side一色いろは
悲しい光景が広がっていた。
このジョースター邸はわたしの前世、エリナ・ジョースターがアメリカに移住して以来、最期の時まで住んでいた場所だった。八十年の歴史が経って何度も改築はされてきたが、それでも思い出の場所であるのは変わらなかった。例え世界が変わっても。
いろは「また……わたしの思い出が一つ…汚されてしまいました…うう……」
ハチ君が砕けて以来、わたしは泣いてばかりいるような気がする。
静「いろはさん…」
静・ジョースターちゃんがわたしを慰めようとしてくれているのがわかるが、どう声をかければ良いのかわからないらしい。
いろは「ごめんなさい……あなたも家を失って辛いはずなのに…ううう…」
泣いているわたしの背後から、誰かが近付いてくる。
ジョセフ「だーれじゃ」
ジョセフだった。ジョセフがわたしに目隠しをしてきた。
いろは「ジョセフ!あなたはまた!前に言いましたよね!あなたのお葬式の時に前世のわたしがどれだけ恥ずかしい思いをしたと!あれ…それはわたしの世界のジョセフにだから…エエット……」
ジョセフ「それを知っておるということは、信じられん事に本当にエリナお婆ちゃんなのじゃな。会えて嬉しいぞい。異世界のとは言え、エリナお婆ちゃん」
12年まえの典明叔父さんのお墓で再会したあの日のように老けたジョセフ。何故だか私の世界のジョセフよりも、目の前にいるジョセフの姿に安心感を覚える。
ジョセフ「済まんのう。エリナお婆ちゃんの思い出の場所をワシは守れなんだ。じゃが、場所や家は直せば元に戻るが、失ってしまった命は取り戻せん。ワシはエリナお婆ちゃんの家を守ることは叶わんかったが、エリナお婆ちゃんの精神を受け継ぐ者は守ることが出来て満足じゃ。この静を守ることが出来たのじゃからのう」
静「パパ……」
いろは「ジョセフ…。そうですね…ましてやジョジョちゃんはわたしの世界では大切な幼なじみであり宝物…。家よりもジョジョちゃんを守れたことを良しとしなければバチが当たりますね」
静「いろは…」
徐倫「ジョジョ。イーハって言ってあげて…。イーハってあだ名はイーハの世界のあんたが考えたあだ名よ。あんたにはいろはをイーハって呼ぶ資格があるわ」
静「イーハ!」
ジョジョちゃんはわたしに抱きついて来た。元気が出てきた…。ありがとう、ジョジョちゃん…。そう言えばジョジョ先輩の方は別の平行世界で頑張ってるかな…?
ジョセフ達はなるべく近くにある別荘に一時的に住居を移し、家の復旧が終わるまではそこで生活をするらしい。彼等とはここで別れることとなった。
そして今夜の宿泊先は…。前回と同じくプラザホテル。ホームアローンのあそこだ。流石にスイートルームの使用に関しては辞退した。ただでさえ高いホテルなのに、今回は自費(というよりは自社経費)での旅では無いのだから。
今日は疲れた……。承太郎達との戦いも含めて三回も戦いがあったから…。
おやすみハチ君……。今日はお疲れ様。魂が砕けているんだから無理しないでね?
sideナルシソ・アナスイ
翌朝、朝食を済ませ、大統領が用意した車がホテルの前に到着したという連絡を受けて外に出てみると…。
すごい車が停まっていた。凄いなんてものじゃあない。
何せ囚人を輸送する護送車だ。
何故シャバに出てまでこの車に乗せられなければならないのか小一時間閣下に詰め寄りたい。
アナスイ「何故護送車なんだ?」
徐倫「いや、あたしはともかくあんたは現役で囚人でしょ…元の世界でも」
エルメェス「それに、この世界じゃああたしも囚人だったわね。まだ裁判前だけど、スポーツマックスをぶっ殺す為にわざと犯罪を犯したんだったわ」
言われてみればそうだった。千葉村では汐華との決着を付ける徐倫の増援として仮釈放され、そのままこの世界に来たからすっかり忘れていた。
アナスイ「まさか俺のせいで?」
徐倫「いいえ。わざと目立つためよ。これに乗って出発した後に別の車に乗り換えて、囮に使うの」
ほうほう。中々の作戦だな。囮になる者は気の毒だがな。
いろはの話だと州間高速95号線を進んだ先のデラウェア川に架かる、デラウェアメモリアルブリッジで仕掛けられたのだとか。今回もそこで狙われる可能性が高いという情報がもたらされた。
情報源は八幡のファンクラブに所属しているという倉見空という人物だ。昨日、メールと電話で報告があったそうだ。諜報から戦闘までこなすとは…。こいつらは本当にCIAか!
