やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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もう、毎回ですね。

扱いの割には原作者は材木座好きですよね♪


何かがあると必ず奴と遭遇する。

side比企谷八幡

 

由比ヶ浜と別れ、俺は俺で更衣室で承太郎スタイルに着替えたあと、会議室に向かう廊下を進んでいく。会議室は廊下を左に折れたちょうどL字の角にある。まっすぐ進めば、俺達二年生の教室がある三階への階段に続いている。

その階段の前、陰っている廊下の先に人影が立ち塞がっていた。

まだちょっと暑いであろうに軍服の外套を着て、指ぬきグローブをはめた手で腕組している姿に見覚えがあったので、軽く手をあげた程度の挨拶をして無視して通りすぎる。普段ならそうはしないが、今日はそうするだけの理由がある。

小脇に紙束を抱えているからだ。大方、小説の原稿だろう。

もう先は見えた。いろはも雪ノ下も察したのか、足早に通りすぎようとする。

すると、そいつはおもむろに携帯電話を取り出して、どこかに電話をかけ始めた。

 

『break down!break down!』

 

俺の携帯が「GreatDays」を奏で始める。格好が格好なだけに気分的には「その血の記憶」だがな。

一応確かめてみるとそいつの名前が表示されていた。

お互いの存在を認識しているのに電話をしてくる辺り、イラッとしてくる。更に拍車をかけるように小芝居が始まった。

 

材木座「むむっ!中々繋がらぬな!通信兵ぃー!周波数は合っておるのかぁ!妨害電波にでもかかっておるのか!?まさか忙しい?むむっ!だとしても上官の通信に応じぬとは軍人にあるまじき行為!なぁ?八幡?」

 

八幡「誰がお前の部下だ!一応学生組の中ではナンバーツーだ!むしろお前が部下だろうが!震えるぞハート!燃え尽きるほどヒート!くらえ、仙道波紋!波紋疾走(オーバードライブ)!」

 

材木座「グホォッ!I shall return!」

 

八幡「やかましいわ!」

 

お前の声はハリケーンアッパーが必殺技の日の丸ムエタイ男だろうが!その断末魔はヒロインの一人の断末魔が喋るコマンドサンボ使いだ!

中の人は別のシリーズのムエタイ使いだけどな!

大体、こいつに部下扱いされる謂れはない!他人なら鼻で笑って殺気で黙らせるが、この男、材木座義輝に好き勝手言われるのは許さん。

 

八幡「で、お前はこんなところで何してるんだよ、階段使って踏み台昇降ダイエット?」

 

材木座「そんな事せんでもジョセフの訓練で充分ダイエットになってるわ!最近では露伴先生の修行による精神的な疲労でやつれてきておる!」

 

そ、そうなのか……。ストレスで痩せるのはよくないからな。健康には気を使った方が良いと思うぞ?

俺の心配をよそに材木座は脇に抱えていた紙束をばさっと差し出してきた。

 

材木座「それより八幡、これをどう思う?」

 

八幡「なんだよ。お前のラノベは読まない。そもそも持っていく場所が違うだろ」

 

いつもなら軽く目を通して評価を下すところだが、あいにくこれから会議がある。相手をする余裕と暇と時間が無い。

第一、それを最初に見せるべきはお前の師匠である露伴先生だろう。

 

材木座「否っ!ラノベじゃあない!」

 

無駄に力強い否定に俺達は興味をそそられる。ラノベじゃあないのならなんなのだ?この紙束は。俺達の視線が紙束に注がれたのを見て、材木座はニヤッと笑う。

先程のジョジョのニタニタ顔に比べたら可愛く思えてしまうから不思議だ。

だが、それも奴が大見得を切るまでだった。

 

材木座「聞いて驚け!見てひれ伏せ!そして……死んで詫びよ……」

 

いろは「良い度胸ですね?」

 

雪乃「材木座君?あなたのガンズ・アンド・ローゼズの攻略法を閃いていたのだけれど、試してみていいかしら?一色さんがラフレシアを見て思い付いたそうよ?」

 

ん?

