やはり俺の奇妙な転生はまちがっている。   作:本城淳

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幼少期編の後半です。

八幡とジョースター家との関係作りのはなしです。


比企谷八幡は人生の年季を知る

side 比企谷八幡

 

あれは夢でだったのか、心の中で思った現実だったのか…ジョナサンとディオが完全に混ざり合い俺という存在が生まれた日だ。

前から俺はこんなんだったとも思えるし、以前とは確実に違うとも思える。

 

さて、そろそろ起きよう。

寝心地の良いこのベッドはどこの家の物ですか?

 

窓を見てみる。

幕張の街が一望できるこの景色はホテル・ロイヤルオークラだと思う。

この景色だと、ロイヤルスイートルームかな?

部屋がめちゃくちゃ広いし。

うん。ジョースター家は世界有数の不動産会社の会頭だし、けがをさせたお詫びにこんな良い部屋で泊めてくれたんだな?

チェックインした記憶はないけど、うちの両親の稼ぎではこんな高級ホテルのロイヤルスイートなんてまず無理だ。

ただ、寝ちゃう前はいっぱい動いたせいか、体が頭しか動けないんだよなぁ。せっかくのセレブ生活が勿体ない。

……

………

 

八幡「はい、いい加減現実を見つめよう。

動けないのは仕方がない。

最高級のキングサイズベッドには、それに見会わない拘束具によって俺の体は完全に縛りつけられていた。

イヤー!ショタのペドコンにお持ち帰りされてたのねー!八幡困っちゃうー」

ジョセフ「お前さん。よゆうじゃのう?」

八幡「!!!!」

 

誰もいないと思い、完全にふざけていた俺に、ジョセフ・ジョースターが呆れながら話しかけてくる。

 

八幡「誰かと思えば老いぼれジョセフか」

ジョセフ「無理に悪役ぶらんでも、それが演技であることくらいは一目でわかるぞ?比企谷八幡くん?」

八幡「なっ!?」

ジョセフ「何十年生きとると思っておる?お前さんに害意があるならば、儂などとっくにやらておったわい。ザ・ワールドでな。じゃが、害意はなくとも、記憶はあるようじゃな?」

 

ジョセフは柔和な表情から一変し、髭をさすりながら鋭い視線を送ってくる。

 

八幡「な、何のことだ?老いぼれの戯言は回りくどくていかん!」

ジョセフ「お前さんは逆に分かりやすいのう」

八幡「そもそも、記憶とは何のことだ?俺には全く心当たりがない!」

ジョセフ「ならばなぜ、儂がジョセフとわかったのじゃな?初対面なのに儂は名乗っておらんぞ?」

八幡「き、貴様は有名人だから、誰だって顔くらいは知っている!」

ジョセフ「まだ小学生にもなっておらん子供がかのう?まだ伝記の絵本になるには早すぎるし、たかだか不動産屋ごときが伝記の対象になるとは思えんがのう?一時的な世界地理や経済の教科書に掲載されても、お前さんが読むような本には載っておらんし、載っておったとしても、今よりずっと若い頃の儂じゃ。いい加減、観念して話をしてくれんかのう?儂と口で争うにしたってお粗末すぎて退屈すぎるぞ」

 

ジョセフは一気に畳み掛けてくる。

まあ、俺のディオの真似がお粗末すぎるのは確かだよ?

でも、もう少しこう、手加減ってのをしてくれませんかねぇ?

 

ジョセフ「まぁ、話は食事をしながらといこうかの?昨日の騒ぎからお前さんは丸一日寝ておったのでな」

 

ジョセフは内線電話でルームサービスを頼む。

 

八幡「丸一日!?いろはちゃんや花京院の人達は…」

ジョセフ「エリ…ごほん、いろは嬢ちゃん以外は皆、ザ・ワールドの攻撃で気絶してのう。原因不明の集団昏倒事件として病院に担ぎ込まれたわい。中には、いきなりお墓で爆弾テロが発生したと騒ぎ出す者もおったらしいがのう」

八幡「爆弾テロ…ですか」

ジョセフ「そんな事実はないと言うのにのう?」

 

