やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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前回までのアーシスの活動

ジョセフ無双が終わった戦いの後、衝撃の事実がわかった。
川崎京華は8年前に亡くなったスージーQの転生だった!
涙の再会、そして物語は2巻のラストへと移行する。


職場見学の事件・綾瀬香澄の襲撃(2巻エピローグ)

side比企谷八幡

 

千葉マリンスタジアムの一件の後、俺達は日常へと戻って来た。そして試験期間一週間の全日程が終了し、休みが明けての月曜日。今日は試験結果が全て返される日だ。

授業は答案返却と問題解説のみ。

一つの教科が終わる度にクラスのアーシスのメンバーが俺の所に集まる。

 

結衣「ヒッキー!生物の点数上がったよ!やっば、あの勉強会ヤバイって!」

 

海老名「承太郎もさすがは現役の博士だね。教えるのが上手いよ」

 

三浦「あーしも上がってた。エンポリオの説明が上手だったのもあるね。沙希はどう?」

 

沙希「あたしは直前まであれだったから、去年よりは落ちているね。何とか平均をキープ出来てたけど。でも、あの勉強会がなければもっと落ちていたと思うと、ゾッとするよ」

 

戸塚「アハハハ。でも、解決できてよかったね。部活の時にでも解らないことがあったら遠慮なく聞いてよ。仕事中とかでも構わないからさ」

 

沙希「うん。そうする。いやー、けーちゃんには感謝だよ。もちろん、ジョジョ達にもね」

 

八幡「それは良かった。さぁ、勝負だジョジョ!」

 

静「今度こそ白黒付けるよ!ハッチ!」

 

バンッ!俺とジョジョはお互いの回答用紙を見せ合う。

 

互いに74点。順位は学年平均ど真ん中。

 

八幡「くそっ!また引き分けか!」

 

静「これで勝負は期末に持ち越しか…。イーハもマーチもそうなんだろうな?」

 

沙希「アンタ達は下らない勝負をしているんだね…ホントにバカじゃあないの?」

 

戸塚「頭良すぎて逆にあさってに走っていく典型的なパターンだね」

 

八幡「お前もやるか?戸塚」

 

戸塚「勘弁してよ。僕はまだ大学を出ていないんだから、これから学歴を作らなきゃいけないんだよ?上位はキープしておかなきゃ」

 

こんな感じでやり取りしている。

ちなみに、一番危ぶまれた由比ヶ浜も今回の成績は全教科平均を少し上回る成績だった。結果を出さなきゃ修行を3倍にすると脅したら、すごい集中力で追い込みをかけた結果だった。修行内容に川崎の訓練も加わったからか?

いずれにせよ、やる気を出してこの結果なら、act1の影響力はもうほとんど無いだろう。

勉強会では俺達は特に何もしていない。

承太郎やエンポリオ、それに朋子さんや徐倫、時間がある時は広瀬夫人も来てくれた。でもさ、食事に3択クイズ方式で不正解だった場合、食べられない物を出すあの発想はやめて欲しい。全力で止めたけど。普通に事案じゃあないか。

材木座の小説は合宿終了まで缶詰をやらされ、やっと完成した。どこまで貯めていたんだ?

そして、今日は試験結果の戻しがあるだけではなく、かねてから懸案事項であった職場見学の日でもあった。

つまりSPW日本支部への見学の日。今に限って俺の席に集まったのは逃がさん為だな?流石に逃げねえよ。アーシスに川崎が加わり、これまで以上に逃げ出せる気がしなくなったし。

今日は学年全体がうちの会社見学志望な為、クラス毎に送迎バスが来ている。俺達もそのバスへ乗り込む。

うちのクラスの大半は葉山を中心にバスの席が埋まっていく。相変わらず騒がしいことで。

大和がいなくなった影響は既になくなっている。あいつが更正を終えて戻って来たとき、居場所は残っているのだろうか?まぁ、あいつの自業自得だから俺にとってはどうでも良いことだが。

