やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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最終決戦です。


力と技と夢の終わり(後編)

side比企谷八幡

 

承一郎の体の中に意識を沈ませ、俺は承一郎の意識とすれ違う。

 

承一郎『甘く見ていた。力がないお前を…だけど、恐ろしい……弱いだなんてとんでもない。どんな経験を積めばここまで非情になれる……』

 

八幡『力や能力だけに頼っている奴は敵じゃあない。どんなに力があっても……いや、力があるからこそ逆に俺の技に利用できる』

 

俺は無表情のまま目を承一郎を向ける。

 

八幡『安心して帰らせてくれよ。相棒と同じ7代目のジョジョ。そして、魚を取れ』

 

承一郎『ああ。任せてくれ。必ず自分で魚を取ってやる…なぁ、八幡』

 

八幡『あ?』

 

承一郎『いつかはお前とは別の形でたどり着く。真実の先にな』

 

八幡『楽しみにしてるよ』

 

承一郎『ああ』

 

俺は承一郎とタッチを交わし、ジョニィに場所を譲る。

 

ジョニィ『行ってこい、兄弟!』

 

承一郎『ああ、任せてくれ』パチィン!

 

承一郎はジョニィとハイタッチを交わし、体に戻る。

激戦に戻った承一郎。意識の中に残る俺とジョニィ。

 

八幡『ホントに真実にたどり着いたとき、再び並び立つかもな』

 

ジョニィ『たどり着いてやるさ。そしてまた、追い抜いてやる。お前よりも遥か高みにな』

 

俺はコイツらよりは身体能力が低い。それがハッタリで終わらないことを俺は知っている。

だが、簡単には越えさせん。

 

 

side雪ノ下陽乃

 

八幡くんが引っ込み、承一郎くんが再び表層に出てくる。

 

承一郎「完全にベストに戻してくれてある。極めた波紋がここまでとはな。それより上を行く小町はどれだけ強くなっているのやら……」

 

万全に戻してある体調に承一郎くんは驚いている。

 

陽乃「驚いた?承一郎くん?」

 

承一郎「ええ。それに、見誤りましたよ。陽乃さん。性悪トリオらしいですね?」

 

陽乃「まぁね~。お姉さんの本性を簡単に見破れる人はそうはいないからねぇ~。初見で見破ったのは八幡くんとジョセフさんくらいかな?」

 

わたしが楽しそうに言うと、苦笑いした承一郎くんがぽそりと呟いた。

 

承一郎「そう言われて楽しそうに笑う辺り、同類ですよ。あなたと八幡と静さんは」

 

だろうね~。隠そうとしているか、オープンにしているかの違いだからね~。

さて、お喋りの時間はここまで。わたしたちは元凶を見る。一見無傷のように見えるけど、それは電力を消費して傷口を修復しただけ。

体もそうだけど、八幡くんに完膚なまでにやられた精神的ダメージまでは癒えないかな?

承一郎くんの中に八幡くんがいる。これはかなりのプレッシャーだろうね?

 

承一郎「陽乃さん。奴の衝撃波を破る手段はわかったんですか?」

 

ジョルノ「見破ったよ。方法は3つ。1つは留美、1つは君の力で封殺できる。いや、回避できる。でも、完全に封じれるのは雪乃さ」

 

そうジョルノ兄さんが言うと、雪乃ちゃんが首を振る。

 

雪乃「私のエンジェル・ダストではあの熱量を相殺するのは不可能よ。材木座君でも耐えられないわ」

 

まだまだ甘いなぁ。それだけ強力な力を持っているのに勿体ないよ?雪乃ちゃん?

 

承一郎「!!そうか………何故雪乃の力を上手く使おうと考えなかったんだろう!雪乃の力なら……アームストロングは敵じゃあ無かったんだ!」

 

気付いたみたいだね?

