マリンスタジアムに呼ばれた川崎兄弟。
そこで待っていたのは広瀬康一だった。
小柄な体格と穏和な態度に騙されかけた二人は危うく康一の罠にはまりかける。
康一「言ったよ。僕は君達に、油断するなって、既にさぁ」
指定された通路を進む二人に、ファニー・ヴァレンタイン大統領を含めたアーシスの容赦ない罠が次々と二人を襲う。これはアーシスからの体に叩き込むメッセージだった。
常に警戒しろ。
身をもってそれを知った二人。何とかリタイアせずにグランドへ到着。仗助といろはによって体と服を元通りにされてたどり着いたグランド。
そこで待ち構えていたのは八幡とジョセフだった。
初代と2代目の、ジョジョとツェペリがぶつかり合うデモンストレーションという名の決闘が今、幕を開く!
sideジョセフ・ジョースター
大志「いくぞ、ジョジョ!」
ジョセフ「こい!シーザー!」
シーザーの転生者、川崎大志が開幕一番で肉弾戦を仕掛けてきた。
ほほう。まずは小手調べということじゃな?良いじゃろう。最初は小細工なしでやってやろうではないか。せっかくのデモンストレーションじゃ。観客を楽しませんといかんしな。
大志「老いぼれたお前に、今の俺に勝てるか!」
波紋を込めた鋭い上段回し蹴りを見舞ってくる大志。
昔は田舎者扱いで、今は年寄り扱いしよって…挑発してくるならもっとらしいことを言わぬか。
大志が放ってきた回し蹴りを首の動きだけで回避すると、ワシはその派手な動きで出来た隙をついて軸足を左足で刈り、仰向けに浮いたその腹に右手を充てる。
ジョセフ「実践柔術の応用じゃ。ちいとばかし痛いぞ、体幹が出来ておらんとそれだけで終わる。こんなので終わってくれるなよ?大志。楽しみにしておったんじゃからな」
ワシは腹に添えた手のひらをそのまま真下に振り落とした。
大志「かはっ!」
自分とワシの二人分の体重を腹部に乗せて地面に叩きつけられた大志は肺の空気を全て吐き出した。
ジョセフ「更におまけじゃ。コオォォォ…
腹部の掌を放さぬまま、撥勁を交えた波紋を流す。
大志「ふべらぁ!」
ジョセフ「おいおい、大志。生まれ変わって逆に弱くなったんじゃあないかのう?それとも、記憶の中のお前をワシは美化しすぎたのか?じゃとしたら済まんのう?お前にはちと荷が重かったようじゃな」
大志「なめるな!ジョジョ!」
片手で体重を持ち上げ、倒立状態でワシの顎を狙って蹴り上げてくる。相変わらず頭に血がのぼりやすいのう。ワシがそう返してくるのを予想しとらん訳がないじゃろう?
ワシは大志の足を掴み、膝関節を極めながら落とす。
ぬるいのう?
ジョセフ「どうじゃシーザー。ここまでやって挑発じゃ。田舎もんとか老いぼれとか、ガキのケンカじゃああるまいし、そんなんで心乱したりはせんよ。お前こそ、簡単に挑発にのりおって。そんなじゃからこの体たらくなんじゃ。もっと冷静にならんか」
これは半ば本心じゃ。下が土の球場じゃったからこの程度で済んだものの、コレが固いアスファルトじゃったら二回とも大ケガものじゃ。
大志「くっそ。ジョジョ、お前に言われる時がくるとは思わなかったぜ」
極められている膝関節を波紋で痛みを緩和しながら外し、関節技から逃れる。
大志「教えてもらったお礼だ!受けとれ!シャボンランチャー!」
ジョセフ「うおっ!」
膝関節を逃れられ、殆んど至近距離にいたワシに波紋入りのシャボンを射ってきおった!
バチバチと波紋入りのシャボンはワシを直撃し、ワシの体が大志くんから離される。
ジョセフ「ふぅ…このまま楽勝モードでもつまらんしのう。不意打ちとしてはまぁまぁじゃぞ?大志くん。楽しくなってきおったな」
大志「不意打ち食らって喜ぶなんてどんな神経しているんだ!」
ジョセフ「そういう戦いばかりじゃと、それが当たり前になってしまってのう。こんな風にじゃ」
ワシは背中に隠してあった鋼鉄のそれを大志に向けて投げた。
大志「そ、それは…クラッカーヴォレイ!」
ジョセフ「ニッシッシッシッ!懐かしいじゃろ!シーザー!ワムウとの最初の戦いを思い出すのう!」
大志「当たるか!ジョジョ!」
大志は横飛びでクラッカーを避けるが、甘い!ワシがばか正直にクラッカーを投げるとでも思っておったのか!
