side比企谷八幡
俺達が会議室に到着すると、相模の隣の席には見慣れない立て札が置かれていた。
「副委員長」
あっれー?おかしいぞぉ?
今さっき決まった役職なのに何でもう立て札が用意されてるのかなぁ?
…………マジで最初からそのつもりだったな?相棒。
q(⌒‐⌒)ノシ
相棒は俺を手招きながらその席を指差す。
オーケー。もう決まったことだ……仕方がない。
やけになった俺は相模に業務を教えながら予想タイムテーブルをまとめ、副委員長業務に取りかかった。
………数日後。
俺の副委員長就任は特に発表されることはなかった。まぁ良いけどさ。なんかみんな知ってるみたいだし。
厚木先生はすごく嫌そうな顔をし、城廻先輩はめちゃくちゃ良い笑顔(悪意なし)で迎え入れてくれた。
他の文実のメンバーは「何でアイツが?」的な反応だった。
その内訳は「誰?アイツ」が5割、「ひぃぃぃ、ヒキタニぃぃぃ」が5割……。後者はおかしくね?
元々の担当部署であった記録雑務からは一人(実質は二人)流出した事になるが、そもそもが大した仕事量のある役割ではない。大きな問題ではないと判断された。
とりあえずスケジュールを新たに切り直して委員会への周知徹底をし、各部署の進捗状況を日報形式で提出させるように相模に指示する。
相模「定例会議でよくない?」
と、相模は言ってきたが、その必要性を説明しながら教えていく。
その分、俺の仕事は止まってしまうがそれは仕方がない。知識を蓄えることも成長だ。
業務は一見遅延なく進んでいくが、今後の遅れの発生やトラブルへの対処を考えるともう少し先に進めたいところである。
ポスター掲示場所で悩んでいる宣伝広報があれば、交通量が多い道や利用者が多いスーパーやコンビニと調整をして貼らせて貰う。公民館や市役所への宣伝も忘れてはならない。もちろん、我らがSPW財団千葉支部への調整もやった。だが、俺の権力は一切使わない。
あくまでも業務調整は宣伝広報がやり、不備があるなら断っても良いとまで言ってある。
有志団体に困っている有志統制に地域賞を創設することを相模が提案したときには素直に驚いた。少しずつではあるが、やる気が出てきている事を感じる。
だが、見落としやミスがあったり、今一つ引っ掛かりを感じる部分も見受けられる。それを定例会議で指摘する部分としてリストアップしていく。
俺からしてみれば普段から慣れている仕事であるのでなんて事はないが、誰も彼もが四苦八苦しているのが見て取れる。それを修正するのも慣れている人間の役割だ。
全ては実行委員長の相模南のお触れでやっていることであり、俺はテキト~~にやっている素振りを見せて何も仕事をしていないように見せかけている。
リーダーシップを取るものよりもでしゃばってはいけない。リーダーの顔を潰すことになるからだ。
文実のメンバーからは「あの副委員長って何のためにいるの?」とか言われているが、それで良い。
そうした中で、何度目かの定例ミーティングを迎えていた。
定刻通りの午後四時。
会議室に集まった文実メンバーを見渡して、相模が号令をかける。
相模「それでは定例ミーティングを始めます」
よろしくお願いします…と、それぞれが唱和し一礼する。
まずは各部署ごとの報告事項からだ。
相模「じゃあ宣伝広報、お願いします」
担当部長が現在の進捗状況を報告すべく起立する。
広報部長「掲示予定の七割を消化し、ポスター製作についても大体半分は終わっています」
相模「少し遅いですね。文化祭は三週間後です。来客がスケジュール調整する時間も考えるとこの時点で既に完了していないといけないはずです。掲示場所の交渉やホームページのアップはどうなってますか?」
広報部長「まだです」
相模「急いでもらって良いですか?社会人はともかく、受験志望の中学生とか親御さんとかは結構こまめにチェックしてますから」
広報部長「わかりました」
着席する広報部長。
普段の相模とは違う捌きぶりなのか、友達(笑)の二人がポカンとしている。
相模「つぎ、有志統制、お願いします」
有志部長「はい。有志参加団体は現在10団体」
自信ありげに発言する有志担当。
だけどな?