 

留美「そういうことなんだね。私と承一郎……それに雪乃の力を加えれば……」

 

そして、わたしは描いた作戦をみんなに伝える。

ジョルノ兄さんや留美ちゃんが何も言わないところを見ると問題は無いみたいだね。

 

承一郎「全員の力を一つにですか」

 

ウルフ「ならばこれも持っていけ。承一郎」

 

ボロボロになったウルフがエクセルサスの残骸から立っていた。その口には、あの『ムラサマ』が。

 

承一郎「ウルフ…!」

 

ウルフ『再生開始』

 

サム『…面白くなってきた。あいつの中にいる悪霊とやらのおかげでさらにあいつは強くなったみたいだ。アームストロングの理想もいいが、一本の剣でどこまで行けるのか見たくなった』

 

承一郎「サム…?」

 

サム『俺が承一郎に勝てばそれでいい。所詮はあいつはそこまでの男だって事だ。だが万が一…俺が負けたら、…この刀のIDには時間制限(タイムリミット)が付けてある。後はお前に任せた。よろしくな、ウルフ』

 

アームストロング「味な真似をするじゃあないか、浪人者め…。それでどうする、野良犬?刀を換えればこの小僧が勝てると?」

 

精神的ショックから立ち直ったのかな?

アームストロングが承一郎達に言ってくる。

 

アームストロング「どうしようとお前の自由だ。だが自由には責任を伴う。承一郎が死んだら自分がどうなるかわかっているな?」

 

ウルフ『AIの俺に死の恐怖はない』

 

アームストロング「ん…?」

 

ウルフ『生物のような個体維持本能はない。俺が望むのはミームの継承…そして俺が死ねば、そのミームは途絶える…』

 

アームストロング「知的な判断だ」

 

ウルフ『…だが承一郎、俺もお前のミームに感染したらしい。サムの話を聞いた時は戸惑いもあったが、俺の規範は決まっていたようだ』

 

AIの規範ね。

八幡くんには絶対に承一郎くんに勝てないものの1つはそのAIをも虜にするカリスマ。

あるいは数ある平行世界の八幡くんにはあるかもしれないけど、わたし達の八幡くんにはそれは足りない。

 

ウルフ『誰かに助けられた者は誰かを助けたくなるってわけだ!』

 

一瞬、ウルフの機械のフェイスがニカッと笑ったように見えた。承一郎くんも笑い返す。

 

アームストロング「ほざけ!」

 

アームストロング跳躍、『ムラサマ』を奪おうとするが、ウルフは咥えていた『ムラサマを承一郎くんに飛ばす。

 

鞘と手はすれ違い───

 

パシィッ!

 

『ムラサマ』が承一郎の手に収まった。

 

アームストロング「犬畜生が!」

 

アームストロングはウルフを蹴り飛ばす。

 

承一郎「スティーヴンッ!」

 

承一郎くんは『ムラサマ』の鞘と柄を両手で掴む。

 

承一郎「確かに僕は『ニセモノ』だ…」

 

スラァッ…とゆっくりその紅き刀身が新しい主を受け入れるようにその姿を見せる。

 

承一郎「だからこそ、戦おう。僕のために散って行った生命(いのち)に、これからも意味をもたらし続けるために…」

 

承一郎くんは『ムラサマ』をアームストロングに突きつける。彼を守るために、そして彼の為に命を散らした仲間達。全てが承一郎くんの隣に並んでいるように幻視()えた。

そしてわたし達の回りにも……ジョジョと呼ばれる者達の為に散っていった仲間やDIO様の部下達…そして、この世界の私達……。

託された。

 

これが最後よ……八幡くん!

わたし達は帰るんだ!

 

陽乃&承一郎「新生クリスタル・クルセイダーズ!スクランブル!」

 

アームストロング「ほざけぇ!再びDIOを引きずり出す!」

 

アームストロングは跳躍、地面に着地する。

 

角がせり出す。承一郎くんはそれを掴み…

 

ベキィッ!とヘシ折る。

 

クリアになったみたいね。八幡くんが言っていた彼の闇に、彼自身が否定した。

そしてもう一本の鞘に収められた刀の柄に手に取る。それは、半ば折れた『村雨』。

そこに多数の虫が集まる。八幡くんが戦っている間にジョルノ兄さんとピストルズが破片を集めて虫に変えていた。

 

承一郎「兄さん達……」

 

ミスタ「大事な物なんだろ?感謝しろよ?」

 

承一郎「ありがとう……アーシス」

 

彼の目に更なる力の炎が灯る。闘志が戻ってきたんだ。

 

アームストロング「来るがいい」

 

承一郎「オーケー……いざ、参る!」

 

BGM『春擬き』

 

アームストロング「もう戦争なんてどうでもいい。お前らを殺すだけだ」

 

承一郎「いくぞアームストロング、電力の貯蔵は充分か?」

 

承一郎くんは制御(リミッター)両手に持つ二本の刀の重みを感じながら走り出す。

 

アームストロングが地面を殴り炎の壁が殺到する。

 

留美「スティッキー・フィンガーズ!」

 

留美ちゃんが作り出したジッパーに全員が入り込む。

衝撃波封じの手段の1つ、地面に入ってやりすごしちゃおうね♪作戦だね。

ブラッディ・シャドウでまとめて炎の壁や衝撃波の内側に移動するでも可能だよ?

