side比企谷八幡
ココ・ジャンボの中。
さぁて、どうすっかな…この状況。
ポルナレフさんのファインプレーのお陰で相模が死なずに済んだ。
もうダメだと思っていただけに。
諦めていた事で相模が助からないことを前提に動いていた。
故に相模南の依頼は失敗。これまでまともな方法では無いにしても、一応は解決してきた奉仕部の依頼。それが今回は完全に失敗した。
いやぁ……言い訳不可能ですわ。
八幡「まぁ……もう謝るしかねぇし、なるべく相模に累が及ばないようにするしか無いんだが…」
静「どうやって上手く負けるか……なんだよねぇ?」
そう。もう相模が委員長としてどうこうすることは不可能なのが痛い。
くそ、あのクソウルフスめ…。後始末まで厄介なものを残しやがって…。資金的にはハーメルンの時の方が大きかったけどな。億泰さんが地面を削りまくったから。
地域サービスということで財団が負担したっけ。
元々財団(アーシス)の責任だったし。
だが、こっちはこっちで色んなものに被害を残して行きやがった。
主に人間性に。将来性に。
相模の体を乗っ取った横牛が提案したサボりを容認する発言。それによって文実に来なくなった人間を、俺達は出席簿という形で徐倫に提出することになる。
これは生点として内申に影響が出るだろう。
それを黙認する形となった城廻先輩や生徒会執行部とて無傷ではすまない。
顧問である厚木先生や徐倫にも何らかの処分が下りるかもしれない。
真面目に出席していた者だって、どうなるかわからない。何もないかも知れないし、連帯責任で影響が出るかもしれない。
だが、そこまでは良い。それぞれがそれぞれの責任でそうなるのだから。その覚悟があろうとなかろうと、すべては自己責任の結果だ。
だが、そうではないものが一人いる。
例え自分の意志でなかったとしても、サボりを容認する発言をし、自らが率先してサボってしまった存在。相模南だ。
この事が問題として浮き彫りになったとき、相模の学校での立場が非常に危ない。何が救われないって、結局は本人の意志ではなかったにしても、体は相模南のやったことだ。
事実をそのまま言ったところで精神を病んでいる扱いをされて余計に立場が無くなるだけだ。
葉山「どうにかならないのか?比企谷」
八幡「俺に聞くな………というか、それを今、懸命に考えているんだろうが」
ホント、マジで考えてます。おふざけなく。
結衣「ヒッキー?何でそこまで一生懸命考えてるの?仕事だったから?それとも奉仕部のプライド?副委員長の責任?ヒッキーの事だからさがみんの事だけを考えてるって訳じゃあないよね?」
どういう意味だこのアマ(# ゜Д゜)
まぁ、半分はその通りだ。相模の立場だけを考えている訳ではない。そんな優しい人間ではない。
奉仕部のプライド?半分は該当だが、そんな個人的な話でもない。
副委員長の責任なんてマジでどうでも良い。俺個人がどうなろうと、その辺りは考えてない。
最大の理由は既に由比ヶ浜が言っている。
「仕事だから?」だ。それが正解。
ただし、奉仕部としてや文実のではない。財団…というよりは、アーシスとしての仕事だ。
アーシスは相模南の保護を決定した。組織としてだ。
そうなると、相模の学校での立場等も考慮に入れなければならない。
ウルフスから相模を護衛する上で、相模に悪意が向けられるというのは非常にまずいのだ。
相模がいじめに遭おうものならば、相模は常に悪意を向けられる事になる。
そうなると、本物の悪意を…殺意やウルフスの攻撃に晒されやすくなってしまう。それが非常にまずい。
八幡「…………」
いろは「ハチ君……まさかとは思うけど……レクイエムを使うつもりじゃあないですよね?」
はい?流石にそれは全く考えてないですよ?
こんなことでレクイエムなんか使わんわ。
戸塚「だ、ダメだよ?君はレクイエムを使ってはダメなんだ!また魂が砕けるよ!?」
葉山「
葉山よ。知らないなら知らないに越したことはないぞ?
