side音石明
くそっ!これは予想外だった!
大量の屍生人達が俺達を囲む。その俺を囲んでいる屍生人の親玉は…
ズィー「あの時はよくもやってくれたなぁ…音石明ぁ」
サバンナ川に沈めた運命の車輪のズィー・ズィーだった。貧弱な肉体、腕だけはどうやって鍛えたのか筋肉隆々。
そのアンバランスさに思わず吹き出しそうになってしまうが、それどころじゃあない。
音石「くっ!チリペッパー!」
焦ってばかりもいられない。俺はチリペッパーを出して屍生人達に応戦する。
ここには波紋の戦士もいない。広瀬康一は大量の敵を相手にするのには能力が向いていない。虹村億泰は能力は強いが力を活かしきるのは難しいし、あのニューヨークでは彼の屍生人に敗北を喫している。カマクラという猫は他の動物に比べると気まぐれだ。岸辺露伴も単純な戦闘には向いていない。城廻めぐりは能力は素晴らしいが、戦闘経験が少なすぎる。
せいぜい東方仗助くらいしか頼りになる奴はいない。
俺が頑張らないと…。
音石「世界を俺のギターでノックアウトしてやるんだ!まだまだ弾き足りねぇ!」
ギュオオオオオオオン!
俺が弾くギターのビートに合わせてチリペッパーが拳のラッシュを連打する。
足りねぇ!スピードが足りねぇ!もっとだ…もっとビートを早く!
ギュイイイインインインイン!
屍生人「ギャアアアアアアア!」
ズィー「死ねぇ!音石明ぁ!俺はテメェのファンだったのに、ファンを裏切りやがってぇぇぇぇ!」
音石「お前みたいなファンは要らない。お前こそもう一度あの世に行けばいい!」
チリペッパーで抱き付き、ズィー・ズィーを電気の塊に変える。ズィー・ズィーごと屍生人を電気の塊に変え、ラジコン飛行機のバッテリーに入り込む。そしてラジコン飛行機を上空へと飛ばしてそこで屍生人を電気状態を解除する。
ズィー「…………ぁぁぁぁぁあああああああ!」
グシャっ!
地面に叩きつけられ、2度と動かなくなったズィー・ズィーと屍生人達。
音石「お前らに構っている暇はない。俺は比企谷八幡を救わなければならない。長年しこりになっていた虹村億泰との仲を取り持ってくれた得難い友人だ。それに、空条徐倫の大切な弟分でもある。彼女からは徐倫の事を任されたからな。彼を守ることは、彼女との約束の範疇でもある」
そうだろ?F・F…。
F・F『これがあたしの姿、あたしの魂。空条承太郎のディスクは頼んだぜ?そして、あたしの代わりに徐倫を頼んだ。任せたぜ、レッド・ホット・チリペッパー』
志半ばで倒れて魂が空へと飛んでいくF・Fは、チリペッパーに…この俺に定夫さんの孫である徐倫の事を託して逝った。
彼女の最期の願いは俺の心の中に疼いている。だから比企谷八幡を守ることは、空条徐倫の願いであり、彼女の願いだ。
俺は急いで城廻めぐりを探す。彼女の幸運を集める能力は必要だ。川崎沙希の予言が示す比企谷八幡の運命を変える鍵。その鍵でなかったとしても彼女は杜王町を救った守り神だ。彼女は必ず守る。もっていてくれよ?城廻めぐり。
いつの間にか俺にも守るものが多くなったな…と自嘲しつつ、俺は次の戦場に向かった。
ズィー・ズィー…死亡
side岸辺露伴
これはキツイ…
僕はこの状況に正直危機を感じている。今まで何度も危機に陥っていたが、それは相手が少数であり、なおかつ人間であったりスタンドだったりしたからだ。
相手が沢山いる状態、しかも屍生人が相手なのは初めてだ。
仗助「ハッ!ドラァ!」
億泰「よっ!だりゃぁ!」
東方仗助と虹村億泰はアメリカで屍生人との戦いを経験したらしく、上手く対処している。
仗助「ちっ!せめてジョジョがいれば同調させた波紋を使えるんだけどよぉ…承太郎さんのチームに入っちまったからなぁ…」
東方仗助がぼやく。そう言えば彼は自力で波紋は練れないが、常人よりは波紋の適正が高い彼は波紋の扱いだけは出来る。ならば…
露伴「東方仗助!僕の方へ来るんだ!」
仗助「あ!?何だよ露伴!こっちは手が話せねぇんだから、吸血ゾンビは自力で何とかしろよ!」
くそっ!東方仗助め!君はいつもそうだ!僕の言うことなんてまるっきり聞きはしない!
