やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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戸塚と材木座とのホラー映画のお出掛けはキングクリムゾン!

戸塚「スピードワゴンはクールに去るぜ…」

材木座「解せぬ!」

露伴「それより君は早く原稿を書き上げろ」

めぐり「やれやれだよねぇ~」

間田「僕も久々に出れると思ったのに…」

エルメェス「ドンマイ」


叔父貴分と姉貴分

side比企谷八幡

 

最強の食べ物は何か?

かれー、しゃぶしゃぶ、寿司、蕎麦、すき焼き、天ぷら、焼き肉、はたまたスイーツ。

いずれも否。

ラーメンこそは最強。

ラーメン。

それは孤独な男子高校生にとってはもっとも身近な食べ物の1つだ。

何を食べるか悩んだら、まずラーメンが出てくる。

中々許しが出ないから行けないけどな!

お許しが出ても大抵はいろはと小町で行くから本当の意味でのラーメンを楽しむことはあまりない。

デートでラーメン屋に入ってくるカップルのようにぐだぐだくっちゃべってしまうからだ。

ジョジョや仗助、ジョセフと行くと本来の意味で楽しめる。純粋に味を啜るべく、一心不乱に食べるからだ。

話がそれだが、ラーメンこそは我が食事に相応しい!

今日は俺がオフの日だ!

たまには一人でラーメンを楽しんでやる!

孤高を貫く黄金の魂を癒す、至高の一杯!

生きてて良かった!一度は砕けた魂を癒す食べ物!それがラーメンだぁ!

 

…さて、オフだからと夜更かししまくったせいで中途半端な時間に起きてしまった。飯を食うタイミングを逃すという世間一般の高校生の夏休みにありがちな事態が発生してしまった。

いろはも小町もジョジョ達も今日は出社だ。

一度はいろはに起こされたのだが、二度寝に入ってしまい、諦められたらしい。

自分で作るという選択肢もあったのだが、俺が作ると大抵は本格的なイタリアンになってしまう。

いろは達と一緒に食べるために作るのならばともかく、自分用に作るのに本格的なイタリアンは作る気が起きない。ならばたまにはラーメンでも…と思ったのである。

そう決めると胃がもはやラーメンしか受け付けそうにない。すぐさま護衛に連絡して許可が下りているラーメン屋へと思いを馳せる。

千葉はラーメン激戦区である。

松戸を始め、千葉、津田沼、本八幡など駅単位で激戦区が存在し、最近では竹岡式ラーメンや勝浦担々麺などB級グルメ的なラーメンの存在も全国区となった。

そうした「人に知られた店」の安定感は抜群で、そういう店ならば調査が入って暗殺者に狙われることは少ない。

自分で店を探すという冒険らしい冒険が出来ないのが立場ある人間の辛いところだ。

 

軽いジョギングがてら走ること、しばし。

目的地の海浜幕張についてからは歩く。ひたすら歩く。

少し前の監視を張られた時とは違い、数名の隠れた護衛が俺の歩く速度に合わせて移動してくる。

この辺りは会社でほぼ毎日来ているので行きつけのラーメン屋は何軒もある。

夏の日差しに焼かれながらてくてくと歩く。

じめじめとした熱気にイライラさせられるが、それを吹き飛ばすような爽やかな音色が辺りに響いた。

リンゴンリンゴンと高らかに鳴るのは教会の鐘。

この付近はホテルロイヤルオークラを始めとした高めのホテルが立ち並び、結婚式場も多い。そうした式場のひとつで結婚式が行われているのだろう。

華やかな雰囲気が漂い、祝福の声が垣根を隔てて通りに聞こえてくる。

職員の結婚式とかには呼ばれることはあるが、他人の結婚式を見るのは初めてなので、ちょっと覗いてみた。

すると、絵にかいたような幸福がそこにあった。けど、なんだろう。視界の端にその雰囲気とは無縁の人物の姿が見えた。

幸せ空間の中でただ一点、色々と疲れて殺気が出かかっている女性がただ一人…。

何故ここにいる?

 

中年女性A「徐倫ちゃん、私の息子なんていかがかしら?」

 

中年女性B「私の甥っ子なんてどう?」

 

徐倫「いえ…故郷に婚約者がいるので…」

 

中年女性C「空条博士、この後どうですか?」

 

承太郎「……」

 

承太郎の仕事の関係者の結婚式かな?

