銀髪の少年エルネスティ・エチェバルリアの中では改修した事になっているグゥエール改めグゥエラルによる模擬戦闘が始められる。
対する
工房から舞台を変えて闘技場へ。
「ディートリヒ先輩。中身は変わっていますが
「了解した。……しかし、あれから更に調整を入れてもらったのだが……。反応が早くてびっくりだ」
何より驚くのが消費される
今までの何倍もの稼働時間が確保されている。
注意事項を受けた後、
「グゥエールよりも筋力が増えたように見えるな」
「その辺りは実際に戦って確かめるさ。今日はなんだか負ける気がしない」
両者武器を構える。
アールカンバーは大きな盾と剣を。
グゥエラルは二刀流だ。更に背中には
「では、これより模擬試合を
あくまでも試合形式なのでどちらかの
そして、
先に動くのはディートリヒは防御に厚いアールカンバーに対し、牽制するのが定石だが今回は最初から攻めに転じる。
今までよりも素早く動ける。なにより負ける気がしない気持ちの大きさが行動を大胆にする。
「攻撃に際する消費
そう独り言のようにつぶやくエルネスティ。
勝ち負けに拘りはないが大破だけはしないように、と祈った。
(……最初の一撃……、全てはそこから……)
グゥエラルの一刀を――落ち着いた様子で――盾で受ける。その衝撃の大きさはエドガーの想定を上回る。
一言で言えば重い、だ。
新しい
武器も以前から使っていた支給品。特別切れ味が良いわけではない。
両刃の大刀。それは斬る、というよりは叩き切るような力業に任せるところがある。
刃こぼれがあろうと折れていなければ使い続ける。そういう武器だ。
(……ん。盾は断てんか。手首の感じから硬さが伝わる。……よし、折れるほどではないな)
(両手持ちの一刀に匹敵する攻撃を片手で、だと!? しかも、それを連続で繰り出せるとは……。相当、強くなっている)
盾の角度を変えつつ距離を取るアールカンバー。
数度の受けで防御に回した
最初の一刀を繰り出すとあっさりと避けられる。
本来であればお互いの反応速度に差は殆どない。あるとすれば戦闘経験くらいだ。
(早い? それにしては……見てから避けられたような……。速度が向上したから見えるようになったのか?)
(おうおう、すごいすごい。機体が重くて避けにくかったエドガーの攻撃を感覚だけで避けられた。……こいつは凄いな。……それをアールカンバーにも施せばもっとすごくなって私の活躍が減るかもしれないな)
エドガーは決して弱くはない。今は機体の性能のお陰で
エルネスティの言う通り、驕ったら手痛い敗北を期する。
「どうしたディートリヒ。魔法は使わないのか?」
「私は剣での勝負が好きなんでね。……だが、所望とあらば応えないわけにはいかないな」
腕の操作ではなく簡単なボタンと標準機能によって専用
それにより、従来よりも簡素に魔法を撃ち出せるようになった。
はたから見れば二つの動作を同時に
剣と杖を同時に警戒する事は難しい。特に従来の
★
勝負はディートリヒの一方的な攻防に終始した。もちろん、エドガーも健闘はしたのだが、反応速度の差で決定打が与えられず。
何より決定的なのは消費
攻勢を強めていたディートリヒは完全勝利より、友人の安否を優先し、剣を引いた。これ以上の戦闘は無意味だと判断し、エドガーも同じ結論に達したので動きを止めた。
「……俺の負けだな」
「そうだな。だが、お前が同じ機体に乗れば負けていたのは私の方だ。これは……反則的すぎる」
技量の上ではエドガーが上だ。それはディートリヒも認める。
これだけの機体差があるにも関わらず、決して諦めなかった。もし、逆の立場なら――と、ふと思ってしまった。
理不尽な存在相手ならば手も足も出なくて当然だ。だからといって負けを認めたくはない。
(エドガーに勝ったところで一番になれたわけじゃない。何よりこの
確かに何倍も強くなったかもしれない。けれども、クロケの森で出会った魔獣はもっと強いかもしれない。
あれが街に現れた時、この機体でも戦えると果たして言えるのか、と。
まして、この機体は学生様に用意された型落ちと言われるサロドレアを改修したものだ。
制式量産機でも
学生が作り上げた新型に過ぎない。
斬撃の打ち込みでボロボロになったアールカンバーを見てディートリヒは明日は我が身だ、と思った。
もっと技術向上を目指し、魔獣に負けない決意を固める。
それにはやはり自身の肉体的向上だ。それと
模擬試合を終えて、ディートリヒは走り込みやヘルヴィも匙を投げた
(うぉっ!?