投げたクラッカーは二つ。それが複雑に絡み合って一つに見えておる。それが大志の気配を追って一本が追撃するように投げたのじゃ。
分離した一本は大志の両脛に絡まり、大志が再びダウンする。面白いように罠にかかってくれるのぅ。
しかし、大志もやられておるだけではない。
大志「クラッカーとかいつの間に用意してやがった!ホントに油断のならない奴め!」
そう言いながらも大志はシャボンのカッターを飛ばしてきた。笑いながら。
ジョセフ「シーザーよ!そう言いながらもお前もノリノリで攻撃してくるではないか!」
ワシは戸塚仕込みの回転のジャイロボールを波紋で回転させて投げる。
何気に今回の切り札じゃッたのだが…
大志「そいつは廊下でメタルボール相手に相当手を焼かされたから、対策は出来てるぜ!」
おおっ!逆回転の波紋で相殺して投げ返してきおった!
調子が出てきたではないか!シーザー!
ジョセフ「甘いわ!」
ワシは背中からバットを取り出す!
大志「どこに入っていやがった!そのバット!」
ジョセフ「なんならフライパンも出してもええんじゃぞ?」
と叫びながら、直撃コースのボールはホームランでかっ飛ばし、際どそうなものはファールボールでカットし、狙い目の球は…
ジョセフ「そうれ、ピッチャー返しじゃあ!」
かキーン!と大志に向けて打ち返す!
くー!ホームランもええが、ピッチャー返しもええのうー!
ボールは大志の顎を捉え、大志の体が少し浮き上がる。クリーンヒットかな?
と、バットを肩に担いで油断しておったのじゃが、空中でバック転してしゃがみ、バネを活かしてワシに向けて突進してきた。
ジョセフ「なにぃ!案外タフじゃのう!」
大志「食らえ!ジョジョ!」
低空飛行のように突進の勢いのまま大志は鳩尾にストレートパンチを打ってきた!
が、
バリバリバリバリ!
大志「ギャアアアア!」
ジョセフ「スタンドを忘れておっちゃあいかんぞ?迂闊に触ると感電するぞい?」
DIOとの闘いでやったように、ハーミット・パープルを高圧電線の鉄線のように巻き付けて鎧代わりにしておったのじゃよ。
大志「ならば、シャボンランチャーの更なる応用編!命に関わるから使いたくは無かったんだがな!ジョジョ!お前はこの技を知らなかったはずだよな!アナログカメラのフィルムのように、真っ黒に感光しろ!ジョジョォ!」
お?いつの間にワシの回りにシャボンランチャーが…しかも、シャボンは太陽の光を反射させて…
oh no!
ジョセフ「モード!サンシャイン・ルビーじゃ!」
カッ!
シュウゥゥゥゥゥ……プスプス…
真っ黒に感光したようじゃな?シーザーがのう。
小町「あんな対策練ってたんだ…」
戸塚「僕のジャイロボールや八幡の幻影の波紋…どこまで多芸なんだ?ジョセフは」
そうそう、これじゃこれ、これこそがワシの切り札じゃぞ?
ジョセフ「対ルビーレーザー用に八幡の十八番の念写を使った波紋の応用。反射の波紋とでも名付けるかの」
幻影の波紋…八幡が得意とする波紋のプラズマにハーミットアメジストの念写を使った幻を使った波紋。それの応用で、光を反射させる幻影を使ったワシの対小町対策の戦法じゃ。本人に使う前に見せてしまう羽目になってしまったがの。
ワシと八幡だけが出来る手段じゃ。
大志「くうぅぅぅぅ…!まさかシャボンのレンズすら対策方があるとはな…」
ジョセフ「虹色にシャボンが輝いていた段階でピンと来たわい。サンシャイン・ルビーのような事をやって来るかも知れんとな。それにのぅ、シーザーよ。いつまでワシに敬老精神をぶらさげておるつもりじゃ?格闘、挑発、化かし合い。やれることはやったじゃろう?あとひとつ、取って置きのオモチャを出さんかい!」
大志「ちっ…ビッツロール・トパーズ!」
大志はオレンジ色の人型スタンドを出した。黄色玉石のう?まるでジョースター家のようなスタンドの名前の付け方じゃのう?
小町「あれ?フロウ・バブルは?」
大志「あれは技名だよ。比企谷さん。いくぞ、ジョジョ!ブロウ・バブル!」
シャボンカッターとどう違うのかわからん攻撃を大志本人が射つ。それをビッツロール・トパーズが包むと、シャボンカッターが見えんようになった。
アクトンのような能力かの?
だが、直感が伝えてくる。
避けろ……と。
ジョセフ「はっ!」
ワシは横っ飛びしてから数メートル転がって体勢を立て直す。
大志「何故避けた?ジョジョ」
ジョセフ「直感じゃ。あの場に留まっておったんじゃあ何故か危険じゃと思ったからのう?」
大志「相変わらず田舎者の直感はすごいな!」
ジョセフ「戦いの年季と言わんか!ぐおっ!」
気がつけば見えない攻撃により数ヵ所が切り避けれておる!何をしたんじゃ!