カマクラ「ふーー!ふにゃあ!」
めぐり「はぁ…はぁ…うううっ!怖いよう!気持ち悪いよぉ!お化け屋敷のお化けの方がましだよぅ!」
城廻めぐりもハーヴェストを駆使して善戦しているが、いかんせん初めての実戦だ。極度の緊張とストレスで息を乱してしまっている。仮に波紋に適正があったとしても、これでは波紋が使えない。くそ…僕に波紋の適正があったのなら…やはりしゃくではあるが、東方仗助に頼るしかない。
露伴「東方仗助!頼む!僕の方へ来てくれ!もしかしたら君に波紋の適正を何とかすることが出来るかも知れない!」
僕の言葉を聞いて少しの間、キョトンとした表情をしたが、すぐにピンときたらしく、ニヤリと笑う。
仗助「そうか、ヘブンズ・ドアーか!グレート!その手があったか!億泰!ちょっとばっかしこの場を頼んだぜぇ!」
億泰「おうよっ!任せとけ仗助!この男虹村億泰がこの場は任された!」
やっと理解してくれたか。相変わらず勘の鈍いやつだ。東方仗助は虹村億泰に戦闘を任せると、間にいた屍生人をかたずけながらすぐに僕の方へとやって来た。
仗助「来たぜ露伴!たのんだぜぇ!」
露伴「ヘブンズ・ドアー!」
通用するか?東方仗助に。相性が最悪とも言える相手にはヘブンズ・ドアーのact1の効き目はまったくなかった。進化してからのヘブンズ・ドアーを東方仗助に試したことはないが、ここはやるしかない!
僕は能力を使う。
仗助「うおっ!コレがヘブンズ・ドアーを受けた感覚か!」
懸念はあったが、どうやら上手くいったようだ。僕は手早く本になった東方仗助の顔のページに「波紋の呼吸が練れる」と書き込んだ。一応、城廻めぐりとカマクラにも書き込み、本になる能力を解除した。
仗助「こぉぉぉぉぉぉ…グレート!この呼吸か!今まで出来なかった感覚が掴めたぜ!」
東方仗助はすぐに感覚を掴んだらしく、体に光をともらせながら走って行った。
仗助「サンキュー露伴!今度飯でもおごってやんぜ!」
露伴「結構だ!それよりも早くあの大岡という生徒を何とかするんだ!倒せば能力が解除されるとも限らないが、このまま放置するよりはましのはずだ!」
仗助「わかったぜ!城廻の事は頼んだぜぇ!頼りにしてっからよぉ!」
ちっ!調子の良いやつだな。言われなくてもそうするさ。杉本鈴美は杜王町の守り神だ。彼女がいたからこそ僕達の平穏がある。その生まれ変わりの城廻めぐりは僕が命懸けで守るに決まっているじゃあないか。
さて、次はめぐりくんだ。
露伴「めぐりくん!敵を倒さなくてもいい!君は自分の身を守ることだけを考えるんだ!」
僕はめぐりくんを襲おうとする屍生人から救うため、めぐりくんを抱き寄せて、その攻撃を捌く。まともに受けたら僕なんてひとたまりもないからね。
漫画家のわりには僕は身体能力は高い方だが、あくまでも漫画家としては…だ。
カマクラ「ゴロニャアアァァァァァ!シャア!」
カマクラもどうやら上手く波紋が使えているようだ。
めぐり「初めてだね…露伴ちゃんが自分からわたしを抱きしめてくれたの…」
露伴「!!っと済まない。こんな時に」
めぐり「いいの!こんな時だけど、もう少し抱きしめていて…露伴ちゃん」
めぐりくんは僕の腰に腕を回す。こんな時に何を!