先ほどまでエドガーに優位に立てた筈なのに一気に敗北感が襲ってきた。
やはり一番の敵は近くに居たようだ、と思い知る。
後日、完成品の報告を兼ねて理事長室で説明を始める。
「……本当に新型を作りおった」
「お言葉ですが、新型というよりは新型のようなもの、です。まだまだ改良の余地があると思います」
「あれでか? 我が孫ながらたくさん驚かされて心労で倒れそうじゃわい」
「それはいけません。おじい様には長生きしていただきたいのですから。それで、改修は終わったのですが、僕としてはこのまま
「あまり根を詰めるような真似はやめておくれ。……もう少し子供らしい方がいいのじゃがな」
祖父の顔色が優れない事に気づいたエルネスティは苦笑する。
自分の趣味に走り過ぎてたくさんの人に迷惑をかけていたのだと、
だからといって
今回の作業で培われた技術を改めて資料としてまとめる作業に入る。それと学生生活も。
★
エルネスティが久方ぶりに教室に戻る頃、学生服姿のシズ・デルタの噂が耳に入ってきた。
気が付けば数か月も時が経ち、秋空の
季節の移り変わりにも気が付くのが遅くなり、自虐的に苦笑する。そして、もうすぐ自分は中等部二年に進級する――それと十三歳になる。
長いようで短い時間だった。エルネスティは後ろを振り返る事無く進み続けてきた。
(一つの目標を達成する充実感は気持ちがいいです。けれども僕はまだ止まるわけにはいかない)
それと一つの目標だけで満足してもいけない。
生きている限り、挑戦できる限り前に進まなくてはならない。
それと忘れてはいけないのは命を大切さだ。自分が造る
(奇麗ごとかもしれませんが……。争いが激化すれば人死にが出ます。それが自分のせいで起きないとも言えない)
全てを無責任に処理しようとは思わない。しかし、いちいち罪悪感を覚えては何も作れなくなってしまう。
そこはきっと感情を切り捨てる時が来る。エルネスティは自身を聖人君子だとは思っていない。そうでなければ兵器製造を否定、忌避している。
正当防衛とはとてもいい言葉だと呆れつつ思うが――
(……大量殺戮兵器……。聞こえはいいですが……。僕が作る先にあるのは自分の趣味で済ませられるものでしょうか。そうありたいと思っている事がいつまで続くのか……)
お気楽そうに映るエルネスティとて気がかりにはいくつも覚えがある。
今は良くてもあとでたくさん後悔することになる。それもまた『お約束』だ。絶対ではないが、必ず向き合うことになる。そう確信している。
「……お前がエルネスティ……エチェバルリアか?」
「……シズさん?」
一般学生の制服を着ているシズ・デルタ。いや、そんな筈はないと即座に否定する。
では、目の前に居るのは何者なのか。
姿形は良く似ている。違いは背丈くらいか。
「名乗る手間……省けて助かる。……可愛い男の子と聞いて会いに来た」
抑揚のない言い方はシズによく似ていた。表情が変わらないところも。
髪の毛が長い以外はどう見てもシズ・デルタだ。
(……娘さん、ですね。前に会った時と少し印象が違う気がしますが……。成長とか別の姉妹でしょうか。
まずは軽い挨拶から。すると相手もきちんと返答してきた。
伝え聞いた情報が正しければシズ・デルタという名前の筈だ。一家が全員同名というのは理解に苦しむが――
どうやって区別しているのか、想像がつかない。
「……ネイアのような味のある顔というわけではないな……。面白くない」
「?」
人の顔を見て面白くないと言われたのはエルネスティにとって初めてだった。
しばらく見つめられた。彼女の瞳は明るめの緑色。この辺りでは見かけない神秘的な美しさがあった。
その後は興味を失ったのか、彼女は黙って教室から去っていった。
表情の変化が全くなかった不思議な生徒で呆気に取られてしまった。
(……何だったんでしょうか。それよりも……、人間と話している感じがしませんでしたね。大人のシズさんはもう少し温かみがあったような……。あれでは人形と変わらない)
感情が死んだような存在は見ていて心が痛む。会社に使い潰されて心が壊れて命を落とす、そういう人間を何人も知っている。
だからこそ命を大切に思い、笑顔になってほしい。楽しい毎日を送ってほしいと思った。
(……人間であるなら感情が無いと駄目です。あれでは悲しすぎます)
そういった後、周りが騒然となった。いや、その原因はすぐに理解した。
エルネスティの目から涙が滂沱の如く流れて出ていたのだから。
自分でも驚くくらいに。
迂闊に他人に共感すると感情が暴走する事がある。特にエルネスティくらいの年頃には珍しくない現象だ。
いつもは無機質な
★
涙は
気を取り直して勉学に励む。目標は中等部の課程を無事に終えること。次なる目標は高等部に進学して
乗りさえすれば自分で
さすがに必修課程を
学生のシズはその後、真面目に授業を受け、始終エルネスティを追い回すような奇行に走る事も無く――
