やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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こうして星の末裔は乗り越える

side空条承太郎博士

 

気持ちの悪い目が見つめる空間を落ちて行き、その空間が終わると中華風の錬武場を思わせる場所に着地した。

 

空条「………ここは?」

 

承太郎「前に来たことがある。この幻想郷の神とも言える存在、八雲紫の邸だ」

 

八雲紫…。

八幡の魂を砕かせ、俺達をこの世界に呼んだ者。

そいつが住む邸か。

 

空条「神……ねぇ」

 

承太郎「博士は無神論者なのか?」

 

そうとも言えるしそうではないとも言える。

 

空条「宗教上の教義は納得出来ることはある。ただし、その宗教が生まれた土地での教えは…という限定ではあるがな」

 

承太郎「また随分と偏った見方だな」

 

空条「まぁな。土着の信仰には太古から教えられている先人の知恵が込められている場合が多い。例えば中東のイスラム教にある豚の食用を禁じているのは暑い地方では豚肉の腐りやすさや食中毒の防止を教訓にして少しでも被害を無くす為だったという見方もある。当時科学的な物が一切無かった時代には、そういった事を神の教えとして広めていたと俺は見ている」

 

承太郎「それが教義としての宗教は納得できる…と言うことか」

 

空条「逆に自らを神と名乗る者にろくなものがいた試しはない。DIO、カーズ、プッチ…。奴等がやって来たことはただのエゴ…。俺達ジョースター家はイヤと言うほどそれを見てきたからな」

 

特にジジイなんては一番見てきてきた事だろう。

そして俺もそういう者と何度も戦ってきた。

八雲紫が幻想郷を創造し、そこで生きる者達の営みを見守って来たことは確かだろう。

だが、俺は八雲紫を無条件で信じられるほど若くはないし、自分の目で確かめないことには納得しない。

成人を迎える前からDIO達のような存在と正面から戦ってきたからな。ヤレヤレな人生だ…。

 

承太郎「あの若作りBBAが博士の…ご先祖様の目にどう写るか…」

 

空条「ご先祖様…ねぇ。お前が徐倫とアナスイの子孫だとは思いたくはないが…。実際に会ってみればヤレヤレ。お前は俺に気持ち悪いほどよく似ている…。実際にはどうだかわからんが、お前は確かにジョースター家の末裔だろう。ジョースター家の現当主としては喜ばしい限りだがな」

 

承太郎「実際にはわからんがな。俺のスタンド、ブラッド・メモリーの能力はジョースター家のスタンドとそれに縁のあるスタンドのコピー…一巡した世界のスタンドも使えると言うことはメイド・イン・ヘブンが成された後の世界かも知れない」

 

空条「考えても仕方の無いことだ。まぁ、ナイチンゲール・エメラルドやサンシャイン・ルビー、クリスタル・ボーンやブラッディ・シャドウが使えないあたり、我々の世界や彼の末裔では無いことは確かだろう」

 

承太郎「そうだな。ところで…」

 

空条「ああ…いつまで出歯亀をしている?そこの二人」

 

俺達が振り向き、殺気を込めた視線を送るとそこにいたのは狐耳と9つの尻尾を生やした金髪のショートボブの女と金髪ロングの女が佇んでいた。

共通しているのは黒いしょう気を纏っていることだ。

 

紫「あら。楽しそうに話をしているから邪魔をしてはいけないと思っていたのよ。久し振りね?承太郎。それと、初めまして…オリジナル空条承太郎」

 

空条「お前が八雲紫か?この世界の神を名乗っているという妖怪は」

 

紫「あら?それは周りが言っていることよ?私が自分で名乗っているわけじゃないわ」

 

空条「どちらでも構わん。それにしても、太古の妖怪という割には、随分と若いのだな。それに、見た目だけは美しい」

 

紫「それはありがとう。有名な三代目ジョジョに誉められて悪い気がしないわ」

 

空条「それに、随分と趣味の良い従者だな」

 

藍「それはありがとうございます。伝説の空条承太郎さん」

 

