やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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ニューヨークのはるのんとはちまんくん

sideDIO

 

眠っている間にニューヨークに到着したようだ。

俺が起きられている時間はすくない。

 

八幡『起きたか、DIO』

 

DIO『ああ、どのみちすぐに眠ることになるだろうけどな』

 

八幡『無理はするなよ。聞けばお前は魂が砕けているって話じゃないか』

 

DIO『俺の事は気にすんな。本人的にはあまり起きていられないくらいで、痛みもなければ苦しみもない。だが、その気遣いには感謝する』

 

本当に俺か?と思うくらい優しい奴だ。

 

DIO『趣味がボッチごっこって訳でも無さそうだしな』

 

八幡『何だそれは…』

 

空港を出ると、既に閣下によって手配されていたであろう車が停まっていた。車両は普通の車だ。いくら大統領といえど、何でもない一般人に高級車を用意しないか。

ジョースター家ならやりかねんが。

出発前にジョセフやスージーさん、静・ジョースターに会いたかったが、時間もないし八幡達を俺達の事情に巻き込んでいるのだから個人的な事は考えないようにしよう。それに、この世界のジジイ達と俺達は無関係だしな。

 

陽乃「あの有名なジョセフ・ジョースターに一目会ってみたかったなぁ…」

 

徐倫「ジョセフおじいちゃんを知ってるの?陽乃」

 

陽乃「建築や不動産の世界では有名ですよ?一代でアメリカの不動産王に成り上がった人だって。むしろ、空条さんはご存知なんですか?」

 

徐倫「ジョセフ・ジョースターはあたしの曾祖父よ」

 

なるほど。この世界の陽乃さんは雪ノ下建設の後継者だから、業界のレジェンド的なジジイの事にも詳しい訳か。

 

DIO『俺達の世界では若返って百歳を間近にしていても五十くらいの肉体を維持してるけどな。本気で百歳か時々疑いたくなる』

 

八幡『もう何でもありだな?お前ら』

 

異世界の自分に呆れられた。

 

徐倫「あたし達の世界の…で良ければ全てが終わった後に会わせてあげるわよ?ほら、この人がそう」

 

徐倫が携帯で撮影した写真を見せる。マリンスタジアムでの集合写真や由比ヶ浜の誕生会、最近千葉村で撮った写真だ。

 

八幡『ホントに若いな。これで百歳か…それに、これがお前の本当の姿なんだな。体は俺よりでかいんだな。目が腐ってるわ』

 

DIO『やかましいわ。基本世界の俺もこんなものだ。そうなった理由は違うがな。俺は邪悪の化身の前世の影響で、過去の経験から基本世界の方は人間不振に近い状況でな。お前は陽乃さんのお陰で腐らなかったんだろ?良いことじゃあないか。それに、体はどの世界の俺よりも一回り大きい。昔からトレーニングを欠かさなかったおかげだろう』

 

本来は俺の目も腐っていなかったんだろうな。おのれディオめ。それに、体つきと戦闘技術も他の戦いをしている世界の俺と同列に扱われたら困る。大体俺くらいの年齢から謎パワーに目覚めたとか舐めてんのか。

こちとら幼少期から血ヘドを吐くなんて何度も経験して今の力を手にいれたってのに。まぁ、羨ましくは無いがな。

 

陽乃「ホントですか?是非とも!」

 

おおう。陽乃さんが目をキラキラさせている。

まるでアイドルに憧れるみたいに。八幡の心に嫉妬心が生まれているのがわかる。

 

徐倫「取り敢えず、あたしらは財団の本社に行くわ。陽乃達はセントラルパーク周辺で観光でもしてなさい。イーハと沙希を護衛に付けるから」

 

徐倫がそう告げて他のアーシスのメンバーと共に本社に

入って行った。

 

いろは「…………」

 

いろはの表情は暗い。ごめんな…いろは。

 

side一色いろは

 

ーセントラルパークー

 

はぁ…何してるんだろ、わたし。確かにこの世界のわたしは財団の関東支部副支部長じゃあないから、わたしが本部との会議に出席しても意味がないのはわかっている。だけど、目の前で先輩とハルさんがイチャイチャしているのを見るとモヤモヤが止まらない。

先輩達もわたしに気を使ってあまりイチャイチャしないようにしているのはわかってるんだけど、普段の何気ない仕草とかは無意識に出てしまうものだ。だから、ふとしたことでそれは出てくる。

押さえようと思えば思うほど、先輩とハルさんはお互いを意識してしまっているのがわかる。だって、逆の立場ならわたしもそうなっていただろうから…。今さらながら承一郎やジョニィには残酷な事をしてたんだな…。ごめんね?承一郎……。もしこの旅が終わって、また会うことが出来たら謝ろう。無神経でごめんなさいって。