本当に地味としか言いようがない。ただし、見た目が可愛いし、意外と愛想が良いので人気が高かった。悪いのは不愛想な無表情だけ。
エルネスティのように凄い魔法を使ったり、
「……てっきりエル君と一緒に
エルネスティの机に突っ伏す様にアデルトルート・オルターは愚痴を言う。
大好きな彼の為に様々な噂話を集めていた。しかし、シズに関しては目立った行動が見られない。当初こそエルネスティを探すような事があったのが変わった事と言える。
「僕の顔を見て満足しちゃったんでしょうか?」
欲しいものを手に入れた途端に飽きる現象には覚えがある。それと似たようなものなら理解できる。
それから大人のシズは学園には居らず、
娘の為に働き口を探している、ということだったので素直に就職できたのであればおめでとうと思う気持ちはある。
機会があれば出会える筈だ。そんな気がした。
それから一ヶ月間、真面目に学生生活を送り、家族とも平穏な時間を送っていたエルネスティだったが、突如理事長を経由して国王の下に出向するよう命令が来た。
ここしばらく
訳も分からず特例で休学届が受理される。これは国王自ら命じた事らしい。
不穏な気配を覚えつつフレメヴィーラ王国王都カンカネンへと向かう。
馬車による移動で向かうのは街の中心にある『シュレベール城』だ。人々の活気を横目に見ながらエルネスティは一緒についてきたオルター弟妹の顔を見る。
呼ばれたのは理事長と自分の二人だけ。確かに供を付けてはいけないとは言われなかった。しかし、二人は勝手に休学して大丈夫なのか心配だった。
腹違いとはいえセラーティ侯爵の御子息、御息女であるのだから。
「俺達はエルのお付きのようなものだから」
「一人で遠くに向かう事をお父様がお許しにならないと思う。だから大丈夫」
何が大丈夫なのかエルネスティには理解できないが、一緒に怒られるのは勘弁願いたいとだけ伝えた。
他にエドガー達
★
人ごみを避け、裏手から城に入る事になった。正式な招待だと思っていたエルネスティは意外だと思いつつも大々的な催しにされては気恥ずかしいので、助かったといえる。
護衛の兵士たちに案内されて向かうのは事務室ではなく王が構える謁見の間だ。
国王アンブロシウス・タハヴォ・フレメヴィーラとは面識があるエルネスティ達も少しずつ緊張が増してきた。
荘厳華麗な城の中を移動するだけで気持ちが高揚してしまう。それは
大扉を抜けて通された謁見の間――その際奥にある玉座に国王は座していた。
肘掛けに寄りかかり、厳しい目つきで。
国王の御前にエルネスティ達は横並びに整列し、片膝をつく。
「国王陛下。招聘に応じ、エルネスティ・エチェバルリア
「うむ。……わしは確かお主とラウリの二人しか呼んでいなかったはず……」
国王の側には見届け役として貴族と思われる人物が数人立ち尽くしていた。その中にオルター弟妹の父ヨアキム・セラーティ侯爵の姿があった。
言い訳を考えている彼らに対し、セラーティ侯爵は黙したまま。
「こちらは友人代表として連れてきました。もしお邪魔であれば人払いなされば良いかと……」
「……いや、良い。
お叱りを受けるかと覚悟していたオルター弟妹は脂汗を流しつつ穏便に済んだことに安心した。だが、椅子は父の側に置かれたので緊張が再発する。
しぶしぶ移動したもののセラーティ侯爵は黙っていた。視線は中心にいるエルネスティへ。
「此度はお主を招くにあたって気持ちが高揚しておったのだが……。つい先日に悪い知らせが届いた。機嫌が悪いのはそのせいだ。別件ゆえ気を悪くせんでくれ」
「は、はあ……」
少し唸る国王はエルネスティに謝罪してから疲れたように息をつく。
今日は彼から面白い話を聞くために招待した。それが急に台無しになり、しかも、解決策が浮かばずに悩む事態に陥ってしまった。
表情を変えたくても気持ちが強く出てしまう為になかなか思うようにはいかない。
(……どうすればいいのだ。たかが賊の脅しに屈せよ、と? バカバカしい。……未だ怒りが抜けきらぬ)
気分を変えたくても変えられない。それに呼んでしまったエルネスティに今更帰れとは言えない。
今回の催しは何日も前から計画してきたのだから。急な中止は考えていなかった。いや、出来ないところに凶報が届いてしまった。それも無視できないものが。
「……いかんな。折角楽しみにしていたのに……。では、改めて……。いきなり
「はい」
「
そう言いながら従者に手で合図を送る。すると小さなテーブルが国王とエルネスティの側に置かれた。その台の上には報告書と思われる紙の束があった。
それから各自に椅子が提供され、楽な姿勢になるように声をかける。
「単なる改造程度だとわしは思っていた。それがどういうわけか新型に変貌していた。その理由を話せ。出来るだけ分かりやすくな。出来るか、エルネスティ」
「はい。陛下がお望みとあれば……」