めぐり「ごめんね?露伴ちゃん…震えが止まらないの…恐いの…ううう…」
めぐりくんはそう言って嗚咽を漏らす。無理もない。戦士でもない彼女が立つ初めての戦場。しかも、相手は吸血
幼少期から戦い続けていた一色いろはとは違う。この子は前世だって吉良吉影に殺されるまでは平和な日常の中にいて、そして城廻めぐりとなった今もつい最近…いや、つい先程までは平和に暮らしていたのに…。
露伴「大丈夫だ。僕が君の盾になる。だから君は自分の身を守るだけで良いんだ」
めぐり「露伴ちゃん……」
すると、めぐりくんの嗚咽が止まり…
めぐり「コォォォォ…」
かすかな…そして特徴ある波紋の呼吸が吐き出される。
どうやら、もう大丈夫のようだ。
side城廻めぐり
めぐり「ありがとう、露伴ちゃん。お陰で勇気が沸いてきたよ!」
やっぱりわたしには露伴ちゃんしかいない。
露伴ちゃんに抱き締められただけでこんなにも落ち着くんだもの。他の男の子じゃあこんな気持ちになれない。それに、この露伴ちゃんからもらった力…。
めぐり「波紋の呼吸は勇気の産物。恐怖を克服したとき、勇気が生まれて呼吸は正しく乱れない…だったよね?」
ジョセフ・ジョースターさん(そう言えばあんなにヨボヨボだったのに何で若返ったんだろう?)が言っていた波紋の呼吸の基礎。わたしには波紋の素質がわずかにだけあったのでジョセフさんからレクチャーを受けたけど、修行を始めてわずかだったから全然つかいこなせなかった。今年は受験だから修行ばかりもしてられなかったから。
だけどたった今、露伴ちゃんの力で出来るようになった。そして、露伴ちゃんのお陰で恐怖を克服できた。
めぐり「波紋の呼吸は勇気の讃歌。勇気の讃歌は人間の讃歌。はるさんが言っていた意味がようやくわかったよ!わたしだって!」
わたしはゾンビ(屍生人って言ってたっけ?)に向かって一足飛びに飛び込む。運動はあまり得意ではなかったけど、波紋の力が足りない体力を補ってくれる。
めぐり「あの時のわたしは見ているだけだった!だってもう死んでいたから!だけどわたしは今は生きている!今のわたしは戦う力がある!わたしたち戦える人間が人間の『幸せ』と『平和』を取り戻さなければ、いったい誰がとり戻すっていうの!?誰が柱の一族や…アンチ知的スタンドから平和を取り戻すの!?私たち生きている人間だよ!」
幸せを集めるだけじゃあダメだ。
戦って取り戻すんだ!杜王町で吉良吉影から町の誇りと平和を取り戻してくれたように。
ただ誰かから貰った幸せを集めるんじゃあない。自分で作らなくちゃあダメなんだ。
めぐり「ヤァッ!」
格闘技なんてやったことがない。ただ力を振るうだけの不器用な攻撃。だけど、波紋の力が足りない技術を力押しで屍生人を倒してくれる。
今のわたしの力は全部借り物だ。スタンドの力も、波紋の力も…戦う意思でさえも。全部、矢安宮重清さんや辻彩さん、露伴ちゃん…そして前世の杉本鈴美さんから借りてきた力。
めぐり「とっても誇りが傷付くよ…どの力も自分の力じゃあ無いんだもの」
露伴「だが、これからそれを自分の力に変えて行けば良い。シンデレラもハーヴェストも本来は別のスタンドだった。それを幸せを集めるスタンドに変えたのは君の人の幸せを願う優しい心が生み出した君の本質だ。形としては借り物かも知れない。しかし、その優しい本質は誰のものでもない、君の本物の力なんだ」
めぐり「露伴ちゃん……」
露伴「八幡くんの言葉を借りれば、今の君の力はレプリカなのかも知れない。だが、それをこれから本物の力に変えていけば良いじゃあないか。その優しい本質と同じように」
めぐり「露伴ちゃん…うん!」
嬉しい。これまでのどんな言葉よりも。露伴ちゃんと比企谷君の気が合うの、わかる気がする。二人とも本質を見るんだ。そして今、露伴ちゃんはわたしの本質を見てくれた。
めぐり「うん…ありがとう、露伴ちゃん」
露伴「僕は何もしていない。ん?この顔はどこかで…気のせいかな…?」
露伴ちゃんはわたしが倒したゾンビのひとつに見覚えのある顔があるのか、それをジーっと見ていた。
