side静・ジョースター
はぁい、働いても働いても楽にならないものってなぁに?
答えは我が暮らしでーす。
…………きもっ、誰だっつーの。
彼の石川啄木でもそういうくらいだ。私のような凡人であればなおさらだよね。ついつい作業の手を止めて、その止まった手をジト目で見てしまう。うん♪キレイな手♪っじゃあないっての。アホな事をやっている間に作業の手が止まり、どんどん苦しくなる。なに?このデフレスパイラル。
何をどうしてこんなに忙しいのか、その不思議を解き明かそうと周囲を見渡してみる。まず、人手が足りない。
事務処理とかは何とかなっても、作業面でのマンパワー不足はどうしようもない。
執行部はてんやわんやで諸手の対応に追われている。今日は助っ人である陽乃が来ているから少しはましであるけれど。葉山も人手不足の部分で女子寄せパンダをやっているけど、まぁ……ここまでコキ使われれば疲れも出てくるか。夕べは混乱することばかり起きた事だし、いつも絶やさないスマイルがひきつってる。
少ない人員でもやってこれたのは私達慣れている人間が数人いるからだったのだが、今日は違う。
その理由は………
比企谷八幡(ザ・ジェムストーン)…バカな事を考えた為、
そう、ハッチが今日は不在。イーハによる紅葉とジョルノ兄さんによる鉄拳制裁により両頬が大変な事になり、外を出歩ける顔じゃあない。
いやぁ、雪ノ下も加えて四人で辛うじて回せていた文実が見事に破綻しているねぇ。陽乃さんが加わったとしても業務を継続することから把握まで時間がかかるのもあって、遅延が出てきている。
めぐり「比企谷君、今日はどうしたの?」
静「さぁ……」
知らない訳がないが、しらを切る。
毎日一緒に登校してるんだから知らないわけないでしょ。これも文実主演の相模を守る演技だ。
そろそろ出番かな?
コンコンコン♪ノックが三回鳴る。
入ってきたのは徐倫お姉ちゃんだ。
徐倫「ジョースター」
静「はい?」
返事をすると、徐倫お姉ちゃんが近くまで歩いてくる。その表情を神妙にして。
もう一年半もなるけど、まだ徐倫お姉ちゃんにジョースターって言われるのは慣れないなぁ。
徐倫「比企谷なんだけど、今日は体調を崩して休みだって。過労らしいわよ?一応学校には連絡があったんだけど、文実の方には連絡が来てないんじゃあないかと思って」
ホントにそんなわけがない。まずハッチが過労で倒れるなんてあり得ない。波紋の戦士だし、ホントに過労でもイーハによるエメラルド・ヒーリングやトニオさんの料理で一発回復だ。
何より、そんな状況に陥っているなら……以下略。
第一、そんな状況ならイーハがここにいるわけがない。
ちなみにマーチも来ようとしていたけど、さすがに中学生がやったら高校生の面目丸潰れでしょ。
ハッチが今日は何してるのかって?会社に連行されてます。
八幡『これは休みじゃあない……むしろ学校の方が休んでいるまである……』
同意。
すると、葉山がハッと気付いたように顔をあげる。
葉山「あいつ、友達が君たちしかいないから大丈夫なのか?家族の帰りも遅いんだよな?様子を見に行った方が良くないか?」
めぐり「そうなんだ。じゃあ誰か比企谷君の様子、見に行ってあげてくれない?こっちは任せてくれて良いから」
めぐり先輩が私とイーハと葉山に向かって言う。
葉山「先輩達だけで大丈夫ですか?」
葉山に問われてめぐり先輩はちょっと難しい顔をする。が、そのあと、いつものほんわかとした微笑を浮かべてくれた。
めぐり「はるさんもいるし、わたし達が何とかできる、と思う」
口調こそ自信なさげだけど、まぁ、これは……。
それに、こんなことで潰れる文実なら、いっそ潰れるべきだ。無責任な連中に自分のやったことの重大さを理解させるべきだろだと思ってしまう。
トリッシュ姉さんや貞夫義兄さん(承太郎の父親。戸籍上は姉の旦那)、音石さんが出演する予定の総武高校始まって以来の栄光の文化祭。それを潰したという汚点は総武高校にとっても、文実に参加した人間にとっても小さくないダメージとなるだろう。
特に内申は絶望的になることは間違いない。
本牧(副会長)「会長!」
バンッ!と勢いよく会議室の扉が開かれ、生徒会役員がつかつかと入ってきた。
これも予定調和。敢えてこれを決めて無かったんだから。
めぐり「どうしたの?」
本牧「実はSPW財団からスローガンのことで問い合わせが来てまして」
本牧(比企谷の野郎……外部の人間を装って問い合わせなんてしてきやがってぇぇぇ!何であいつがSPW財団の代表で電話してきてるんだよ!)