バスは稲毛から美浜大橋を通り抜け、海浜幕張に入るとすぐに財団の日本本部がある。バスを降りると葉山を中心に大名行列が出来る。他のクラスも徐々に混じり、入り口までの道を埋め尽くした。邪魔だなぁ…職員とか来客とかが気を使って道を空けてるぞ…。俺が言うのもなんだが、常識を考えろ、常識を。

行列の最後尾に俺達アーシスの人間はついて行く。

会社の自動ドアを潜り、エントランスに入ると、簡単な雛壇が用意されており、そこには日本支部の社長である仗助と、ダミーの関東支部長とダミーの千葉支部長がニコニコと立っていた。案内役であろう人達の中には打ち合わせ通り、康一さんもいる。あ、吹き抜けの二階にはけーちゃんを抱いているジジイ、承太郎、ジョルノが俺達を見ている。目が合うとそれぞれが神妙な顔で頷く。

全員がエントランスに入ると、俺とジョジョと戸塚は目立たない位置に移動する。

時間になると、壇上の仗助がマイクの前に立ち、スピーチを始める。

 

仗助「ようこそ、総武高校のみなさん。我がSPW財団日本支部へ。わが社は…」

 

ペラペラと流れるようにスピーチをするなか、チラリと仗助がこちらを見た。合図だ。

 

徐倫「頼んだわよ。と言うのは建前で、少しは休みなさい。仕事頑張りすぎ」

 

八幡「だったら正式に休ませてくれませんか?」

 

徐倫「それはそれ、これはこれ。実際、警備が手薄くなってるのは事実だからね。無いとは思うけど、あれの警備はアーシス正規メンバーで対応して欲しいのよ。まぁ、ほとんどそれは建前で、アンタ達に少し休んでもらいたかったのが本音だけどね。ほら、行ってきなさいって」

 

八幡「じゃあ、お言葉に甘えて」

 

俺達は頷いた後に、気配を少しずつ消しながらとある場所へと向かった。

逃げる為ではない。会社の中でもアーシス関係者しか知らない、秘匿された場所。そこの警備に付くためだ。

職場見学の時には警備が薄くなる。そこを狙われるかもしれない。その為に俺達がそこの警備につくことになったのだ。

その場所は生徒が入らないよう、立ち入り禁止エリアに指定されている目立たない、第七倉庫とプレートに書かれている鍵のかかった部屋。そこの消火栓の扉が秘匿された重警備保管金庫へと続く地下階段の隠し通路となっている。

そこには矢と、先日ジジイから没収したスーパーエイジャが保管されている。

万が一、誰かが来た場合はそこで対処するように承太郎から命令を受けていた。

 

いろは「せんぱーい、おそーい!」

 

小町「待ちくたびれたよ、お兄ちゃん達」

 

陽乃「待っていたよ?八幡くん」

 

第七倉庫前には学校を早退して先に到着していたいろはと小町と陽乃さんが待っていた。同じ命令を受け、ここで警備をするためだ。まぁ、そういう名前の半ドンなんだが。気心知れた人間で固めてくれたのも仗助の配慮だろう。アイツ、俺に気を使いすぎ。だからこそ、俺も仗助が好きなんだが。

 

八幡「こっそり抜け出す必要があったからな。今のところは異常はないな?」

 

いろは「うん、誰も来てないよ。まぁ、この区画は普段は絶対に人が来ない区画だから、来る方がおかしいんだけどねー」

 

小町「お姉ちゃん、今日は完全に素だね。ま、戸塚さんと陽乃さんを除いたらいつもの面子だもんね」

 

八幡「このいろはが良いんだよ。飾らないいろはが俺の本物なんだ」

 

そう言うと、いろははキョトンとした表情の後…

 

いろは「何?ハチ君、普段なら言わないそんなあざとい事を…ハッ!何ですか?口説いてますか?こんな薄暗くて誰も来ない第七倉庫前で待機している間にわたしを食べちゃう気ですか?すいません普段ならそれもwelcomeですけど今は任務中でそんな気分じゃあありませんしやっぱり初めてはこんなカビ臭くて雰囲気も最悪な場所は嫌なのでプライベートの時にさりげなく深夜の公園とかで雰囲気を出してからお願いします。ごめんなさい」

 

久々の高速お断りだな。イロハと会ったとき以来だぞ。

しかも、任務の時じゃあなければ食べて良いのか?理性の化け物もお前には発動しないぞ?今までかなり我慢していたんだからな?