お前が考えている通り、レクイエムは本気でヤバい。
あと戸塚。砕けないから。その対策は君達が行った世界で解消しているから。実験もしてるしな。
もっとも、完全ではないんだよなぁ……。
具体的に言えば……
1、時間制限がある(ザ・ワールドのように物理的に不可能という訳ではなく、その時間以上に使おうとすると俺の精神が持たない)
2、消したい真実を自分で選ぶことが出来ない(レクイエムというか、世界意志というか…)
特にあのやり方の場合は。
あいつ、どうやってあのレクイエムを……。
考えても仕方がないか。
レクイエムの話を今はしているわけじゃあないしな。
静「……ハッチはレクイエムを考えてる訳じゃあないのは本当。ハッチが言うにはあれはまだ不完全。どうしようも無いことならばともかく、こんな事で使うような事じゃあない。もっと下らないこと、もっと最低な手段でハッチは解決しようとしている。そうでしょ?」
見抜かれてるな。しかも、かなり怒ってやがる。
確かに考えてるさ……最低で、確実で、少なくとも悪意を相模から視線を逸らす最低なやり方を。
俺がポリポリと頬を掻く。
ジョルノ「どうやって誤魔化すか……そう君は考えている」
やべぇな……癖まで読まれてるわ。
いろは「ハチ君……またあなたは犠牲になるつもりですね?千葉村の時のような命を伴うやり方じゃあなく、社会的に自分を犠牲にする気ですね?」
八幡「………」
ははははは。完全に読まれたわ。
まさかそこまで読むかよ。ジョジョといろは。
静「本来、相模に向けられるはずの文実や学校での悪意を自分に向ける。ハッチが考えそうなやり方はいつもそう」
そう、ジョジョが言うように、まだ決まっていないスローガンや当日での相模の行動に穴を持たせ、そこを必要以上に罵倒することで相模を悲劇のヒロインに仕立てる。
女の子を必要以上に責め立てる男がいたら、そこまでの過程はどうあれ女の子の方を庇いたくなるのが人情だからな。
人間の本能として、それは植え付けられている。
仗助「八幡……おめぇ……」
パァン!
八幡「っ!」
突然頬を張られた。
平手打ちをしてきたのは目に涙を溜めたいろはだ。
これまで、どんなにアホな事をしても呆れはすれ、怒ることはなかったいろはが、今回ばかりはもう我慢できないといった感じで…。
いろは「ハチ君……あなたはいつでもそうでした。アメリカでも、千葉村でも、大事な事はいつも自分の犠牲を伴う事ばかり……あなたの事は好きですけど……その部分だけはとてもイヤです!」
いろははハラハラと涙を流す。
雪乃「………あなたのそういうやり方……嫌いだわ。自分が犠牲なれば良い。そんな自己完結的で、自己満足なやり方が……とても嫌い」
……なんだ?基本世界の記憶が……。
雪乃『あなたのやり方……嫌いだわ。上手く説明する事が出来なくてもどかしいのだけれど…とても嫌い』
バカな……これは、もう少し後の出来事では……。
雪乃「レクイエムの事も、今回の事も、あなたが犠牲になって……助けた気持ちになって…それで庇われた方は感謝するとでも思ってるの?あなたが傷ついて、それですべてが解決したとでも思ってるの?あなたが傷つく事で……私達が傷つかないとでも思っているのならば…とても傲慢な考え方だわ。それに……こんな時こそみんなを頼るものじゃあ無いかしら?私達は、そんなに薄っぺらな関係?目的の為なら、何が何でも利用する。それこそがあなたの本来のやり方ではないのかしら?」
違う……基本世界の雪ノ下の言葉とは確実に違う。
基本世界の雪ノ下が何を思って基本世界の俺にそう言ったのかはわからない。
雪ノ下姉妹も涙を流す。
そして……基本世界の出来事が前倒しになったのならばこいつも……。
