アーシスレギュラー陣の中ではけーちゃんの次に登場が遅かったりします。
side比企谷八幡
さて、決勝だ……といったところでハプニングが発生した。
露伴「義輝くん。締め切りを守らずに何をしている!」
露伴先生の急襲だった。
材木座「げ、げえ!露伴先生!後生です!今だけは…今だけはぁぁぁぁ!」
露伴「いいや!許さん!君は何度目だと思ってる!八幡君!彼を借りていくよ!」
露伴先生は材木座の汗に濡れた柔道着など気にも止めず(案外リアリティーの参考にしているかもしれない)、材木座をズルズルと引き摺って行く。
八幡「え?ちょっ……露伴先生!?」
「え?露伴先生って……」
「ピンクダークの少年の岸辺露伴先生…?」
「そう言えば大会の告知の挿し絵は岸辺露伴先生の絵っぽかったけど……本物の露伴先生の絵!?」
いきなり登場した露伴先生に会場は騒然となる。
そりゃあ、まぁ………不意にこんなところで有名人が現れ、キモオタ系の男を連れ去ろうとすれば騒ぎの1つも起きるだろう。
結衣「ちょっ!露伴先生!待つし!」
露伴「ん?何だね由比ヶ浜結衣。僕達はとても忙しい。君を相手にしている暇なんて無いんだが?」
結衣「中2を連れていかれたら困る!ヒッキーだって用事が…」
露伴「それなら安心したまえ。彼の唯一絶対の存在に来てもらうようにお膳立ては整えてある。柔道という点では、そいつに任せれば良い。何なら、いっそ…ヘブンズ・ドアー!」
何を思ったのか、露伴先生は戸塚の顔を本にしてしゃかしゃかと書き込む。「一時間は立ち上がれない」と。な、何で!?
露伴「静・ジョースター。これで君も出れるだろ?不測の事態によってのメンバー交代なのだからね」
勝手な事を言って露伴先生は今度こそ本当に材木座を引き摺って出ていってしまった。
戸塚「ろ、露伴先生……な、何で……」
倒れ伏した戸塚。えー……まじぃ?
静「……仕方ないね。私が出るか!」
八幡「えー?お前たちが~?だってお前ら……」
そもそも性別が違うじゃあないか。
どうやって出るんだよ。
静「チッチッチッ。ハッチ、大会規定では別に男女混合チームを禁じてないし、メンバー交代に関しても触れてないから♪」
まぁ遊びだしな。さて、あと一人は…。
葉山「ヒキタニくん。君さえ良ければ俺が…」
八幡「いや、良い。気持ちだけ受け取っておく」
葉山「宛はあるのか?」
八幡「……ああ。現総武高校メンバーにおいて、俺にとっての最高の三人目がな」
気配でわかる。今日はいないはずだったそいつは、何故か急いでこちらに向かってきていた。
バァン!
いろは「ハチ君!露伴先生から連絡が!暗殺者の毒で死にかけてるって本当ですか!」
は?そういう理由でいろはを呼び出したの?
ヤバくね?会社の仕事が。まぁ、小町も残っているから大丈夫だとは思うけど……。
キーーーン!
俺の頭が急に痛み出す。何かを思い出す…。これは…基本世界の情景?
一色『あ~!やっと見つけた~。葉山先輩~、部活出てくださいよ~』
!?!?!?
世界に……神がいるとするならば……粋な事をしてくれる……。
本来、基本世界の俺といろははこの時点では出会っていなかった……。
はずだった。
基本世界の比企谷八幡も一色も忘れたていたのか、それとも比企谷八幡……俺の事だ。覚えていたとしても忘れた振りをしていただけなのかも知れん。少なくとも、フラッシュバックしてきた光景での一色いろはは…葉山隼人を拐って行っただけだった。恐らくはそこで比企谷八幡という男を認識すらしていなかったのだろう。
いろは「………ん!…ハチ君!」
八幡「大丈夫だ。来てくれてありがとな…いろは」
いろは「良かった……無事なんですね?むぅぅ~!露伴先生…またケンカでのしてやります…見事に騙されました……」
八幡「いや、今日ここで俺といろはが会う。そこに大きな意味があったんだよ」
いろは「大きな意味……ですか?」
そうだ。俺にはその時が来ないと思っていた事。基本世界での比企谷八幡と一色いろはの出会いの時…。夏休みで消えてしまう俺が迎える事のないはずだった事が…ほんの些細なニアミスが存在していたなんて…。
八幡「今日、ここで、この時に……基本世界の比企谷八幡と一色いろはは出会っていた」
いろは「え……それは生徒会選挙のときでは無かったんですか?………うっ!」
いろはも俺の頭痛と同じ物を味わったようだ。
いろは「これが……基本世界の…本来の比企谷八幡と一色いろはの出会い……今日この時に……わたしとハチ君は出会っていた……」
今日この時、いろはがここに駆けつけて来た。方や相手を認識すらせず、方や危険物として認識した、なんとも間抜けな出会い。