 

戸塚「アハハハ。ジョルノさんが最近は見れなくて残念がってるいろはちゃんの高速お断りってこれなんだ」

 

静「これをたまに見ないと寂しいんだよね。高速キス魔は見ているこっちがイライラしてくるし」

 

小町「お兄ちゃん。早くお姉ちゃんを食べちゃいなよ。そうすれば小町を食べるのに理性が残らないでしょ?」

 

陽乃「私ならいつ食べられても良いわよ?」

 

お前ら…やることが無くて暇なのはわかるけど、一応は任務中だからな?

しばらく雑談をする俺達。一時間後。

……ん?待て、警備室から無線連絡が来たぞ?

 

警備班長「第七倉庫前。第七倉庫前。監視カメラに異常あり。スモッグが雪ノ下雪乃を襲い、逃亡。そちらに向かった。繰り返す。スモッグが雪ノ下雪乃を襲い逃亡。そちらに向かった。どうぞ」

 

静「雪ノ下が!襲われた雪ノ下はどうなった!?どうぞ!」

 

警備班長「由比ヶ浜結衣が雪ノ下を庇い、双方が軽傷を負うも東方社長の手当てにより、無事。スモッグは空条会長とイタリア支部長、三浦優美子の攻撃により重症を負い、逃走!どうぞ!」

 

静「了解!後は特務で対処する!」

 

ジョジョは無線を切ると、俺達に向き直った。

 

静「本当に来たわよ。アーシス、スクランブル…無事でよかったわ。雪ノ下、由比ヶ浜…」

 

陽乃「雪乃ちゃんを傷つけるなんて、許せない。スモッグ…」

 

八幡「裏切りは許さないってか?上等じゃあねえか。ツケは払ってもらうぞ…スモッグ…いや、綾瀬香澄」

 

すると、引きずるような足音と共に、既に虫の息の綾瀬香澄が現れた。おのれ、せっかく仗助がくれた半ドンを潰してくれやがって。

 

香澄「くそ……既にここにもジョースター一味がいたか……不覚をとった……まさか炎のスタンドがあそこまで強力なものだとは………」

 

美しかったであろう女の顔や体は、既にあちこちが焼けただれ、歩けるのが不思議なくらい、既にトドメを刺された後だった。

 

八幡「おいテメェ。平塚先生はどこにやった」

 

香澄「くくく……玄武か…玄武なら、我が聖地にて修練中だ…く、我が新たな神の誕生を……この目で見れぬのは…残念だ。せめて貴様らだけでも…道連れに!」

 

綾瀬香澄はその名の如く体を霞に変えて俺に向かってくる。バカめ…。

 

八幡「モード、アクアネックレス」

 

俺はくっつく波紋と弾く波紋で霞を一ヶ所に集めてただの水にし、俺の頭上で固定して浮かせる。

なるほど。これなら三浦のマジシャンズ・レッドは天敵だ。炎で完全に乾燥させられたのだろう。

 

八幡「答えろ。聖地とはどこだ。ブラッディ・スタンド使いは何人いる?ブラッディ・アローはどうした?」

 

香澄「誰が……答えるかぁ!おのれ!せめて命が尽きる前に、ここにある矢とエイジャの赤石だけでも破壊したかった!」

 

八幡「そうか…小町、頼む」

 

小町「ラジャ!ゴミゴミゴミゴミゴミゴミ!ゴミぃ!」

 

香澄「うがあああああ!この熱気は…波紋の…乾燥して蒸発する…私が…聖なる青龍のこの私が…!だが、白虎と私は既に目的を果たした!あとは頼んだぞ……同胞達よ…ぐあああああ!」

 

