俺ガイル第四巻
第3章最終戦……千葉村編開始!
side東方仗助
SPW財団日本支部 地下アーシス専用会議室
夏休みに入り、仕事はそれぞれの職場で行われている。
学生組はアルバイトという形で各支部のオフィスに入って仕事をしている。材木座は露伴のマンスリーマンションで露伴の仕事を手伝いつつ、修行に励んでいる。城廻も露伴の指導のもとにスタンド使い方を特訓しているようだが、ハーヴェストはともかくシンデレラら元々のスタンドが戦闘向きじゃあ無いからなぁ。
今日は特殊技能訓練…つまり戦闘訓練の日だが、アーシス総司令の大統領の集合がかかり、総司令代理補佐官のジジイ、副司令の承太郎さん、隊長の俺、副隊長のジョルノ、そしてあいつの担任として徐倫が訓練には参加しないで地下会議室に呼ばれた。
それは良い。だがそこで告げられたジジイの言葉に俺は立場も忘れてキレた。
仗助「ふざけるな、ジジイ!何でこんな重要な事を黙っていやがった!もう少し早くわかっていたら無理矢理でも企画を中止していたんだぞ!」
俺はジジイの胸ぐらを掴み、どなり散らかす。
ジョセフ「……………」
ジジイは何も言わない。ただ、辛そうに…黙って俺の目を見返すだけだ。
承太郎「落ち着け仗助。今さら変えることは出来ない」
いつも通り冷静に言葉をつむぐ承太郎さん。
腕を組み、静かに座っている。やや下を向いている為か目深に被った帽子の陰に隠れ、への字口以外は表情が読み取れない。ジョルノも徐倫もだ。
仗助「それは後はもうボランティアの準備が全て整ったからとかいう理由じゃあないッスよねぇ!そんな理由だったらアンタを見損なうッスよ承太郎さん!いつからそんなヘタレになっちゃったんッスか!承太郎さんにとってはあいつは……あいつはそんなもんだったんッスか!承太郎さん!」
承太郎「………」
ジョルノ「僕も……」
承太郎さんと同じように目を前髪で隠してうつむいていたジョルノが顔を上げる。
ジョルノ「僕も仗助さんに賛成です。無理矢理でも中止にするべきです。例え……コレが最後のチャンスであっても…です」
ジョルノは汗をだらだらとかき、耐えている。
そうだ………お前は長年追ってきた事だったもんな…。本当ならば中止にしたくはない最大のチャンスだ。
承太郎「昨日、平塚静によってブラッディ・アローの新たな犠牲者が多数出た。葉山、戸部、大岡、相模南……。そして、平塚静は復職し、我々のボランティアとは別の総武高校のボランティアとして同じイベントに参加する事がわかっている。おそらくそこで仕掛けて来るだろう。おそらくは地下に潜伏した汐華本家や雪ノ下も……。奴等との決着をつけるのならば、その時をおいて他はない。千葉村が…決戦の場だ。ジョルノ…お前の長年の…今は汐華の家長となったお前の母親……汐華冬乃との決着を付ける最後のチャンスじゃあないのか?」
冷酷すぎるぜ……。確かにジョルノにとっては最大の最後のチャンスだ。ジョルノの母親がDIOの餌にならなかった理由……それは、汐華冬乃が最後の東の柱の一族に覚醒したからだ。
だからDIOは恐れた。最後の柱の一族を。だからジョルノは探した。自分の母親と呪われた矢を…。
同じ目的を持つあいつと共に…。
今回の千葉村のボランティアで起こるであろう戦闘は…ジョルノの人生の最大の目的を果たす最後のチャンスと言える。
だが、その全てを棒に振ってでもジョルノはボランティア中止を訴えかけた。母親の始末とあいつを天秤にかけたとき、ジョルノの量りはあいつの方へと傾いた。
ジョルノにとっては俺の次にアイツを自分の弟のように感じていてくれたからな。
ヴァレンタイン「意外だな、ジョバァーナ代表。君ならば一番最初にジョースター卿の提案に乗ると思っていたのだが?」
ジョルノ「閣下……僕は確かに長年追ってきました。最大のチャンスを棒に振りたくはない。彼との再会も待ち遠しかった…だが、その結果が………」
承太郎「ジョルノ…パッショーネは覚悟を重んじる組織では無かったのか?ボスが覚悟を決められない…そう判断して良いのか?」
ダンッ!
