やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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前回までの奉仕部の活動(臨時)

カフェに放課後デートに行った八幡達は、そこで雪ノ下達と鉢合わせ。
そして、以前に絡んできた川崎大志とも再会する。
再会早々絡んでくるかと思いきや、大志は八幡達に心情と姉の不良化したことで参っている事を告げる。
大志の姉、川崎沙希が最近帰りが遅かった理由…それはアルバイトだった。
しかも、あろうことかそれは財団が経営する八幡達の思い出の場所、ホテルロイヤルオークラの最上階にあるラウンジバー、エンジェルラダー。
深夜の高校生のアルバイトは法に触れる…。知らなかったとはいえ、自分達の組織の不祥事。
マスコミに知られる前に解決せねば!どうする?八幡!


いろいろあって川崎沙希は拗ねている。

side比企谷小町

 

カフェで大志君と話してから翌日。あれからジョースター家の面々と話をし、経営者の強権で何とかしても、それでは根本的な解決にはならない。なので、まずは川崎さんの更正プログラムを始めようと思ったんだけど…。

 

小町「え?お兄ちゃん、来ないの?」

 

八幡「ちょっと調べたいことがあるからな。原因をまずは追究しなければ、何をしても効果がないか、下手をしたら逆効果だ。あまり、突っ込んだことをするんじゃあないぞ。特にエンジェルラダーにいきなり突撃はなしにしろよ?」

 

と言ってお姉ちゃんを連れて行っちゃった。まさかそのままデートじゃあないよね?そしたら一週間は生ゴミィちゃんと言い続けてやるから!

んー……こういう時に頼りになるお兄ちゃんがいないのはキツいなぁ。雪乃さんや結衣さん、戸塚さんが一緒にやってくれるのは良いんだけど…

優美子さんや姫菜さんは勉強でいない。というか、結衣さんは勉強しなくても大丈夫なの?

 

雪乃「では、始めましょう」

 

何をする気だろう。

部活停止期間中に放課後の校舎に残っている人は少ない。小町達の他は自主的に校内で勉強している人と、遅刻指導で呼び出しを受けている川崎沙希さんくらいだね。お兄ちゃんの話だと、遅刻指導は一ヶ月に5回以上遅刻すると職員室に呼び出される仕組みみたい。

川崎さんは今ごろ徐倫お姉ちゃんにつかまって墾墾とお説教されているはずだよね。徐倫お姉ちゃん、お兄ちゃんのせいで人を捕まえるのが得意になっちゃっているから、大抵の人は逃げられないもん。本人は嫌な特技が身に付いたって嫌がっているけどね。

で、その川崎さんを出待ちして、雪乃さんは何かを考えているみたいだけど、大丈夫かな?

不良に限らないけど、自分の行いを他人にアレコレ言われるのは面白くないよね。苦言を呈するのが親しい人でも反発心は生まれるし。

 

小町「具体的にはどうするんですか?言われた通り、うちの猫を連れてきましたけど」

 

小町が持っているキャリーバックの中で、猫草っていうスタンド使いの猫、カー君が「おいおい、万作さん(億泰さんのお父さん)のところで楽しく過ごせると思ってキャリーバックに入ったのに、どこだよここは。万作さんや億泰のところ以外だったら、家で寝させろよ。空気を血管に入れんぞコラ!」と言わんばかりに不機嫌そうにしっぽを揺らしている。

猫がしっぽを振るときは不機嫌な時なんだよね。犬のそれと勘違いしていると、猫に嫌われるから注意だよ?

 

雪乃「アニマルセラピーって知ってる?」

 

アニマルセラピーとは、簡単に言えば動物と触れ合うことで、その人のストレスを軽減させたり、情緒面での好作用を引き出そうという一種の精神的治療法のこと。

悪い方法じゃあ無いとは思う。大志くんの話によれば川崎さんは元々真面目な人だったというし。

だからカー君を連れてきたんだけど。結衣さんの所の犬は人嫌いみたいだし、ジョセフの予想の話だと、結衣さんの犬の前世はかなり頭が良いし、人を食ってかかっているらしいし。

あと、何故か雪ノ下姉妹は犬に拒絶反応をした。特に、陽乃さんが。

 