なんかパイナップルみたいな髪型で分厚い唇、なんかお魚みたいな印象だ。そう言えば杜王町の小道にいたときにこんな顔の人が上空を飛んで行ったような…。そしてその少し後だったよね?壁を背にしながら小道に来たような…。
露伴「まぁ、良い。この場を乗りきるぞ、めぐりくん」
めぐり「うん!」
大切な人と背中合わせになりながら、わたしは波紋の呼吸を整える。
偽物の力でも、今はそれで良い。それがあるからわたしは戦えるんだから。
そしていつかは本物にして見せる。この力も、今を繋げているみんなとの絆も…。
乙雅三(きのとまさぞう)
「あんまりだぁ…他の雑魚屍生人と同じ扱いなんてあんまりだぁぁぁぁ!」
乙雅三…元チープ・トリックの本体だった男。誰にも認識されず、ただちょっと強いだけの雑魚屍生人くらいの認識のまま、死亡
sideエシディシ
く…誰だ…俺の決め台詞をとったのは……たが、何だ…このスタンドとか言うものは…そして…この真っ黒な豹変は……
sideカマクラ(前回のサブレと同様です)
ふぅ……危なっかしくて見てられないぜ。
億泰の奴がこの人間のメスを守れって言うから言うとおりにしていたけど、確かにこれは守ってやる必要があるって判断するのも頷ける。
トロいしいきなり泣き出すし。
けど、コレはマジでキツイぜ。大量に敵が出てきやがるし、一体一体が並の人間よりも遥かに強い。
すげー逃げ出したいんだけど、逃げる隙もねぇし、マジでキツイ。
大事な事だから二度言いました。
あの飼い主面の腐り目の口癖が出ちまった。
あの飼い主面の腐り目…か。
猫の直感って奴かな?近々アイツがいなくなる気がしてならないんだ。
あんなやつでも俺の家族だ。それがいなくなるのは許さねぇ。小町や毎日くるいろはやたまにくる静、仗助、徐倫、最近新しく家族になった腐り目が飼い始めたペットショップとかいう隼もそれに気がついて、何とかしようとしているのがわかる。
それに、億泰が頑張っている。万作さんの息子の億泰が一生懸命戦っている。この俺も頑張らないと億泰があぶねぇ!
ん?何だよ岸部露伴…だったか?何か俺に用か?
うわっ!何しやがる!何を書いてるんだテメェ!自慢の血統書付きの白い毛並みが乱れたらどうする気だ!
ん?何だ?俺の呼吸が変わったぞ?コォォォォ…。こ、これはうちの家族の兄妹がよくやっている呼吸…妙に力が湧いてくるじゃあないか!
カマクラ「ふしゃあ!」
バリバリ!
お化けみたいな人間擬きの顔を引っ掻いて傷を作る。
ん?顔を引っ掻いただけなのに、何で体全体が溶けて灰になってるんだ?お化けみたいな奴にはこの呼吸が生み出す力が弱点なのか?
コレは良い。どんどんバリバリやってやるぜ!
ん?何だ?あのネズミ二匹は。もしかしてあれも敵なのか?
虫食い「ヂュッ!」
俺の視線に気が付いたネズミが襲いかかってくる。
やっぱり敵か!耳が千切れたネズミは俺に、もう片方の普通の耳のネズミは仗助を狙っている!
やるしかねぇ!仗助は気付いてねぇ!まあ、人間がネズミの接近に気が付かないのは当たり前か。
嫌な視線(殺気のこと)が渦巻くこの中じゃあネズミの嫌な視線なんて普通は気が付かねぇもんな!
俺に向かってくる方は尻尾で叩き落として取り敢えずは無視する。先に仗助に向かっているネズミを倒す!
カマクラ「ネズ公!」
だが間に合わねぇ!どうする?
えーい!本能のまま空気弾だ!何となくだけどこうすれば良いような気がする!
カマクラ「ストレイ・キャットぉ!いっけぇぇぇぇ!」
俺が生み出した空気弾に呼吸の力を加えた爪で引っ掻いて飛ばす。
狙いはバッチリで空気弾はネズ公の体に命中する。
ネズミ「ぷきゃああぁぁぁぁ!」
空気弾に当たったネズミは吹き飛びながらキラキラ光って消えた。狙ってやったわけじゃあない。ただ何となくでやっただけだ。
仗助「こいつは……あの時のネズミか!?サンキューカマクラ!助かったぜ!」
仗助が俺に礼を言ってくる。そうか、コイツらは仗助に恨みがあったのか。だったらもう一匹も俺が倒してやるぜ!