相模「増えましたけど……上がっている報告を見る限りでは校内のみですよね?地域の方への打診はどうですか?去年までの実績や毎年参加している団体への案内はどうなってますか?あと、ステージの割り振りや集客の見込みとスタッフの内訳はどうですか?タイムテーブルを一覧にして提出をお願いします」
今年は音石さんやトリッシュさんが来る予定にも関わらず、ホームページや有志の連絡が来ていないことでジョルノや仗助から苦情が来た。だから広報と有志の動きに甘さがあったのはわかっている。
さて……覚悟しろよ?相模越しではあるが、俺からの追撃から逃れられると思うんじゃあないぞ?
終始、こんな調子で保健衛生、会計監査と定例ミーティングが進んでいく。その度に詳細な確認と指示が相模(を通じて俺)から飛んでいた。
予想外の突発的な事に関してはジョジョがフォローして対処する。
相模「次は記録雑務、お願いします」
記録部長「特に無いです」
記録担当はごく簡潔に述べた。実際、記録雑務は文化祭当日の記録班が最大の仕事で、この段階での仕事内容は少ないからな。
更にいろはと雪ノ下によって当日のタイムスケジュールと機材申請も提出されている。
案外管理職をやらせても上手くいくかもな。性格的な問題もクリアしているし。
それは委員長の相模も理解するところであり、全ての報告を聞いた相模は俺やジョジョと目配せして次の発言に移る。
相模「会長。来賓対応は生徒会でいいんですか?」
めぐり「うん、生徒会で大丈夫だよ?」
これは予定調和のやり取りなので城廻先輩は即座に答える。
めぐり「後で去年からの来賓リストをアップデートかけとくから確認をお願いね?ひき……相模さん♪それから一般客の対応は保健衛生の仕事になるから、来賓リストを渡しといて頂戴ね?」
了解。あと、いま一瞬比企谷と言いかけましたね?
案外一番気を抜いているのはこの人かもな…。城廻先輩、頼みますよ!
めぐり「それにしても相模さんもよくやってくれてるね♪比企谷君も頑張ろうね♪」
八幡「…………うす」
いや、まあ……俺が引き立て役になるのは構わないんだけどさ、わざわざディスってだめ押しする必要なくね?
定例報告と問題点の洗い出し、それへの対応策を協議した後、今後のスケジュールの共有。この日話し合うべきことのほとんどが終わった。
相模「では、明日からもよろしくお願いします。お疲れさまでした」
号令がかかると文実のメンバーが口々にお疲れお疲れと言い合って席を離れていく。
参った参った疲れた疲れたホントマジでだよななんか超仕事した感じだわ。
そんな声が口々に聞こえる。
俺が一番仕事したわ!いつも通りだけどさ!
誰もが相模の辣腕を褒め称えていた。
口さがない者は副委員長いらなくね?とまで言った。
まぁ、それでも構わんけどな。
生徒会メンバーも事情を知らないものは、次期生徒会長のダークホースとまで言っている。
城廻先輩はキラーン☆と俺を見ていたが、無理だろ。ウルフス出てきてんだからそんな暇ないわ。普通に仕事だってあるんだし。
しかし……俺ってこんな自己犠牲をするタイプだったかな……。明らかに副委員長の俺に対してはヘイトが集まっているような気がするが…。
まぁ、この程度の事は中学でもあったしな。いずれは忘れられるだろう。
取り敢えず俺達は残って仕事を続行する。
相模の友達の……ゆっこと遥はまるで逃げ出すように教室を出ていった。手伝うってのはどうしたんだよ。同じ遥でもあいつの遥とは大違いだな。
文実は方向性が明確にされたことで業務の効率化が進むだろう。
いろは「ねぇハチ君…」
八幡「ん?」
いろは「ハチ君の仕事ぶりにはいつもながら称賛しますよ?でも………」
いろはが言いたいことは理解できる。
さっき、ちらりと頭をよぎったしな……。
いろは「中学の時や千葉村の時みたいで好きじゃあないかな?こんな自分を犠牲にするやり方って……」
八幡「ああ………まぁ、上手くやるさ」
疑いの目を向けてくるいろは。
ごめんな……徐々に相模に仕事を移していくから…。
←To be continued
はい、今回はここまでです。
なんか暗雲が立ち込めましたね…。
それでは原作との相違点。
副委員長は雪乃➡八幡
雪乃が問題点を言い、相模は立場を失っていく➡八幡が相模に言わせて傀儡政権をしている。が、それを八幡が上手く隠している。
司会進行まで雪乃が奪ってしまった➡終始相模が主導権を握っている。
記録雑務の仕事にも不備があると雪乃はつっこむ➡その雪乃が記録雑務に残留している為、不備がない。
いろはの台詞を加筆
それでは次回もお願いします。