そう言って椅子から立とうとしたエルネスティだが、国王は座ったままでよいと伝える。しかし彼は説明は立ったままの方が楽だと言い返してきた。それと黒板を所望した。
既にある程度予測されていたのか、すぐに別の従者によって黒板が運び込まれた。
手際の良さから国王が彼の説明を聞くのを楽しみしていたことを確信した。
(……こういうやりとりを想定されていたのですね。余程興味を持たれているご様子……。では、その希望を全力で叶えさせていただきます)
一つ息をつき、意識を説明に集中する。
テーブルの上に乗っていた報告書は
「では、始めさせていただきます。えー、まずは……ディートリヒ先輩の愛機グゥエールの改修を打診した僕は動きを良くするため、色々と調べました。陛下が危惧されたように僕も当初は大幅な改造を想定しておりませんでした。多少のアイデア程度で終わるものだと……。ですが、元々旧型のサロドレアの改修機は既にあちこちに問題を抱えていました。単なる部品交換では機能向上も見込めません」
そう言いながら離れている者にも見えるように黒板に簡単な
意外と上手い事に国王は驚いた。
設計までこなしていると聞いていたがほぼフリーハンド。いやに描き慣れている。
「まず背中に
「
そういいながら笑い出す国王。
少し表情が和らいだのでエルネスティ以下は安心した。
「この方法は確かに耐久性を向上させました。しかし、同時に重量が嵩みます。従来の筋肉を増量するので当たり前なのですが……。これを全身に施すと動きが鈍くなります。元々、サロドレアの重量はそれ自体で完成されていたのですから。追加は想定外だった。であればどう解決するか……。機体を大きくするか筋肉を削るか……」
「その前に……。耐久性だけではなく
「はい。
折角増えた
そうすれば次にすることは軽量化だ。どこを削ればいいのか、という問題に当たる。
つまり、一つを改良したばかりに他に問題が発生し、それを解決すればまた別のところから問題点が浮き彫りになる。
「想定外による問題点の連続浮上は難題でした。それらを解決しなければ折角の技術が死んでしまいます。勿体ないと思った僕は出来る限りの対策を考えました。まずは筋肉だけ別の試作機で様子見をすることにし、データを取ります。これは未整備の機体を借りただけです。次は下半身の支えたる関節部分の改良です。それと同時に骨格をどうにかできないか思案致しましたが……。なかなか思うようにはいきません」
新たな問題点を図に書き込む。
殆ど問題点が無い部分など無いと言わんばかりだ。
「ここでおさらいとして、
「うむ。お前たち学生に与えたものは骨董品とさして変わらぬものよ」
「今回の筋力増強に関しては従来の骨格を新調しても構造的に支えきれず、崩壊する危険性がありました。それを解決するには
不穏な言葉が周りに聞こえ、
もし、材料が無ければどういうものを作ろうと企んでいたんだ、この子供は、と。
それはオルター弟妹も初耳だった。
黒板に描かれていた
「窮地にこそ活路を見出す機会があるものです。どの道、完成させるつもりでいました。どんな形に変貌しようと」
口元を歪ませるエルネスティの邪悪な笑みにオルター弟妹のみならず周りに控えていた護衛や従者達が戦々恐々とした。ただ、国王だけは不敵な笑みで対抗していた。
自分で言いだした事なので諦める、という選択肢は無かった。それは元技術者としての矜持でもある。
「従来の
単なる改修の説明から
小さな子供に過ぎないエルネスティが見つけた問題点。
自身も
★
何百年も昔から製作と改修が続けられた
国家事業に匹敵するものを子供が簡単に覆せる筈がない。本来ならば無理である。それなのにどういうわけかここ数年で覆ってしまった。
当初、国王は地味で有名な一族シズ・デルタの恩恵を疑っていた。元々、謎の存在であり、
シズがやっていたのは単なる鉄くずのオブジェ作り。
(学生時分であったシズは知識は吸収していたが作業には参加しなかった。その娘がいよいよ動いたかと思えば鉄くずで遊ぶ始末……。更に娘の娘は最近入学したばかり……。勘繰りすぎたようで残念に思ったものよ)
シズの事を考えるのは悪い報告に関係する。しかし、
しばし思考が脱線し、唸るアンブロシウス。それに驚いたのは従者たちとエルネスティだ。説明に不備でもあったのか、と戸惑いを見せた。
「陛下? どうかされましたか? ご質問はどしどし受け付けております」
「ああ、すまぬな。続けてくれ」
「え、はい……。では、説明を続けさせていただきます。人の十倍近い巨体を持つ
長い説明にもかかわらず、国王は黙って資料とエルネスティの話しに聞き耳を立てる。他の者は手を上げたくて仕方が無かったが、事前に質問する事は禁じられていた。
聞くべきことは子供が国家事業を
「解決しただと? わしにはそうは聞こえんな。解決していない懸念は相当残っている筈だが?」
他の者であれば聞き逃してもおかしくない。けれども、国王は