スーツ姿の承太郎とドレス姿の徐倫がいた。

だけど、主役をほっぽっといて徐倫を自分の身内に引き込もうとしたり、承太郎に色目を使うオバハンがいたりで中々カオスだ。

特に承太郎の機嫌が悪くなるのがわかる。二重の意味で。

 

……さて、ここにいてもトラブルに巻き込まれるだけだな。あばよ、空条親子!

 

承太郎「ん?」

 

しかし忘れてはいけない。深淵を覗くとき、深淵もこちらを見ているということに。

ここは……逃げ

 

徐倫「ハッチ!」

 

あ、これは詰んだ。その声を聞いたマダム達は一斉にこちらを見る。これはもう逃げられない。

 

承太郎「すまないが問題児が通ったのでな。私達親子はここで失礼させて貰う」

 

徐倫「ご祝儀は弾みますので披露宴の方は控えさせて頂きます。仕事ですので」

 

空条親子は正装用の革靴とヒールとは思えない素早さで俺の腕を片方ずつ掴む。

 

承太郎「地獄に仏とはこの事だ。助かったぞ、八幡。ヤレヤレだ」

 

徐倫「ハッチ。あんたは亡者に囲まれたカンダタの前に垂らされた蜘蛛の糸のように思えたわ。ヤレヤレだわ」

 

周囲の声など完全に無視して俺を連れ去った。もちろん俺の意思も完全に無視である。

この二人に抵抗しても後が怖いので大人しく引きずられて行く俺。靴の裏がすり減るだろ。後で弁償して貰うからな。

金銭感覚が麻痺しないように毎月一万円の小遣いをやりくりしているんだから、靴代は貴重なんだぞ。安物だがふんだくってやる!

そのまま文字通り引きずられることしばし。角を曲がって公園に入ったところでようやく止まった。

 

徐倫「ふぅ……とりあえず離れられた」

 

承太郎「これだから結婚式に呼ばれるのは憂鬱になる」

 

ほっとそこそこの胸を撫で下ろす愛しき姉貴分とその父親。どうでも良いけど、スーツ姿にその帽子は似合わんぞ?承太郎。何で帽子に拘るんだ?禿げてるの?

一方で徐倫は黒のドレスに滅多にやらないアップにした髪を纏めている。前髪はいつも通りだが。

 

八幡「………おい」

 

承太郎「ああ、悪いな八幡」

 

徐倫「口実に使っちゃったね」

 

美男美女の親子は微笑み、俺をベンチへと連れていく。

承太郎は電子タバコを取り出すと、それにカートリッジを詰める。

紙煙草は結局徐倫に全面禁止されたようだ。

承太郎は電子タバコを吸い、煙をくゆらせる。

 

八幡「抜け出して良かったのかよ。結婚式だったんだろ?」

 

承太郎「構わん。祝儀は置いてきた」

 

八幡「二次会とかはどうするんだよ」

 

徐倫「ハッチにしては気を使うじゃない」

 

承太郎「ハイエナ達が鬱陶しくて仕方がない。元教え子がどうしてもと言うから参加したが、こうなることがあったらすぐに退席すると言ってある。こちらは義理は十分に果たしたし、約束を破ったのはあちらだ。問題はない」

 

空条親子は忌々しげに視線を逸らす。

 

承太郎「そもそも俺達はあまり参加したくなかった。どいつもこいつも我々親子を財産目当ての道具にしか見ていない」

 

徐倫「あたしにはアナスイがいるし、婚約者がいるって言うのにしつこいったらないわ。父さんが再婚するのは別に反対しないけど、ああいったオバサンはお断りね」

 

ロメオみたいな例もあるからな。

そういうハニートラップには気を付けろと常に俺達幼なじみーズは言われている。

というか、純粋にそれぞれの相手以外には興味ない。

むしろ雪ノ下、三浦、海老名、戸塚、川崎兄弟にその忠告は必要じゃね?

