉山『そうだな。ありがとう』

 

静『気持ちだけは受け取るよ。葉山の力が必要な時が来たら、遠慮なく頼らせてもらうから。ありがとう』

 

俺達は文化祭において、確かに立場はわるくなった。だが、それだけではない。これまで敵対に近かった葉山と相模という新しい仲間が出来た。

有象無象なんかの悪意を向けられるよりは、はるかに大きな収穫だと俺達は思っている。

 

徐倫「連絡事項は以上よ。それじゃ、今日は終わり」

 

担任の空条先生の連絡が終わり、ルーム長の号令が終わると、皆めいめいに立ち上がる。

すぐに出ていく者、取り敢えず近くの席の人達と喋り出す者、ゆっくりと帰り支度を整える者と様々だ。

放課後になってこそ、より高校生らしさ、というのは滲み出てくる。

なかでも教室の後方に集まっている連中、葉山や戸部、そして相模達はまさしくその王道を行っていた。

……かつては。

だが、少しずつ葉山グループには変化が生じ始めていた。

 

葉山『君達の関係を見ていたら、俺達の友情って何だったんだろうな?誰もが本音で話している。言いたいことを言い合っている。あれが、本物……というものなんだろうな』

 

前に葉山はそう漏らした。それに対して俺は葉山にこう返した。

 

八幡『それを本物に変えて見せるんだろ?それは俺達では出来ない、お前だからこそ出来る事なんじゃあないか?』

 

葉山『そうだったな』

 

俺と葉山はそう言って微笑みあった。

そして、葉山は変わり始めている。みんなの葉山隼人を演じるだけでなく、更に周囲へ一歩踏み出すようになった。

俺達とは違った、新たな黄金の精神の誕生だ。俺はその葉山に、少なからず期待をしている。

形だけのみんな仲良く…ではない、可能な限りの調和を目指す…という方針に切り替えたとでも言うべきか。変わらないように見えて、中身は大きく変わったように思える。それは、いつか俺達をも呑み込むのかも知れない。

変わる事が悲しいことかも知れないが、人は変化せずにはいられない。変わらない自分を認める事も重要だが、変わっていく自分も認める事もまた、重要なのでは無いかと最近では思えるようになった。

この俺が……ね。やはりそれは、アーシスのみんなや5つの世界で出会ったあいつらのお陰かもしれないな。

 

結衣「じゃあ、部活、行こ?」

 

俺達の周囲に集まって駄弁っていた由比ヶ浜。

 

三浦「あー、そうだね。あ、あーし、土曜に買い物行くから」

 

結衣「うん、オッケー。あたしも行く行く。ヨッシーもオッケー?」

 

情報が欠落している三浦の言葉を上手く補完しながら由比ヶ浜も返す。アヴドゥルってむしろ説明キャラポジだったはずなのに、変わりすぎだろ…。

 

三浦「そのつもりだし。ヨシオにも息抜きひつよっしょ?ジョジョ達はどーするん?」

 

静「ああ、悪いけど今週は仕事入ってるから無理」

 

八幡「年末には東北支部との合同クリスマスイベントが控えてるからな。その打ち合わせだ。そうだ、場合によってはバイトを頼むかも知れんわ」

 

沙希「あ、あたしやる。けーちゃんや大志に何か買ってやりたいし。っていうか、そろそろ行かない?仕事あんでしょ?」

 

言いながら俺達は立ち上がる。一方で帰り支度を済ませた葉山達が俺達の脇を通り過ぎる。葉山はスタンドを出し、それで話しかけてきた。

 

O・S「今日は部活に行く。南を頼む」

 

それに対してジョジョもアクトンを出して返答する。

 

A・C「はいよ。任せて」

 

本体で会話をするわけにはいかないのでスタンドで会話をする俺達。

葉山グループが出ていく時、クラスメイト達が一言会話して、別れの挨拶をしていく。参勤交代かよ。

が、そういうのは葉山達に対して友好的な連中だけだ。別に仲良くない連中は反対側の扉からスッと消えていく。

さて、今日も楽しい楽しい部活(仕事)の時間と洒落込みますか。

俺達は葉山達と距離を保ちつつ、奉仕部の部室へと向かった。

 

キングクリムゾン!

 

俺達が部室に到着すると、少し前に到着していた相模が駆け寄って来た。

 

相模「今日もありがとう。よろしくね?」

 

三浦「礼なんて要らないっしょ。そんよりかさー、お茶でもしたあとに訓練するし」

 

雪乃「お茶なら用意が終わってるわ。こんにちは、皆さん」

 

結衣「やっはろー!ゆきのん!」

 

開口一番で雪ノ下に抱きつく由比ヶ浜。

 

雪乃「いつもながら暑苦しい……」

 

もうそれ、様式美だな?