承太郎「良く見ろ。傾国の美女と言われた九尾の狐だ」

 

空条「そうか…訂正しよう。趣味が悪い。だが、もっと趣味が悪くなる。主の顔面の方がな」

 

承太郎「式神の方の顔面の方も趣味が悪くなる」

 

俺と承太郎がそれぞれスター・プラチナを出す。

 

藍「やるというのですか?我々と」

 

承太郎「一度負けているくせに良く言う」

 

紫「今度は負けないわ。承太郎」

 

空条「ヤレヤレ…後がつかえているんでな。手早く終わらせてもらうぞ」

 

俺は徐々に距離を詰める。

 

紫「へえ?近付いて来るのね。オリジナル空条承太郎」

 

承太郎「俺は能のない男でな。攻撃するには殴るしか方法はないんだ」

 

藍「近づけさせないわ!オリジナル空条承太郎!」

 

式神の方の八雲が弾幕を射ってくる。

 

S・P「オラオラオラオラオラオラ!」

 

俺はスター・プラチナで式神八雲の弾幕を殴り返す。

 

S・P・B(スター・プラチナ・ブラッド)「オラオラオラオラオラオラ!」

 

承太郎の方のスター・プラチナも同じように弾幕を弾き飛ばす!

 

藍「相変わらず何てパワー!」

 

紫「それが2つも…オリジナル空条承太郎はもうじき50なのに…衰えというものがないの?」

 

空条「残念ながら俺の世界は基本世界よりも過酷でな、安寧とは無縁の生活をしているお陰で衰える間がない…」

 

承太郎「何せこの俺が手を焼くくらいの奴らだ。戦い方はともかく、その性格がな…俺のような規格外じゃあ無いにしても、甘く見ていると痛い目を見るぞ!」

 

ダブルS・P「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」

 

層の厚い弾幕を俺達二人は力業で切り開いていく。

 

藍「紫様!このままでは押しきられます!」

 

紫「ならば全周囲からの弾幕はどうかしら?」

 

二人の八雲は俺と承太郎の周囲にありったけの弾幕を出現させる。

甘いな……

 

俺達二人は進軍を止めて背中合わせになる。

さすがは俺の名前を…空条承太郎の名を受け継ぐだけはある。考える事は一緒か…。

 

ダブルS・P「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」

 

全周囲から弾幕が撃ち込まれたのならば背中をカバーしながら弾幕を弾けばいい。

 

紫「くっ……承太郎、剣は使わないのかしら?」

 

承太郎「使うまでもねぇ!普段のお前たちならともかく、今のお前たちなんてブラッドだけで十分だ!それもスター・プラチナだけでな!」

 

藍「弾幕で釘付けになっているだけのクセに大口を!」

 

弾幕がない…か。だったら作れば良いだけだ!

 

承太郎「弾幕ならあるじゃあないか!お前らが作った弾幕がなぁ!」

 

S・P・B「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」

 

承太郎が弾幕を射った本人達に弾き飛ばす。

二人は弾き返された弾幕の処理にも追われ、徐々に俺達への攻撃の層が薄くなる。

 

空条「承太郎!」

 

承太郎「了解だ!博士!」

 

ダブルS・P「オラオラオラオラオラオラ!」

 

俺達は再び二人と距離を詰める。

 

承太郎「思っていたんだが、お前達の弾幕、趣味が悪いな。幽香や美鈴の弾幕のような華がない」

 

空条「だが、もっと趣味が悪くなる。顔面の方がな」

 

そろそろ頃合いだ。

弾幕を弾きながらでも、既に射程内!

いくぞ……。

 

承太郎&空条「スター・プラチナ!ザ・ワールド!時よ止まれ!」

 

ブゥゥゥゥゥゥン……

 

世界が灰色になり、総ての動きが止まる。

 

承太郎「普段のお前たちならもっと苦戦していた。だが、操られ、思考が弱まっているお前たちなど…怖くはない!」

 

空条「いくぞ…だめ押し!」

 

ダブルS・P「オラオラオラオラオラオラ!」

 

ドババババババババババ!