だが……俺の心残りが、1つ。消えた。
八幡「フハハハハハ!」
いろは「ハチ君!泣いてる…?」
………行こう。俺の最高の女性と、俺の最高の相棒と共に…。
八幡「いろは……」
いろは「はい?」
八幡「決勝、材木座は連れ去られ、戸塚はヘブンズ・ドアーで動けなくなっちまった。俺とジョジョと一緒に、出てくれないか?」
いろは「……珍しく素直にお願いしてきましたね?ハチ君?」
八幡「基本世界の比企谷八幡と一色いろはの出会いに触発されたのかもな。やっぱり、お前が近くにいてこそ俺だわ」
いろは「何ですか?口説いてますよね?完全にわたしを口説きにかかってますよね?良いですよ。やることが柔道とか全然色気ないですが、今日、この時、この場所ならば仕方がありません。
基本世界の一色を真似てきたか。
さぁ、幼なじみトリオの出陣と行きますか。
ジョジョといろはは部室で着替えて来る。
互いに柔術の格好……紺の袴に白い胴衣。ジョジョは先日の徐倫の髪型を真似たヘアスタイルでやって来た。
八幡「城山。メンバー交代だ。先鋒は材木座義輝に代わって静・ジョースターに、中堅は戸塚彩加に代わって一色いろはだ。そっちもメンバーを代えても良いぞ?そうだろ?城山?」
城山「あ、ああ…」
そこで俺達は決勝に臨む。初戦はジョジョとモブ柔道部員。静・ジョースターという美女と組み合える事から相手が鼻の下を伸ばしているが…。
城山「始め!」
モブいも「うりゃあああああ!」
寝技にでも持ち込もうとしているのか、諸手刈りを仕掛けるが…。
静「ほっ♪」
それを跳び箱でも跳ぶかのごとく開脚跳びをするジョジョ。相手の背後でリサリサ立ちをする。
静「私に寝技を仕掛けたいの?甘い甘い♪私と添い寝を出来る男は一人だけしか許さない」
ジョジョが今度はミドラーさんの構えを取る。
モブいも「舐めんな!」
静「懲りないね。アマレス式タックル潰し!」
両足を後ろに引き、相手の諸手刈りの上から覆い被さるように乗る。相手はジョジョの胸の感触を背中で感じているだろうが…。忘れないで欲しい。ジョジョも俺側の人間であることを……。相手が鼻の下を伸ばせるのがここまでである。
ジョジョは相手の首、更に相手の腰にも腕を回して…。
そのまま相手の体をまっ逆さまに持ち上げる。首を絞めながらの変形……
静「ブレーン……バスター!」
自分ごと相手と倒れ込むプロレス技、ブレーンバスターの変形が決まる。
城山「は………は………」
静「かーらーのー?」
ブレーンバスターを喰らってダウンしている相手にジョジョは更に足を取ってアキレス腱固めを掛ける。
静「ド、ラ、ラ、ラ、ラ、ラ、ラ、ラ、ラ!」
ラが一文字増える度にアキレス腱固めの力が強まる。
あれは痛そうだ。そうか、ああいう技の決め方があったのか。初めて知った。
モブいも「ギブ!ギブ!ギブ!」
バンバンバンと床を叩いてギブアップ宣言をするモブいも。ジョジョの勝ちだ!
静「よっしゃぁ!勝ちぃ!」
ジョジョはガッツポーズを決めて雄叫びをあげる。
かっこいいぞ、相棒!
城山「静・ジョースター……」
城山はジョジョに対して指を向ける。
あれ?一本だった時って指を伸ばして宣言するよな?
城山「反則負け!」
静&八幡「えええええーーー!どこがだよ!」
城山「全部だ!ブレーンバスターも足間接への関節技も柔道では禁止だ!反則負け!」
え?そうだったの?初めて知った。
八幡「ならアルゼンチンバックブリーカー?」
静「ブレーンバスターではなく、パワーボムか変形パイルドライバーにするべきだった?」
八幡「もう適当に蹴り倒して壁に向かってジャイアントスイングで良くね?頭を何度も壁に擦り付ける微妙な距離で」
静「おおっ!?それナイス!」
城山「全部反則だ!やべぇ!噂の性悪コンビを舐めてた!ここまでアレだったとは思わなかった!」
「何だよ……また反則かよ」
「ブレーンバスターが反則なんてガキでも知ってるぞ」
「まともに受け身を取れなかった相手にそっからアキレス腱固めなんて容赦無さすぎだろ……」
「いや……でもすげぇ……女子が男子柔道部員相手にあんな綺麗なブレーンバスターを決めるなんて……」
「そこから流れるようにアキレス腱固め……」
「あの体勢に入ったらフライングパワーボムとかやらなかっただけでもあいつらにしてみたら良心的とまで言えるな……」
会場はブーイング半々の好意的な反応半々の状況だった。
だが、負けは負け。相手は散々アキレス腱をいわされて自力で立ち上がることができず、数人に運ばれて畳の外へ。そこで寝かされて泣きながらピクピク痙攣していた。
静「試合で負けたけど勝負で勝った!」
ゴン!