そんな中にあってさえ強敵と
「ええ。今まで提示した機能を十全に生かすための
「……つまり。お主は単独開発を諦めたのだな?」
「それは語弊があります。僕はなんでも自分一人で出来ると思っている程傲慢ではありません。みんなで造る事も楽しみですから。仲間と協力して新しい物を作る……。それを否定する気持ちはありません」
「だが、周りはそうは思っていないようだ。此度の改修の殆どはお主の発案が多いそうだな。……それを悪いとは言わんが……、無茶が過ぎるところがあったとか」
そう国王が言うとエルネスティが小さく唸った。
強引なところは否定しないし、反省するところである。けれども作りたい欲求には抗えなかった。
目の前にチャンスが転がっている。それを黙って諦めるわけにはいかない、という気持ちが濃く表れてしまった。
「それに僕は案は提示出来てもものを作る事が出来ませんでした。特に錬金術師学科の皆さんには大いに助けられましたし、素材を提供してくれた
「そなたの熱意に動かされた結果だな。わしも報告を楽しみにしていた。もし、お主が難題に行き詰り黙って引き下がる人間であればグゥエールの完成は数十年も先延ばしになっていたやもしれぬ。そればかりか勝手な改修による経費の請求が……、無いとも言えんな」
「ま、まあ、お金に関しては……、何とも言えません。一生働いてでも返済する所存です。それには実績を積んで良い会社とかに就職しなければなりませんが……」
「確かに。お主ならば
国王の挑戦的な発言に軽く頷く銀髪の少年。
周りの者達は『まだ続くのかよ』とか『聞き足りない事なんてあるのか』と混乱の極致であった。
ここに来て国王アンブロシウスという人物はただ玉座に座って偉そうな態度を示すだけの
こういう説明の場合は大抵、側に専門職の者が控えて通訳するものだ。なのに国王の側にそのような人物は配置されていない。あるのはエルネスティが持つものと同じ報告書の束のみ。
「では、説明を続けさせていただきます。先の説明の通り多くの懸念が発生し、その解決策を模索する上で避けては通れないのが頭脳と心臓です。
これについては国王自身は許可を出してもいいと早期に思っていた。
得体の知れない子供にいじらせるのは遺憾である、ということで反対多数で否決されてしまった。
最終的には
「先にも言った通り、
「……これは興味からだが。
「……さすがにすぐに……とはいきません。先人の知恵は侮れないものがあります。無から作る事は僕でも難しいし、おそらく……五年以上は研究に没頭しなければならないと試算しております」
頭脳の仕組みを勉強するところから始める場合、既存の知識を理解するのに数か月は絶対に必要だ。そこから
この理屈だと半年もあれば出来そうだが――最初の数か月を得るには卒業しなければならない問題がある。
後は
制作に関してはエルネスティも単独で造る事に慣れておらず、今は知識のみしか持っていない。
五年というのはあくまで指標であり、もっと早く完成する事もあり得る。ただし、そこから更に改良する事になるので真に完成品となることは無い。
(……その歳で五年かかると言うか……。もし、その言葉が真実になればフレメヴィーラ全体が震撼するほどのことよの)
「それと心臓部たる
「……ほう。お主でもそこまで言う代物であったか」
もし、何とか頑張れば出来ます、と言おうものならそれはそれで驚きだ。
彼とて出来ないものがある、ということはとんでもない生物ではない証拠だ。
少し賢いだけの――
「問題なのは大きさです。
「……はっ? つ、作れるというのか?」
「理論の上では……、と言っておきます。原理は分からなくとも実際に僕たちは触媒結晶を扱えますからね。小型化を諦めれば無理矢理で出来なくはないです。それを成すには魔獣を絶滅するくらい狩る必要があるかもしれません。そうなると生態系が崩れてしまうおそれが……」
エルネスティにとって問題は
あまりにも逸脱した大きさは彼とて望んでいない。それは頭脳たる
国王はこの意見に大層笑った。
これが荒唐無稽であれば呆れるところだ。しかし、彼は理論立てて製造する仕組みを説明してのけた。
そう。聞けば答えてくる。答えられるだけの
★
ずっと喋らせていたので喉を潤すための飲み物を用意させた。他の者にも同様に。
叩けば出てくる
「自作についてはまたの機会として……。なんとか
と、にこやかな笑顔になるエルネスティ。その時の様子が何故だが手に取るように幻視出来た。
相当、見晴らしの良い景色が彼の中には映し出された事だ、と。
「内部を大幅に入れ替えた機体ですから、最適化するのに少し手間取りましたが。身体を支える時に発生する様々な
「報告だけみれば筋肉の増量と関節部の刷新を除けば大したことはしておらんのう。後は全身を制御する頭脳を矯正したところか」