断末魔の声を残して綾瀬香澄はこの世から消えた。文字通り、霞のように…。狙って来るとは思っていた。職場見学でゴタゴタしているこの時を狙って…。

ヤレヤレだぜ。

それにしても、汐華…とうとう本腰を入れて来たか…。

あの綾瀬香澄が捨て駒扱いだったのにはビックリしたがな。ブラッディ・アローを任されていたから、てっきり幹部クラスの人間かと思っていたんだが、あてが外れた。青龍と白虎…それに玄武か…青龍は綾瀬香澄、玄武は平塚。おそらく白虎は大和だろう。朱雀は由比ヶ浜か?だとすれば、後は四神の名前を冠するブラッディ・スタンドの使い手は平塚と言うことだ。由比ヶ浜は演技が出来るタイプじゃあ無いから、信用しても大丈夫だろう。

俺達はそのまま、任務終了時間までこの場で待機していた。

さっきまでの半ドンの平和で穏やかな時間は、本当に現れた敵によって吹き飛び、俺達の間には緊張感が漂っていた。

任務終了後に俺はアーシスのサポート部隊である特務支援隊に任務を引き継ぎ、いろはと小町を残してさりげなく職場見学のエントランスに合流する。

 

徐倫「お疲れさん、ジョジョ達。刺客は倒したようね」

 

八幡「ほとんど三浦によって倒されていた。職場見学はどうなった?」

 

徐倫「あんな騒ぎがあったから、中止になったわ」

 

八幡「生徒や一般職員は?」

 

徐倫「生徒は帰らせたわよ。一般職員は業務に戻ったわ。今はマスコミ対策ってところね」

 

静「妥当な所で職場見学に訪れた生徒を人質にしてテロリストが潜入。生徒が人質に取られ、軽傷を負うも、財団の警備職員により取り押さえられ、逮捕…といったところ?後は警察に根回しして口裏を合わせて終わり」

 

徐倫「そんなところね」

 

静「それで、アーシスや雪ノ下と由比ヶ浜は?」

 

徐倫「学生組は帰したわ。雪ノ下も軽く切り傷を作った程度で、由比ヶ浜は霞で首を絞められた程度。二人は医療班で治療中。そう言えば、ハッチが来たら話があるって言ってたわ」

 

八幡「由比ヶ浜が俺に?……了解。俺は由比ヶ浜を待ってから3部長室に行くわ。先に行っていてくれ」

 

静「わかった。行こ、戸塚」

 

戸塚「うん。先に行ってるね、八幡」

 

二人は3部長室直通のエレベーターに乗って行った。

俺は二人を見送った後に、医療班の前まで向かい、二人が出てくるのを待つ。しばらくすると、二人が医療班から出てきた。

 

結衣「ヒッキー…」

 

八幡「よう。傷を負ったんだってな。大丈夫か?」

 

結衣「うん。すぐに優美子が助けてくれたから」

 

八幡「そうか…雪ノ下も大丈夫か?」

 

雪乃「ええ。由比ヶ浜さんがかばってくれたから…」

 

八幡「そうか…」

 

二人は傷を負ったのがショックだったのか、少しうつむいていた。

 

八幡「それで、話って?」

 

結衣「あの敵は…どうなったの?」

 

八幡「……任務であるところを守っていた俺達が…トドメを刺した。実際には三浦の攻撃でほとんど致命傷を負っていたが…。三浦は大丈夫だったのか?転生してから初めて人を殺したことになるが…」

 

結衣「なんでも無いような顔をしていたけど、優美子、そう言うのはあんまり表に出さないだけで、辛かったと思う」

 

八幡「そうだな。俺もいまだに慣れないからな。任務と分かっていても、人を殺すというのは殺した相手の人生を背負うってことなんだ。それに慣れてしまったのなら、どこか心がおかしくなってしまっていることだと思う。もう、手遅れかも知れないけどな」

 

結衣「うん。でも、アーシスに身を置いている限りは、今日みたいな事は必ずまた起こる。戦いに身を置いている限り、いつかは自分が死ぬかもしれない。沙希や優美子や姫菜も、前世はそうだったんだよね?ヒッキーも」