 

俺達二人はありったけの拳を二人にぶつける。

 

空条「そして…」

 

承太郎「時は動き出す…」

 

世界に彩りが戻り八雲の二人が吹き飛ぶ。

俺達の勝ちだ……

倒れた二人からはしょう気が消えている。

 

承太郎「紫、藍……大丈夫か?」

 

紫「ううん……承太郎…?私達は助けられたのね…」

 

正気に戻った八雲が異変から解放されて安心した顔で承太郎を見る。

 

承太郎「紫……何があった?」

 

紫「奴に…やられたのよ。真実の上書きによって狂わされたの」

 

承太郎「真実の上書きだと!?まさか…」

 

空条「やはりDIOか…アーシスの平行世界記録に登録されていた天国に到達したDIOが起こした異変…」

 

そうだとは思っていた。

ジョースター家の…いや、スタンド使いの身内同士が感じる血縁同士の波長の共鳴。

俺達がここ最近感じていた妙な感覚…それはDIOから感じていたものだった。

 

承太郎「奴が……フランやチルノ、幽々子や妖夢、アリスを狂わせ、そしてみんなを傷つけていたのか……!野郎……殺してやる…。俺が取り込んだDIOのような生ぬるい結果には終わらさん……殺してやるぞ!DIO!」

 

いかん!

八幡が危惧して状態に陥りかけている!

 

承太郎「落ち着け承太郎!殺気をコントロールしろ!お前が暴走してどうする!」

 

本来ならこれは八幡が承太郎を抑える役目を果たすところなのだろうが、八幡はおそらくDIOの影響で力を失い、眠りに就いているのだろう。

「eays of heaven」と名付けられ、別の平行世界の高校時代の俺が中心となって解決した事件…。その事件に八幡達幼なじみーズが巻き込まれた際、天国に到達したDIO(以後H・DIOと表記)の影響でDIOを前世に持つ八幡は暴走仕掛けたと聞いている。

今回の砕けている八幡はDIOの邪悪な影響に抗えず、眠らされてしまっているのだろう。

そんなときに承太郎が暴走したら…。

 

空条「落ち着け!承太郎!」

 

俺は承太郎の背後に回り、羽交い締めにして取り押さえようとするが…。

 

承太郎「うるせぇぞ!先祖だからと言って調子に乗るんじゃあない!」

 

どごっ!

 

空条「ぐふぅっ!」

 

何て力だ……。簡単に振りほどかれて殴り飛ばされる。

 

承太郎「俺の邪魔をしようってんなら…死ぬしかないなぁ!オリジナル空条承太郎!」

 

空条「スター・プラチナ!ザ・ワールド!」

 

何とか立ち上がり、俺は時を止める。

こいつに立ち向かうには全力で全てを出しきるしかない。

こいつは規格外に強い…。だが、ここで俺が食い止めなければ…こいつは暴走を止められなくなる。

悪く思うなよ…。承太郎。

お前にはここで再起不能(リタイア)してもらう!

 

S・P「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」

 

ドコドコドコドコドコ!

 

吉良吉影にやったようにしこたま殴りまくる。

これで倒せなかった奴はいない。

 

空条「そして時は動き出す。後はアーシスに任せろ」

 

だが……。

 

承太郎「効かねぇな……全盛期のお前ならともかく、50近くになって衰えたスター・プラチナの能力じゃあ、蚊に刺された程にしか感じねぇ…」

 

バカな…。スター・プラチナのラッシュを叩き込んでもほぼ無傷だと!?

俺のスター・プラチナは殆ど衰えていない。杜王町の頃は少し衰えていたが、今は全盛期とまではいかなくともそれなりには衰えを取り戻している!

それなのにこいつはケロッとしていやがる!

まるでシアーハートアタックのように丈夫な奴だ。

 

承太郎「お返しだ。オラオラオラオラオラオラ!」

 

S・P「オラオラオラオラオラオラ!」

 

承太郎の生身のラッシュをスター・プラチナで応戦するが…押し返され、とうとう本体にラッシュを食らう!

