オートマトン・クロニクル   作:トラロック

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#004 戦闘メイド

 

 数日後に地表に降り立った『シズ・デルタ』はすぐにオリジナルを捕捉した。

 旧世代の自動人形(オートマトン)を索敵する事は難しくない。能力的にも新世代が上だ。

 彼女は街を散歩中で特に目立った動きは見せていないようだ。

 すぐに部下のモンスター達を集めて情報を収集し、まとめていく。

 異常が無ければ安心するのだが何かが起きれば自動人形(オートマトン)とて慌てる事態となる。それは人間からは想像できない概念かもしれない。

 機械が慌てるという事はありえるのか、と。

 

 至高の存在関連ならばありえる。

 

 それが彼らの『設定』という名の恐ろしさ。

 概念すら覆す呪いのようなものと言う者も居る。

 与えられた命題に対し、自らの命すら平然と投げ出す者達。それがシズ達だ。

 捜索対象の存在である少女のシズは部下の慌てぶりなど知らぬ顔でライヒアラ騎操士学園の都市を散策していた。

 どうやってこの地に降り立ったのかと言えば転移だが、本来の彼女は眠り姫の如く機能停止状態だった。それをどのように解除したのか。

 いかに至高の存在とて外部からでしか目覚めさせる方法が無い、と言われている。であれば何者かが起こしたと考えるのが一般的だ。しかし、誰が目覚めさせたのか。その辺りの情報は受け取っていない。

 

「……まずは……御身の確保を優先……」

 

 姿を消す不可視化能力に()けた『シモベ』と呼称するモンスター達に命令を伝える。

 敏捷の数値が高く、隠密行動に特化した『八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)』と呼ばれる忍者の格好をした八本腕の蜘蛛型モンスターが対象(シズ・デルタ)に向かう。

 このモンスターは知能が高く、自己判断も出来る優秀なシモベだ。

 一足早くシズ・デルタの側に降り立ち、警護に就く。

 売店を覗き込んでいた外見が少女のシズ・デルタは側に不可視化したシモベの存在にいち早く気付いたようだが、顔は店に向いたまま微動だにしない。

 そのすぐ後で齢六十という設定のシズ・デルタが到着する。

 周りから見れば老女と孫娘だ。

 老女の方が背が高いのでオリジナルが低く見られがちだが、現地の学生の平均値には達している。いわゆる眼の錯覚というものだ。

 

「……シズ・デルタ様、勝手に外に出られては……」

「……うるさい、黙れ」

 

 静かな口調で少女が言えば大人は黙るしかない。

 

「………」

「……いや、喋っていい。……我侭な娘という事にしてほしい」

「……(かしこ)まりました。勝手に出歩いてはいけません。ここには大きな人型兵器が闊歩するのですから」

 

 与えられた役割を十全にこなす端末のシズ・デルタ。

 命令は絶対。それは鉄の(おきて)のように厳格なものだ。

 切り替えの速さ。柔軟な対応は見る者を驚かせる。

 

「偽装せずに降り立つなど……。少し無用心ではありませんか?」

 

 それよりもどうやって降り立ったのか聞くべきなのか、端末は脳内で様々な選択肢を吟味し始めた。

 

「……至高権限。……実際に降り立ちたいと思っていた」

 

 調査と言われているが何十年も待たされたのだからシズとしては我慢にも現界がある、と言いたいところだった。

 他の自動人形(オートマトン)と違い、我欲を――強く持っている。

 それに一番古い存在ゆえに未知の機能が備わってしまったのかもしれない。

 『ガーネット』の言葉では『祝福(ギフト)』と言われている。

 機械が生物へと進化する。ただ、それは喜ぶべき事なのか、機能不全への布石ではないのかと不安思う日々が続いた。

 機械なのに不安を覚える。そして、それが年々強くなる。

 ついに自分は機械的に壊れてしまった、と絶望感も抱いた。

 

「……ガーネット博士は……それは喜ばしい事だと言っていた」

 