 

八幡「あ、ちょっと悪い」

 

陽乃「あ、私も…」

 

二人が言葉を濁しながら離れる。

 

いろは「わたしが着いていきます」

 

と二人の護衛的に言ってみたが、何てことはない。わたしもトイレに行きたかっただけだ。

 

沙希「ふっ…良いよ。行ってきな」

 

むぅ…川崎先輩が妙に優しい目で微笑んでくる。その目は「別に素直に言えば良いのに…」と言いたげだ。

 

ーキング・クリムゾンー

 

用を済ませて外に出ると、先に出ていたハルさんが地面をジーっと見ていた。え?何かあるの?

わたしはハルさんの足元にある物を見る。

あれは……アラジンと魔法のランプ?

……

………

 

いろは「ハルさん…」

 

陽乃「わかってるって。これ、スタンドだよね?いくら世界の全てが集まるのニューヨークだって言ったって、こんなアラビアァ~ンな古いランプがこんなところで無造作に落ちているわけがないよね?」

 

いろは「そうですよね。普通なら怪しみますよね…若い頃のポルナレフさんはなんで引っ掛かったんだろ?」

 

陽乃「ポルナレフ?」

 

いろは「わたし達の仲間です。このスタンド能力に引っ掛かったんですよ…。欲望に勝てなかったみたいで」

 

まぁ、どんなに綺麗な内容でも欲に目が眩んではいけませんよね?良い教訓…という事で。

 

陽乃「こういう危ない物は捨てなきゃね?見つけたものの責任として」

 

クックックッ……と黒い笑みを浮かべたハルさんはビニール袋をバックから取り出し、適当な棒を箸がわりにしてランプをビニールに入れた。

そしておもむろにブンブン振り回す。

 

カメオ「ギャアアアアアアアア!」

 

わたし達が使っていた公衆トイレの男性側から何かが激突する音と、悲鳴が聞こえる。スタンドを振り回されたから本体もブンブン振り回されたようだ。

痛そう~~~………

 

八幡「なぁ……こんな奴がいきなり個室から出てきたんだけど。DIOが『審判(ジャッジメント)』のスタンド使いの男だって言っていたけど」

 

先輩が気絶している男を引き摺って出てきた。

ハチ君がそう言うなら間違いないと思う。

 

いろは「うーん……」

 

というか、何で20年前の復讐者達がまた襲ってきてるの?おかしいよね?

 

陽乃「どうしたの?いろはちゃん」

 

いろは「いえ、この人はかつてディオの……オリジナルの方ですけど、20年前の部下だった刺客の生き残りなんですよ。わたし達の四年前でも襲われたんですけど、それには理由があったんですけど、今回の場合は腑に落ちないんですよね」

 

八幡「(一色達の世界ではプッチの目的である魂が俺の中のDIOだったからだろ?今回もそれじゃないのか?」

 

いろは「いいえ。それは絶対にあり得ません。何故ならば…厳密には現段階では後のストーン・オーシャンと呼ばれる戦いはまだ始まっていないんです」

 

わたしの言葉に全員が驚いていた。

 

 

sideDIO

 

気付いていたか、いろは。

そう、思い出してほしい。何故四年前に俺が襲われ始めたか……

 

八幡『どういうことだ?DIO』

 

DIO『ストーン・オーシャンが本格的に始まったのは徐倫がGDst重警備刑務所に投獄された頃だ』

 

八幡『ならばもう始まってるんじゃないのか?』

 

うん、勘違いしているようだが実はそうではない。

 

DIO『勘違いしてるな?現段階ではこの世界の徐倫は逮捕されただけ。これから裁判を待つ状態だ』

 

そう、ここ重要。何故なら裁判を受けていない徐倫が刑務所に行くはずがない。

 

DIO『そしてプッチがメイドイン・ヘブンを目指すのは徐倫が刑務所に行った後、面会に行った空条承太郎の記憶を奪ったことによってディオの日記に記した天国を目指す方法を知ったからだ。今はそれよりも前。徐倫が逮捕されただけの段階でこっちが先手を打っている』

 

現段階ではプッチはメイドイン・ヘブンを成すために必要な物が何かを全く知らない。つまり、ディオの魂とザ・ワールドが必要な事を知らないはずなのだ。

八幡が俺の説明したことをみんなに説明する。

 

DIO『ぼさっとしているんじゃあない。もっと腑に落ちないことがあるんだよ』

 

八幡「もっと腑に落ちないことがあるらしい」

 