虫食い「おのれ…くそ猫…どけっ!あの男に復讐するんだ!」
カマクラ「俺の名前はカマクラだ!仗助はやらせねぇ。億泰の親友だからな!」
俺は空気弾をもう一度射つ。
虫食い「あたるか!」
ネズミは空気の感じ取って回避する。
チッ!人間と違って俺達は目以外の感覚が鋭いから見えない空気の弾もすぐに避けられる。
まぁ、今の空気弾が億泰と戦っていたお化けに命中して倒したから結果オーライだけど。
ヤッパリこいつは俺がやらなくちゃあダメだ。
カマクラ「行くぞネズ公!」
俺はネズ公に向かって走り出す。
虫食い「猫が相手とか誰がやるか!」
ネズ公は追ってくる俺から逃げ出す。
ネズミを追いかける猫。おおっ!忘れていた野生が戻ってくるようだ!不規則に動く分、ボールとは違った感覚が良い!俺はネズ公をとことん追いかける。
虫食い「野生のネズミが飼い猫に劣るかぁ!」
劣るんだよ。俺はあんな兄妹がいる家庭で飼われている
猫だぞ?普通に過ごせると思うか?特に騙しのテクニックとか言って変なことされるんだ。下手な野良猫よりもよっぽど狡猾に生きなきゃあならない。無造作に追いかけているようで、俺はある一点に行くように追い込んでいた。それは…最初に弾を射った俺の位置!
虫食い「ヂヂヂーーーー!」
俺がさっき立っていた位置に到達するとネズ公が苦しみ出す。
虫食い「何をした……クソ猫」
カマクラ「別に。最初にお前に射った空気弾を引っ掻いた時の切り取った空気の一部をここに残して置いたんだよ。ほんの小さな欠片をな。お前は俺から逃げるのに必死で気が付かなかったんだよ。あの腐り目のお陰でこういった小細工が上手くなったんだ。飼い猫には飼い猫なりに苦労があるんだよ。特にあの腐り目の家族やってるとな」
虫食い「飼い猫がぁぁぁぁ!」
ネズ公は怨嗟の声をあげて消えていった。
初めて役にたったぜ。あの腐り目の騙しのテクニックが。感謝なんかしねぇけどなぁ!
どぶネズミ×2…死亡
side虹村億泰
億泰「ホラーは苦手だって言ってんだろうが、ダボがぁ!」
屍生人との戦いは初めてじゃあねえ。四年前、クリスタル・クルセイダーズが結成される直前。ニューヨークでアイツが操る屍生人を相手に2回戦った。強いには強いんだが、それでも、アイツが操って効率の良い動きをしてくる訳じゃあなく、動きが散漫でプロテクターも付けていない、強化もされていない屍生人なんて、比べるまでもねぇ。あれに慣れちまったらこんな雑魚屍生人なんて敵じゃあねえ!
俺は次々と襲ってくる屍生人に攻撃を与え、怯んだ瞬間にザ・ハンドで消滅させる。
??「全隊!後退!包囲隊形を維持しつつ、休め!」
屍生人達の動きが急に良くなり、俺を包囲したまま動かなくなる。この指揮の取り方は…
億泰「出てきやがったな…兄貴」
形兆「少しは成長したじゃあないか、億泰」
億泰「兄貴…戦う前に一言礼を言いてぇ…兄貴は俺を庇って…」
形兆「全隊!気を付け!構え!」
俺の言葉を最後まで聞かず、兄貴は屍生人達を指揮して攻撃体勢に入る。けっ!俺なんかと話す価値はねぇってのかよぉ!せっかく会えたのによぉ!
京兆「9時から時計回りに3時の方向まで、攻撃開始!」
兄貴によって統制された屍生人達の動きははるかに良くなった。それでも、元が元だからアイツの攻撃よりは捌きやすい。
形兆「残り部隊!攻撃開始!」
億泰「モード!ハイウェイ・スター!」
俺だっていつまでもザ・ハンドに頼りきりじゃあねぇんだよ!小まめに間田や噴上、たまに帰ってくる音石と一緒に訓練を重ねているんだ!特に噴上との訓練は多数を同時に対処する訓練に適していた。
特に、触れられたらやられる点ではハイウェイスターとの戦いと大差はねぇ!