 何が喜ばしいのか、未だにシズ本人には理解出来ないし、端末のシズも適切な解答を伝えられないでいる。

 至高の御方が困っている、という事は理解出来るのに。

 

        

 

 答えの出ない問いを延々と模索しても時間の無駄。

 シズはそう判断し、移動を始める。

 

「……しかし、偽装は必要か?」

 

 今のシズ・デルタは『戦闘メイド』としての正装で、迷彩柄の特別仕様となっていた。なので、天気が良く気温が高いにもかかわらず厚着となっており、迷彩柄のマフラーを巻き、左目を眼帯で覆っている。

 現地の服装とは明らかに違うので――物凄く――目立つ存在に映っていた。

 老齢のシズを十代に若返らせた姿ともいえる。というよりはこちらが本来の正しい姿だ。

 分厚い手袋も迷彩柄。

 ただのファッションではなく身につけているものは全て特別な『マジックアイテム』である。

 戦闘メイドとして戦う為の武装なので見た目では分からない強さを秘めている。

 

「大変目立つかと。この地域に存在するメイド服はもう少し質素ですので」

「……着の身着のまま来てしまったから……」

 

 単なる散歩に来たので戦闘用は不味いかも知れない。そう思い、着替える事に決めた。

 そう判断した事を伝えると端末のシズは大層安心し、喜んだ。

 オリジナルより表情は多彩で至高のシズは少し不満をにじませる。

 早速、端末のシズは自分の拠点としている自宅に案内する。

 それから少し経って、着替え終わったシズは現地の女の子が身につけるような質素な服装で外に出た。

 防御力はほぼ皆無。戦闘用ではない事は分かっているが、いざという時に何も出来そうにないところが残念だと小声で呟いた。

 ただ、偽装という観点から言えば文句は無い。

 眼帯は包帯に切り替えたが、これはこれで割りと目立ってしまう。けれども包帯を外すわけにはいかない。

 

「それでシズ様。どこか行きたい場所はおありですか?」

「……学校。……私も通えると……」

「無茶が過ぎますよ」

 

 即座に否定する端末。

 本来ならば現地に馴染む予定はなく、次の旅まで目覚める事が無いはずだった。

 それを無理矢理に破ったのだから我侭を通すのにも限界がある。

 

「……貴女は私の……祖母……。……お婆様。……私、学校に行きたい……」

 

 無表情でボソボソと呟くような小声で懇願する至高のシズ・デルタ。

 端末に過ぎないシズとしては断るわけにはいかない。けれども、御身に何かあれば、と不安が増大し、返答に時間がかかった。

 先ほど解散させた不可視化出来るモンスター『八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)』達を呼び寄せる。

 八本の腕を持つモンスターは音も無くシズ達の側に集まり跪く。当然、姿は消したまま。

 

        

 

 この世界には魔法文化はあるが索敵に関するものは殆ど無く、また治癒関係も無いといっていいくらいに無い。

 それはつまりシズ達よりも魔法に関する文化が遅れている事になる。その代わりに人型兵器に歳月を注いできたといえる。

 孫娘の手を引いて小さな、と言うには背は低くないシズ・デルタを老女のシズ・デルタがライヒアラ騎操士学園を案内する。

 至高のシズの背丈は中等部の生徒並み。エチェバルリア少年よりは高い。

 自動人形(オートマトン)なので成長する事は無いが、本人が望めば高身長の大人用の偽装体、または義体(ぎたい)と呼ばれるものに挿げ替える事は可能である。

 今まで身体を替えてこなかったので訓練は必要だが、今回は素のままの姿で行動するつもりのようだ。

 

「……みんな人間ばかり……」

「この国はほぼ人間ばかりです。魔獣という生き物が居りますが……、不死系のアンデッドの存在は確認されておりません」

「……了解した。……この地はかの地とは……、随分と違うんだね」

 

 かの地は様々な種族とモンスターに溢れていた。けれどもここは生態系からして違う方向で進化した可能性があり、シズの知る文化と乖離していてもおかしくはない。

 ただただ、少し寂しいな、と思う程度だ。

 シズは自動人形(オートマトン)だが、ある程度の感情表現が備わっている。

 表情の変化は乏しいけれど。

 