陽乃さんと小町?下手な奴は近付けさせねぇ。

 

承太郎「で、お前はあんなところで何をしていた?」

 

八幡「ラーメンを食いに行こうとしていたんだよ」

 

徐倫「ラーメン?ああ、そういえば子供の時以来、とんと食べたことがなかったわね」

 

急に良い食い付きで反応する徐倫。目はさっきまでの殺気を帯びた物ではなく、キラキラさせている。

 

承太郎「そう言えば我々も誰かにまとわり付かれていたから食いっぱぐれていたな。ちょうど良い。我々も行こう」

 

八幡「まぁ、それは構わねぇんだけど…」

 

俺は二人を先導して歩き出す。革靴とヒールをカツカツ言わせて空条親子も着いてくる。相変わらず派手な親子だな。完全に注目を集めているぞ。

まぁ、わりといつもの事なので俺も空条親子も気にならないが。

 

徐倫「聞いたんだけど、大志の相談に乗ってやったみたいね。身内には優しいのはハッチらしいわ」

 

八幡「小町とジジイだな…。相変わらずおしゃべりな」

 

承太郎「正解だ。まぁ、俺達だから喋ったとはおもうがな。二人にとっては大志も特別だ」

 

まぁ、シーザーとジジイとリサリサにとっては強い絆で結ばれているからな。あの世界にも共に旅した仲だし。

 

徐倫「自慢の兄妹分だよ。ハッチとマーチは。エンポリオも負けてないけどね」

 

八幡「そう言えばエンポリオは?」

 

承太郎「エルメェスと一緒にお袋の所で留守番だ」

 

徐倫「この手の事はあの子も良く知ってるからね。同情した目をあたし達に向けてきたよ」

 

わかるわ。エンポリオまでもハイエナに集られそうだしな。

『私の娘はどう?』とか、『この子は私の娘なの、年が近いからお似合いね』とか…。

エンポリオなら上手くかわすと思うが、空条親子の機嫌の悪さが更に加速することはまちがいなさそうだ。

エンポリオのお相手も探してあげるべきか?やっぱり小町を!

 

承太郎「八幡。小町をエンポリオの相手にとか考えているならありがたいがやめておけ。また変にトラブルに発展するぞ」

 

八幡「俺までジョースケにするな…」

 

徐倫「ホント、あたし達の周りにはブラコンシスコンが多過ぎて困るわ…ヤレヤレよね」

 

俺は諦めんぞ!エンポリオ!

 

ーキングクリムゾン!ー

 

8月も終わりに差し掛かっているが、外を歩くにはまだ暑く、降り注ぐ日差しがじんわりと肌を焼く。

それでも海岸沿いの通りに面したこの辺りは吹き付ける風のため、いくらか爽やかだ。

おかげで店の外に並んでいても不快感は強くない。

店内に入れるようになるまでには少しかかりそうだったが、俺は時間を潰すのは得意なので問題ない。他にも人のメンツを潰したりするのも得意だ。特に敵になった者達の人生を潰すのは得意だったりするのは想像に難くないだろう。

ぼーっと物騒なことを考えていると、深いため息が聞こえた。

 

八幡「………なんだよ」

 

徐倫「いや、意外だと思ってね。人混みや行列は嫌いだと思っていたんだけどね。考えていることはどうせしょうもないことだろうけど」

 

八幡「嫌いだな。無秩序な人混みはな。行列はまぁ、ちゃんとしてるだろ?割り込んでくるバカがいないわけじゃあないが」

 

もっとも、承太郎が睨みを効かせているからこの行列ではそんな事をする勇者はいないが。

大体の人間が行列が嫌いなのは時間が無駄になっていると感じたり、あるいは手持ち無沙汰な感覚が嫌だったり、誰かが一緒だと間が持たなかったりするのが原因なんだろう。ディスティニーランドにデートで行ったカップルは別れるなんて都市伝説もひもといてみればこういう行列でのイライラや価値観の違いが浮き彫りになるのが原因なんじゃないだろうか。俺達?そんなものでゆらぐ関係ではない。無秩序な人混みは、ルールも守れずマナーを知らない輩が沢山いて、それをみるのも近くに寄られるのもヒットマンが簡単に近付いて来られるのも耐えられないので無理。

 

承太郎「うっとおしいのは俺も嫌いだからわかるがな」

 

俺の返答を聞いて承太郎も頷く。

 

徐倫「父さんもハッチも意外と潔癖だものね」

 

八幡「別にそういうわけでも無いな。片付けとか得意じゃあないし」

 

ただいろはや小町に有象無象の男の体が当たるのは我慢ならないというのはある。

 

徐倫「そう言いながらも部屋とかは片付いているじゃない」

 

それは部屋にも資料があったりするからだ。

 

承太郎「徐倫が言っているのは清潔さや衛生面の話では無いのだろう。物の道理の話だな。そういうものの区別がしっかりできていることが八幡の強みだ。それが出来ていない奴も少なくはないからな。己の中できちんと判断基準を育んでいるのは良いことだ」

 

お前は俺の親父か?実際親子ほど年が離れているが。

 

八幡「単純に騒がしい連中が嫌いなだけだよ。承太郎みたいにな」

 

承太郎「ふ……違いないな」

 

楽しいと…俺達は今この瞬間が最高に輝いていると彼らは誰に向かってアピールしているのか?