徐倫「試合で勝ちなさいよ!カッコいい登場が台無しじゃあないのよ!」
戸塚「安定の静ちゃんだよね……」
三浦「あの満を持して登場した感じがもしかしたらって期待したあーしらがバカだったし……」
味方の陣営の声もなんだか冷たい。
いろは「まぁ、ハチ君とジョジョ先輩ですからね。まぁ、私がイーブンにしますよ」
いろはが正座から立ち上がり、畳の中へと入る。
相手の津久井だか藤野だかは「まさかこいつも?」的な感じでガタガタ震えている。
いろは「安心してください。わたしは護身術程度の柔術しか嗜んでいませんので、破壊を前提とする技はあまり使用しません」
いろはが微笑んで対峙する。
城山「始め!」
藤野「もう女子だからと言って油断しない!」
藤野はいろはの襟を掴む。その手をいろはは重ねるように掴むと、体を返してひねり上げ、そして……
ダン!
気が付いたら藤野を投げ落としていた。
日本拳法にもある投げ関節技、手首返し。
腕の関節を決めることによって相手の意思とは関係なく自ら転げ落ちる技だ。
城山「ゆ、有効……」
背中から落ちていない為か、有効止まりで終わる。
技ありでも良かったくらいに綺麗に決まったんだがな。
藤野「く………寝技防御を…」
いろは「男性相手に寝技はやりません。やるのはハチ君に対してのみです」
ざわざわ……
おーい。貞操観念を説いたつもりだろうけど、何気に俺にダメージが入ってるぞぉ。
いろは「あなたには立ち技だけで充分です。それに、わたしの寝技が弱いと、勝手に決めないで下さい。わたしは性悪コンビの幼なじみですよ?」
いろはは当て身系の武術をするような構えを取る。
驚いただろ?綺麗な投げ技を得意とするのは、俺達の中ではいろはが一番綺麗な投げ技を使うんだ。
柔道でも恐らく反則にならずに通用するレベルの技で。
それからも玉車、腕ひしぎ、腕返し、首返し大外刈りといろはは次々と技を決める。
技あり1つに他は有効。城山の身内贔屓もあってか判定は一本は中々出ない。
だが、実力の差は歴然としている。
いろはの技は…そして力は先輩を凌駕している。畑違いの柔道のルールでも。
藤野「く、くそ!」
いろは「自棄になって冷静さを失えば隙となります」
相手の突進力をいなし、片膝をついて相手の腕と上体のバランスを崩して投げる技。浮き落とし。
藤野「う、うわぁぁぁぁ!」
藤野は前回り受け身の格好で畳を転がる。
いろはの技が綺麗だからこそ、怪我なく受け身がしっかりと取れる。
城山「技あり…合わせて一本………」
ここまで綺麗な投げ技を……自分達が使えない柔よく剛を制する技巧を尽くした技に、城山は流石に贔屓も厳しくなり、いろはの勝ちを宣言する。
藤野「強いっすね…一色さん」
いろは「護身術としてはですけどね?破壊を目的とした技は、あそこの二人には及びませんよ?」
藤野「一色さんなら、うちのOBも敵わないかも知れねぇっす」
いろは「藤野くんも、これから頑張って下さいね」
いろはは礼をして俺達の元に戻ってくる。
いろは「お膳立ては整えましたよ?ハチ君。ごめんなさいね?戸塚先輩」
戸塚「良いんだよ。君と八幡の思い出がまた1つ増えるなら、スピードワゴンとしては本望だよ!」
戸塚………。
いろは「余計な事をしましたか?」
八幡「逆だよいろは。今日、この時、この場所で俺といろはが会えた……そこに俺は感謝する」
←To be continued
はい。今回はここまでです。
原作における彼女の登場回と、ニアミス程度ながら八幡との出会いシーンです。番外編という形ながら、出会いを書きたくて第5章に割り込みました。
原作においても運命の歯車が動き始めたシーンだと私は思っています。
ですが、それゆえに雪ノ下と葉山の出番を食ってしまいましたし、静が引き立て役になってしまいましたが。
それでは原作との相違点
材木座はあっさり負けた→露伴に連れ去られた
葉山はいろはに連れ去られた→材木座に差し替え、戸塚は露伴によって再起不能に
いろはは葉山をサッカー部に連れ戻しにやって来て、八幡とニアミスした→露伴に八幡が毒を盛られたと騙されて会社から飛んできた
八幡はいろはを危険物として認識した→基本世界の一部がフラッシュバックして流れ込み、ここでいろはと出会った事に運命を感じた
葉山の代わりに雪乃が試合した→材木座の代わりに静が、雪乃の代わりにいろはが試合した
それでは次回もよろしくお願いいたします。