億泰「ザ・ハンド、大旋風!」
ガオオオオオオン!
ザ・ハンドを爪先立ちにさせ、能力を使いながら両手を広げて回転させる。俺を取り囲んでいた屍生人の頭を一通り削り、同時に次の列にいた屍生人を引き寄せる。そして次の回転でそいつらの頭を削り取り…と、フィギュアスケートを見ていたときにいけるんじゃあねぇかと思って練習した技だ。
ジョルノや八幡のせいで良くヤクザの抗争に巻き込まれるからよぉ、こんな風に囲まれた時の対処用にな。仗助からは「見た目はひでぇけどグレートじゃあねぇか!ただよぉ、おめえやザ・ハンドのフィギュアは見たくなかったんだけどよぉ」とか言われた。
良いじゃねぇか!有効なら見た目なんてよぉ!
形兆「ふ……あっさり全滅させられちまうなんてよぉ。相変わらずバカっぽい見た目だから、まるで成長してねぇかと思ったんだけどよ。俺の負けだ、億泰。まさかお前に負ける日が来るとは思わなかったぜ」
兄貴は両手を上げて降参の意思を示した。
億泰「………らしくねぇじゃねぇかよぉ、兄貴ぃ。あんま今の俺をなめんじゃあねぇぞ。伏兵がいるのは分かってるんだよぉ!」
俺は近くにある岩をザ・ハンドで誘き寄せてザ・ハンドで持ち上げ、八幡とかジョースターさんとかならこの辺に伏兵を用意すると思われる窪地に岩を放り込む。
屍生人「ぎゃあああああ!」
形兆「億泰が、俺の戦術を読んだだだとぉ!」
億泰「俺の年の離れたダチにはよぉ、兄貴。あのDIOの転生がいるんだぜ?アイツの性格の悪い戦術相手してっとよぉ、その程度が当たり前で疑り深くなるってもんなんだよぉ。兄貴より酷い戦術をやるからよぉ」
形兆「……もう、オメェは足手まといじゃあないな。今後もしっかり東方仗助やそいつの為に力を使ってやれ。億泰」
そう言って兄貴は自分の首を手刀ではねおとした。
億泰「あ、兄貴ぃ!」
形兆「悲しむな…億泰…お前の成長が見れて、俺は満足だった…」
億泰「勝手に逝くんじゃあねぇ!まだ話したりねぇんだぞ兄貴ぃ!俺よぅ、結婚したんだ!京って俺にはもったいねぇできた嫁だ!息子もいる!兆って言うんだ!二人合わせれば兄貴と同じ名前になる!兄貴のように頭が良い男になるようにって願いを混めたんだ!これが写真だ!見てくれよ兄貴ぃ!それと、親父も元気でよぉ!あそこにいる白猫のカマクラとじゃれている写真だ!どうだ、見えてるか兄貴ぃ!」
ただ戦って終わりだなんて悲しいじゃあねぇか!だから兄貴にこれでもかってくらいに話や写真を見せる。
形兆「そうか…億泰…今は幸せなんだな……もういい。今はこんなことをしている場合じゃあねぇだろ…仲間を助けに行け…億泰…お前の幸せを祈っているぜ。最期はお前の
俺は泣きながら頷くと、ザ・ハンドを構える。
形兆「泣き虫はいくつになっても相変わらずだったな、億泰。じゃあな」
億泰「あばよ兄貴…」
形兆「ああ…」
そう言って俺は兄貴の生首をザ・ハンドで消した。
そこから兄貴の魂が北へ飛んでいくのが見えた。行き先は杜王町の小道だろう。
京と兆に会えれば良いな…兄貴。
虹村形兆…死亡。そのまま杜王町の第2の守り神になったとかならなかったとか。
side広瀬康一
僕のエコーズは多数の敵を相手には適していない。
僕はact2の能力で辛うじて尻尾の燃える擬音とかを手に纏い、殴ったりして対処するけど決定打に欠ける。
そして疑問なのが、この男…吉良吉影はただじっとしているだけで何もしてこないのが不気味だ。
吉良「その程度かね?君」
康一「吉良吉影…何を考えている?」
吉良「ん?君は私を知っているのかね?」
康一「何だって?」
吉良「生前の記憶を失っているんだ。僕が吉良吉影なのと死んでいること以外の記憶を全てね」
何だって?どういうことなんだ?