「シズ様なら……」

「……ここではシズちゃんと……呼ぶように」

「……しかし……」

 

 大人のシズは困惑する。

 役割とはいえ至高の存在となっているシズ・デルタの敬称を気軽に変える事など畏れ多い事だ。

 

「……名前が同じになってしまうか……」

「いえ、そういう問題ではありません」

 

 口元に手を当てて思案する小柄なシズ。

 そして、数秒の思索の後に出した彼女の答えは。

 

「……私はシズちゃん。……ここに居る間はそう呼ぶように。……あと、これは命令」

 

 至高の御方の特権。

 命令として与えれば端末はそれを絶対に守らなければならない。

 本来は強制力は無いのだが、彼らの場合は鉄のお掟のように効力が発動する。

 もちろん、至高のシズも上位者である『ホワイトブリム』達の命令には基本的には逆らえない。彼ら『至高の四十一人』は自分達自動人形(オートマトン)の生みの親にして本当の意味での至高の存在――

 そして、創世神と言っても過言ではない。

 

「……貴女は先代のシズ・デルタ。……フルネームがいい。……私はシズ・デルタお婆様と呼ぶ」

 

 普段は鉄仮面のあだ名で呼ばれる端末のシズ・デルタが至高のシズの言葉に対して苦悶の表情を形作る。

 変化の幅は端末の方が多いので当たり前ではあるけれど。

 

「……訂正。……お婆様と呼ぶ。……互いにフルネームを使うと流石に不味いし、混乱の元」

「そ、それがお望みであれば……。お戯れが過ぎます」

「……む。……自動人形(オートマトン)は機械的な行動だけしていればいいの」

 

 中途半端に子供っぽい発言をするシズ・デルタ。

 何を言っても無駄だと判断したのか、老齢のシズは苦笑を浮かべつつ軽く一礼する。

 御身が望むのままに、と。

 

        

 

 同じ名前で呼び合う場合は自分達側は良くても周りには違和感を与える。

 愛称なども限度があるはずだ。そして、書面の場合は誤魔化しきれない。

 出来るだけ署名事案を避ける行動に務め、解決策を模索する必要がある、と老齢のシズは脳内でメモを取る。

 もちろん、バレたら諦める、の精神で。

 とはいえ、この世界に自分たちを知る者など居るのかと疑問に思う。

 転移した()()()()ならまだしも。

 ここは少なくとも自分たちが発見した未知の世界だ。

 この世界にも敵勢力が有るのならば警戒すべきかも知れない、けれども。

 

 そんな勢力が存在しえるのか。

 

 国同士の争いごとは想定内だ。

 西側諸国の情報も集めている。では、それ以外の未知なる敵は果たして。

 端末としてのシズは自分で対処できることには責任が取れるけれど、思考の御方に何かあっては一大事という意識があるので、今まで以上に周りへの警戒が強く出てしまう。それによって現地民に要らぬ警戒感を抱かせる事態になるのではと、更に不安が広がる。

 自動人形(オートマトン)として感じる未知の恐れ。

 想定出来ない事にどう対処すべきか、高性能な自動人形(オートマトン)は本当に頭から煙が出るほどに様々な対策を模索し続けていた。

 

「……ん。……お前如きに心配される(いわ)れは無い。……通常任務で良い」

「……しかし」

「……という命令」

 

 至高の御方の命令は実に都合がいい。

 小柄なシズはご満悦で頷いた。

 自分が至高の存在として崇められるようになって随分と経つようだが大半は稼動を停止しているので時間の感覚は取りにくい。

 一万年とも十万年ともいえる長い旅のようだが、シズにとってはまだ十年くらいしか経過していない気がする。

 五十年は確実に経過したはずだが――

 目覚めるたびに高性能な端末に起こされる。その都度(つど)感じるのは時代遅れとなる自分の性能だ。

 ならば自分も高性能になればいい。

 そんな簡単な事を自分は拒否した。

 