ジョルノは机を叩いて立ち上がる。
ジョルノ「覚悟とは犠牲の心ではない!あなた達は彼の犠牲を強いるのんですか?!そんなものを僕は覚悟とは認めない!絶対に反対だ!」
ジョセフ「……………」
徐倫「あたしも………仗助兄さんやジョルノ兄さんの意見に賛成よ。ひいおじいちゃん…父さん…」
徐倫も立ち上がる。その両腕はプルプルと震え、そしてその瞳からは憤怒の色が浮かんでいる。
徐倫「そんな結末が待っているんなら、あたしは覚悟を決めたくない……。例え…ハッチが覚悟を決めていたとしても…運命を受け入れようとしても…誰が認めるっていうんだよ!」
承太郎「徐倫………」
徐倫「父さんも……いや、アンタもアンタだ!何で受け入れられるのよ!世界の為ならハッチが犠牲になっても構わないって訳!ハッ!正義の味方は大変だね!あたしは認めない!そんなのが正義なら、こっちから願い下げだよ!ハッチはあたしの生徒である以前にあたしの弟みたいなもんだ!行くならあたし達だけでやれば良い!そうだろ?兄さん達!」
仗助「そうだ!何も八幡が行く必要がねぇ!学生組の連中は置いて、俺達大人のアーシスが千葉村に行けば良い!そうじゃあなければ…何のために俺は八幡を守り続けて来たんスか!何のためにあいつらの成長を見続けて来たっていうんッスか!」
ジョルノ「そうです。僕らは力がある。僕らがやれば良い!違いますか!承太郎さん!」
承太郎「テメェらいい加減にしろぉ!」
ガアン!
承太郎さんは座っていた席のテーブルをスター・プラチナで叩き割り、立ち上がる。
承太郎「俺が……八幡を犠牲にする事に何も感じて無いとでも思ったのか……。俺にとってだって八幡は大切な家族だ……」
ぽたっ…ぽたっ…
承太郎さんの拳から血が滴り落ちる。
口からも歯で噛み切ってしまったのか、血が流れている。
承太郎「俺だって知ったときはお前らのようにジジイに詰め寄った…。何故受け入れられる…とな」
感情に任せて怒鳴り、立ち上がってしまった事で息を切らせた承太郎さんは力なく椅子に座り直す。
承太郎「何発かは実際に殴ってしまった。なのに…ジジイは抵抗なく殴られ続けた……今となっては俺よりも身体能力が高くなったジジイが……だぞ」
ジョセフ「ワシだって受け止められるワケが無かろう…じゃがな……」
八幡「もう良い。ジョセフ。後は俺の口から話す」
奥の通信操作室から八幡が現れる。
仗助「八幡!テメェ…運命を受け入れるってどういうことだ!」
八幡「………ジョセフは気付いていた。すぐにでもお前達に話そうとしていた。だが、口止めを頼んだのは俺自身からだ。ジョセフだけじゃあない。川崎も、三浦も…波紋や占いで予言を見れる者はみんな気付いていた…俺が……覚悟を決めていることにな……」
徐倫「……だから、最近のアンタは少しおかしかったんだね……アンタは良いの?そんな運命……」
ジョルノ「子供の時から言っていたはずだ。覚悟とは…犠牲の心ではないと!八幡…君の今の覚悟は…僕は認めない!縛り付けてでも君をここに置いていく!」
八幡「出来るのか?お前らに…今の俺を止めることが。例え企画を中止しても、例え事が終わるまで監禁しようとしても…俺は一人ででも、千葉村まで行く。例え12年前のあの日のように…お前らの敵になったとしても…俺は行く」
八幡の瞳には確かな決意があった。例え手足を失っても、例え俺達と訣別しても…今の八幡を止める事は出来ない…。俺達ジョジョ達は……完全に八幡に気圧されていた。
八幡「予言に出ていた。運命に抗えば、ブラッディ・アローに…ブラッディ・スタンドに冒された者は…全員助からない。平塚も、葉山グループも…そして……雪ノ下も、由比ヶ浜も…。前の奴等はどうでも良い。だが、あの二人を見捨ててまで、あの輝かしい未来を見捨ててまで先を生きたくない。そんなものは…そんな人生は本物なんかじゃあない。だから、俺は運命を受け入れる。そして………間違っていた前世の罪を償う」
八幡はカツカツと扉へ向かい、そしてそこで立ち止まる。
八幡「千葉村には絶対に行く。決してこの事は誰にも言うなよ?運命の事を……。小町にも、陽乃さんにも、ジョジョにも、そして………」
八幡はそこで良い淀み、少しだけ顔を歪める。
だが、それも一瞬の事で………。
八幡「……………………いろはにも」
八幡はここで笑顔になる。悲しみを隠すかのように。
八幡「お前達だから言うんだ。何よりも大切で信頼するお前達だから…家族だから…な」
そう言って、八幡は出ていった。
仗助「バカ野郎………何が罪だ………何が運命だ……」
ジョルノ「!!仗助さん!」
徐倫「仗助兄さん…」
承太郎「この12年、仗助は誰よりも八幡を見守ってきた」
ジョセフ「仗助、静、八幡、いろは、小町は五人で1つ……じゃから受け入れられんのじゃろう。実の親よりも、ワシらの誰よりも八幡を見てきたのは仗助じゃからな…」