陽乃「川と犬は怖いの!前世の死因が犬に躓いて川に投げ込まれたから嫌なの!さらに、ガハマちゃんの犬ってもしかしたらそのイギーっていう犬の転生でしょ?!天敵じゃない!」

 

とかいって逃げ出しちゃったし。そんな陽乃さんの影響からか、やっぱり犬は苦手なのだとか。あ、上履きを犬に盗まれた経験もあるとか聞いたことあるかも。

まぁ、カー君を狭い中に入れっぱなしなのも可愛そうだから、キャリーバックの上部を開ける。

 

カマクラ「フー!」

バンッ!(ストレイ・キャット出現)

 

うわぁ………前世の姿がそのままのストレイ・キャットのスタンドを出して威嚇しているよ…。空気弾を今にも発射しかねない体勢(花の部分をつぼみのようにしぼませている状態)に入っちゃってる!

 

『あ?なに見てんだよ!おい!早く帰らせろや!』

 

と言わんばかりに敵意満々で小町達を睨み返してくる。

 

雪乃「猫までもスタンド使いなのね…それに、何か怒ってないかしら?」

 

小町「知らない場所に連れてこられたからですね。はい、カー君♪ボールだよ♪」

 

カマクラ「フニャア♪ゴロゴロ…」

 

カー君は不機嫌な態度から一変。ストレイ・キャットを引っ込めて、ゴムボールを転がして遊び始めた。

 

戸塚「可愛いねー!」

 

戸塚さんはそう言ってカー君を撫でまわす。

 

カマクラ「フミャア~…」

 

カー君は「おいおい、マジかよ。この兄ちゃん、いきなり腹は反則だろ!モフるな!自慢の毛並みが乱れるじゃあないか」と身を捩りながらも、なすがままになっている。さすがはスピードワゴンさん。猫の扱いも手慣れているね。

 

小町「で、カー君をどうするの?」

 

小町は戸塚さんからカー君を受け取ると、胸に抱えるように抱いて、喉を優しく撫でる。こうすると猫は気持ち良いらしい。

 

雪乃「段ボールに入れて、川崎さんの前に置くわ」

 

小町「承太郎おじさんの時代の不良じゃあないんだからダメなんじゃあないかな?」

 

不良=捨て猫って…承太郎おじさんの世代の思考だよ?

 

結衣「じゃ、じゃあ段ボールもらってくる!」

 

と言って結衣さんはカー君から逃げるように行こうとした。あれ?もしかして…

 

小町「結衣さん、猫苦手なの?」

 

結衣「そ、そんなわけないから!むしろ好きだし!」

 

小町「動物って、そういうの敏感だから嘘をつかなくても良いと思うけど?特にカー君は」

 

臨戦態勢に入りかけているカー君をあやすように小町は喉をさする。

 

カマクラ「ゴロゴロ…」

 

結衣「じゃ、行ってくるね?」

 

小町「あ、ついでにビニール袋もお願いします。カー君、よく舐めて遊んでるんで」

 

結衣「了解だよ。小町ちゃん」

 

そう言って結衣さんは段ボールを取りに行った。

 

……

 

結衣さんが持ってきた段ボールにカー君が収まると、前足で感触を確かめると、「へぇ、結構いいんじゃあないの?」と満足げな様子でゴロゴロと喉を鳴らし始めた。

あとは川崎さんの登場を待つばかりだね。

小町は戸塚さんを職員室に張り込んで貰い、結衣さんを駐輪場へ、今日小町に付いているスナイパーさんを連絡要員(凄い困っていた)にし、小町が段ボールを持って現場へダッシュする役目になった。雪乃さんは校門で待機だ。一息入れるために、自販機で紅茶を買って喉を潤す間、カー君を見てもらう為にね。

一口二口含みながら戻ってくると…。

 

カマクラ「ニャー」

 

聞き慣れたカー君の鳴き声がした。

 

「ニャー」

 

聞きなれない女の子の声がした。周囲の気配は雪乃さんしか感じない。

 

小町「……何をしてるんですか?雪乃さん」

 

雪乃「な、何をかしら?」

 

雪乃さんはシレッと答えた。

 

小町「………修行、三倍にします?」

 

雪乃「ごめんなさい。あまりの可愛さに我を忘れてしまっていました」

 

始めからそう言えば良いじゃん。

呆れながらベンチに戻ろうとしたところで知らない番号の着信があった。誰からだろ?奉仕部の人達の番号は知っているはずだし、プライベート用の番号を知っている人で知らない番号なんてあったかな?