 至高の御方から頂いた身体を変える事などとんでもないことだ。

 

 変化し、自らを高める事が大切な事はシズとて百も承知だ。それでも変化する事を拒否したのは自分の数少ない我侭の一つかもしれない。

 そのお陰で周りよりも行動が遅く、足を引っ張る存在になってしまっている。

 ホワイトブリムの許可があろうとも自分はやはり戦闘メイド『六連星(プレアデス)』であり『七姉妹(プレイアデス)』のシズ・デルタでいたい。

 

        

 

 歩きながら物思いに(ふけ)っていたら多くの人間の姿が見えて来た。

 行き交う人間達は『お孫さんですか?』や『可愛い娘さんですね』という声が聞こえてくる。

 それに対して小さなシズは老齢のシズの陰に隠れるような仕草をして警戒している風を装う。

 

「きゃ~。可愛い~!」

「シズ先生にお孫さんが居たんですね」

「とても似ていらっしゃいます~」

 

 様々な声が上がっているが、それぞれ好意的のようだ。

 警戒する振りをしつつ軽く口元を歪めてみたりしながら周りの反応に満足するシズ。

 

「シズ……ちゃん。みんなに挨拶して」

 

 自分の役割を忠実に実行するシズ・デルタ。

 小さなシズは黙ってお辞儀する。そして、すぐに隠れる。

 ちなみに隠れる仕草は昔から好きな行動なので、今日が初めてというわけではない。

 

「シズちゃんに学園内を見学させようと思いまして。この通り、人見知りする子で」

「……名前が同じなのは……、えっと……。……しきたり? ……だから、気にしないで」

「可愛いっ」

 

 大きいシズは義体なので本来であれば同じ顔を指摘されるところだ。だが、年齢による差で上手く誤魔化され、関係性については問題が無さそうだった、と判断する。

 周りにとって好意的であればいいのだから。

 

「シズ先生って独身でしたよね?」

「女の秘密を詮索してはいけませんよ」

 

 それは都合のいい言い訳だ。だからこそ慌てずに対処できる。

 集まってきた人間達はほぼ学園内にいた生徒達。

 教師連中はまだ姿が見えない。

 担当教室を決める刻限も迫っているのだが、至高のシズ・デルタの面倒もある。

 どうしたものかと悩んでいると通路の先から以前見かけた生徒がやってくる。

 紫がかった銀髪は首元までしかなく、丸っこい印象を受ける。

 碧眼で童女のような可愛らしさを持っている男子。

 エチェバルリア少年だと即座に脳内で検索結果が現われた。

 彼の側には友人と思われる二人の生徒の姿があったが何者か検索しようか迷った。

 即座に言い当てると騒ぎが大きくなる事もあるので。特に相手方が。

 初対面の相手は特に警戒される傾向にある。

 大騒動にはならないと思われるが、対人関係は個人ごとに違うので判断するのは大変だ。

 

        

 

 そういえば、と大きなシズはエチェバルリア少年の試験結果について聞いていない。というより報告を受けに行っていないことに気づいた。

 職員室に行っていないのは充分すぎる失態だ。

 何よりも至高のシズの安否を気にかけて基本的な事を疎かにしたのは不味い。

 

「用件を思い出しました。私は……。シズちゃん、行きますよ」

「……ん? ……仕方が無い」

 

 聞き分けのない娘でも演じているのか、肩をすくめる仕草をする少女のシズ。

 向かいから歩いてくるエチェバルリア少年たちに対して老齢のシズは『おはようございます』と挨拶を言うだけで相手の返事を待たずにスタスタと歩き去る。そんな彼女の後を小柄なシズが無表情のままついていく。

 

「え……あ……。おはよう……ございます」

 

 エチェバルリアが言い終わる頃には声の届かない距離になっていた。

 

「うわ~。あの鉄仮面にそっくりな女の子だったな~」

「てっかめん? あの先生のこと?」

 