結衣「ヒッキー……そういうの、もうなしね?今回はスタッチやいろはちゃん達が気が付いたから未然に防げたけど、ヒッキーはこう言うことをまた、いつかやるよ。レクイエムの時のように……今度こそ取り返しの付かないことをして……」
由比ヶ浜はふるふると震える。
この記憶も蘇ってきた。あるいは、あの晩でわずかながらに記憶が甦ったことがきっかけかもしれない。
結衣「もっと……」
結衣『もっと……』
結衣「もっと人の気持ちを考えてよ!何で色んな事が分かるのに!それがわからないの!?」
やはり来たか……世界の修正力っていうやつか…。
結衣「ゆきのんが言った通り……なんでヒッキーが傷つく事で、それを見ているあたし達が傷付くってわからないの!?いろはちゃんの気持ちは!?スタッチの気持ちは!?ヒッキーがいつも最後には傷付いて…何でヒッキーは自分を大切にしないの!?DIOだったから!?もう充分じゃん!もっと……みんなを頼ってよ!アーシスを…ジョースター家を!あたし達を!」
由比ヶ浜も違った。
基本世界とは明らかに。何が嫌で、ただ感情をぶつけるだけじゃあなく、しっかりと言葉に出して言ってくれた。
基本世界に起きていた奉仕部のすれ違いは、ほんの少し足りなかった言葉。ほんの少し足りなかった歩みより。ほんの少し足りなかった勇気と覚悟。
葉山「比企谷。俺はお前があまり好きじゃあない。だけど、そんなお前にだって、犠牲になってもらいたい訳じゃあない……」
相模「うちも……うちも反対。他に手があるはずなのに、比企谷だけが煽りを食うのは間違っている。うちの事を含めて考えてくれるのはわかっているけど…そんなやり方を望んでいない…」
ジョルノ「八幡……」
八幡「ん?」
呼ばれて振り返った瞬間に、先ほどいろはに張られた頬とは逆の頬に衝撃が走った。
バキィッ!
本気でぶん殴られた。
まぁ、ジョルノにしては頬を殴ってきただけ良心的ではあるが。
ジョルノ「小さい頃から言っていたはずだ。覚悟とは、犠牲の心じゃあないって。あんなことがあったばかりだと言うのに…まだ理解してなかったようだね?ワサビがまだ足りなかったかな?」
仗助「まったくよぉ。いつまでも根が変わらねぇ野郎だな。その頬は丸1日治さねぇぜ?家で1日反省しろ。このバカ野郎」
承太郎「お前が犠牲になるのを嫌うのは、何も戦いとかの場面だけじゃあない。普段からのこういう事でアッサリと身を切る真似をするところだ」
ジョセフ「そういうのは土壇場でも出てくるからのう?結局、お前さんは自分自身を軽く見ておるのじゃ。何か?お前さん、精神的マゾかのう?」
徐倫(電話)『まったく……これだからアンタからは目が離せないのよ!少しでも目を離すとこれなんだから!帰ったらあたしからも拳骨よ!このマヌケ!』
おい戸塚。なに徐倫に電話してスピーカーモードにしてやがる。
静「ハッチは自分が犠牲になることで誰も傷付かない世界の完成とか思っているかも知れないけどさ……。見てみなよ。相棒がそんなバカな事を考えていると知ったみんなの表情をさ」
いろはは俺の胸の中で顔を埋め、ぐしぐしと泣いている。
陽乃さんは片目を瞑り、もう片方の目で仕方ないなぁ、この子は…的な視線を向けている。
雪ノ下は普段とは違い、冷めた目ではなくしっかりと熱のある目で睨んでくる。
同じく由比ヶ浜もポロポロと涙を流しながら、歯を喰いしばって睨んでいる。戸塚も同じだ。
三浦と康一さんは怒りのオーラを吹き出しているし、川崎兄弟も呆れているというか、そんな感じだ。
いろは「ハチ君……思い出して下さい。リゲイン・ジェムストーンでのみんなの顔を。ハチ君が自らを犠牲にしてみんなを救っている気になっていても、その分だけわたし達が傷つくんです…。ハチ君を守りたいわたし達が…傷つくんです…」
いろはの嗚咽は……正直堪える。
直したつもりだったんだけどな…