ジョセフはウインクをして俺に目配せをする。

そういうことにしておけ。…と言うことだろう。

有象無象の人間が精神を疑われ、どうなろうと知ったことではないし、大切なのはいろはちゃんとその家族があの後、無事だったかと言うことしか気掛かりになることはない。むしろ、俺自身ですらどうでも良いとまである」

 

ジョセフ「途中から口に出しとるぞ?お前さんはとうも深く考え込むとブツブツ考えておることを口に出す癖があるようじゃ。安心せい。お嬢ちゃんは無事じゃ。勘と運の良さは一級品じゃからな…(なんてったってジョナサン・ジョースターを含め、乗員がほとんど死亡した、あの大西洋の豪華客船沈没事故ですらリサリサ先生と二人で生き残った猛者じゃしのぅ…)ボソッ」

八幡「ん?何か今、大変重要な事を言わなかったか?」

ジョセフ「いやいや、何でもないんじゃ!あのお嬢ちゃんもご両親が退院するまでは儂らで面倒を見ておる!なんせ恩ある花京院の親戚じゃからのう!お前さんにはちと苦い思い出ではあるかのう?」

 

ルームサービスのお粥が運ばれてくる。

丁度話の内容がバツの悪いものだったから、流れを切るにはタイミングがよかった。

それにしても…だ。

俺、拘束具付けられっぱなしなんですけど、これでどうやって食べろと言うのかしらん?

まさか犬食いでもしろと?

バカなの?死ぬの?

 

ジョセフ「嬢ちゃんの話じゃ、お前さんはその歳で波紋使いとしては達人のレベルにあるそうじゃな?軽く人間を辞めておると聞いておるぞ?これまでのやり取りでお前さんが考えなしに暴れるとは思えんが、儂の手にも負えられん得体の知れないザ・ワールドを使いこなす波紋使いを自由にすることは出来んよ」

 

ジョセフはレンゲでお粥を掬って俺の口まで運んでくる。

え?じいさんからアーンをされるのん?

イヤだ勘弁、人生初のアーンイベントがじいさんからとかイヤすぎる!

世界有数の大金持ちの手からとかある意味では大名誉かもとかちょっと思っちゃったけど良く考えなくてもじいさんから食べさせてもらうよりは美少女からのアーンの方が良いですので無理です!ごめんなさい!

と、心の中で思わずいろはちゃんになってしまうくらいにはイヤだ!

愛する妹(マイ)エンジェル小町かいろはちゃんが良い!

防衛本能から俺はハーミットパープルを両手から出して器とレンゲを奪い取る。

 

ジョセフ「ほう…思わずスタンドを使うほど嫌じゃったかのう?しかし、お前さん、スタンドはザ・ワールドではなかっのか?」

八幡「こっちが俺の本来のスタンドっすよ。あなたのスタンドと全く同じスタンド。両手からだせてますからハーミットパープル・ネオってところですかね?」

ジョセフ「ではザ・ワールドも併せてハーミット・ワールドと言うとはどうじゃろうか?」

八幡「全力でお断ります」

ジョセフ「儂が提案するスタンド名ってそんなにセンスないかのう?」

 

…知らんがな。

 

ジョセフ「それで、お前さん本来のスタンドと言っておっとったな?どういう事か、教えてもらうぞ?」

八幡「モグモグ…」

ジョセフ「食べて誤魔化してスルーしようとしても無駄じゃからな?手荒なマネをしておらんだけで、これは尋問じゃから、喋るまでは終わらんと思えよ?」

八幡「え?なにそれ怖い。警察以外の人が尋問って…」

ジョセフ「世の中、金と権力と隠蔽能力があれば大抵のことは可能って知っておるか?」

八幡「すみません、怖いので喋りますから勘弁してください無理ですごめんなさい」

ジョセフ「……お前さん見てると、ジョジョと呼ばれた儂らが四人がかりで負けそうになったとはとても信じられんわい…」

 

え?俺ってそんな大それたことしたの?

