やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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そして相模南の舞台が幕を開ける

side比企谷八幡

 

体育館の出口はそのまま校舎につながっている。

例年、有志団体の大トリはもっとも集客を見込めそうなバンドに割り振るのがこの学校の伝統らしい。ならば貞夫さんを大トリに持ってきた有志統制はわかっている。そのままエンディングセレモニーにスライドするのが生徒の移動にもっとも効率が良いので、やや変則的なプログラムになっている。

すなわち、今、この時間、校舎に人影はまばらである。

どの道、すぐにエンディングセレモニーだ。だったら最後にみんなで一騒ぎしようと考えて、有志ステージを見に行く人が多いわけだ。

こうして人が減ったところを狙われたのだろう。

そして、相模はそんなタイミングを狙われた。カラーギャング達に。

相模は相模できちんと見回りをし、地域賞や優秀賞の集計をしたりしていた。体育館に向かうのは最後だと、見回りをしていたのである。

以前にジョルノに壊滅させられた稲毛や海浜幕張周辺のカラーギャング達。やつらは復讐が目的だった。

総武高校の裏番達(つまり俺とジョジョ)に。全く関係ないのに。

そして、あっさり返り討ちに遭って干し柿にされたり、スイカにされたり、「えっほ、えっほ♪」と本職に運ばれたり。

 

やつらの次のターゲットはジョジョやいろは、雪ノ下や由比ヶ浜級の美女、美少女を強引にナンパしたりする行動だが……。

キノコ狩りに遭って…「えっほ、えっほ♪」

 

あの音石明やトリッシュ、空条貞夫を襲ってしまえ!

音石とトリッシュ本人及び家族(ジョルノ、承太郎)やその友人(杜王町組)にのされた後に「えっほ、えっほ♪」

 

チケット狩り→八幡達のチケット狩り狩りに遭って「えっほ、えっほ♪」

 

出店潰し→出店潰し潰しに遭って「えっほ、えっほ♪」

 

後はライブ潰しかな?と思ってスタンバっていたわけだが、それを相模が体を張って防いでいたというわけだ。

悪巧みを潰された者はどうするか。

よくあるヤンキー漫画とかで人気が無くて、誰かが助けに来る可能性がある場所。そこに連れ込まれる。

 

八幡「いくらスタンド使いと言ったって、複数を相手に出来るスター・プラチナやザ・ワールドのようなドンパチ向きのスタンドばかりじゃあないんだよなー」

 

俺はハーミット・アメジストで示された場所の建物の下までやって来る。そして………

 

コオォォォォ………

 

八幡「無駄ぁ!」

 

ビョォーーーーーーーーン

 

一回の跳躍で、俺の体は建物の……四階建ての建物の屋上まで到達する。

 

八幡「よぉ?相模。駄目じゃあないか。人が犠牲になることを禁止した奴が、自分が犠牲になる道を歩んじゃあ」

 

相模「あ……ぐ………比企谷……」

 

痛め付けられたのだろう。そして、はずかしめられる直前だったのだろう。

だが、彼女にはナイトがいた。

水色のポニーテールの男前でありながら家庭的な少女とその弟のシャボン使いが。

 

相模「比企谷……ごめん、うちも少しは役に立ちたくて……」

 

大志「昨日今日スタンド使いになった人がいきなり実戦をこなせると思うんじゃあないですよ」

 

沙希「目を離さなくて正解だったよ」

 

八幡「嘘こけ。どうせここでサボってたんだろ?でも、相模を守ってくれてサンキュー、川崎兄妹。愛してるよ」

 

沙希「はいはい。あたしも師匠として愛してるよ」

 

大志「俺もシスコン仲間として愛してますよ」

 

俺はもう一度ジャンプをして相模の前に着地する。

 

八幡「実戦を体験してどうだった?」

 

相模「痛かった…怖かった…」

 

相模は川崎から波紋を施され、徐々に傷が癒されていく。

 

相模「でも、こんな痛みを比企谷や川崎達はいつも体験してるんだよね」

 

相模は地面に手をおく。

 

相模「うちは……ちょっと前までのうちは……ただチヤホヤされたかっただけだった……」

 

ヨロヨロと……ヨロヨロと立ち上がる。

その震えは恐怖からかのか、それともダメージからなのかはわからない。

だけど、その目は死んでいない。

闘志は失っていない。

小さな………されど確かな勇気を相模は宿している。

 