八幡が通訳する。まどろっこしいな。

 

いろは「ですです。仮にストーン・オーシャンが始まっていても、わたし達が襲撃される理由が思い付かないんですよ!」

 

流石はいろはだ。そう、俺達はこの世界の人間じゃあない。

 

DIO『仮に承太郎が記憶を奪われていたとしても、この世界の承太郎は俺を知らないんだぞ?俺がディオの転生だって。俺達が襲われる理由は全く無いんだよ!なのに何でマライアやカメオ…それに…』

 

俺は瞬時に八幡の体のコントロールを奪い、いろはと共に陽乃を押し倒して身を低くして伏せた。ちっ、俺の体じゃあないから動きが鈍い!一般人よりは鍛えている事がわかるけどな!

 

八幡『おいテメェ!なに陽乃を押し倒してるんだ!それは俺の役目だ!』

 

陽乃「ちょっと八幡!こんなところで////いろはちゃんまで」

 

DIO「色ボケてんな!八幡と陽乃さん。敵だ」

 

いろは「ハチ君の言うとおりです!」

 

タン!タン!タン!

 

俺達が立っていた位置にスタンドの弾丸が撃ち込まれる。ホルホースか。あの時もあいつがこのタイミングで仕掛けて来たよな?

俺は体のコントロールを手放し、八幡に体を返す。

 

八幡「おいDIO。お前がやるんじゃないのか」

 

甘ったれるんじゃあない。敵の不意討ちから陽乃さんを守っただけでも感謝しろ。

 

DIO『無茶をいうんじゃあない。俺はあまり長いことお前を操れん。ましてやスタンドを使ってのドンパチなんて出来るか!今度はお前がやるんだ八幡。奉仕部の理念を思い出せ』

 

八幡「奉仕部の理念…飢えた人に魚を与えるのではなく、魚の取り方を教える…」

 

今はお前が魚を取る時だ。俺は魚の取り方を教える。実際はホルホースを倒すのは簡単だ。だが、それは俺の役目じゃあない。

 

DIO『ああ。ホルホースは魚だ。お前は飢えた人。さあどうする?俺やいろはに魚を取って貰うか?それとも俺に教えて貰いながら、自分で取るか?どうする!決めろ比企谷八幡!』

 

見せろ…本物を守りたいと思うお前の勇気を。決めろ。戦うことに対する覚悟を。

 

八幡「………やる!」

 

DIO『ベネ(よし)。ならばお前に力をやるよ。今からやる俺の呼吸を体で覚えろ』

 

俺は一時的に八幡の体をコントロールして波紋の呼吸を体感させる。体を共有しているなら、横隔膜に小指を突っ込むよりも確実に波紋を体得させられる。

 

八幡「コォォォォ…この呼吸……力が涌き出る…」

 

DIO『この力は釣竿を持っただけだ。これから糸を付けなきゃな。相手のスタンドは銃のスタンドだこわいか?』

 

八幡から沸き上がっている恐怖を感じる。

 

八幡『いや、怖くない…』

 

DIO『強がるな。怖くて良いんだ。むしろ恐怖をしっかり感じろ』

 

八幡『恐怖を感じてどうすんだ!萎縮して体の動きが悪くなるだろ!』

 

DIO『それを勇気で自分のものにするんだ。恐怖を自分の物にした時、呼吸は正しく乱れない。波紋の基本は呼吸法だけじゃあない。恐怖を支配して自分の力に変える勇気だ。考えろ。陽乃さんが無慈悲にやられる姿を!雪ノ下が…小町が…無惨にやられる姿を考えろ!』

 

じわりと八幡の中から怒りが滲んでくるのがわかる。

誰しも本物がやられるのは我慢がならない。

 

DIO『許せるか?』

 

八幡『許せるか!』

 

DIO『このままではそうなる。いろは達がどんなに強くても、いずれは一人、また一人とやられるのは確実だ。お前らが強くなるしかないんだよ。比企谷八幡。どんな理由でも良い。その恐怖を自分の物にしろ!』

 

八幡「俺は……陽乃を…俺の本物を守る!」

 

コォォォォ…

青臭いがやった。八幡は今の恐怖を支配した。その感覚を忘れるな!