「はい。関節部に関してはまだ改良の余地があるかもしれません。天然素材は数が限られていますから。ですがっ! モデルケースさえ作れれば改良には然程時を必要としないと思われます」
自信を持って言い放つエルネスティ。その自信は何処から来るのか、国王は大いに興味がわいた。ただ、それに反比例するように諸侯貴族達の顔は蒼白になっていた。
なんなのだ、この子供は、と。
国家の秘事をいともたやすく何度も覆しおって、とか色々と小言が漏れる。
「……もでるけーす?」
「試作品のようなものです。後は模倣です。形さえできれば人間、何とかなるものです。それまでが大変なのですかけれど」
「……
「無事とは? 模擬試合の後、再検査にかけましたが異常は見られませんでした。結構丈夫に作ったと自負しております」
「……いや、悪く思うな。通常であれば稼働した後の
「……僕の見立てでは心臓部というのは
「怖い? 今以上の戦力に繋がるかもしれぬのだぞ」
「いえ。僕は様々な
横に控えているオルター弟妹に顔を向ける。
特にアデルトルートは間違いなく軽蔑してくる。いや、大声で怒鳴り散らす。
更に母であるセレスティナが喜ぶとは思えない。
魔獣退治には協力できるが人を殺すための兵器は抵抗がある。少なくともそういう目的で
大きなプラモデル以上の考えは持ち合わせていない。
「わしの勅命の場合はなんとする?」
「国外逃亡でしょうか? ですが、人質を取られると思いますので仕方なく従うしかなくなりそうです。僕とて命は大事だと思っていますから……。そうですね……、現実逃避して開発に従事すると思います」
意外な言葉に国王は驚く。しかもほぼ即答だ。
彼ならば少なくとも逃亡すると踏んでいた。フレメヴィーラ王国に敵対してでも自分の信念は曲げない、と思っていた。
ここに来て自分の命を優先する卑怯者を選ぶとは。
(……
「それとも……、それがご機嫌が優れなかった原因に繋がるのですか?」
「……まあ、当たらずも遠からず……。どこの国かは調査中だが……。我が国にケンカを売ってきた者が居る。……それも無視できない形でな。その対処に追われていたのだ」
秘密情報の筈なのに平然と言ったのは相当頭に来ているからだとエルネスティは予想する。その証拠に発言を制限しようと何人かの貴族が進言を試みた。
それらは国王が軽く手を振って制していく。単なる愚痴よ、と言いおいて。
「あえて聞くが。お前が作り上げた技術などは最近完成したもので相違ないな?」
「報告書に記載した通りでございます。お疑いならば担当した作業員に尋ねてもらっても構いません」
「うむ。それともう一つ……。その
「はい。エチェバルリア家はもちろん、知り合いのドワーフ族の店も大掛かりな敷地はございません。まして、大きな
「そうか。セラーティ侯爵の敷地はわしが存じておる。後は移送か……。とはいえ不毛よの」
「機体数ですが、同時に改修していたのは他に二機です。それらは作業員の方々が
「それについても確認している。つまり都合、三機だけか」
はい、と元気よく答える。
それ以上は整備の為の
「小型化した
もちろん、それも報告書に記載している。
現行三機のみ。追加で作っていたとしてもエルネスティとオルター弟妹しか使いこなせない難物である。改良もまだだったはずだとエルネスティは記憶していた。
★
分かっている事を尋ねるのも心が痛む、と小さく呟く国王。
その後、少しの間唸る。何かを悩んでいるように思えるし、エルネスティも質問してくれれば何でも応えたい気持ちがあった。隠す気など微塵も無い、と言わんばかりに。
「使用目的は分かりませんが、
「……相手は得体の知れない賊だ。賊を使って情報を得ようとする国が正しいかもしれん。そんなことでお前の技術をくれてやる義理は無い」
「……賊。……賊? ………」
ごく最近、身近で怪しい気配を感じた。それが何なのか、何故か思い出せない。というか思い出したくない思い出のように。
時間が経つにつれ、汗一つかかずに国王相手に長く説明してきたエルネスティの額から脂汗が流れ出る。
それと同時に心臓が強く鼓動し始めた。
「えー、あー……。その……国王陛下……。言葉にするのが非常に難しいのですが……。何故か、とっても身に覚えがあるのですが……」
「……そなたの顔を見れば言いたいことは理解できる。さすがの貴様も無視は出来んか」
今までにこやかに、平静に、冷静に――
取り乱す事など無かったエルネスティが顔面を蒼白にしている。やはり特別な生物ではなかったのだな、と
時期を改めた方がいい気がした。彼の功績を
「これは単なる興味なのだが……。わしは売られたケンカは買う主義でのう。この場合、国王という立場でわしはどう振舞えばいい? 報復が一番良いと思っているのだが……」
「いけませんっ!」
エルネスティは即刻大声で言い放った。
笑顔が可愛い男の子が真剣に怒りを表した。
「そ、そんな……、陛下は国の
「……その通り」