カラーギャング「ハッ!チヤホヤしてやるさ!俺がたっぷりと可愛がってよぉ!ギャハハハハ!」

 

相模「あんたなんかに……うちの覚悟の何がわかるっていうのさ…」

 

カラーギャング「同じだよ!俺らとなぁ!」

 

相模「うちは…違う!一緒にされてたまるか!……うちは…うちは…負けない!力で負けても、心は絶対に負けない!あんたらなんかに!ラスト・ノート!」

 

L・N「ソラソラソラソラソラソラソラソラァ!」

 

カラーギャングA「ゲフゥ!」

 

ラスト・ノートはパワー型ではない。だが、その拳を受けたものは……

 

カラーギャングA「な、何だ……体から浮き出るこの人形みたいな物は……」

 

女性の声「お前は私を無理矢理……」

 

その人形は持っている剣でその男の腕を刺す。

 

A「ギャアアアアアア!こ、こいつは昔俺が路上で拐ったやつ………」

 

男性の声「お前から受けたリンチが原因で俺はサッカーを……」

 

次から次へと現れる怨嗟の人形が、ラスト・ノートに殴られた男を攻撃する。

 

八幡「こ、これは……こいつ自身の業が生み出した怨嗟が攻撃してるんだ……恐ろしいな……」

 

ラスト・ノートの攻撃から出る怨嗟に善悪はない。攻撃している人形には「彼女を奪われた」とか、「一緒に○○(犯罪行為)をしていたときにトカゲの尻尾切りをされた」とかというのが原因で発生した怨嗟によって攻撃されている場合もある。

何て恐ろしい……もし俺がラスト・ノートにやられたら、無事で済む自信がない。

中には、怨嗟の声を上げるだけで剣を刺さず、体に消えていく人形もある。

 

沙希「モード、『錠前』ってところかな」

 

錠前?玉美さんのか?

 

沙希「業や怨嗟は人にまとわりつく。その業や怨嗟の声に罪の意識を感じたら、剣が振り下ろされて傷が付く。逆にだからどうだ?という風に開き直ったり、罪の意識そのものがない奴は剣に刺されない。これまでの罪を問われると同時に人間性が試される能力だね」

 

八幡「正に『錠前』だな。うわぁ……俺やパッショーネには天敵のような能力だな」

 

大志「ジョルノさんやお兄さんの場合は開き直りまくりでダメージを受けなさそうっすけどね」

 

失礼な奴だ。割り切ると言えよ。

カラーギャングは気を失ったところで能力が解除された。だが、何で『錠前』みたいな能力なんだ?

前の能力とは大分違うじゃあないか。

 

ん?待てよ?

今日、この時、俺にとっての『文化祭』という現象を俺は乗り越え、基本世界の出来事は世界の修正力の対象から外され、プロテクトされた記憶が流れ込んでくる。

 

八幡「………そう言うことか」

 

沙希「何かわかったの?」

 

ラスト・ノートact1はやる気の消失。

それは少し前までの相模のように、ランク付けをし、自分の優位性を保ちたい気持ちが基本世界の相模にもあった。そして、それが悪い方向へと進んだ。

文実の委員長。

だが、その動機は今、目の前で歯を食いしばっている相模とは明らかに違っていた。

箔を付けるため…レッテルを付けるため…。それが基本世界の相模が委員長をやる理由だった。

いや、結果は違っただけで、どちらの相模も雪ノ下や由比ヶ浜のようになりたかった。自分を成長させたい成長させたかった。レッテルを張りたかった…。

だが、その比重が違った。過程が違った。

片や過去を否定し、肩書きを付けることで上書きし、安易な変化を成長として誤魔化した。最悪だった自分を、否定したい自分を認めず、上書きするだけで変えようとした自分。……その心の現れがかつての相模であり、文化祭の段階での基本世界の相模であり、act1の本質。自信のなさはやる気に直結するからな。

片や人外の妨害がありながらも最悪だった過去と向き合い、心から変わりたい、歯を食い縛っても食らいつきたいと願った形の結果が……そして、基本世界の相模には無かったものが、act2へと成長させた。

基本世界の相模には無かったもの。それは、「2つの罪」だ。

どちらも相模の意思ではない。1つは肉の芽とブラッディスタンドの呪い。1つはウルフス。

両方とも相模の意思では無かったにしても、結果には罪が付きまとった。由比ヶ浜の柱の一族への覚醒は、レクイエムによって解消されたものの、罪そのものが消えたわけではない。