 

小町「もしもし?」

 

大志『あ、師匠ですか?お兄さんから番号を聞いたんですけど』

 

小町「小町には彼氏もお兄ちゃん以外の兄弟を名乗る弟子もいないよ」

 

プツッ!っと切ると、ノータイムで電話が来る。無視しても中々諦めてくれないので仕方なく出ることにした。

次にお兄ちゃんを馴れ馴れしい呼び方したら「サンシャインレッド・オーバードライブ(ルビーレーザーを除いた小町最強技。小町版サンライトイエロー・オーバードライブ。第二章参照。「プッツンゴミゴミラッシュ」とも言う)」か「前世の教え(小町版「師の教え」。「息子の教え」とも言う)」をやるからね。

 

大志『ちょ、師匠!何で切るんすか!』

 

小町「………何?」

 

大志『猫がどうとか聞いたんすけど、うちの姉ちゃん、猫アレルギーなんですよ』

 

はい、作戦の失敗確定。

 

小町「あのさ、そういうのはもっと早く言ってくれない?今回の件は解決しなくちゃいけないの。引き分けはないんだよ?」

 

大志『すんません。僕も今聞いたんです。お兄さん…』

 

小町「波紋で溶かされたい?」

 

大志『八幡さんが、家から飼い猫を師匠が連れていったという連絡を受けたらしくて、ピンときたようで、僕に連絡くれたんですよ。雪ノ下陽乃さん経由で』

 

小町「あー…わかったよ。知らせてくれてありがと。でも、次にお兄ちゃんの事をお兄さんと言ったらゴミゴミラッシュするからね。じゃ」

 

プツッ!

今度こそ切ると、小町は足早に雪乃さんのもとへ向かう。雪乃さんはカー君の前にしゃがみこみ、喉をこりこりしたり、肉球をぷにったりしていた。

 

小町「雪乃さん…」

 

声をかけると、もう開き直ったのかカー君をモフッたまま哀しい顔で「もっとモフらせて」と見てくる。いや、別に取り上げたりしないから、そんな哀しい顔しないでよ…小町が悪者みたいじゃんか。

 

小町「今、大志くんから電話きたんですけど、川崎さんって猫アレルギーみたいだから、カー君置いておいても拾わないと思いますよ?」

 

雪乃「中止ね。だからもっと遊ばせて?」

 

この人、既に目的忘れてませんか?こっちは不祥事対策でやってるんですけど。

とりあえず、猫作戦は中止の通達をグループLINEで流しておいた。

 

次の作戦は戸塚さんの作戦で、正攻法で徐倫お姉ちゃんから説得してもらうことだ。徐倫お姉ちゃんにとっては担任の問題と、家業である財団の問題、二重の意味で死活問題だ。

徐倫お姉ちゃんは男顔負けの気っ風の良さと、並の教師では止められないお兄ちゃんやジョジョお姉ちゃんを止められる数少ない人物として一目置かれている。

水族館での経験から、生徒への関心の高さも非常に高いのもポイントだね。生徒への関心の高さは前の平塚先生も同じなんだけど、あの人はやり方がまずいからなぁ。

 

小町「じゃあ、連絡してみますね?」

 

小町はLINEで『出番だよ』とだけ伝える。事のあらましは夕べ、ホテルで話してあるし、いざというときの為に頼んでおいた。

 

side空条徐倫

 

マーチからLINEがきた。やっぱりね。雪ノ下が立案したアニマルセラピーも悪くはないけれど、ハッチから聞いた川崎の人物像だと、ただヤンチャをしたいだけの豹変とは思えないから。作戦敢行前に挫折したということは川崎が動物嫌いか猫アレルギーか…。

とりあえず、遅刻指導ついでにやってみよう。というか、やらなければあたしにとっては二重の意味でダメージを負う。水族館での戦いのような肉体的なダメージなら耐えられるけど、こういう不祥事とかって厄介だし、ロメオのせいでトラウマなのよね。