そこを見ると…細かいシャボンがくるくると回転しておる…BB弾くらいのシャボンが…
ジョセフ「これは…圧縮されておる!シャボンカッターが細かく圧縮されておるんじゃ!」
大志「あっさり見破るとは面白くないな、ジョジョ。ビッツロール・トパーズの能力は圧縮。これはデモンストレーションだから、お前の体を圧縮して倒す真似はしないが、やろうと思えば体ごと絞ることも可能だ。降参しろジョジョ。その蔦のスタンドでは俺のスタンドではどうしようもない!」
ジョセフ「確かにハーミットパープルではどうしようもないがのう!対処して隙を見つければどうにでもなるもんじゃ!」
ワシはバットやボールで圧縮されたシャボンカッターに当ててみるが…
ジョセフ「Oh my god!何て事じゃ!あまりにも密度が厚すぎて、逆に金属バットが切り刻まれるとは!これは意外にも強すぎる!」
これは舐めておってはまずい!スタンド能力は単純であればあるほど力強い!ここは逃げるが勝ちじゃ!
大志「逃がすか!お前は逃げれば逃げるほど、厄介な事を思い付く!ワムウとの戦いでもそうだったな!」
大志はワシを一塁側のフェンスに追い込み、とうとうワシをシャボンで取り囲む。ワシはハーミットパープルに波紋を集め、ガード体勢に入る。さっきのように光で焼こうとすれば、即座に跳ね返せるように。
大志「さっきのようなシャボンのレンズは使わん。跳ね返されたらたまったものじゃあないからな。そのまま切り刻んで行動不能にする!」
ジョセフ「大したもんじゃシーザー。このワシをここまで追い込むとはのう。破壊不能なシャボンで囲まれてはどうしようもない。痛いのはお互いに嫌じゃろう?ここらで手を引かんかのう?」
大志「そう言って今まで何度相手を騙してきた?ジョジョ。大方逃げながら張り巡らせた、このロープに何か仕掛けでもしてるんだろ?」
シーザーの奴、抜け目がなくなったじゃあ無いか。逃げながら張り巡らせたロープを念入りにズタズタにシャボンで切り裂きおった。
ジョセフ「参ったのう。奥の手の騙しの手品もこれで打ち止めか」
大志「エシディシにそれで勝ったらしいからな。警戒くらいはする。俺の勝ちだ、ジョジョ」
ジョセフ「……とでも言うと思うとったんか?シーザー。やはりお前は、最後の最後まで詰めが甘いのう?」
シュウゥゥゥゥゥゥ…
大志「ぐあああ!背後からの攻撃だと?!」
突然太ももに穴が空いた事に戸惑う大志。
ジョセフ「あちこちに圧縮シャボンカッターを張り巡らせたのがお前さんの敗因じゃよ。八幡が編み出した幻影の波紋は、こういう使い方もあったんじゃ」
幻影の波紋で隠していたそれを解いて、ワシが持っていたそれを大志に見せる。
ジョセフ「リサリサ先生の形見の1つじゃ。ワシが持っとったんじゃよ」
ワシの手に輝く赤い宝石…。小町のスタンドではない本物のエイジャの赤石。
ジョセフ「それに幻影の波紋をレンズ代わりにして圧縮した光をシャボンに反射させて射ったのじゃ。圧縮されておらんならレーザーがシャボンを撃ち抜いてそれだけじゃったが、圧縮されたシャボンじゃからこそ目論見通りに鏡の役目を果たしたのじゃ」
大志「くそっ…ロープは囮か……。環境を上手く利用する作戦を上手く考えやがって。しかも何だ?バットといい赤石といい、その用意周到さは。俺の負けだ。大統領に拳銃を突きつけられた気分だぜ」
ジョセフ「ニッシッシッシッ!相手が勝ち誇ったとき、既に相手は敗北しておる。このジョセフ・ジョースター。百歳間近にしてもまだまだ現役で戦いの年季に深みを増しておるわい!もっとも、お前がワシの安全を考えて能力を抑えてくれたからこそ勝てたようなもんじゃから、勝ち誇れるものじゃあないがの。ワシの体を圧縮なんぞされておったら、とても勝てる気がしなかったわい。これからも頼りにさせてもらうぞ?シーザー…いや大志よ」
大志「ああ」
ワシらはガッシリと握手を交わした。
ワシは帽子でズボンについたほこりを払ってかぶり直した。八幡の方は……どうやらワシが予想した通りの結果になったようじゃな。
←To be continued
今日はこどもの日!
柏餅は食べましたか?ちまきは食べましたか?鯉のぼりはいかがでしたか?
はい、ジョセフ対大志ことシーザーの二代目対決はジョセフが制しました。
ちょっと雑なような気もしますが、ジョセフといえば騙しのテクニック。老黄忠は今も健在です。では、次回は八幡対サキサキの初代対決となります。
ジョセフが予想していた結末とはどういうものだったのでしょうか!
それでは、次回もまたよろしくお願いします!