 

八幡「ああ…俺の前世は2つあるが、両方とも戦いの果てに死んだ。片方はそれだけの報いを受けるべき存在だったけどな。今、由比ヶ浜が挙げた3人は、殺したのはディオだったから…」

 

結衣「うん。でも、あたしはもう、手を汚した内に入るのだと思う。…ヒッキーは違うというかも知れないけど、優美子はあたしの代わりに手を汚してくれただけ。だから、あたしももう、覚悟を決めたんだ。だから、あたしはいつまた、命のやり取りをしても良いように、その覚悟を決めた。だから、心残りが無いように、前にヒッキーに言ったように、謝る覚悟を決める!」

 

由比ヶ浜はキッと力強く俺を見据える。覚悟した者は美しい。今の由比ヶ浜は朝までの彼女よりも何倍も美しく見えた。

 

結衣「入学式の日はごめんなさい!あたしの不注意で犬のリードを放してしまったせいで、ヒッキーに怪我を負わせるようなことになってごめんなさい!今さら謝って許してもらえるとは思えないけど、コレが精一杯のあたしの謝罪です!本当にご迷惑をおかけしました!」

 

由比ヶ浜は深々と腰を曲げて俺に謝罪をしてきた。

 

そうか…ついに本気の覚悟をもったか。

 

八幡「由比ヶ浜、顔をあげてくれ」

 

結衣「……?」

 

ペシッ!

一般人が思いっきりやった程度のデコピンを由比ヶ浜に放つ。

 

結衣「アウッ!」

 

八幡「その覚悟に免じて、あの時の事はこれで手打ち…で良いか?由比ヶ浜」

 

結衣「あうぅぅぅ…うん!ありがとうヒッキー!」

 

由比ヶ浜は涙を流してガバッと抱き付いてきた。まぁ、多分他意はない。普通に友達に抱き付く感覚なのだろう。そして…

 

雪乃「比企谷君。私も…」

 

雪ノ下も姿勢を正して俺に向き合い…。

 

雪乃「私もあの車に乗っていた…。比企谷君がスタンドで吹き飛ばされるのを見ていたのに、私は何もしないでただ見ていただけだった。助けようともしないで…」

 

まぁ、実際は車は関係なかったしな。全てはイギーのせいだったんだし。

 

雪乃「だけど、私の車が原因の1つであることも確かだった。それなのに、雪ノ下家や葉山家がやった対応は自己保身に走った最低の行動。私自身もお見舞いに行かなければ、謝罪の言葉の1つもなかった。ジョースターさんや一色さん、小町さんが私を認めなかったのも当たり前だった。だから、私も今、ここであなたに謝罪をします」

 

雪ノ下もさっきの由比ヶ浜同様に腰を曲げて頭を下げる。

 

雪乃「事故の事や暴言も含めて色々ごめんなさい!そして、姉さんや私を今まで助けてくれてありがとうございます!」

 

八幡「よし、顔を上げろ、雪ノ下」

 

雪ノ下はデコピンされると思ったのだろう。体を強ばらせて目を瞑って顔を上げる。

 

ムニッ!ビヨーン!

 

俺はその目の下の柔らかそうなほっぺたを摘まんで横に引っ張る。

 

雪乃「ひひふぁやふん!いふぁい!いふぁい!」

 

八幡「覚悟が無いところにダメージが来ると案外痛いだろ?心も同じだ、雪ノ下。お前ともこれで手打ちだ」

 

雪乃「うう、ヒリヒリする…」

 

涙目で俺を睨む雪ノ下。さて……

 

八幡「お前達二人は、覚悟を持った…そう思って良いんだな?」

 

結衣&雪乃「(コクリ)」

 

八幡「わかった。今後はそういう扱いでお前達と接する。甘えることは許さん。良いな?」

 

雪乃「ええ…それで、比企谷くん…今後、ブラッディ・スタンドで…大和くんのように私がおかしくなることがあるのならば…遠慮なく、私を殺して」

 