本当は朋子さんの方がこう言うのは得意なんだけど。東方兄妹で実質的に二児の母をやった経験もあるし。だけど、朋子さんからは「これも経験だから、やってみなさい。あなたの目標はこういうケースの子を導く事なんでしょ?大丈夫よ、失敗したら失敗したで承太郎くんや仗助が上手くやるから。ジョセフもいるしね」と言われて任された。朋子さんの言っていることももっともね。

 

徐倫「ねぇ、川崎」

 

沙希「…まだ何かあるんですか?」

 

覇気のない、ハスキーがかった声は刺々しい。あたしがレディース時代だったら裏につれていってたわよ?ジョースター家の血が騒ぐところだったわ。※ジョースター家の血は関係ありません。ジョセフ、空条親子がケンカっぱやいだけです。

 

小町「いきなり睨みあいじゃん…」

 

うるさいわよ、マーチ。

 

徐倫「あんた、最近は家に帰るのが遅いらしいじゃない?どこで何をしているの?」

 

まぁ、昨日の家族会議で、ひいおじいちゃん、父さん、ジョルノ兄さんからエンジェルラダーのバーテンに心当たりがあるから、多分その子の事だろうとの話は聞いて知っているんだけどね?

 

沙希「誰から聞いたんですか?」

 

徐倫「明かすわけないでしょ?」

 

川崎は気だるげにため息をついた。捉え方次第ではあたしを嘲笑っているみたいで腹が立つわ。

 

沙希「別にどこでも良いじゃあないですか。それで誰かに迷惑かけたわけじゃあなし」

 

徐倫『思いっきり迷惑かかってんのよ、こっちは(英語)』

 

沙希「何の迷惑がかかってるんですか?あと、知らなかったでしょうけど、あたしも英語は話せるんですよ。イギリス英語ですけど」

 

っ!?こいつ…本当にハッチがにらんだ通り…

 

徐倫「こっちの話よ。仮にもあんたは高校生。補導でもされれば両親も私も警察から呼ばれる事になるのよ。あたしも若い頃、レディースやっててママに迷惑をかけていたからわかるのよ。今では後悔しているわ」

 

最終的にはプッチに嵌められて刑務所送りになっちゃったしね。仗助兄さんやハッチ達が動いてくれなければどうなっていたのかわからないわ。

そう言っても川崎はぼんやりとした表情であたしの顔を睨み付けるだけだ。

 

徐倫「あんたは親の気持ちを考えたことはないの?」

 

月並みな言葉だけど、あたしも今ならわかる。エンポリオやハッチ…弟や妹分だけど、あたし的には親心と変わらないつもりでいる。あたしの思いは川崎に伝わっただろうか?

 

沙希「先生…親の気持ちなら、先生よりも知っているつもりです。ていうか、親になったことないからわかんないはずだし、結婚して親になってから言うべきじゃあないんですか?親心と姉心は違いますよ?というか、よく普段からあれだけはしゃげますね?端から見てて鬱陶しいですよ?」

 

徐倫「!」

 

痛いところを突かれた!ハッチ、ここでもあたしの邪魔をするかぁ!

 

川崎「ヘイ先生、あたしの将来の心配するより、自分の心配をした方がいいって。婚約者がいるとは聞いているけど、がさつな所とかまずいよ?目付きが悪いし」

 

ア、アナスイはあたしの全てを受け入れてくれると言ってくれてるもん…父さんと決闘してまであたしを求めてくれたもん…。この目が良いって言ってくれたもん。捨てるなんてしないもん。あ、ロメオに捨てられたこと思い出した。最終的には家ごと捨ててやり返してやったけど。ぐすん…

 

川崎「もう良いっすか?忙しいんで」

 

あたしの許可を得る前に川崎は行ってしまった。

 

小町「ジョ、徐倫お姉ちゃん?」

 

徐倫「……ハッチ、今日はどこ行った?」

 

小町「さ、さぁ…何か色々回るとか言って先に帰っちゃったけど…」

 

徐倫「だったらホテルで待ち伏せだ!今日も拳骨落としてやる!ハッチィィィ!」

 

八つ当たりだとはわかっているけど、今日という今日は許さん!

 

←To be continued




本当は飛ばそうと思っていたエピソードですが、カマクラの見せ場も欲しかったのでやってみました。

それでは恒例の原作との相違点…は、全部としか言いようがないですね?はい。

それでは次回もよろしくお願いいたします。

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