 

八幡「おっす。今日も愛してるぞ、いろは」

 

いろは「わたしもですよー♪ハチ君♪」

 

俺はいろはの頭を撫でながら自分の席に着席をする。

 

静「お疲れ様♪お兄ちゃん♪今日も愛してるよ?」

 

仗助「へいへい。俺もだよ」

 

手が離せないのか、仗助はパソコンから目を離さずに応えるが、しっかりと手だけはジョジョの頭を撫でる辺りは立派に千葉の兄貴の役目を務めている。

 

小町「お兄ちゃん♪小町にはー?」

 

八幡「世界でいちばんあいしてるよー(棒読み)」

 

小町「うわーテキトーダナー」

 

だってすぐに付け上がるじゃあないか。後が面倒なんだよ。

 

徐倫「おっ、今日も頑張んなさいよ?はい、お茶」

 

八幡「え゛……徐倫が……お茶?」

 

静「天変地異の前触れ?」

 

ゴン×2

 

徐倫「悪かったな!だったら二度と気を利かせねーよ!」

 

八幡「ナイスツッコミだ。サンキュー、徐倫」

 

静「いやぁ、徐倫お姉ちゃんとはこれがないと♪ありがとう♪」

 

徐倫「だから何で最初から素直に礼を言わないんだよ!」

 

静「1日1弄り?」

 

八幡「それがないと1日が終わった気になれんまである」

 

ゴン×2

 

徐倫「おじいちゃん!仗助兄さん!イーハ!こいつら何とかしてー!」

 

ジョセフ&仗助&いろは「無理(ですごめんなさい)」

 

むしろジジイは弄くる側だと思うのは気のせいか?

よし、調子が出てきた。

 

川崎「なんつー日課よ……ところで雪ノ下。紅茶に濡れ煎餅は合わなくない?」

 

雪乃「あら。意外と合うのよ?川崎さん。試してみてはいかがしら?」

 

沙希「まぁ、あたしもイギリス貴族だったから紅茶は好きだけどさ……ん?意外に合うじゃん」

 

濡れ煎餅は千葉の銚子の有名なお土産だ。

俺はパソコンを立ち上げながら、千葉の名物に舌鼓を打っていると、雪ノ下は難しい顔をして腕を組んだ。

 

雪乃「ジョースターさん達。データを送るから見てもらえるかしら?新しい相談が寄せられているのだけれど」

 

ん?無線LANを組んだ例のノーパソからデータが送られて来た。見てみると……

 

PN『めぐ☆めぐ』さんからの相談

 

今度はめぐり先輩かよ!

だ・か・ら!何で直接言って来ねぇんだよ!いや、生徒会室と部室は遠いから直接足を運ぶのは難しいのはわかるとしてだな、普通に電話なりして来いよ!せっかく生徒会室とのホットラインを繋いであるんだしさ!携帯だってあるし、シンデレラ・ハーヴェストを飛ばすなりあるでしょうが!

 

静「なんか、奉仕部のブームになりつつあるね…」

 

取り敢えず内容の確認だ。

 

体育祭を盛り上げる為のアイデアを募集してるよー。それと、今年は最後だから絶対かつよー。おー!

 

……公私が混ざりまくっている内容だった。前者はともかく後者は俺達でどうにも出来んだろうが。

前者は初めて寄せられたまともな内容の相談だったけど。

つうかグループLINEでも良くね?アーシス学生組の。

 

静「体育祭ね。もうそんな時期かぁ」

 

そう言えば帰りのHRで紅白分けてたな。

近頃は春や初夏に体育祭や運動会をやるところも多いそうだが、うちの学校は秋にやる。これが終わるといよいよもって冬の到来だ。俺達2年に限っては、すぐ後に修学旅行が控えているし、恐らくジョースター家が…主にジジイが面白半分で付いてくるだろうが。小中学校でもそうだったし、いろはや小町の修学旅行にも付き合わされた。つうか、毎年誰かの修学旅行に付き合わされてるよな?今年はけーちゃんとかも連れて来そうだ。大志は受験でそれどころでは無さそうだが。

体育祭も学生にとっては大きなイベントであることには変わりがなく、青春を謳歌せし者達にとっては楽しみな行事ではあるだろう。特に運動部の男子にとっては自分の活躍を女子にアピールできるポイントである。ここでカッコ良く決められれば俺にも彼女が……なんて妄想をしている男子も一人や二人ではないだろう。

意中の相手がジョジョや小町だったときは御愁傷様である。なんせ、活躍しようとして蹴散らされるのだから。

だが、女子、特に雪ノ下はそうでもないらしく、嫌そうに眉根を寄せる。

 

雪乃「嫌だったわよね。クラス対抗リレー」

 

あー、あったあった。中学の時とかやらされたな。

 

結衣「あたし、あんま足が早くなかったからキツかったなー」

 

戸塚「あー、僕たちにとってはそうでも無いんだけどね」

 

三浦「あーしら、昔から訓練してたしね」

 

へぇ……そうだったの?