八幡「上っ面だけだったのか?直したつもりだったこれは」
静「そうそう。こういうことを考えている内はいつかまたハッチは千葉村みたいなことをやるよ。だからこそ、みんなが泣くし、怒るんだよ?次にあんな幸運があるとは思えないもん」
そうだな。ジョジョの言うとおりだ。ジョナサンの頃から続くこういう部分は、きっと俺の本質なんだろう。
でも幸運なことに、基本世界の俺と違う所がある。
基本世界の比企谷八幡には本物は少なかった。
けど、この俺には沢山の本物が囲んでくれている。ジョースター家のみんな、幼なじみ達、アーシス。
世界中に散らばっているみんなが……。なによりも。
俺はいろはを見る。基本世界ではまだニアミスしたくらいで、正式には出会っていない、俺の本物の中の本物。
ジョジョを……静・ジョースターを見る。俺とは絶対に関わるはずがなかった、奇妙な縁で結ばれた姉弟のような相棒。
いろはとジョジョ。この二人が基本世界の俺にはない、俺にとっての大きな二人。
そして歴代ジョジョ達とその仲間達…。
基本世界よりもより深く入り込んだ総武高校のアーシスメンバー達周囲の環境。
こんなに沢山の本物に囲まれているというのに…。
今思えば一人で背負い込んでいる気になってたんだろうな。だからみんな怒っているし、悲しんでくれている。
そして、力になってくれるんだ。
改めて反省すべきことだな。
ここでいう言葉はごめんではない。
八幡「ありがとう。みんな。また間違えそうになったら、今みたいにひっぱたいてくれ」
いろは「当然です!しがみついてでも止めます!」
静「任せろっつーの。相棒でしょ?うちらは」
三人で拳を合わせる。それに仗助やジジイ、承太郎や雪ノ下達も合わせてくる。
仗助「俺達も忘れるんじゃあねぇぜ?」
そうだったな。
互いの絆を確かめあった俺達。
さて、仕切り直しだ。
俺に学校中の悪意を集めるやり方は却下された。ならばどうする?
どうやって相模に集まるであろう悪意を逸らす?
八幡「さて、この問題はどうする?」
静「簡単だよ。ハッチが一人で犠牲になるんじゃあなく……」
いろは「アーシス全体で犠牲になれば良いんです♪」
仗助「オメェ一人が犠牲になるんじゃあなく、俺ら全員が悪意を向けられりゃ良い」
な…………!そんな方法を!?
ジョルノ「ブチャラティチームの時でもそうでした。車が1台だけ盗まれるから追われるんです。ならば駐車場にある車全てが盗まれれば1台だけが追われて捕まることはありません。悪意もそうです。個人に悪意が集中するから問題なのであって、集団が悪意を向けられるなら問題はありません」
こんな考え方をするか?
相変わらずぶっ飛んでやがる。
だが………最高じゃあないか。誰か傷つかなければならないならば、集団で傷付いて分散させる…か。
葉山「は……ははは……比企谷が傷付かない方法を考えるんじゃあなく、集団で傷付くなんてやり方で解決なんて……逆じゃあないか。普通は」
陽乃「隼人。これがアーシス。これがジョースターよ」
雪乃「普通じゃあないわよね。考え方が。特にジョルノ兄さんは」
このぶっ飛んだ考えだからこそこれまでの戦いを乗り越えて来たんだよな……。
何を一人で背負い込んでいたんだか。
静「それに、葉山。知ったからには協力してもらうよ?」
葉山「え……?」
静「大丈夫大丈夫♪今回はマジで累が及ばないようにするから♪具体的な作戦は………」
もう、好きにして。
←To be continued
修学旅行編は結末を変えるので、前倒しでこのイベントを持ってきました。
さらに原作とは違って時間がなく、土壇場での決行ではなく、事前に察知した静といろはが見抜くという方法に改変しました。
そして、葉山も巻き込みます。
さてさてどうなることでしょう?
それでは次回もよろしくお願いします。