あのストーンオーシャンの世界の事だよな?

ラフレシアって………あ、あの技か……確かに材木座とは相性が悪いわ。

っていうか、雪ノ下ってかなり強いよな?

 

材木座「なんだかわからぬが、八幡が同情的というからにはかなりヤバイのだろう!?我が悪かった!悪かったから話を聞け!」

 

いろは「時間がないんですから早く概要を言ってください」

 

雪乃「用件は端的に明瞭によ?材木座君?」

 

二人に威圧をかけられ、素直に謝罪する材木座。

まったく。イチイチ芝居かかった何かをしないと気が済まないのかよ……。

 

材木座「我のクラスが演劇をやるのは知っておるか?」

 

八幡「知らねぇよ。何でよそのクラスの出展内容をこっちが把握せにゃならんのだ。いや、待て……もうオチは読めた。だからそれ以上は何も言うな」

 

材木座「演劇をやる上で必要なもの、それは脚本」

 

八幡「うん。なおのことやめろ。露伴先生の意見をあおげ」

 

だが、 材木座は俺の制止をまったく聞かない。天高く拳を振り上げ、朗々と謳い上げるように自身の事を話し続ける。そして一度はクールダウンしたハイテンションがまた復活する!

かなりウザイ!

 

材木座「なに、どうということはない。奴等の話し合いでは普通の演劇はやりたくないとぬかしおってな。オリジナルの脚本でやりたいと言い出したのだ!」

 

八幡「おい、頼む!露伴先生の意見を聞け!その先の結末は知っているんだ!」

 

その先は知っている。何故なら俺が幼なじみーズによってケチョンケチョンにされたからだ。

そういうオリジナル脚本、シナリオ遊びが許されるのは小学生までだ。

いや、実際小学生まではありなのだ。学芸会やらお別れ会やらでコントめいた劇の脚本を書くのは許される。だが、中学になった途端、それは蔑みの対象へと変わる。

特に幼なじみーズにはやられた。

基本、俺の趣味には何も言わない方のいろはですら俺のオリジナル作品には静かに目を逸らして……。

 

いろは『ハチ君……さすがにこれはどうかと思いますよ?試しに露伴先生や朋子さんに送ってみます?いえ、ジョジョ先輩に見せた段階でハチ君は一月は再起不能(リタイア)するとまであります。あ……』

 

小町『お兄ちゃんに創作の才能がないのは良くわかりました。よくぞここまで駄作が書けると感心したものです』

 

八幡『ぐはぁ!』

 

静『………………』

 

八幡『ハッ!Σ(;゜∀゜)』

 

静『………………』

 

八幡『……………』

 

静『………………』

 

ニッコリ(⌒‐⌒)

 

ポンポン(異様に優しく肩に置かれる手)

 

何度か頷いて無言で去っていく静。

 

八幡『いっそ罵って!その優しい態度が却って傷付くから!笑顔が逆に痛いから!』

 

やべぇ、今思い出しても目から汗が………。

 

いろは「ふ………」

 

いろはから乾いた笑いがこぼれる。

 

材木座「ぬっ?どうした一色殿?」

 

いろはは口角を歪めて材木座に微笑みかける。

聖女の微笑みではない。悪魔の微笑みだ。

彼女は、おもむろに写真を撮ってすぐさまどこかに送信した。多分……

 

『や~み~を~欺いて~♪』

 

材木座の携帯が鳴る。メールのようだ。

 

材木座「ろ、露伴先生から……だと?『文化祭用のオリジナルシナリオが完成したんだって?持ってくるんだ。義輝くん。師匠として君の作品は全て目を通す義務が僕にはある』………だと?」

 

いろは「わたしから露伴先生に送りました。諦めて下さい、材木座先輩」

 

材木座にとっては一番ダメージの低い方法で解決しただろうな。

 

八幡「オーケー。話はわかった。取り敢えずヒロインの由比ヶ浜と自分を主役にした物語は他人からしてみたらウザイだけだからやめとけ」

 

材木座「なにっ!?八幡、貴様エスパー」

 