 

八幡「そうか?嫌だったわ。あれ」

 

海老名「何で?波紋の戦士だから余裕でしょ?」

 

そうでも無いんだよ……。

 

沙希「あんたらも?あたしも嫌だったよ」

 

小町「やっぱりそうですよねー?」

 

海老名「だから何で?」

 

掘り返されるのか……あの黒歴史を。

 

仗助「それがよ、波紋の戦士だからこそ余計なハンデをこの三人は着けさせられてな?両手両足に囚人につけるような鉄球を着けさせられた上に、他の奴等の3倍や4倍も走らされたんだよ」

 

相模「うわぁ………」

 

八幡「もうね、重いのは別にどうでも良いんだけどな?何が辛いって、その鉄球が手足を動かす度に体に当たって痛いのなんのって」

 

材木座「聞いてるだけで我も痛くなってきたぞ…」

 

いやホント、あれって何のいじめ?

 

沙希「それでも順位を落とすと舌打ちをしてマジギレされるから、必死になって痛いのを我慢して走るじゃん?」

 

小町「やっと次の走者にバトンを渡せる!……って思ったら、そこでまた問題が起きるんですよー」

 

結衣「更にまた何かあるんだ!?」

 

静「だって私達も必死でしょ?だからトップスピードで次の走者に渡そうとするとさ、スクーター並のスピードだから、「はねられるー!」とか言って、次のバトン渡しの時に逃げられて、テイクゾーンを越えられて失格になるんだよねー。車は急には止まれないっつーの!」

 

八幡「気を使ってスピードダウンして安全に渡そうとすれば順位が落ちるし……ちっ!サッカー部の永山め!」

 

三浦「それ誰だし!何で個人名を出すし!」

 

ジョセフ「一度、本当に轢き飛ばしたしのう?」

 

戸塚「逃げずに受け取ろうとした人がいたんだね」

 

いろは「いいえ…。逃がさないようにジョジョ先輩の次の走者である永山先輩をハチ君がハーミット・アメジストで拘束したんです」

 

静「いやぁ、あれは凄く飛んだねぇ~。ダンプにひかれてもあそこまでは飛ばないよね~ってくらいに。当然失格になったっけ?」

 

いや、俺あいつ嫌いだったし。向こうも俺の事が嫌いだったろうけど。

 

八幡「ん?そう言えばあの後じゃあ無かったか?担任が体育教師で、ガチで勝ちに言ってたもんでさ、説教ついでにジョジョにセクハラ働いたのって」

 

仗助「ああ、あったあった。パッショーネ送りにしたよな?」

 

結衣「平然と言う事じゃないし!」

 

小町「ちなみに送ったのはキレた仗助お兄ちゃん。あれ?そう言えばさ、そのハンデって他校にも採用されたって聞いたけど、それって……」

 

沙希「あたしんとこだろうね?原因はあんたらだったのね……」

 

そりゃ悪いことしたな。

 

八幡「他にも騎馬戦ではどこのアーサー王だってくらいに重装装備させられたし?」

 

静「重いから騎馬が動けないとか言われてもねー」

 

小町「棒倒しではジャンプ禁止だし」

 

沙希「簡単に飛び越えれるからってねー」

 

八幡「障害物走なんて別コースを作られて、どこの特殊部隊かって言うくらいの障害を隙間が無いくらいビッシリ詰められてたよな?」

 

小町「五メートルの壁を飛び越えた50センチ先には泥沼を敷き詰められた有刺鉄線潜りだったよねー。せめて着地する隙間くらい作ってくれても良いじゃんかって思ったよ」

 

静「しかも息継ぎすら出来ないくらいの泥沼の深さと有刺鉄線の低さと要ったら……」

 

仗助「それが10メートルぐらいあったよな?」

 

相模「普通に溺れるじゃん…よく生きてたね……」

 

八幡「呼吸くらいさせろっての……しかもその特別コースを自分で作らされるんだぜ?…他には」

 

三浦「もういいから!聞きたくねーし!あんたらの体育祭が録でもないことだけは良くわかったし!」

 

えー?まだまだ色々あるんだけどなー。

 

雪乃「そんなのを見せられる家族が可哀想だわ……」

 

いや、このうちの両親も含めてこのジジイどもは面白がってゲラゲラ笑ってやがったぞ?

 

結衣「と、とにかくめぐり先輩を呼ぶし!話が戻る前に早く!」

 

何だよ。もうちょい付き合ってくれても良くね?

まぁ、取り敢えずめぐり先輩を呼ぶか。

ジョジョは生徒会室とのホットライン電話の受話器を取った。

 

←To be continued




はい、今回はここまでです。
いやぁ、波紋の戦士を体育祭に投入してみたらどうなるかをイメージしたら意外にカオスでした。

それでは原作との相違点

八幡だけが悪意に晒されてる→八幡と、八幡と普段からつるんでいるアーシスが悪意に晒されてる

葉山グループの変化

由比ヶ浜のみが部活に向かった→ぞろぞろと連れたった

三浦の依頼を受けて観察中→三浦の依頼は解決済み

体育祭のアレコレ

それでは次回もよろしくお願いいたします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。