 エチェバルリア少年と共に歩いていた二人の友人と思われる一人――男性の言葉に対し――もう片方の女性が聞き返す。

 二人共黒髪の少年少女――双子であった。

 

「そ。学園名物の鉄仮面教師。どんなことがあっても表情一つ変えないところから、そんなあだ名がついたんだとさ」

「……あんまり人の悪口には覚えが無いから……。よく聞く噂の元はあの先生のことだったのね」

「……というか俺達、入学したてだから……」

「そうですか。あの人は鉄仮面というのですか」

 

 銀髪のエチェバルリア少年は口元に手を当てて感慨深げに分析を始める。

 特にどうという事はないのだが、言い負かされたままでは気が済まない。そんな気持ちが少しだけあった。

 残念ながら魔法の試験を見せる事は出来なかったけれど、彼女の度肝を抜いてみようかと意地悪な思いが湧いて来る。

 

「僕の目的達成の為にはいずれ倒さなければならない相手かもしれません」

「そうかもしれないけど……。あんま無茶すんなよ」

「大丈夫よ。エル君は無敵だから」

 

 その言葉にどんな根拠があるのか、エルチェバルリア少年は少女の言葉に少しだけ苦笑を浮かべる。

 それよりも途中で退室されたことで改めて自分達の実力を見せる為にはどうすればいいのか、改めて考えなければならない。

 それがとても難題なものに思えた。

 

        

 

 職員室に向かったシズは必要な報告を受けて、改めて担当教室について聞かれる事になった。

 もちろん、決めていない。

 今回は辞退も視野に入れて、各教室の散策で終わることも考えていた。

 充分に学園に寄与した自分は今こそ休暇を取るべきである、と。

 

「……それはそれとして。そのお子さんは入学希望者なのですか?」

 

 教師たちの視線を集めているのはシズが連れている小さなシズだ。

 小さいといっても初等部の生徒と大して変わらない。

 

「見学だけです。……あまり長期間の通学は……」

 

 見た目は初等部の生徒並みだが、年齢は誰よりも高い。そして、老齢のシズが心配しているのは身体の事だ。

 数十万年の宇宙の旅。

 もちろん、何所かに降り立つ予定が無い時は身体機能を停止しているので経年劣化はかなり抑制されている。しかし、そんな事は大きなシズにはまだ正確に伝わっていない。

 長い時を歩んでいる至高のシズの身体はいつ壊れてもおかしくないのでは、と気になって仕方がない。

 特に部品交換など拒否しているので。

 いきなり自壊でもされればいかに自動人形(オートマトン)とて冷静でいられる自信は無い。

 小さなシズが外気に長時間触れているだけで大きなシズは生物であれば脂汗を大量に流して心配するところだ。

 

「……お婆様が怖い顔をするので私は大人しくしています」

「……はっはっは。もう、シズちゃんったら……」

 

 至高の御方自らの演技に対応できず、大きなシズは無表情で笑う演技をするハメになってしまった。

 周りに居た教師たちは異様な雰囲気に気付いて言葉を失っていた。

 この二人の間には人には言えない何かがある、と。

 顔を逸らしたら頭を引っ叩きそうな気がしたので、小さなシズから誰もが目を離せない。それだけ大きなシズが怒っているようにも、戸惑っているようにも見えた。

 

「そ、そうですか……。それで仮に辞退される場合は実家に戻られるとか?」

「そ、そう……ですね。もし、よろしければ幻晶騎士(シルエットナイト)の整備とかをじっくりと見学したいものです」

 

 ライヒアラ騎操士学園にある整備工場は教師などから許可さえ取れば見学は可能だ。ただし、一般人の見学は基本的に許されていない。

 シズが今まで(おこな)わなかったのは単に他の仕事で忙しかっただけだ。

 授業で教える分には基礎や整備の知識は得ている。

 (おこな)っていないのは実際に幻晶騎士(シルエットナイト)に乗り込み、操縦することと直接整備すること。そして、自ら幻晶騎士(シルエットナイト)を開発する事だ。

 

 


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