と、横に控えていた貴族の一人が言った。
それに国王は軽く唸る。
「あえて不敬を承知で言わせていただきます。報復は報復による連鎖を生みます。絶対にダメです。まずは調査隊を……」
「
「何をおっしゃいます。国が荒れては
「……お前もなかなか無茶な論理を展開するのだな」
「エル君ですから」
「
オルター弟妹の言葉に何かを思い出したのか、国王はラウリに顔を向ける。
よき理解者が多くて羨ましいと、暗に言っている顔だ。
(なかなかどうして、言うではないか。完全に興味がないから勝手にすればいい、とか言うと思っておったぞ。……しかし、
誉めるために来てもらったエルネスティを嫌な気持ちにさせては本末転倒だ。それに今の暴論で多少なりとも傷つけてしまった。その自覚は国王としても持ち合わせている。
本音を言えば彼に意見を貰いたかった。どうすればいいのか、権力に頓着しない柔軟な発想を持つ歳若い若者代表として。
★
賊関連はエルネスティの意見を取り入れ、調査隊を結成する事を約束する。安易に国を戦火に巻き込まない事も。
その代わりにもう少しだけ話しを聞かせてもらうことにした。
「それはそれとして、だ。ラウリも他の……、
「は、はい。では、率直な感想を述べてさせていただきます。旧来のサロドレア型
「新たな名が与えられたようだが、
「もちろん、同意を貰いグゥエラルと名付けました。改修の延長という意味で元の名前からもあまり離れないように、と……。ディートリヒ先輩は大変喜んでくださいました。実に動きやすいと。見ていた僕も驚いたほど。実に滑らかに稼働しておりましたよ」
「わしはそこまでしろとは言っておらん。それゆえに驚いた。お主は妥協というものを知らんようだ」
それが悪いとは思わないが学生に出来る事は限られている。それを覆すような事をすれば諸侯達が騒ぎ出す。そして、何らかの悪意が生まれるものだ。
悪意に関しては不明な点が多いのでエルネスティに責任を押し付けるつもりは無いし、考えてもいない。
「人が乗る
エルネスティという少年の熱意の
「その心掛けは大したものだ。……だが、貴様は国の秘事に一人で立ち向かい、それを成した。前代未聞と言ってもいい。数百年の研鑽の果てに新型は生み出されるものだ。それを急に表れた貴様は簡単に成し遂げてしまった。本来なら新型の製造に対し、褒めるのがわしの立場だ。だが、歴史を無視できないのが諸侯貴族の立場だ。この場合、お主はどういう立ち位置に居ると思う?」
「……大勢の立場の方としては僕は厄介者という事でしょうか?」
「そうではないが、間違ってもいない。……あまりなじみは無いと思うが教えておこう。そのような場合、わしは成功者を誉める。場合によれば貴族位に置くこともあり得るし、お主の場合は特例として騎士に召し抱える事も出来る。……言いたいことは理解できたか?」
エルネスティ以外は理解できた。
国の偉業を一人で成し遂げる人物に対し、その身に余る栄誉を賜る。つまり、他の貴族連中からすれば非常に面白くない人間の誕生を意味する。
セラーティ侯爵の嫡子であれば彼の一族は繁栄が約束される。他の貴族もそうなる。その為に我が子に様々な知識を学ばせるものだ。
今回はエチェバルリア家全体が
将来を約束された存在になるのは確実だ。それによって多くの妬みが生まれる事も考えられるが――
「……えーと、僕はこの歳で騎士になると?」
「それどころか一個師団に入れる事も、その団の団長の地位もありえるぞ」
「……まさか。それこそ暴論ではありませんか?」
「それだけの価値があるのだ。その国家事業というものは。だからこそ大勢の人間が関わっている。その大勢を一足飛びに飛び越えてお主は偉業を成し遂げたのだ。ある意味では蹴落とした、といってもいいくらいにな。既に
実に楽しそうに国王は言った。
これはエルネスティを窮地に貶めるつもりでの発言ではない。堅物揃いの
国王としても新開発の
「先の話題でわしは非常に機嫌が悪い。そんなわしを楽しませる気はあるか?」
「……僕としては……、国王陛下がご所望であれば叶えたい気持ちはあります。もちろん、平和的な手段に限られますが……」
「いずれ人との戦闘もあるやもしれぬぞ。
東は魔獣に専念できるが西側諸国はそうはいかない。
人間同士の覇権を争う血で血を洗う戦場が存在する。今は彼に詳細まで告げる気は無いけれど――
ここまで言ったのだから
国王としては子供に戦争の道具を作ってくれとは言いたくない。けれども国を守るためには必要になるかもしれない。その事実を知る大人として言わなければならない事があるだけだ。
「ここまで関わったお主だ。最後の部品を諦めるわけはないであろう?」
(最後とは心臓部……。でも、僕はここにきて迷い始めている。……戦争の道具になる。そんなことを考えないようにここまで来てしまった。歴史の授業を話し半分で聞き流したのがいけなかった)