 

承一郎「ナイスだ留美!」

 

炎の壁をやり過ごしたわたし達はジッパーが閉じるスピードを利用して一気に接近する。

接近するのは承一郎くんとわたし。

 

まずはわたしから接近する。

 

陽乃「はぁ!」

 

キィン!

 

アームストロングはアヌビス神をガードし、わたしに拳を当てようと腕を振るってくる。

それをわたしは刃で受け止め……そして梃子の原理で逸らす。

 

承一郎「陽乃さん……それではまったく意味が」

 

陽乃「その力、覚えたわ。全てで無くて良い。八幡くんのように最低限の力でいなすくらいの力を覚えればそれで充分なのよ?」

 

再び拳を振るってくるアームストロング。だけど、力が乗る前にわたしが入り身で肘を押さえて封じる。

全力の勢いが乗った状態ならともかく、力が乗り切る前に押さえられてしまってはなす術は無いでしょ?

 

陽乃「承一郎くん!わたしがいなしている間に!」

 

承一郎「そういうことか!」

 

承一郎くんが波紋で一気に懐に入り、わたしがアームストロングの押さえている腕を『村雨』の水圧カッターと『ムラサマ』を振るう。散ったのは白い人工血液(ホワイト・ブラッド)。やはり『村雨』本体ならまだしも水圧カッターなら使い道がある。『ムラサマ』もすごい斬れ味だね。

承一郎くんの剣はアームストロングの左腕を切断する。

 

アームストロング「ふ………」

 

アームストロングは不敵に笑う。

だけどね?八幡くんは言ってるんだよ?モード、ガンズ・アンド・ローゼズだって。

 

承一郎&陽乃「ふ………」

 

反対にわたしと承一郎くんは笑い返す。

わたし達はツープラトンの前蹴りをアームストロングに放つ。ダメージを与える為じゃあない。蹴った反動でアームストロングの間合いから一気に離脱する為よ。

案の定、奴の腕は断面と断面がくっついて元に戻り、さっきまでわたし達がいた場所に再生された拳が通過する。

電力をナノマシンに伝達させて再生させる能力は、八幡くんが潰した両目が再生されている事で見破った。

いや、何となくジョニィくんの戦いでも体が再生されている段階で気が付いていた。

戦い方はザ・オーガでも、能力はガンズ・アンド・ローゼズみたいなもの。切断も治してくる。わたしと承一郎くんはそれを見越して間合いを離した。

 

アームストロングはわたし達を追って一気に間合いを詰めようとするけど………

 

ピストルズ『ヒャッハー!もう一度失明しちまえー!』

 

アームストロング「おのれ!またしても目が!」

 

ミスタさんが放った弾丸を曲げてピストルズがアームストロングの目に命中させる。普通ならそこで弾丸が脳に達してジ・エンドだけれど、そこまで望むのはこの脳筋には無理かな?

ホントに脳まで筋肉で出来てるのかな?

でも、ミスタさんの目的はアームストロングの出鼻を挫くこと。ピストルズとアームストロングとでは相性が悪いけれど、このくらいの真似はできるわ。

 

その隙をついてわたしが逆に間合いを詰める!

 

陽乃「はぁ!」

 

アームストロング「バカめ!見えずともガードを固めれば良いだけだ!」

 

ギィィィィン!

わたしの斬撃がアームストロングの首に決まる。アームストロングのガードを透過して直接首に決めた。だけど、固すぎる!首チョンパは失敗か……

 

アームストロング「バカめ!そんなナマクラが通用するとでも思ったか!下手をしたら首を狙ってくると思って固くしていたのよ!」

 

アームストロングはわたしを狙ってアッパーを放ってくるけど……バカはあなた。

わたしはアヌビスを消してアッパーを入り身で回避。

わたしは刀に拘らないわよ?

