sideジョセフ・ジョースター
この世界に来てから約一週間。負傷していたボーダーの者達も徐々に復帰を始め、リサリサ先生も5日ぶりに睡眠をとった翌日。
朝食を摂り終えたワシのところに迅がひょっこりと現れた。
迅「ジョセフさん、おはようございます。ぼんち揚、食います?」
ジョセフ「貰いたいところじゃが、さすがに朝食を食べたばかりじゃからな」
迅「みたいですね。コーンフレークですか」
ジョセフ「日本に移住して以来、とんと食うことがなかったからのう。たまに食いたくなるんじゃ」
元々がイギリス人じゃから、たまにスコーンとか食いたくなるがな。
迅「あれ?ジョセフさん、経済新聞はどうしました?食事の時は読んでますよね?」
ああ、確かに資金繰りに必要な物じゃったからのぅ。じゃが、もう必要ない。
ジョセフ「この世界ではもう資金繰りは必要ないからじゃ。質草の金塊を買い戻してあるし、稼いだ残額についてはボーダーに寄付しておる」
迅「まるで帰り支度ですね」
ジョセフ「それで間違っておらんよ。もうじき、帰るからのう」
迅「諦めたんですか?ハチの魂の回収は」
ジョセフ「お前さんも白々しい事を言いよるのう。それとも、お前さんの……えーと、なんじゃったかな。細胞エフェクトじゃったか?それは言っておらんのか?」
迅「サイドエフェクトっすよ。ええ、俺のサイドエフェクトは言ってますよ。大規模侵攻は今夜…だとね。逆に聞きますけど、ジョセフさんは何でわかったんです?」
ジョセフ「やはりのぅ。理由は夕べの防衛任務でな、シーザーがトリオン兵がこれを落としたのを拾っての。大方、奴等の偵察でも現れたと見て報告して来たのじゃ」
ワシはシーザーから届けられたそれを迅に見せる。
牙が口から出ている石で出来た仮面じゃ。
迅「それは?面白そうじゃないですか。被らせて貰って良いですか?」
ジョセフ「構わんよ?二度と太陽の下を歩けんようになるがの?」
迅「え゛……」
迅は顔を青ざめさせ、硬直する。
ジョセフ「このは石仮面を良く見るがええ」
ワシは手ごろな針で指を刺し、石仮面を床に置いて出てきた血を垂らす。
すると、石仮面からビン!ビン!ビン!と針が出てくる。もしこれを被って血を付けたら、ドズドスドズと頭に刺さっていただろう。
迅「こっわ!こんなん刺さったら死ぬぞ!」
ジョセフ「死にはせんよ。人間を辞めるだけじゃ。DIOのようにの」
迅「どういうことですか?」
ジョセフ「この針が人間の頭に刺さるとな、吸血鬼になるのじゃ。クソッタレ吸血鬼にのう」
迅「……よく知ってますね、ジョセフさん」
ジョセフ「まぁな。コレはジョースター家にとっては忌々しい宿命の発端となったものじゃからのう。この蛙の小便よりも汚ならしい石仮面が、ジョースター家を血塗られた歴史に変えたと言っても過言じゃあない。これを作ったのが柱の一族……カーズじゃ。わしらの世界では、の話じゃがな」
迅「何だってカーズはこんなものを?」
ジョセフ「吸血鬼は奴等の手駒であり、食糧じゃ。他にももうひとつ理由はあるがな。今夜が山場じゃ。ワシらが負ければ、この世界は奴等の餌場になるぞ」
ワシは食器を片付け、食堂を出る。
ジョセフ「ワシはこれから城戸の所へ行くが、お前さんも来るかの?」
迅「え、ええ…」
ワシらは忍田に連絡を入れた後に司令室へと足を運ぶ。コレを見せた城戸は緊迫した表情になり、ボーダー全体に緊急指令を発動した。
城戸「……ジョースターさんはこれからどうするのです?」
ジョセフ「ワシか?夕方まで寝とるよ。いくら波紋の戦士といってものう、そう何日も起きとるのは堪えるんじゃよ。見えんかも知れんが、ワシはこれでも百歳じゃよ?百歳。年寄りを少しは労らんかい」
迅「……年寄り扱いすると怒るくせに、調子が良いじいさんだぜ」
ジョセフ「忘れたのう。一時はボケもあったからのう」
波紋を修行し直してからは体が若返った上に、いろはにボケを治して貰ったからのう。小町に縁側で「終わりの見えない介護の日々とか、ホントリアルにやめて欲しいからボケは治して」と言われた時には涙が出そうになったわい。ショックでの。
城戸「夜まで出てこない…という保証はあるんですか?ジョースターさん」
ジョセフ「奴等は太陽と紫外線が弱点じゃ。じゃから間違いなく夜に現れる。通常の防衛任務を除いては、今のうちに寝て、食べて、心身共にリフレッシュしておくのじゃな。これでワシは失礼するぞ」
ワシはわざとらしく欠伸をしてから司令室を退出する。
途中、比企谷隊の隊室に寄って不意討ちで脳幹に波紋を流して気絶させ、眠らせる。
何気なく近付いて隙を付けばこんなもんじゃわい。油断大敵じゃ。(外道)
それからシャワーを浴びてアーシス隊が借用している隊室へと戻り、ペットショップと戯れておった京華を同じように眠らせる。
そしてペットショップを宿り木に帰らせ、眠るように指示を出した後に、京華を抱きながら簡易ベットに潜り込んで毛布を被った。
京華「ジョーちゃん……ふふふ…」