心の声が聞こえるようだ。
自作自演だしねぇ~♪苦労しろ苦労しろ♪
めぐり「うわぁーこんなときにー」(棒読み)
めぐり(演技って難しいよ~。助けてよ~。露伴ちゃぁぁぁん)
めぐり先輩、演技が下手ですね。
まぁ、ハッチがやろうとしていたスローガンを使った作戦。それを奉仕部でやることになったからによる自作自演。ごめんねぇー本牧。藤沢との間は引っ掻き回してあげるからさ♪
生徒会陣はどたばたと会議室から出ていった。
葉山「ここまで大がかりにやるか……」
静「やるからにはとことんまでがジョースター家の気質だよ♪敵になったら潰すからよろしくね♪」
葉山「…………で、どうする?」
葉山に問われる。
静「やるからにはとことんまで。私も今日は上がるよ。とことん困れ。イーハもどうする?」
こんな文実なんてどうなってもいい。
いろは「わたしも上がります。そろそろ会社の方も一回確認した方が良いですし」
葉山「俺も事情を知ってるだけに投げ出したいんだけど?部活もあるし」
逃がすか。ここまで来たら運命共同体だろ。
静「葉山は残ってね♪有志で頑張ってくれる葉山くんってステキー♪」
いろは「葉山先輩は気が利きますし、役に立ちますから♪」
葉山「こいつら……本性を知れば知るほどムカつく…」
葉山が表情をひくつかせて言ってくる。
今さらだっつーの。
それがあんたに求められている役目で、あんたが目指す先に求められる資質だよ。
あんたは有能さ。有能で優しい。私達とは相容れない方向性だけど。だからこそ自由に生きられない。いつも誰かに頼りにされ、それに応えることが出来てしまっていて、いつの間にかそれが常態化してしまう。果ては私達みたいな性悪に利用される有り様だ。
静「ま、少しは世界の汚さを知りなよ。良いように利用されたくなければね?」
葉山「知っていたつもりだったけどなぁ」
葉山は心なしか、寂しそうに笑った。葉山はいいやつで甘い。その優しさ故に誰かを、何かを選べない。彼にとってはすべてが大事なのだ。それは酷く残酷な事だ。
誰もがみんなの葉山隼人を求め、葉山隼人はみんなの葉山隼人を演じなければならない。個性を潰され、利用され、そして葉山隼人は大切な物を選べず、選んであげられず…。
私達とは真逆な存在だ。
静「っつーわけで、ちょっと行ってきます」
会社に。
徐倫お姉ちゃんに言うと、お姉ちゃんは微笑む。
徐倫「そう。いってらっしゃい」
雪乃「お仕事、頑張ってね」
私達が荷物を手早くまとめて立ち上がり、会議室を出た。
昇降口まで向かう間に仕事用の携帯電話を取り出した。歩きながら電話をかける。
たっぷり7コールはかけていい加減切ろうかとしたとき、やっと向こうが出た。
結衣「遅かったね。手間取ったの?」
静「ええ。それよりも比企谷が過労で休んでるのは知ってる?」
電話をするにしては大きめの声を上げて私は会話をする。
何人かがビクッと反応した。
そして、自分の正当性を語るための言い訳を考え始めているだろう。
結衣「ええー!ヒッキーが過労で死にそうだってー!」
由比ヶ浜、盛りすぎ盛りすぎ。
そして無駄に声がでかい。
更に城廻先輩並みに棒読みしてる。
演技ヘタクソ。
電話口の背後がざわざわし始めているのが聞こえて来ているから。
あ?だれだ喜んでいるやつは(# ゜Д゜)
後で個人を特定して制裁を加えてやる。
静「とりあえず私達も会社に向かうから、あいつを連れて昇降口に」
結衣「りょーかーい!ヒッキーのお見舞いにいくんだね?あたし達もいくからー」
だから声がでかいっつーの。
手短に通話を終わらせると、携帯電話をポケットに突っ込む。
まだ外は明るいものの、日は傾き始めている。向こうにつく頃には、ちょうど黄昏時だろう。
←To be continued
はい、今回はここまでです。
アーシスだけの真の誰も傷つかない世界、あるいは誰もが少なからず傷つく世界計画の始まりです。
果たしてどうなるのか?
原作との相違点です。
視点は比企谷八幡→静・ジョースター
本当に手を見た場面で天外魔境(カブキ伝)ネタを入れた
この日、陽乃はいなかった→この日、陽乃が手伝いにきていた。いみはなし
葉山は有志統制→何でも屋でコキ使われている
過労で雪乃が倒れた(リアル)→過労で八幡が倒れた(偽装)
スローガンはリアルトラブル→トラブル自作自演
比企谷八幡は葉山隼人に勝てないの件はカット。外れかけているアンチに戻りかねない。
葉山隼人の心理読みを原作八幡以上に静は分析
由比ヶ浜は雪乃が休んだのを知らなかった→偽装は着々と進み、周囲をチクチク刺しています。
それでは次回もよろしくお願いします。