 

ジョセフ「で、いい加減、話してくれると助かるのじゃが?」

八幡「……ジョースターさん。前世って信じますか?」

ジョセフ「………」

八幡「やはり信じられませんよね?」

ジョセフ「信じるよ。理由は今はまだ、言えんがのう」

 

何で?とは聞けなかった。

波紋やスタンド、吸血鬼や柱の一族といった奇妙な現象を体験し続けたジョースター家、その中でもジョセフはその第一人者と言えるのだから。

 

八幡「俺は、ジョナサン・ジョースターとディオ・ブランドーの二人の魂が融合して転生した、比企谷八幡です」

ジョセフ「何と!?ではお前さんの魂は、儂の祖父であり、祖父の仇敵でもあったのか!?じゃが、スタンドが二つもある理由も納得できる…一人で二人の魂を有しておったのじゃからな…」

 

俺はジョセフにジョナサンで無くては知り得ない事、ディオでなければ語れないエジプトでの最終決戦の話を証言として語った。

 

八幡「昨日までのベースはジョナサン・ジョースターでした。ですが、昨日の事がきっかけで二つの記憶が甦り、ジョナサンがディオを吸収する形で融合し、俺という新たな魂が完成したのです。これが、俺の中で起こった嘘偽りのない全てです」

ジョセフ「……すぐに信じろと言うのは無理じゃが、あの決戦の事を語った臨場感…とりあえず、勘としては納得した…それで、今後はどうするのじゃ?」

 

ジョセフは曇った眼鏡を外し、汗で濡れた皺だらけの顔をハンカチで拭う。

 

八幡「今の俺はジョナサンでもディオでもありません。いるのは二人の遺志を継承した比企谷八幡という新たな俺です。俺がやるべきことは3つ。まず一つは…」

 

俺はディオから託された事の3つをジョセフに語った。

天国の件と二つの……そして、ジョセフにとっては無視できない程に馴染みが深い一件…。

 

それらを見つけ出し、何とかするにはジョースター家の…いや、SPWの力が必ず必要になる。

ジョセフはより一層汗を流し始める。

 

ジョセフ「これは…とんでもない話になってきたの…儂らだけの力では太刀打ち出来んかも知れん。じゃが、ずっと放置していたあの問題の事もある…」

八幡「天国を止めるにはあと早く見積もって8年。承太郎がエジプトのディオの屋敷で見つけた日記を回収して見つけ出さねば…」

ジョセフ「あー……あの日記は……承太郎が燃やした」

八幡「は?」

ジョセフ「じゃから、承太郎がディオの屋敷をガサ入れした後に見付けて…燃やしておった…」

八幡「承太郎ぅぅぅぅ!」

 

どうしよう……いきなり躓いたよ……泣きたい。

 




サブタイトルはジョジョ格ゲーにおいて、ステージの敵がジョセフだった場合に出る「戦いの年季」からもじったサブタイトルです。
舌戦を展開できるほど、作者は弁達者とは程遠いですので、満足に書けませんでしたが(^_^;)
テーマ曲の「ジョセフ走る」をもじったタイトルとどちらにしようかで迷いましたが…。

話の最後に出てきた日記と言うのは第6部で判明した承太郎がDIOの館で手に入れ、燃やした挙げ句に足蹴にして灰を踏みつぶしていた物です。

ジョースター家が宿泊している「ホテル・ロイヤルオークラ」は俺ガイル原作に登場し、サブヒロインの川崎さんが隠れてバイトしていた高級バー「エンジェルラダー天使の階」がある、ホテルです。
現実にある「ホテル・ニューオータニ幕張」がモデルのホテルですが、実際ロイヤルスイートルームがあるかは不明です。
セレブのジョースター家が普通の客室に宿泊するのは違和感を感じたので、本作ではロイヤルスイートルームがあるという前提で書きました。
とある名前を口にすると恐ろしい事になる夢の国をモデルにした「デステニーランド」のホテルというのも考えましたが、せっかくの俺ガイルとのクロスなので、こちらを採用しました。いろはのエピソードを考えると、夢の国の方が縁深い気もしますが…。

それではまた次回に会いましょう。



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