そして、ウルフス横牛の作った罪なんてもっと相模が罪悪感を感じる必要の無いものだ。なのに、相模は罪悪感を感じてしまっている。

皮肉な事に、それが相模を成長させた。act2は相模の罪悪感を……罪を清算したい気持ちの現れなのだろう。

そして、由比ヶ浜の成長も、相模にとっては眩しいものだったのだろう。かつては風見鶏みたいに自身の意思を示せなかった由比ヶ浜。それが今ではハッキリと自分の意思を示す。

基本世界の由比ヶ浜とうちの世界の由比ヶ浜。どちらがいいとか悪いとかの話ではないが、相模にとっては明確な違いがあったのだろう。

それが、相模南という人間に差を生み出した。

 

………由比ヶ浜が変わったのは俺達の影響だ。

そもそも生まれ自体が違う俺達。それが由比ヶ浜や雪ノ下を変え、巡り巡って俺達の文化祭に明確な違いを生み出す形になるなんてな。

どちらが良いのかはわからない。

片や急速に人間関係は纏まりつつも人外との戦いを強要され、人の本質すら影響が出てしまった。

片や間違えつつ、互いに傷つきながら、人とすれ違いながらも少しずつ成長している…。

本当に……どちらにしても一長一短だ。長所と短所は表裏一体。ままならないものだ。

 

それに……単純な能力として……。

 

八幡「錠前以上に厄介な能力であるのは確かだよな」

 

川崎「へぇ?例えば?」

 

八幡「玉美さんの錠前(ザ・ロック)は結局は突き付けられる罪は自分自身の心の持ちようだろ?突き付けられたそれは玉美さんとその人の間にある価値観だ」

 

DIOなんかがいい例だ。錠前(ザ・ロック)はDIOには効かない。玉美さんが指摘する内容に、DIOは罪悪感なんてこれっぽっちもなかった。それがDIOにとっては正義だったから。そして俺も屁理屈を捏ねて周りを無理矢理抱き込むので錠前は効かない。

だが、ラスト・ノートは怨嗟を生み出した者の言葉だ。

玉美さんの騙しの腕次第の錠前とは違い、罪悪感を突き付けて来るのは本気の怨嗟の主観。

どちらにしてもDIOや俺には通用しなくとも、本気の怨嗟は周囲に影響を与える。

目の前のカラーギャングにかけられている怨嗟の声は「罪」の内容を、その主観の声で周囲に晒される。例え通用しなくとも、周囲はどう受けるか……。

ラスト・ノートact2の能力は正に最後の帳面だ。

だって、死後の世界で生前の所業で天国に行くか、地獄に行くかを審判される閻魔帳(ラスト・ノート)その物じゃあないか。

判断するのは閻魔大王ではなく、怨嗟を聞く周囲だが。

 

いずれにせよ………。

 

八幡「1つだけハッキリとしているのは、能力云々関係なく、俺個人としては相性が悪いことには変わりがないがな……」

 

沙希「あんたはまとわりついている怨嗟がとんでもないことになってそうだしね」

 

大志「ダメージを受ける受けない関係なく……」

 

その通りだよチクショウ!

 

だが………。

 

八幡「ウルフスに通用するかとかは別としても、普通のスタンド使いには脅威のスタンドだな。それにしても、お前らにしても、俺らにしても助けに来る必要ってあったのか?」

 

沙希「案外、危なかったよ。追い詰められて能力に目覚めた感じだし」

 

まぁ、ボコボコにされてたし、川崎兄弟がやったらしい形跡もある。

まぁ、いずれにせよ相模の覚悟は見届けた。今の相模は歴とした俺達の仲間だ。アーシスでは無くても。

死を乗り越え、自らを成長させたその精神を……俺は尊敬する。

 

「てめえ!クソ女ぁ!」

「まわすぞゴラァ!」

 

相模「くっ……この数は」

 

八幡「無理すんな、相模。俺達もいる」

 

沙希「稲毛のカラーギャングは…壊滅させる!」

 

大志「今日、今をもって!」

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!」

「「パパウパウパウパウパウパウ!」」

「ソラソラソラソラソラソラァ!」

 

ギャアアアアアアァ!