ジョセフ「必ず八幡を連れて帰ろうな……けーちゃん。お前の夢であった徐倫と静といろはのウェディングドレスを見るまではワシも死んでも死にきれんぞ。小町と陽乃のは……無理そうじゃがな」
出来れば優美子や姫菜、雪乃や結衣、めぐりや沙希の花嫁姿を見たいものじゃな…。
その時まではワシの寿命も持つじゃろう。
そして、あの世で皆を待っていよう。
sideエリザベス・ジョースター
リサリサ「う~ん!」
久々に十分な睡眠を取った小町は体の凝りを解して最後に背伸びをする。
大志「比企谷さん、スッキリした顔をしてるっスね」
リサリサ「まあね。最後に寝たのは千葉村に出発する前の晩だからね」
千葉村の一泊目は全く眠れなかった。お兄ちゃんが消える運命を知って、一晩中泣いていた。少しでもお兄ちゃんの温もりを感じていたくてお兄ちゃんのベットに潜り込んで…それでも安心できなくて泣いた。
正確にはもっと前かも知れない。お兄ちゃんが何かを隠している事を何となく察したときから、小町は眠りが浅かった気がする。
でも、それも昨日まで。もうゴールは見えた。もうすぐ本当のお兄ちゃんに会える。
小町「せっかく友達になれたのに…もうお別れなんだね…」
リサリサ「本当は出会わなかったのが一番良いんだよ。もっとも、小町にはお兄ちゃんの復活を見届けて貰いたいけどね」
小町「………うん。是非見せて」
リサリサ「八幡さんやいろはさん、陽乃さんに遥さん、めぐりさん、それになんだかんだお世話になった迅さんにも見届けて貰わないと!」
大志「勝てるんっスか?究極生物に…」
リサリサ「小町達には勝利しかない。敗北は許されない。犠牲を払いながらも小町達はやって来た。それは今回も変わらないよ。勝てる、じゃあないんだよ。勝つんだよ。勝敗を分けるのは……執念!オーケー?」
小町「小町達は応援しか出来ないけど、頑張って…リサリサちゃん」
リサリサ「うん。そして日常を取り返すんだ!逃げるゴミぃちゃんを捕まえて社畜にして、逃げる生ゴミぃちゃんを捕まえて波紋の修行をさせて、粗大逃げるゴミぃちゃんを捕まえて添い寝して、逃げる産廃ゴミぃちゃんを…」
八幡「逃げるのを捕まえられるのがお前の日常か…そしてそっちでもお前は社畜なんだな…ジョジョ。さらにゴミレベルが上がってるぞ…リサリサ…………おい、末永くよろしくしねぇよ!今日で終わるなら、絶対に明日の朝イチには出てってもらうからな!」
こっちに永住なんかさせないよ?ゴミぃちゃん…そんなことをしたら核産廃ゴミぃちゃんに格下げだからね?
京華『来たよ!ゲート多数!リサリサ様!ジョーちゃん!死なないで!アーシス、スクランブル!』
めぐり『数が今までの比じゃないよ!ネイバーは…吸血鬼が多数!けーちゃん、それ良いね!比企谷隊!スクランブル!』
遥『トリオンと波紋は似た性質!身体能力に差はありません!みんな、頑張って!嵐山隊、スクランブル!あ…うつっちゃった…』
歌歩『良いんじゃない?士気が高まりそうだし、私も真似して…風間隊!スクランブル!』
来たね…
ジョセフ「行くぞ!トリガー、オン!」
キュイイン!
コォォォォォ…トリオン体になり、みるみる若返るジョセフ。
若ジョセフ「へっ!来やがったな!アーシス、スクランブルだぜ!」
リサリサ「アーシス、スクランブル!」
全員がトリガーを起動させる。ペットショップちゃんも。
八幡「今日は始めから全開だ。袖の白雪…起動!アーシス・スクランブルに倣うぜ…比企谷隊!スクランブル!」
迅「ハチ!らしくないじゃん?玉狛支部!スクランブル!」
嵐山「嵐山隊!スクランブル!」
那須「今日はアーシス流で行くわよ。那須隊、スクランブル!」
二宮「二宮隊、スクランブル」
三輪「……三輪隊、スクランブル…」
影浦「二宮も三輪も空気には勝てなかったな。影浦隊、スクランブル」
加古「たまにはこういうのも良いね。加古隊、スクランブル」
「○○○隊!スクランブル!」
ボーダーの全隊がアーシスの真似をしてスクランブルをかける。
城戸『アーシスも含めたボーダー諸君!今は普段のしがらみも派閥も関係ない!ここで負ければ人類の敗北だ!奮起せよ!全隊!攻撃開始!ボーダー!スクランブル!』
そして……この人も出てきた…。
忍田「城戸さんの言うとおりだ…。ここで負ければ思想だのはただの夢幻……私も出る!トリガー起動!ボーダー、スクランブル!ジョースターさん!」
若ジョセフ「へ!粋じゃあねぇの!忍田さんよぉ!確かに今は俺達もボーダーだ!言い直すぜぇ!ボーダー、スクランブル!」
うおおおおおおおおおおおおー!
全ての戦力が戦場に散る!
ボーダー始まって以来の総力と総力のぶつかり合いが始まった。
ニネスが関わったことにより、表の記録からも抹消された非公式の大規模侵攻…。その戦端が今、切られた。
←To be continued
今回はここまでです。
次はラストバトル。
ワールドトリガーの戦闘潮流、残すところあと3話です。
それでは次回もよろしくお願いいたします!