結衣「ヒッキー…あたしも。あたしもブラッディ・スタンド使い。今日襲ってきた敵のように、無関係な人を殺すようなあたしになっちゃったら。ヒッキー達アーシスの手であたし達を止めて!仲間と思っているアーシスにやられるのなら、あたしは本望だから!」

 

二人は本当に覚悟を決めたようだ。ならば、俺も覚悟を決めよう。

 

八幡「わかった。だが、お前達を死なせないように、俺も努力することを約束する。最後の手を使ってでもな」

 

俺は二人に握手を求める。

 

八幡「これからもよろしくな。二人とも」

 

雪乃「ええっ!」

 

結衣「うんっ!」

 

俺は握手を終えると、エントランスホールの方向へ体を向ける。

 

八幡「俺はここで仕事をしてから帰る。今日の報告を終わらせてからな。だから気を付けて帰れよ。車にひかれないようにな」

 

結衣「もう!バカ!」

 

雪乃「皮肉かしら?比企谷君」

 

八幡「さぁな。じゃ、チャオ」

 

俺は材木座との戦いの時に二人に言った別の意味のさようならを言った。あの時は訣別の意味を含んだアリーヴェデルチ…今は近い再会を約束したチャオを。

恥ずかしがっている二人の罵声を背に、俺は歩き出す。

その先には任務を終えて様子を覗いていたいろは、小町、ジョジョ、仗助、ジョルノ、ジョセフ、承太郎、徐倫、陽乃さんのいつものメンツが優しい微笑みで俺を待ってくれている。

俺は優しいだけの奴は嫌いだ。だが、覚悟を持った優しい奴は嫌いではない。

俺は薄っぺらい沢山の友達はいらないが、しっかりとした本物の仲間は何があっても全力で応える。

後ろの二人を、そして前で待ってくれている辛いときに共に駆け抜けてくれた家族や、ここにはいないが家族と同じような仲間の為に…。

やはり俺の青春ラブコメはまちがっているかも知れないが、もしかしたら俺の奇妙な転生はまちがっていなかったかもしれない。

俺の奇妙な一学期はまだまだつづく。

 

綾瀬香澄(スタンド名不明 コードネーム スモッグ)…

三浦優美子、比企谷小町の熱の攻撃により 死亡

 

←Next stage.

原作2巻 完

原作3巻 始

To be continued




はい。ここで原作二巻が終了です。
引き続き原作三巻に突入します。

また、黒幕っぽく動いていた綾瀬香澄がここでまさかの三下以下の扱いで退場。次は誰が現れるか!?
そして、前倒しで八幡は雪ノ下と由比ヶ浜と和解し、今まで中途半端な位置にいた二人が覚悟を決めて仲間になりました。残るは葉山グループ、平塚先生、さがみん、折本、城廻先輩、ルミルミ、海浜総合高校、原作いろはポジションの誰か。そして汐華、雪ノ下家…。今後どうなるのか!作者もわかりません!
八幡「おい……」


それでは原作との相違点。

テスト結果を逐一八幡にしに来る由比ヶ浜➡と、クラスメイトのアーシス。

八幡の結果は国語3位、数学ビリ➡全て平均のど!真ん中!

職場見学はそれぞれ現地まで徒歩移動➡学年全体がSPW財団。マッチ一本からスペースシャトルまで、財団の業務は多彩です。なので送迎バスが来た。

大名行列の中で八幡が最後尾を歩く➡アーシス組全員が最後尾を歩く

そのまま最後まで最後尾を歩く➡任務の為、八幡と静と戸塚は離脱

無事に終わって由比ヶ浜は八幡を待つためにのこり、みんなは八幡を置いて遊びに行く➡事件発生!職場見学中止!あーしさん活躍!でも描写なし。雪ノ下と由比ヶ浜負傷

事故の件を隠していた由比ヶ浜に対して八幡が優しくするなと言い放ち、関係に亀裂が入る➡覚悟を決め、由比ヶ浜と雪ノ下が八幡に謝罪。関係が改善し、晴れて二人は仲間に入る。


それでは次回、第三巻プロローグ、よろしくお願いいたします!

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