 

稲毛のカラーギャング……壊滅(リタイア)

 

パッショーネの皆さんに運んでもらいました。

 

八幡「まったく……事態に気が付いた段階で俺らを呼べば良かったじゃあないか」

 

相模「そうだったんだけどさ……やっぱり今回はうちが実行委員長だった訳だし、アーシスの世話になりっぱなしというのは嫌だったし……それに」

 

うつむいていた相模は顔を上げ、真っ直ぐ俺達を見て微笑みかける。

 

相模「同じ土俵に立ってこそ仲間じゃん?」

 

そう言われた俺達三人は顔を見合わせる。

そして、爆笑する。

 

相模「ちょっと!何で笑うん?うち、おかしな事を言った!?」

 

八幡「いや、何もおかしな事は言ってねーよ。ただ…」

 

相模「ただ?」

 

沙希「あんたは立派な戦士だよ。相模」

 

大志「東方会長風に言えば…グレートっすよ。相模先輩」

 

俺達が微笑むが、相模は納得していないようで、頬を膨らませる。不覚にも、それが美しいと思ってしまった。そこに……。

 

葉山「南!大丈夫か!?」

 

相模「隼人くん。うん、川崎さんやその弟君が助けてくれたから」

 

葉山「そうか。良かった…」

 

葉山は相模が無事だったことに本気の安堵の表情を見せる。いつもの「みんなの葉山隼人」とは違う表情で。

葉山も……変わったな。人の本質は…簡単には変わらない。だが、きっかけがあれば簡単には変わるし、救われる事もある。

過去の自分を否定して無理に変わることは、俺は今でも否定する。

だが、否定したい過去を受け入れ、そこから成長して変わることは、悪いことではない。ディオとジョナサンが俺になって変わって行ったように…。雪ノ下や由比ヶ浜、それに相模や葉山がそうであるように…。

俺は、これからも間違うだろう。横牛との戦いの後に、いろはを泣かせてしまったように…。自分を傷付ける事をやることがあるだろう。だが、いつかはそれと向き合い、変わって行くのだろう。

いろは達が今日、頼ったことに嬉しいと言ってくれた。

俺も知らずの内に、相模達のように何かが変わったのだろう。変わることを否定した俺がだ…。

だが、悪くない気分だ……。それが研磨され、真実に到達するということなのかはわからないが。

ところで……。

 

八幡「あれ?葉山。ステージは?」

 

葉山「アハハハ……川崎さん。君の妹のスタンド、凄いね」

 

けーちゃんのスタンド?まさかデュオロン……

 

葉山「ステージを継続しようとして、憤怒の形相で止めようとしていた学校の上の人達に反発して、生徒達が暴徒化しかけていたんだけどさ、リーシャウロン・アクアマリンの力でみんなの怒りを沈めた上に、上役達もステージ続行を認めてさ…」

 

こういう場合ではリーシャウロン・アクアマリンの力は凄いな……。

 

八幡「で?結果は?」

 

葉山「ゆっくり戻っても問題なさそうだよ。あれはいつまでも終わらなそうな勢いだ…。さすがに疲れてきたからちょっと抜けて来たけど……」

 

けーちゃんのスタンドは凄いな……俺達には出来ない誰も傷つかない世界を簡単に作ってしまうんだから。

じゃあ、ゆっくり戻りますか。

 

川崎京華…誰も傷つかない世界を完成させる

 

総武高校文化祭…準備段階では色々と問題が発生したが、結果としては大成功で終わる。

 

相模南&葉山隼人…アーシスには入らなかったが、八幡達の仲間として認められる。

 

←To be continued




はい、俺ガイル屈指の八幡の見せ場であった(・・・)アンチ場面でもある屋上での名シーンはこれにて終了です。
八幡の見せ場を潰した形とはなりましたが…
本当はここで横牛戦を入れる予定でしたが、前倒しにしたため、今回は以前に潰した稲毛のカラーギャングが復活し、総武高校に復讐するという内容に変更しました。
そしてラスト・ノートact2のお披露目です。


それでは恒例の相違点

相模の居場所がわからない→わかっている

八幡は材木座に電話をし、一人になりたいならどこがあるかを尋ねる→相模の居場所は…以下略

教室にいる沙希に、相模のいるであろう屋上の入り方を尋ねる→鍵が壊れてようが閉められていようが波紋のジャンプで跳べばよし!また、沙希は既に現場にいる

相模はサボる気はないものの、気を引きたいがために屋上にいる→カラーギャングから学校を守るため、屋上でドンパチ。

八幡は依頼達成のため、自分に悪意を向けるために相模に暴言を吐く→相模のドンパチに加勢する。

葉山は相模を連れ戻しに来た→助けに来た

遥とゆっこ登場→悪役は名無しのカラーギャング


それでは次回もよろしくお願いします。




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