そして、護送車が止まる度に八幡が時間を止めて徐々に人員を別の車に移す。護送車には途中で誰かが運転手を代わったようだ。そして、料金所を通過して問題のデラウェアメモリアルブリッジに突入する。
すると、情報通りトラックが護送車を襲う!トラックからは黄色いスライムのような物が見える。
いろは「イエロー・テンパラス!またワシントンD・Cで襲ってきたスタンドが来た!」
雪乃「護送車のドライバーは大丈夫なのかしら!?」
よく見ると忍者がイエロー・テンパラスの攻撃を受けている反対側の窓から飛び出して川に飛び込んだ。
あれがジャパニーズ忍者か。八幡達波紋の戦士以外で初めて見た。
side弥七
何なんですか!?この黄色いスライムみたいな攻撃!
某イヤンな漫画やゲームみたいにスライムプレイに走る気はないですよ!
てりゃあ!デラウェア川にダーイブ!
まったく!鉄骨にぶつからないようにジャンプするのは大変なんですからね!念のためにスタンドで攻撃してみましたけど、効果はありませんでした。マル!
わたしとは相性が悪いです!
というか、オリジナルより強いわたしのスタンド攻撃が通用しないって、弱点はあるんですかね!?
取り敢えずわたしは一抜けです!逃げるんです!
え?逃げる時のセリフが違う?知りませんよ!そんなこと!(メタぁ!)
さあ、上の方々!頑張って下さい!
ちなみにこの忍者セット、DIOが手配したのだと言っていました。確かにわたしの正体はバレにくいかもですけど、わたしで遊び過ぎじゃないですか!?
おのれDIOォォォォォォー!
sideDIO
雪乃「あれは…?忍者みたいな格好をしているけれど」
沙希「あれが多分、弥七なんでしょう?DIO」
DIO「ああ、そうだ。」
俺はホンの一瞬だけ八幡と変わり答えた。
雪乃「あれは弥七さん?大丈夫なのかしら」
護送車がトラックによって橋の鉄骨に挟まれたことにより、デラウェアメモリアルブリッジの上り線は通行止めになる。
必然的に後続の車は停車を余儀なくされ、みんなマイクロバスから降りる。
雪乃が落ちていった弥七を心配して下を見る。
弥七は着水した後に水面に立って川を走って行った。
雪乃「凄いわ。川の上を走ってる…ホントに忍者なのかしら?」
沙希「あの忍者からは波紋使いの気配を感じたから大丈夫だと思うよ。それよりも敵のスタンドだね。DIO、何か対策は?」
敵もここで仕留める気だったのかもな。
前回みたいなアホな攻撃じゃあなく、切り札とも言えるイエロー・テンパラスを切って来たか。
だが、承太郎達スターダストクルセイダーズ当時ならまだしも、今の面子なら大した敵ではない。
適任者が一人いる。問題はそいつの勇気だ。
というか弥七のやつ波紋もう使いこなしてない?
どれだけ基本スペック高いの?
ラバーソール「ガキ共め。いつの間に車を乗り換えた?この田吾作共が!」
ラバーソールもトラックから下車し、俺達の前に姿を現す。その気配は殺気に溢れており、交渉の余地は無さそうだ。
DIO『俺は……雪ノ下が適任だと考えている』
八幡「雪乃が適任?」
だが…うちの世界の雪ノ下ならともかく、実践経験が乏しい雪ノ下では……
雪乃「わかったわ義兄さん」
雪ノ下は震えながらも前へと一歩踏み出した。
すると、残りのメンバーも前に踏み出す。
全員が自らの戦いへの恐怖と戦いながらも大切な仲間の為にと前に出る。
強くなれ雪ノ下…お前は一人じゃあない!
ラバーソール「ヘドぶちまけな!」
ラバーソールはスライムの塊を弾けさせた。
小町「キャアアアアァ!」
小町がまともに食らっていまい、橋から転落する!
八幡「小町!」
戸塚「小町ちゃん!」
SPW「小町ちゃん!」
八幡と二人の戸塚が小町を追って橋から川に飛び込む!
俺はもう一度心の中で雪ノ下に呼び掛ける。
強くなれ雪ノ下…お前の能力はジョースター邸で見せた程度じゃあない!もっと精神を強くもて。お前ならやれるはずだ!
sideナルシソ・アナスイ
ラバーソールという男から発射されるスライムの散弾は陽乃や材木座、エルメェスや徐倫のスタンドが弾く。
いろは「無理無理無理無理!」
いろはもスタンドのラッシュで弾こうとするが、スライムにへばり着かれれば力を失う。
材木座「ぐう!このままでは!」
徐倫「弱音を吐くんじゃあない!雪乃と風鈴を守るんだよ!」
だがこのままでは時間の問題だ!最低限いろはと雪乃を守らねば…。
アナスイ「ダイバー・ダウン!」
俺はダイバー・ダウンを出現させて雪乃に潜航させる。このままでは間違いなく……
陽乃「抜かれた!雪乃ちゃん!」
とうとう雪乃を守る壁が抜かれた。だが、雪乃にはダメージを通さない!
俺のダイバー・ダウンの能力…潜航させた対象のダメージを肩代わりする!