スタンドを一度解除するから覚えた力はキャンセルされちゃうけど、もう必要ない。

 

承一郎「クリスタル・ボーン!」

 

失明しているからわからなかったでしょ?すぐに再生できると踏んで逃げに出なかったあなたのミス。

一瞬でも失明させれば良い。

まったく同じタイミングで承一郎くんも間合いを積めていたことに、足音を完全にシンクロさせていたからわたしが一人で間合いを詰めていたように感じるでしょ?

それが甘いのよ。だから大降りのアッパーなんて外せば隙だらけのマネが出来る。そこが付け入る隙。

 

がら空きになったボディに、承一郎くんは……

 

C・B「オラオラオラオラオラオラオラァ!」

 

しこたま拳のラッシュを叩き込んで殴り飛ばす。

 

アームストロング「ぐはぁぁぁぁぁ!」

 

吹き飛ばされたアームストロングはエクセルサスの残骸に叩き付けられる。

 

アームストロング「ならばこれならどうだ!」

 

アームストロングは再生してエクセルサスの上に立ち、純粋な腕力で残骸を持ち上げる。

 

ジョルノ「やれやれ、どこまでもザ・オーガだね。そう来ると思ってそれにはゴールド・エクスペリエンスの拳を叩きつけておいた」

 

平塚ちゃんは巨木を引っこ抜いて投げて来たっけ?

まったく同じ手段で来るだろうと見越してやってたんだよね?

アームストロングが持ち上げている場所の部分だけ、鮫に変化し、その両腕を飲み込む!

鮫の顎の力は強力だからねぇ♪いくら固くても食い込むでしょ?

失敗してもあの時みたいにトリッシュさんと留美ちゃんで対処可能だしね~♪

 

アームストロング「お、おのれ……だが、再生させれば!」

 

雪乃「その再生の力も、もう使わせない。チェックメイトよ。アームストロング上院議員。フリージングビーム!」

 

決まった。これを狙っていたのよ。

確実にヒットさせるこのタイミングを。

 

雪乃「あなたから、ナノマシンの概念と電気を利用する概念を奪ったわ………。もう、あなたはそこから抜け出す方法はない。気付かなかったかしら?あなたの足元は既に……」

 

トリッシュ「スパイスガール……あんたの足元は既に底柔らかく変えてある。時間が無かったから底無し沼とまではいかなかったけど、あんた一人を沈めるには充分な深さ」

 

ズブズブズブズブ………

 

既に腰まで埋まったアームストロング。

どんな力を持っていても、ここまで埋まってしまっては脱出不可能。

さぁ…………。

 

陽乃「決着はあなたが付けなさい。承一郎くん」

 

承一郎「了解です。まさかこんなにアッサリと……」

 

承一郎くんはサムの炎の刀でエクセルサスを焼き付くし、ついでにアームストロングの腕を消し飛ばす。

 

承一郎「放っておいてもそのまま終わりだが、せめて最後のけりだけは……お前の命だけは僕が終わらせる!せめてものけじめに!」

 

 

side比企谷八幡

 

この時、承一郎の精神の中では彼の本物の幻影が語りかけていた。その一方で………

俺は会いたくもない存在との邂逅を果たしていた。

 

八幡『げ………レクイエム……何で?』

 

レクイエム『他の4つの世界ではひっきりなしに呼ばれていたのでな。だが、この世界ではそれも無さそうだ』

 

八幡『わざわざ出番待ちしていたのかよ。案外、お茶目なところもあるんだな』

 

レクイエム『ふ……ある世界ではともかく、他の3つはレクイエムが必要なほど過酷だったのは確かだ。特に比企谷小町の世界はな。規格外が川崎京華を唆して私を呼び出したが、そうでなければ負けていた』

 

八幡『小町が!?レクイエムが必要になるくらいヤバい状況が……みんなは無事なのか?』

 

レクイエム『他の世界の仲間達と共に乗り越えた』

 

よかった……。全員無事なんだな……。

 

レクイエム『これで最後だ。そして、私がお前に言うことは一つ。原石を更に磨き、真実の先へと進んで宝石となれ。ザ・ジュエルの比企谷八幡よ。また会おう』

 

そう言って幻のレクイエムは消えた。

このレクイエムの幻は世界の意志が見せたものなのか、それとも単に俺の願望が見せた白昼夢だったのかはわからない。

どちらでもあり、どちらでもない気がする。

 

ザ・ジュエル………

ジョースター家のスタンドは(じじい以外は)全員鉱石系の名前。

ジョナサン・ジョースターはジョースター家のしそとも言える初代ジョジョ。だから俺はザ・ワールドをザ・ジェムストーン……原石と名付けた。

原石を磨けば宝石となる。レクイエムを極めれば原石は磨かれ、宝石(ザ・ジュエル)となる……か。それがウルフスとの戦いに必要になるかはわからない。

だが、運命はそれを望むか……。

どうなるかはわからん。なるようにしかならないだろう。他の4つの俺は何を手に入れたかはわからん。

だが、俺の事だ。どうせただでは転ばない何かを手にしたのだろう。

 

そして…現実でも動きがあった。

 

ドズゥッ!