それに、忘れているなんて許さない。自分が作った数々の悲劇を忘れているのか!この男は!
康一「許さない…許さないぞ、吉良吉影」
吉良「ふむ、私は相当酷いことをしたようだね」
康一「ふざけるんじゃあない!この殺人鬼!」
熱くなるな。承太郎さんに昔注意されたじゃあないか。冷静に観察して分析しろと。奇しくもその時の敵もこの吉良吉影だった。なんて因縁なんだ。
吉良「殺人鬼…か。私は自分が天国に行けないことは理解していたが、そう言った理由だったのか」
どうやら本気で忘れているらしい。いや、今までの死者とは何かが違うぞ?
吉良「君、あのオールバックの彼やあそこの彼女ようにコォォォォという力は使えないのかね?」
僕に波紋の力はない。いや、待て。何で仗助君は波紋を自力で使えているんだ?静ちゃんがいないのに何故?
考えても仕方がないか。どちらにしても僕に波紋の力はない。
それならば着実に屍生人を…
吉良「その文字の能力を使って『コォォォォ』を作れば良いじゃあ無いかね?」
!!その手があったか!盲点だった!波紋の呼吸を生み出す文字をact2で作って呼吸をしてみれば良いじゃあないか!何でそれを考えなかったんだろう!
僕は吉良に言われたようにact2の文字を喉に張り付けて
呼吸を始める。
康一「コォォォォ…」
違う…今までの呼吸とは何かが違う!体に力が生まれる!自力ではとても出来ない特殊な呼吸だけど、act2の音を実現する力ならそれが出来た!
康一「はぁぁぁぁぁああああ!」
僕は高まった身体能力で屍生人を倒していく!
悔しいのはそれを敵に教えて貰ったという屈辱!
僕は周囲の屍生人を全滅させる。残るは吉良吉影だけだ。だが、ここに来て吉良吉影はまだ動かない。
康一「何故だ。何で動かないんだ?吉良吉影」
吉良「私はこの戦いの事などどうでも良いからだ。記憶がなくなっている私としては他の者のように復讐心がある訳でもなく、別段戦いに興味があるわけでもない。むしろこの多勢に無勢の中に飛び込むのに嫌悪しているくらいだ。美学がない。生前の私がどんな人間だったかは知らないが、今の私には全く関係ない事だ」
吉良吉影は両腕を広げながら僕に近付いてくる。
吉良「私はさっさとあの世に帰りたい。どちらにしても平穏などない世界だが、美学のない所に身を置くのは耐えられない。君のその力で私も消してくれないか?精々この場に来てよかったと思えることがあるとするならば、霊体で失っていた左腕が再生されたことくらいかな?」
本当に本気でそう言っている。本当に吉良吉影なのかと疑いたくなるほどに。
拒否する理由も無いので僕は吉良吉影に波紋を流す。
吉良「ああ、これだけは思い出した。君は広瀬康一君だったね。名前だけは辛うじて思い出したよ。何故だかはわからない。ただ君に一度だけ下らない敗北を喫した事がある…ただそれだけしか思い出せないが。今日は私が勝てたのかな?どちらでも良いか。ではさようなら。広瀬康一君」
そう言って吉良吉影は消えていった。
負けた…のかな?確かにこれは悔しいな。敵である…しかも不倶戴天の敵であった吉良吉影にアドバイスを貰って勝機を得るなんて…。しかも、その吉良吉影自身は戦いもしないであっさり殺してくれと頼んでくる始末。
僕もまだまだだな。もっと機転を利かせる事を学ばなければ。
吉良吉影…戦いに参加することなく、むしろ康一に頼んでみずからを殺してもらい、死亡。
side東方仗助
露伴のお陰で波紋を習得した俺は開幕の苦戦が嘘のように快進撃を続ける。群がる屍生人達をジジイが研究して習得した格闘技を駆使して倒しまくる。剛系、柔系の両方の中国拳法、柔術、空手、ムエタイ…何かそんな格闘技漫画があった気もするが、気にしている場合じゃあない。とっととこの予定外の屍生人を何とかしなければならない。
仗助「追い詰めたぜ?大岡。良くもやってくれたな」
大岡「PTA会長!聞いてないぞ!SPWジャパンの社長がこんなに強いだなんて!」