アナスイ「ぐああああああ!」
雪乃「アナスイさん!」
アナスイ「雪乃!俺の事は気にするんじゃあない!お前のダメージは俺が肩代わりする!」
俺が叫ぶと雪乃は展開していたエンジェル・ラフレシアを更に増やす……いや、氷のフリスビーが更に大きくなり、規則正しい六角形に安定する。
雪乃「私は…足手まといになるために付いてきたんじゃないわ…私が義兄さんや姉さんを守って…みんなでまた楽しく過ごすために付いてきたの……こんなところで負けるわけにはいかないのよ!」
エンジェル・ラフレシアは俺達を守るようにピッタリと壁を作り、スライムの弾丸を受け止める。
それだけじゃあない。氷の壁に命中したスライムはそのスタンドの特性により、つららのように尖ってへばりつく。
しかし、エンジェル・ラフレシアの壁を貫通する力は無いようだ。
雪乃「私のスタンドが成長したわ…一色さんの世界のセンスで名付けるなら…エンジェル・ラフレシアact2…自分のスタンドの力を自分で受けなさい!」
尖った氷のつららをラバーソールに向けて射ち返す!
DIOが雪乃に期待したのはこれか…流石は陽乃の妹なだけはある。起こった状況を上手に利用したんだな!
ラバーソール「ぐああああああ!」
氷のつららはラバーソールの体のあちこちを貫く!
雪乃「成長した私の力を…その身で受けると良いわ!」
雪乃は壁を解除してラバーソールの周囲をドーム型にして囲む。そして……。
雪乃「喰らいなさい!オールレンジのフリージングビームを!絶対零度の中で、氷河に落ちたマンモスのように凍り付くと良いわ!」
ドームの中で光が輝く。
………周囲が静かになり、雪乃のスタンドが解除されると、中からラバーソールが入ったドライアイスのような物だけが残った。
雪乃「一瞬で凍りつかせたから生きているはずよ。SPW財団が運営するスタンド使いの矯正施設と言うところでじっくり反省すると良いわ。それであなたの性根が少しでも直れば良いのだけれども」
雪乃は髪を掻きあげながら言った。
バルバルバルバル……
これは、ヘリコプターの音?
七里ヶ浜「雪ノ下さーん!これ、回収しますねー!」
ヘリコプターに乗った総武高校の女子が氷漬けになったラバーソールを鉄製の網とクレーンで吊って運搬していった。みんな言っていたが、何故ここにいる!弥七の差し金か!?
いろは「エメラルド・ヒーリング!皆さんお疲れ様でした!雪乃先輩も…それにアナスイさん!隠れたMVPですね!カッコ良かったですよ?」
徐倫「そうね。惚れ直したわ、アナスイ」
いろはと徐倫が俺に労いの言葉をかけてくれた。
アナスイ「祝福しろ。俺と徐倫の絆を!」
徐倫「これさえ無ければね……。どうやら下でも戦いが終わったそうよ」
sideDIO
ここは八幡の脳の内部。八幡の脳内に入り込んだラバーズを追うために八幡がハーミット・パープルで自分の脳内をスマホに写し出し、それを追って2体のホール・シンクスとサンシャイン・ルビーが小型化してラバーズを追い詰めた。
そして、ホール・シンクス同士でラバーズをテニスボールに見立ててテニスのラリーを始めた。
ダン「ギャアアアアアアアア!」
どこか遠くの方でスティーリー・ダンの悲鳴が聞こえる。今回はわざわざ姿を現す愚行を行わなかったようだが、まぁ……八幡がハーミット・パープルを持っていたことが仇だったな。更に肉の芽がないお前など怖くないわ!
戸塚「小町ちゃん!」
小町「はぁい♪」
戸津がサンシャイン・ルビーに向けてラバーズを打ちつける。待ち構えていたサンシャイン・ルビーは……
S・R「ゴミゴミゴミゴミゴミゴミゴミゴミぃ!」
小町によって止めを刺され、スティーリー・ダンは二十年前と同様、全身複雑骨折で気絶した。
流石は小町のサンシャイン・ルビー。スター・プラチナ並の基本スペックだ…。
弥七「ニンニン」
一瞬で現れた弥七がスティーリー・ダンの襟首を掴んで引き摺りながら凄まじいスピードで去っていった…。
もしかして、弥七の基本身体能力って本来の俺に匹敵するレベルか?
戦いがおわり、全員がデラウェア川の河原に終結した。
ホール・シンクスとサンシャイン・ルビーも八幡の耳から脱出して本来の大きさに戻る。
小町「みんな!」
小町が空に指を掲げた。ヤベェ!
DIO『八幡!逃げるんだよォォォー!』
くるっ♪シュゴォォォォ!×6
いろは「逃げるんですよォォォー!」
徐倫、アナスイ、エルメェス、SPW、沙希
「逃げるんだよォォォー!」
小町「小町やったよ!………何でアーシスの人達は逃げたの?」
アーシス組が条件反射でなりふり構わず逃げ出したのを小町は首を傾げて不思議がっていた。偶然って怖いなぁ………。
ラバーソール(イエロー・テンパラス)…
スティーリー・ダン(ラバーズ)…
アーシス組…小町のルビーレーザーのサインと勘違いして全力で逃亡
←To be continued
はい、メインは雪乃とアナスイ回。サブで戸塚と小町回でした。
それでは次回もよろしくお願いいたします。