そうだ……誰よりも俺は八幡を、静を、いろはを、小町を見守ってきた…。そこに陽乃が加わり、一緒にバカをやってきた……。
四年前の……アレッシーとの戦いの時以来、流してなかった涙が俺の頬を伝う。
静『お兄ちゃん、離して!もう、ちっちゃくなっちゃった静なんていらないでしょ!血のつながってない役立たずの静なんかいらないでしょ?!もう静の事なんて放っておいて先に行ってよ!うわあぁぁぁぁぁぁぁん!』
あの時、静は本心ではない言葉を叫び、泣き叫んだ。
静『もう静は戦えないよぉ!ぐすっ!ハモンの戦士としてもスタンド使いとしても、こんなちっちゃな静じゃあ何にもできないよぉ!ううっ…もう、放っておいてよぉお兄ちゃん!こんなミジメな静を見ないでよぉ!うわあぁぁぁぁぁぁぁん!』
さっきの八幡の笑顔は、あの時の静と重なった…。
あの悲しみに歪んだあの時の静と同じように泣き叫んでいるように見えた。
静『お兄ちゃん!お兄ちゃん!ごめんなさい!静はずうっとお兄ちゃんと一緒にいたい!パパ達と一緒にいたい!ホリィお姉ちゃんや、承太郎おじさん、ジョルノお兄ちゃん、ジョリーンお姉ちゃん、コマチやイロハ、ハチマンとも!一緒にいたい!いつまでも一緒にいたいよぉ!ううっ…うわぁぁぁぁぁぁん!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!』
八幡………お前はあの時の静と同じように、こう叫びたいんじゃあないのか?
心の奥底では助けてくれと叫んでいるんじゃあねぇのかよ!
俺達は家族なんだろ!なんでそれを言わねぇんだよ!
仗助「神がいるなら教えてくれよ!なんでいつまでも八幡は前世の事で苦しまなくちゃあならないんだよ!いつまで罪を償わなくちゃならないんだ!バカ野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
地下の会議室で、俺の魂からの叫びは木霊した……。
運命の時は近い………。
神の聖地にて
原石は消える
ー東京ー
結局、あの会議で決まったことは少しでも八幡を運命から守るため、すべてのアーシスが総力を挙げることだけだった。
忍「あら、久しぶりね。仗助…ひどい顔ね」
幽鬼のようにフラフラとさまよい、電車を乗り継ぎ、気が付いたら四年ぶりに来る忍の店だった。
誰かに聞いて貰いたくて、気がつけば忍にすべてを語っていた。
忍「そう…八幡ちゃんが…。あの人が言っていたのはこの事だったのね……」
あいつは俺の話を聞いてポツリと漏らした。
そして………
バチィィィン!
アイツの平手打ちが俺を捉える。
忍「しっかりなさい!仗助!アンタは八幡ちゃんの兄貴分なんでしょ!運命なんてくそ食らえよ!八幡ちゃんが諦めてるなら、アンタが守らなくてどうするのよ!アンタまで諦めたら誰が八幡ちゃんを守るの!そんな腰抜けをあちしはダチと認めないわ!」
年を取ってもなお、アイツの平手打ちは強烈だ。生身であれば、承太郎さんよりも威力がある。ジジイに匹敵するか?
そうか……。そうだよな。あまりのショックで混乱していたが、誰よりもアイツを守らなきゃならないのはこの俺だ。何が運命だ……何が原石は消える…だ!
消させはしねぇぞ!八幡!
雪ノ下も由比ヶ浜も救って……その上で、お前を守る!
その役目はジジイでも、承太郎さんでも、ジョルノでも徐倫でもねぇ!
この俺だ!
俺といろはと小町と静…。俺達五人が最後まで笑えるように……。俺が……原石を消させねぇ!
忍「仗助……悪いけど、今回ばかりはあちしも行けないの…。アーシスではないし、あちしが関係することはスタンド使いに限った事じゃない。力になれないけれど…八幡ちゃんの無事を祈ってるわ」
仗助「いや、今の一発で目が覚めた。あいつの無事を…祈っていてくれ……ここに来て正解だったぜ。ありがとな、忍」
忍「たまに来たと思えば厄介事しか持ってこないんだから…。しっかりなさい。仗助」
仗助「ああ。ありがとな!忍!」
side藤崎忍
仗助は何も注文しないで帰って行った。
そして、あちしは携帯を取り出す。
忍「…………その予言はあちしも知っていたわ、仗助。それが八幡ちゃんの事だとは思わなかったけど…」
あちしは電話をコールする。
??「もしもし」
忍「藤崎よ。あの人に伝えて……………」
今回は直接助ける事は出来ない。
予言を知っているから。その先も……
だから、あちしは備える。自分の代わりになる人に伝える為に……。大統領のD4Cでも手が出せない世界の力が必要になるから……。
←To be continued
はい、第3章の始まりでいきなり爆弾投下です。
一体千葉村で何が起こるのか!
八幡は何を覚悟しているのか!
運命とは何なのか!
千葉村編、開始!