sideエリザベス・ジョースター
シーザー「シャボンランチャー!」
シュルシュルシュルシュル!
那須「曲げる技術は巧いわね。けど、途中で曲げる方向に迷っている節があるわ。射ってから考えるんじゃなくて、最初から弾道を決めておくの」
シーザーはバイパーのスペシャリスト、那須さんから教わってシャボンランチャーの撃ち方を訓練していた。
ジョセフからシャボンランチャーの撃ち方について曲げかたのレクチャーを受けたらどうだと言われた為だ。
オペレーターをめぐりさんにお願いしてターゲットを頼んでいる。
那須「あと、シャボンの操作に集中するあまりに自身の動きが疎かになっているのも欠点ね。弾を射つっていうのは攻撃をするというのと同時に自分の位置を相手に教えていることになるの。今は難しいかも知れないけど、常に動きながら弾の操作や弾道の計算をするのが良いわ」
シーザー「ありがとうございます!那須師匠」
那須「良いのよ。シーザー君は素直で筋が良いから教え甲斐があるわ。今言ったことを頭に置いて試してみて。こう言うのは数をこなすことよ。でも、動きながら敵を観察することを忘れちゃだめよ?」
那須さんがニッコリ微笑むと、シーザーは顔を赤らめて素直に返事をした。
シーザー「はいっ!」
シーザーは那須さんの言うことを守り、忠実に訓練を重ねる。
那須さんの包容力って凄いね。ああ見えて頑固なシーザーの手綱を見事に握ってるよ。
ああいう母性溢れる人がシーザーにはピッタリかも。
沙希さんもそうだしね。こっちの沙希さんは自分がC級だからシーザーに教えられないことを歯噛みしていた。
こっちもあっちも沙希さんのブラコン具合は相当だよね。
一方で結衣さんも熊谷先輩を師匠に訓練していた。こっちの由比ヶ浜さんとは二度と会うことは無いだろうから、普通の呼び方にすることが全員で決めた。
お兄ちゃんも見限ったみたいだしね。
基本世界の雪乃さんや結衣さんも見限っていなかったお兄ちゃんですら見限るなんて…大分やらかしちゃったんだね…。
ボーダーの人達だっていい人ばかりなのに…それを怒らせちゃうなんて…。
熊谷「攻撃手というのは何も攻撃をすることだけが役目じゃないわ。あたしなんかがそうだけど、玲をガードするのを主眼に置いているから撃破は高くないけど、それでもチームには役に立っている。聞けば由比ヶ浜は雪ノ下とコンビを組むことが多いんだよね?」
ガハマ「はいっ!ゆきのんはあたしよりも強いですよ?でも、ゆきのんはどちらかといえば射手と攻撃手を合わせたようなオールラウンダーだから、あたしなんかが役に立つのかなぁ」
熊谷「攻撃手二人でコンビを組むなんて良くある話だよ。むしろ、相方の死角を上手くカバーするのだって立派な役目さ。戦術が苦手なら、相方の取る戦術を信じてフォローに回る事も戦術の1つだよ。頼りきりもダメだけどね」
ガハマ「分かりました!もう一本お願いします!」
熊谷「素直だね。もう少ししたらシーザーを相棒に見立ててコンビの戦いかたをやってみよう」
ガハマ「はいっ!よろしくお願いします!」
那須隊にコーチをお願いして正解だったな。
二人とも教えるのが凄く上手い。
茜「リサリサちゃん。よそ見しないでスナイパーの訓練を続けよう。リサリサちゃんの訓練って凄く分かりやすいよ」
小町「むううう…」
リサリサ「友達取らないからヤキモチ妬かないでよ小町ちゃん…」
小町は小町でこっちの小町の訓練をしながら茜ちゃんの狙撃訓練を見ていた。色々やらかしちゃったから少しは役に立たないと…。
ジョセフにも二人を鍛えるように言われてるしね。
今回の旅で一番迷惑をかけたのはジョセフだ。
何でも資金に困らないようにと大統領から持ってきて貰っていた金塊を売り払い、この世界で株をやってジョセフは資金を増やしていた。
そのお金を使って小町がやらかしたシステムダウンの弁償やケガをさせちゃった人への慰謝料を補填してくれたのだとか…。
お陰でアーシスへの風当たりも小さく済んでいる。
ありがとう、ジョセフ…。
元の世界に戻ったら2倍働くよ…。
めぐり『良い感じに訓練が進んでるね?リサリサちゃん』
小町「はい。迷惑ばかりかけたのに……」