仗助「そりゃあ、今のテメェの年齢の頃には命のやり取りをした戦いを経験していたからなぁ。戦いの年季が違うんだよ。戦いの年季が」
大岡「お、俺を殺すのか!それでもSPWジャパンの社長か!」
仗助「必要なら殺すぜ?そんな事はもう日常的過ぎて何の感情も持たなくなっちまった。お前らが舐めてかかってる八幡もいろはもジョジョもな。上手い死体の処理の仕方やわざと死体を発見させて第3者の別の邪魔者を犯人に仕立てあげるなんてざらだ。ヤクザを皆殺しにしたのも1つや2つじゃあない」
大岡「ひ、ひぃぃぃぃぃ!ネクロマンサー!」
大岡は再び屍生人を生み出す力を使おうとしたが。
仗助「あまりにも使う力が強すぎて何回も連発できるスタンドじゃあねぇみてぇだな。世の中よう、都合が良いことばかりじゃあねぇって事なんだよ。どんなに強力な力にも、弱点ていうのは必ずあるんだよ」
俺のクレイジー・ダイヤモンドは物も人も直せるが、自分自身は治せない。
ザ・ジェムストーンやスター・プラチナは時を止める事が出来るが、わずか数秒だ。
サンシャイン・ルビーのルビーレーザーは現存する全てのスタンドの中でも絶大な威力(数万度)とスピード(光速)と射程(月まで届くと言われても冗談に聞こえない。千葉から富士山を撃ち抜いている)を持っているが、何処に飛んでいくかわからないし、一回射った場所からは1分間のクールタイムが必要だったり…何らかの弱点が存在している。
大岡「ひ、ひいい!」
大岡は金属バットを持って襲いかかる。なるほど、屍生人を生み出すネクロマンサーしか能力がないのか。確かに強力な能力だけどよぉ、たかだかそれだけで俺達をどうこうするってのは甘いんじゃあねぇの?確かに危なかった場面もあったけどよぉ。
それに、確か野球部だったよな?コイツは。ボールをかっ飛ばす事は一級品だろうけどよぉ。
仗助「こちとらよぉ、野球のボールじゃあねぇんだよ!ドラァ!」
振り抜いたバットの隙をついて持ち手に蹴りを入れる。
大岡「ぐあっ!」
仗助「どんなに強力な力を持っていてもよぉ、人間負けるときは負ける物なんだよぉ。屍生人の軍団を呼べるからって、それだけで勝てると思っていたお前が甘いんじゃあねぇの?」
大岡「………」
仗助「まだ未成年だからって手加減はしねぇ。屍生人から噛まれでもしたらこっちは死んでいたんだ。テメェがやらかした事は決して許される事じゃあない。殺すということは、逆に殺される可能性があると知れ」
C・D「ドララララララララララララララ!ドラァ!」
大岡「うがうげがばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
大岡は全身打撲でダウンした。本気で殺すわけねぇだろ?ダボが。慈悲もある。肉の芽で操られていただけだからなぁ。
まぁ、本音は同じボランティアに参加していながら行方不明とか起こせば色々と面倒が起こるからだ。処理するにも色々と根回しが必要だしな。
大岡が倒れたことで屍生人達が全て消えた。
再起不能になれば消えるタイプで助かったぜ。中には本体が死んでもスタンドだけが一人歩きするタイプの奴もいるからな。
仗助「さて、波紋を習得した今なら俺も出来るかな。肉の芽の処理が」
クレイジー・ダイヤモンドを使って精密に抜く。
スター・プラチナ程精密性がねえからちょっと自信がなかったが、上手くいったようだ。
大岡「頭の靄が…取れた…」
仗助「ったく。苦労させやがって。これに懲りたら今後は甘い言葉とかには気を付けるんだな。とくにお…」
ドオオオオオオオオオン!
何だ?何が起きた?
大岡「な、何だ?体が浮いて…引っ張られるぅ!うわあああああ!」
大岡はそのままどこかに飛ばされていった。
まさか……柱の一族が。
大岡(アイシング・シルク)…
←To be continued
第四部編終了です。次回は第5部編です。
次回もよろしくお願いいたします。