 

承一郎は二刀を収めて心臓へその右手を突っ込み、そして心臓を手で掴む!

 

アームストロング「さすがだ…承一郎…」

 

承一郎「夢は消えたな」

 

承一郎は一気に奴の心臓を引き抜こうとするが、奴の腕がそれを止めて、引き寄せる。

 

アームストロング「いや…個人と個人が戦い…強い者が勝つ…。それが、俺の理想だ」

 

アームストロング「これからも…商業化した戦争や…信念を持たない豚どもがはびこると思うと…反吐が出るが…」

 

アームストロングはよろめきつつもしっかりと承一郎を掴んでその細々とした掠れ声を呟く。

だが、ここまで沈んではもはや沼から抜け出す事は叶わない。たとえ引きずり込まれたところで底無し沼の対処法は知っている。スタンドを使わなくてもな。

だが、アームストロングにその気は無かったようだ。

 

アームストロング「だが…俺は良き理解者に出会えた…」

 

アームストロングは一拍置いて承一郎に語りかける。

 

アームストロング「…なぁ、承一郎。お前はこれからも…力で、気に入らん奴…ブチのめせばいい…。それこそが、俺の夢の…体現だ…」

 

承一郎はアームストロングの肩に手をかけて、

 

ズリュゥッ!

 

一気に引き抜く。アームストロングの上体はブっ倒れ、胸から人工血管が伸びてその先には人工の心臓がドクン…ドクン…と承一郎の手の中で動いていた。

 

グシャアアッ!

 

承一郎はそれを握り潰す。心臓が潰れ、中に詰まった白い人工血液が僕の手を白く染まる。

 

アームストロング「嬉しいね…お前は…もう一人の…俺だ…」

 

アームストロングはそう呟き、目の輝きが失われ、そしてトリッシュさんの作った底無し沼に沈んでいく。

アームストロング上院議員は行方不明のまま死亡扱いとなるか…またはこの世界の閣下によって利用され、政治的に上手く利用されるか…それはわからないし、知る必要はない。

もし俺が必要ならば、再び運命は俺をここに呼ぶだろう。

俺は沈みきってゆくアームストロングを見る。

もし、アームストロングがオーバーヘブンを知っていたら、コイツはプッチと同じくそれを目指していただろう。

俺の世界のこいつの事も調べ上げなければな。

オーバーヘブンをやらせるわけにはいかない。

地獄の果てまでも追い詰め、必ず始末する。

そこでやっとこの世界の出来事の本当の幕は引かれる。

 

太陽を背中から照らされて、承一郎の影はアームストロングに重なるように伸びていた。

終わったか………。

 

 

八幡『ヤレヤレ、世話の焼ける』

 

思わず呟く。

 

ジョニィ『この四年間、何があったんだ?お前は…強いではなく怖い……それがお前にはある』

 

言っただろ?平行世界を渡り歩けと。

後はパッショーネの事情に付き合ってたらこうもなる。

おまけに日常的にヒットマンが来るしな。甘ったれてたら命がいくつあっても足りんわ。

 

八幡『色々やったんだよ。それも平行世界を渡り歩いてな。お前もレクイエムに言われたはずだ…真実の先へ到達しろってな…。この世界にウルフスが現れない保証は無いしな』

 

ジョニィ『ウルフス?』

 

八幡『うちの世界の元凶だよ。ワシントンで話しただろ?ブラッディ・スタンドと東の柱の一族、それにウルフスの事は』

 

まだ汐華冬乃は生きているしな。呪いは解けても味方になるとは限らん。

 

ジョニィ『アンチ知的生命体スタンド……か。勝てるのか?』

 

八幡『アームストロングよりは厄介だろうな。きっと』

 

とりあえずは………だ。

いろは、小町、ジョジョ、仗助……終わったよ。

 

<=to be continued=




今回はここまでです。

次回、黄金の風編のエピローグです。

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