めぐり『その分、防衛任務で頑張ってくれてるからね。三輪くんとかはまだ怒ってるけど』
三輪さんか…ちゃんと謝らないとね…。
小町の平行世界嫌いと三輪さんのネイバー嫌いが悪い方向にいつもいっちゃってるからなぁ…。
徹底的にやり過ぎちゃったよ…。許してくれるかなぁ。
那須「もう少し練習したらチームランク戦形式で模擬戦をやろっか。リサリサちゃんはライトニングで狙撃手役をお願い。結衣ちゃんとシーザーくんがベイルアウトしたらリサリサちゃんも負け。リサリサちゃんはスタンド無しの狙撃のみね?これはあくまでも二人の訓練なんだから」
リサリサ「アイアイサー♪」
こうして二人の訓練が始まった。
最初こそシーザーの波紋による身体能力に翻弄されていた那須隊だったけど、そこはボーダーの中でも戦い慣れている那須さんと熊谷さん。
すぐに慣れて戦績は那須隊の方に軍配が上がった。
だけど、二人もただやられているだけじゃあなかった。
厳しいことを言われながらも二人は真摯に受け止め、少しずつ戦術を踏まえて動きが良くなってきた。
シーザーの評価を霊長類ヒト科オシリアイに戻してあげよう。
小町「いや、そこはオトモダチにしようよ。あと、ライトニングのスピードがおかしいよ?あれがアイビスだったらと思うとぞっとするよ…」
だよねぇ…。
キングクリムゾン!
三輪「む……お前はリサリサ…」
リサリサ「あ、三輪さん……」
三輪「………」
三輪さんは無言で立ち去ろうとした。怪我はジョセフの波紋で大分良くなったみたいだけど、それでも本調子じゃあないみたい。
リサリサ「あ、あのっ!三輪さん!」
三輪「なんだ……ニネスと話すことは何もない」
ギロッと睨んでくる三輪さん。
うん。やり過ぎた事は全面的に小町が悪いんだから何を言われても仕方がないよね。だけど、最低限でも謝らないと今後、もしこっちの世界にボーダーに協力的なネイバーが来たら迷惑がかかっちゃう……。
リサリサ「す、済みませんでした!許して欲しいとは言いません!でも、せめて謝らせて下さい!」
三輪「………本気でそう思っているのか?」
リサリサ「はい……。身を守る為だけならば普通に自己防衛すれば良かったんです。なのにやり過ぎてしまって…」
三輪「聞き方次第では手加減してもお前は俺達を倒せてた…そう聞こえるぞ。嫌味か」
リサリサ「………」
言葉って難しいね……そんなつもりは無かったけど、逆に三輪さんの勘に触れちゃったんだ…
ますます怒らせちゃったよ……どうしよう。
三輪「……だが、俺達がお前に比べても弱かったのも事実…お前の指摘も確かだ…次はあんな一方的にならんようにする。覚悟をするんだな」
ほへ?
三輪「お前のやったことは許さん。そこは変わらん。だが、抵抗しなければ俺達はお前達の事を知ろうともせずにネイバーとして攻撃していた。お前だけが一方的に悪いわけではない」
リサリサ「三輪さん……」
三輪「誠意を持って謝ってきた相手に対し、こちらも悪かったことを認めなければフェアでは無いだろ?陽介達には伝えておく」
リサリサ「三輪さん……ありがとうございます!」
三輪「だが、決して許したわけじゃないし、認めてもいない。認めて貰いたければカーズとかというネイバーからこの世界を守り抜け…それが条件だ。あと、何日も寝ていないのは良くない。波紋の戦士は何日も起きていて平気だと言うが、無理はよくないぞ」
そう言って三輪さんは去っていく。
リサリサ「はい!三輪さん、ありがとうございました!」
小町は三輪さんに深々と頭を下げた。
この後もケガをさせてしまった人達に小町は頭を下げに回った。
中には門前払いの人もいたし、罵倒する人もいた。
だけど、「まぁ……一生懸命寝ないで防衛任務してくれたしな…」「いやいや、ネイバーかどうかを確認しないで攻撃を仕掛けたこっちも悪かったわけだし…」「1日デートしてくれたら許すよ?」とか言って許してくれた。快く…というのはあまりいなかったけど、そこまで求める権利は小町にはない。
むしろ許してくれただけありがたいと思った。でも、最後のはおかしくない?冗談だと思うけど。
sideジョセフ・ジョースター
ジョセフ「コレがわしらの持つスタンドの資料じゃ。役に立ちそうかのう?」