 

空条「ぐぅぅぅ!」

 

何て威力だ…勝てねぇ…。

承太郎を再起不能(リタイア)させるつもりが逆に俺が再起不能(リタイア)させられた…。

だが、もはや戦う力はないが、気力だけで俺は立ち上がる。

カイロでの戦いの時のように…。吉良と最初に戦った時のように…。千葉で八幡と戦った時のように…。

 

承太郎「まだ立ち上がるのか…オリジナル空条承太郎」

 

空条「………やれ。もう俺は戦えない…。だがな、気持ちではお前に負けない…」

 

俺は力強く承太郎を睨み返す。

初めて吉良と戦った時の康一君もこんな気持ちだったのだろう。

康一君…あの時の君に負けられない。

絶望の中でも気丈に立ち向かった尊敬できる君に。

 

空条「俺を殺せばいい。ここにいる八雲達もろともな。そして戻れなくなればいい。堕ちるところまで堕ちれば良い」

 

承太郎「ぅぅ……」

 

空条「残念だが俺ではお前は止められない…他のアーシスのメンバーでも無理だろう。小町でも無理かも知れん。だがなこれだけは言っておこう。俺も俺の仲間達も誰一人、気持ちではお前に負けん!勇気を持って最後までお前に立ち向かうだろう。決して心までは屈しない!」

 

承太郎「オリジナル……空条……承太郎…」

 

空条「さぁどうした!早く殺せ!そして堕ちろ!そして無くしてしまえ!幻想郷の守り人の肩書きも!ジョースターの末裔の肩書きも!お前が新たな異変となって博麗達と争い、殺せ!楽になるぞ!その代わり本物は二度と手に入らなくなるがな!」

 

承太郎「霊夢……魔理沙……おおおおおおおおおおおおお!」

 

ドゴォォォォォォォォン!

 

轟音が轟く…。

承太郎は床を殴り、荒い息をする。

 

承太郎「誰が堕ちるか!俺は……俺は幻想郷の守り人だぁぁぁぁ!」

 

乗り越えたか……

俺はニヤリと笑い…

 

空条「ヤレヤレ……仗助や八幡並に…世話がやける……な……」

 

バタッ!

俺は立っていられなくなり、倒れた…。

 

承太郎「空条博士!」

 

紫「オリジナル承太郎!」

 

藍「空条さん!」

 

承太郎や八雲達が駆け寄ってくる。

 

承太郎「ブラッド!クレイジー・ダイヤモンドだ!」

 

ブラッド「了解」

 

承太郎はブラッド・メモリーをクレイジー・ダイヤモンドに変えて俺を治す。

 

空条「やれば出来るじゃあないか」

 

承太郎「お前の言葉が効いた。八幡の言葉よりも、誰よりも空条承太郎の言葉が効いたぜ…俺は…この殺意をいつか自分の意思でコントロールしてみる…そして…見せてやるさ。比企谷八幡に全てを克服した俺を…そして叩き伏せてやる。俺を弱者扱いしたこの悪霊を」

 

相当怒ってるぞ…八幡。

余計な敵を作るのは天才的だな…ヤレヤレ。

 

承太郎「紫。俺達を西行妖まで送れ。DIOは…そこにいる。オーバーヘブンの力を使うための魂を吸収するためにな」

 

紫「私も行きたいところだけど…今は異変の為に力を失っているわ……必ず勝ちなさい…承太郎。そしてまた勝負よ」

 

承太郎「もちろんだ。さぁ、行くぞ…ご先祖様」

 

承太郎は俺に手を伸ばす。

俺はその手を受け取り、助け起こされる。

 

空条「ああ……共に行こう。星の末裔」

 

俺と承太郎は八雲が用意した空間の裂け目に突入した。

八幡…これで最後だ…。必ずお前を助けるぞ!

 

←To be continued




今回はここまでです。

DIOによって八幡が再起不能。いつもの八幡節が今回は封印された!
果たして犠牲を出さずに終われるのかっ!
次回、アーシス・スクランブル!

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