けれども――途中で諦めるわけにはいかない。手を伸ばせば届くところにまで来ているのだから。
自分には自分の為だけの唯一ともいえる
もう少しで最後のパーツが手に入る。だが――
(それは同時に戦乱の予兆です。この国に凄い人間が居る事が諸外国に知られてしまう……。既に知れ渡っているのかもしれません。その事を失念したまま情報を国内に流してきたようなものですから。……きっとシズさんは巻き込まれただけ。僕のせいで……かもしれないけれど)
シズはおそらくエルネスティの身代わりだ。まさか子供が
★
責任を感じたからと言って
たまたまシズだっただけだ。今回はエルネスティも
制作者は責任も付随する。それは他人にプログラムを提供する立場であった頃と然程変わらない。
だから、安易に逃げてはいけない。
「制作者の責任として……。不十分なもので満足しないために。最後の部品を求めたいと思います」
「よく言った。ここに居る諸侯は証人だ。良いな?」
「へ、陛下っ!? このような子供に委ねるおつもりですか?」
「外に流れるより召し抱えた方が良かろう。誰が責任を持つかは後で決めるとして……。決まらなければわしが面倒を見る事になるぞ、クヌートよ」
「……おそれながら、陛下。お戯れが過ぎますぞ」
国王と歳が近い男性貴族クヌート・ディクスゴード公爵は食って掛かった。それが出来るのも国王と長い付き合いがあるからだ。他の貴族は唸るだけ。
その中に合ってセラーティ侯爵はオルター弟妹の様子を見ているだけで大人しく佇んでいた。時折、軽く頷いたりするくらいだった。
「エルネスティ。そなたは中等部一年だったな?」
「はい」
「では、中等部三年の卒業間近に……、
「了解しました」
「公平を期すためにある程度の情報を
「もちろんでございます。しかし、同じ
「それはあり得ん。
そう言うと得心がいったエルネスティは不敵な笑みを見せる。
既に国王は
自由な発想が許される分、気が楽だが戦闘に耐えうるものに仕上げるには資材と時間が必要だ。人材は既に用意されていると言ってもいい。特にエルネスティの要求に応えられる者は限られてくる。
「それほど多くは作れないと予想するが……、多くて五機くらいだろうな。最低でも一機だ。グゥエラルとやらに相当時間をかけたようだから……」
「……今から取り掛かって……新型となると……。確かにそれくらいはかかってもおかしくないですね」
そもそも新型を数年で造れるはずがない。要望したとしても従来であれば百年後だ。それを二年足らずで造れと命令している。
それが出来るのはエルネスティだけだ。そして、国王はよく理解していた。
改めてエルネスティは驚かされる。自国の王様アンブロシウスに。ついでに細かい指定が気になる。まるで事の成り行きを手に取るように把握しているようで――
もしかして国王には見えているのかもしれない。勝負の流れが。そうエルネスティは予想する。
「この勝負は熟練の職人集団たる
試合は秘匿されるものではなく、多くの観客が居ると公言したも同然だ。
であれば国王以外に見せる相手が居る事になる。それは誰なのか――
「いいでしょう。受けます。……最後のは余計です。ですが、こちらも要求したいことがあります」
(このタイミングは謀られたもののように感じますが……。いいでしょう、乗ってあげますよ)
「言ってみろ。挑戦者の正当な権利として認めよう」
「ありがとうございます。では、遠慮なく……。勝利の暁には
(……ただ、懸念は残っています。全てのパーツが揃っても建造に必要な拠点がありません。従来通り学園の工房を使わせてもらうことになるのでしょうか?)
既存の
この発言に対し、多くの貴族、従者たちが唖然とした。その中にあって国王だけは大きな声で笑った。
実に満足げに。さすがは豪胆な若造よ、と。
豪胆と言われて少し不満げなエルネスティ。ただ、この発言も国王の想定内のような気がしてならない。
この勝負は外国に向けてのパフォーマンスを兼ねているとしたら――
(国の未来を憂いていれば必然か……。なかなか侮れないお人のようだ。でも、
今度はビクビクして分析しなくていい。自分の裁量で分析し、改造できる。
その為には国王を驚かせる必要がある。何やら想定内の場面を浮かべているようなので、それを覆す機体を用意しなければならない。だが、あまりにも巨大なものでは移動や戦いにならない。反則的では印象が悪くなる。勝負どころとしての最低限の規則は守れ、といったところ。
事前に細かく指定しなければ勝負としての楽しみ
(つまり、常識の範囲は出来るだけ守れ。でも、びっくりさせてみろ、と。やりましょう。やってみせますよ)
それに現状の資材だけで造らなければならない。おそらく制作場所は学園の工房のみ。
秘匿性も
やり甲斐のある仕事である事だ。楽しくなければこの先も続けていけるわけがない。
これは自分の趣味の強さを見せる――見せつける戦いでもある。