鬼怒田「いくつかは使えそうな物はあれば、既に開発済みの物もありますな。
寺島「でも敵の力やスピードを自分に学習させ、しかも刃先を一時透過させるアヌビス神とかは時間がかかるかも知れませんが開発出来そうな気がしますね」
鬼怒田「そうだな。中には出来ても危なくて開発したくないものもあるな。触れた物を物質法則を無視して爆弾に変えるキラー・クイーンやカビを繁殖させるグリーン・デー、それに時間を止めるザ・ワールドや時間を吹き飛ばすキング・クリムゾン、高温により老化を加速させるグレイトフル・デッド……これらは絶対に世にだしてはならない能力じゃ」
寺島「キラー・クイーンなんかメテオラを即席で作れて良いと思いますけどね?」
鬼怒田「バカもん!そんなものが万が一市民に向けられでもしたらどうする!強力な兵器を開発するからには、それに伴う結果を考えるのも開発する者の義務じゃ!」
わかっておるのう。ミスター鬼怒田が挙げたスタンド能力は使い方を誤ればわしらの世界のDIOや吉良、ディアボロやプッチみたいな人間を生み出す結果になりかねん。
鬼怒田「とりわけ興味を惹かれるのがナイチンゲール・エメラルドのエメラルドヒーリングですかな?ナイチンゲール・エメラルドは他者に自分のトリオンを供給したり、簡単なトリオン体の損傷を直すのには有効です」
材木座「いやぁ、興味深いものばかりですね?ラジコンを飛ばして機銃攻撃をするエアロ・スミス、物を空間に固定するクラフト・ワークなんかは簡単に開発出来そうですし、有用性が高いです」
ジョセフ「何故じゃ?」
ワシは試しに聞いてみる。
材木座「エアロ・スミスはそれこそラジコンのように現行の技術で簡単に代用が効きますし、動力や弾丸を使用者のトリオンでやれれば出来そうです。まあ、そのトリオンをどう動力にしたりするのが課題ですが。クラフト・ワークは空中に足場を作れ、グラスホッパーと併用すれば高所への移動も容易になります。あと、興味があるのがゴールド・エクスペリエンスですね。欠損した部分をトリオンの義手や義足、トリオンを流出を押さえる為に応急処置をする…生身は無理でもそういうので無駄な損害を抑えるにはうってつけですね」
鬼怒田「相手の養分を奪うハイウェイ・スターと言うのも敵のトリオンを奪って自分の物にするという点では有用だな。ランク戦には禁止だが。いやはや、スタンドなんて得体の知れない非現実的な物ばかりかと思っていたが、見てみるとトリガーに転用出来そうなものも色々あるものですな。先に言った通り、絶対に開発できてもしてはならない物も有りますが。時間を操ったり生命を作り出したり…人間が手を出してはならない領域の物も多数ありますが」
ジョセフ「役に立てたかのう?」
鬼怒田「発想の着眼点としての参考になりました。ですが、これは我々の心の中に閉まった方が良さそうです。危険すぎない、それでいて有用性の高いものだけをいくつかピックアップし、資料そのものはお返しします」
材木座「スタンド能力は危険すぎる…そういうことですか?」
鬼怒田「そうだ。戦闘記録を見てもわかる。どんなに力の無さそうな能力でも、使い方を誤れば簡単に人の命が消える。これらは万人が持つには過ぎた力だ。トリガー全般にも言えるがな」
横柄な態度を取る男じゃが、見るべきところはしっかりと見ておる。スタンドに限らず、便利なものというものは大きければ大きいほど、それに伴う危険も大きくなるものじゃ。
鬼怒田「スタンド能力……参考になりました。ジョセフ・ジョースター老、感謝します」
ジョセフ「役に立てたならええ。じゃが、くれぐれも悲劇だけは生まんようにな。スタンドが原因で悲劇が起こるのは…スタンドがある世界だけで十分じゃ」
鬼怒田「肝に命じます」
ワシは鬼怒田の言葉を片手であげることで返答し、八幡たちと合流することにした。
決して…悲劇だけは生まんようにと願いながら。
←To be continued
ボーダーでやり残したことをやった回です。
小町の謝罪、シーザー達の訓練、スタンド能力のトリガーへの転用とその考察。
決戦の時はこく一刻と近付いています。
次回から侵攻が始まります。
それでは次回もお願いします。