いろは「ハーミット・アメジストってエスパー能力そのものですから間違えではないんですよね」

 

こんなことでハーミット・アメジストを使わんけどな。ただの経験則だ。というか、昔いろはに直に拒否された事案だ。あれ以来、そういうものは絶対に作らない、または他人に見せないと固く心に誓った。

 

材木座「はぼん。なるほどなるほど。つまり、こう言いたいわけだな?」

 

材木座はまじめくさって咳払いをする。

 

材木座「最近は正統派主人公よりも敵役やライバル系キャラの方がおいしいし、かっこよくて人気が出る、と」

 

いろは「この人、全然わかってないです…」

 

材木座「む?間違っているか?」

 

八幡「いや、その論法自体は別に間違ってねぇよ。プリキュアも初代はブラックの方をメインに据えていたからな。カラーリングによるキャラ付けとか、たぶんそうい狙いがあったんだろう。間違ってるのはお前の行動自体だ」

 

一番最後を強調したかったのだが、材木座の耳は師匠同様に高性能で、自分の都合の悪いことは聞こえない仕様らしく、うむうむと妙な相槌ばかり打っていた。

 

材木座「なるほど、確かに一理ある。貴様の提唱する『キュアブラックの法則』……コイツはひょっとするとひょっとするぞ。ふむ!さすがはプリキュア学の権威!」

 

八幡「おいやめろ、勝手に権威にするな。俺ごときが恐れ多いだろ。間田さんほどではないしな。それに俺はキュアホワイト派なんだよ」

 

まったく権威だなんて恐れ多い。俺なんてただ好きで観てるだけのやつだし、パッと見て誰が原画やってるとか全然わからない程度のにわかだし、過去作のDVDーBOXもBD待ち勢だし、むしろオタク名乗るのすら烏滸がましくて申し訳ないレベルで間田さんに足を向けて寝れないとまである。

 

材木座「ほむ、その反応。こやつ、この方面でも本物か」

 

材木座に引かれていた。見るといろはも引いているし、雪ノ下に至っては既に他人の振りをしてスタスタ歩き始めている。

 

八幡「もういい。もう知らん。苦しんで後悔しろ。まぁ、露伴先生が止めるだろうがな」

 

成長の仕方とはそういうものだ。傷つき、貶められ、軽蔑されて成長する。愛や友情や勇気で人は変わらない。

願わくば、露伴先生が材木座に特大級の致命傷を与えてくれますように。

 

材木座「ところで10月の映画は行くのか?」

 

八幡「間抜けめ。俺みたいなのが行って家族連れや幼女を怖がらせてしまうだろ。下手しなくても通報される。というか通報された。警察官に『また比企谷さんですか?勘弁してくださいよ』と言われてピュアなハートが傷付いた………いろはも付き合ってくれんし……」

 

いろは「大人しくBlu-rayを待っていて下さい」

 

材木座「く……こいついち早く見たいだろうにそれを我慢して……。男の中の男!」

 

何故か男泣きされた。こいつ、窓から捨てて良い?

泣きたいのはこっちだ。これから仕事だというのに、何故俺はこんなところでこんな奴とこんな話をしなければならないのだろうか。

 

いろは「それを見せられるわたしの身にもなってくださいよ………」

 

ごめんなさい。

 

←To be continued




気がつけば300話!早いものです!
ラノベ一冊につき二十万文字と考えると、ラノベ10冊分に相当する文字数……。

これも読者の皆様のお陰です!
これからも完結を目指して頑張ります!

早速ですが恒例の。

材木座と対面したのは八幡一人➡承太郎学ランの八幡といろはと雪ノ下

材木座の格好はコート➡軍用外套

小芝居は言葉のみ➡軍用ネタに加えて波紋疾走を追加

材木座の膝には水がたまって踏み台昇降が出来ない➡ストレスでやつれてきている

八幡のオリジナル脚本はクラスメイトにけちょんけちょんにされた➡幼なじみーズにけちょんけちょんにされた

それでは次回もよろしくお願いいたします。

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