家でいろは達と何するわけでもなく、寄り添って本を読んでいたり、ゲームしていたり、こんな風に静かに会話している瞬間を楽しいと知る者にとって、彼らの楽しい楽しいアピールはどこか空虚に感じる。

声の大きさや群れてる人間の数が楽しさを測る尺度ではなかろうに、それをはき違えてる連中が俺は嫌いだ。人混みやイベントというのは彼らにとって絶好のアピールタイムのためか活動が活発化する。

俺達が身内のパーティーとか以外のイベントがあまり好きではないのはそういうところなのだろう。

 

徐倫「でも、花火大会には行くんでしょ?」

 

八幡「ポートタワーのか?あれにはいつものメンツで行くことになってるが?半分は仕事だが」

 

ポートタワーの花火大会といえば千葉の夏の風物詩だが、俺達は会社と地元の接待のような形で駆り出される。子供の頃は出店が目当てで行っていたが、立場が高くなるにつれて暗殺を警戒して出店も禁止にせざる得なくなった。

花火なんて会社で残業していると、近くのマリンスタジアムからナイターの時は上がるからしょっちゅう見慣れてしまうし、今となっては時報代わりになってしまっているしな。

 

八幡「空条家も来るのか?ホリィさんやエンポリオも連れて」

 

承太郎「俺も仕事の関係で招待客扱いだ。仗助やジジイと一緒にな」

 

なんだ。一緒じゃあないか。もっとも、表向きには仗助の連れみたいな扱いだがな。

 

徐倫「あたしは生徒の見回りに駆り出されるのよ。祭りの時とかね。若手が駆り出されるのよ。あの世界のあたしには年増扱いされたけど、実際は教師歴2年だしね」

 

あー……あの平行世界の徐倫に年増扱いされてたな。案外根に持ってやがる。

 

徐倫「うちの生徒で羽目を外す輩がいたりすると困るからね。自治体のイベントだからお偉いがたも結構来るしね。一番羽目を外す輩がお偉方に混じっているのが複雑だけど」

 

八幡「俺とジョジョの事か?失礼な。業績に繋がるから会社の看板を背負ってるときにはトラブルは起こさん」

 

承太郎「逆を言えば会社の看板を背負っていなければトラブルを起こすと言っているように聞こえるが?」

 

おいおい承太郎………当たり前だろ。

そう言えば陽乃さんも来るのか?渦中の人間だけど、あの人なら来る気がする。マスコミ程度にへこたれるあの人じゃあない。雪ノ下は来ないようだが。

 

徐倫「いつものメンツと言ったら陽乃も来るのかな?」

 

八幡「一応予定では一緒に行動する予定だな」

 

徐倫「大丈夫なの?」

 

八幡「何かあってもジョルノが黙ってないだろ。マスコミもパッショーネの怖さは知っているだろうしな」

 

マスコミも裏の世界と繋がりがある。パッショーネを敵に回す真似はしないだろう。文字通り命がけになるからな。跳ねっ返りはいるだろうが、そういう輩は見せしめになってもらったこともある。

まぁ、あの人やジョルノの事だ。狙いはその跳ねっ返りだろうな。俺もせいぜい利用してやるさ。

 

←To be continued




はい、今回はここまでです。

ラーメンのエピソードはもう少し続きます。

それでは原作の相違点。

結婚式に出ていたのは平塚先生。従妹の結婚式に出席していた➡空条親子。承太郎の教え子の結婚式に出席していた。

八幡は花火大会へは行かない予定➡いつものメンツで行く予定だが、半分は仕事

高校時代の陽乃について語る平塚先生➡既に知っているので現状の雪ノ下姉妹にたかるマスコミを警戒する

徐倫にとっては性悪コンビが一番の問題児

それでは次回もよろしくお願いいたします。

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