 

ホルホース「威勢が良いねぇ?兄ちゃん。お前、誰だかわからねぇけど、お前らを始末しろって依頼を受けたんでなぁ。可哀想だが死んでもらうぜぇ」

 

ホルホースが余裕の態度を崩さずに銃のスタンド皇帝(エンペラー)を向ける。

 

八幡『怖いが…陽乃は俺が守る!』

 

DIO『最後に餌を付けて釣りを始めよう。ザ・ワールドを出せ。そして奴の呼吸に集中しろ。銃を使うものの癖に引き金を引くときは呼吸を止める癖がある。肺の上下運動が照準を狂わすからだ』

 

八幡は言われた通りザ・ワールドを出してゆっくりとホルホースに近付いて歩く。

 

ホルホース「ザ・ワールドだと!くっ!」

 

ホルホースは焦りで照準が狂ったまま引き金を引く。八幡は焦っているホルホースの照準が滅茶苦茶なのを見切って落ち着いて近付いて行く。

良いぞ…優秀な奴だ。ついでにザ・ワールドの基本スペックを体感してもらおう。

 

DIO『八幡。ザ・ワールドを通じて弾丸を目で追えているか?』

 

八幡『ああ。音速の弾丸がはっきり見える』

 

DIO『ザ・ワールドで見えている速度と同じくらいのスピードで、ザ・ワールドは対応できるし精密さも百メートル先の針穴の中に砂を投げ込むことが出来るくらいは可能だ…パワーも岩を砕くくらいの事はできる。そしてザ・ワールドの最大の能力は…ホルホースが落ち着きを取り戻して照準を絞ってくるぞ!全てが止まるイメージを持て!』

 

八幡は流石に意味がわからないのか困惑する。

 

八幡『わかるか!そんな感覚!』

 

DIO『ならば「ザ・ワールド!時よ止まれ!」と叫べ!それが起動キーだと思え!』

 

ホルホース「死ねえ!ザ・ワールドのガキ!」

 

ホルホースの射撃と同時に八幡が叫ぶ。

 

八幡「ザ・ワールド!時よ止まれ!」

 

ブウゥゥゥゥン……世界がモノクロになり、俺と八幡以外の動きが止まる。せいぜい動けるのは承太郎くらいだろう。他の人間には何が起きているのかわからない。

叫ばせたことに意味はない。それが時を止める合図に時を止めれる…今はそう思って貰えればそれでいい。

 

八幡「これが…時の止まった世界…」

 

DIO『だが、いつまでも止められない。今のお前では1秒~2秒くらいがせいぜいだ。今の内にホルホースを再起不能(リタイア)させろ!やり方や処置は任せる』

 

八幡「わかった!おおおおお!」

 

八幡は限られた止まった時の中でホルホースに接近。そしてザ・ワールドで……。

 

T・W「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!」

 

無駄無駄ラッシュを叩き込んだ。

 

ホルホース「ぐあああああ!」

 

ホルホースは倒され、そして気絶。カメオ共々影で護衛していたFBIと総武高校の制服を着た女子が連れ去って行った。

…………まて、何かここにいるべきではない集団がいなかったか?

まぁ、いいや。

 

八幡「ふぅ…終わった……」

 

DIO『初めての戦闘にしてはグレートだ。八幡』

 

八幡『お前の事だから殺さないなんて生ぬるいとか言い出すかと思ったぜ』

 

DIO『俺はお前の判断に任せるよ。ただ、これはスポーツじゃあない。戦争だ。気絶した振りとかには気を付けろよ?俺も良くやるから、勝ったと思ったらもう一撃は確実にやっといた方が良い。確実に止めを刺せ。相手が男なら金的が有効だ。金的をやられて死んだ振りをし続けるほどの男はなかなかいないからな』

 

八幡『よ、容赦ないな。けど、そこまでの経験を積んだから言える言葉か…肝に命じとくよ』

 

陽乃「はちまーん!」

 

陽乃さんが駆け付けてきて八幡に抱きついて来た。

 

陽乃「かっこよかったよ!八幡!」

 

やれやれだぜ。ラブラブで結構。

するといろはが八幡に近付く。

 

いろは「途中から目付きが変わってましたよ?ハチ君が何か言ったんですね?見えなくてもわかりましたよ?ハチ君、お疲れ様でした」

 

////照れるから止めろ。結局頑張ったのは八幡だ…。

俺は何もしていない。

こうして、八幡と陽乃さんの初陣は幕を閉じた。

初陣としては上々だったな。

 

カメオ…再起不能(リタイア)

ホルホース…再起不能(リタイア)




今回はここまでです。

アルスさんの主人公とヒロインに活躍してもらいました。この調子でアルスさん側のキャラにも活躍してもらいたいですね。

第2章との相違点

セントラルパークに行ったのはミスタと億泰➡総武高校組

ホルホースと行動していたのはあいつ➡カメオ

カメオはパッショーネに始末されていた➡生きていた

ここでの活躍はミスタと億泰➡八幡と陽乃



それでは次回もよろしくお願いいたします。

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