魔法使いのToLOVEる   作:T&G

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第二十八話

「ララちぃ、ちょっといい?」

 

いつもと変わらぬ学園での平和なある日の休み時間のこと、籾岡がララを尋ねてやってきた。

 

「その完璧なスタイルをどうやって維持してるのか教えて欲しいの!」

 

「ララちぃはモデルさんみたいにスタイル良いからねぇ」

 

籾岡と一緒に沢田も後ろでそう言いながらララのもとまでやって来る。

 

「スタイルをどうやって維持してるのかって?」

 

「そう! なにか良い方法があったら教えてよ」

 

籾岡に尋ねられたララはしばらく考えていたのだが。

 

「う~ん、あんまり意識したことないなぁ。 私、別に食べても太らないし」

 

「「羨ましい!!」」

 

特に何もしていないようで、具体的なことは何も出てこなかったようだ。

 

それに対して、籾岡も沢田も声を揃えて本当に羨ましそうに話す。

 

「ララちぃの場合は栄養が全部ここに集中してそうだもんねぇ」

 

「きゃっ、やだ、くすぐったいよぉ」

 

籾岡がララの身体のあちこちを確かめるようにしながら触っていく。

 

そもそも俺から見た場合は籾岡もスタイルが良いと思うのだが何かダメなのだろうか。

 

「それにこのか細いウエストにはちきれんばかりのヒップ」

 

「うんうん、女の子にしてみたら羨ましいスタイルだよね」

 

ララのバスト、ウエスト、ヒップを順に触り、それぞれ感想を言った籾岡。

 

そしてそれを頷きながら意見を言う沢田。

 

さらに一緒にやってきていた西連寺も一言も話してないが、自分の身体とララの身体を比較している。

 

「やっぱり男としてはララちぃのスタイルがたまらないでしょ、結城」

 

「ん? 確かにララのスタイルは良いとは思うが、俺的には外見より中身が重要だな」

 

「「ほほぉ・・・・・・」」

 

俺の言葉にジト目を向けながら声を揃える籾岡と沢田。

 

本当にこいつらは双子みたいに息があった行動や発言をするよな。

 

「トシアキならそう言うと思ったよ」

 

ララは俺の発言にニコニコと嬉しそうにそう言いながら微笑む。

 

ちなみに西連寺も笑顔になっていたが、なにか良いことでもあったのだろうか。

 

「ならさぁ、こっちの中身は知りたくないワケ?」

 

机に座った籾岡は俺にだけ中が見えるようにソッと自分のスカートを持ちあげた。

 

「・・・・・・知りたくないと言えば嘘になるが、そんなことをして自分の価値を落としてるぞ籾岡」

 

「ありゃ? もしかして見慣れてる?」

 

この世界に来てから色々なトラブルに巡り会っているのでその程度では動じない。

 

別世界で既に経験を積んでいるということもあるが。

 

「ノーコメントだ。 せっかくの綺麗な容姿が軽い女と見られて台無しになってしまうぞ」

 

「・・・・・・」

 

俺がそう言うと籾岡は黙ってしまったのだが、何か思うところでもあったのだろう。

 

「ほら、チャイム鳴ったぞ。 席に戻れ」

 

都合よく次の授業が開始されるチャイムがなったので、黙ったままの籾岡を追いやる。

 

沢田も黙ってしまった籾岡の様子を気にしてはいたが、結局何も言わずにそれぞれの席へと戻って行った。

 

「というわけでベッド貸して下さい」

 

「何がというわけなのかわからないのだけど、まぁ、いいわ」

 

その後は特に何もなく、昼休みになったので俺は保健室へと足を運んでいた。

 

最近は御門先生と仲良くなったこともあり、保健室のベッドを使わせてもらうことがあるのだ。

 

「それじゃあ、いつものように授業始まる前に起こして下さいね」

 

「はいはい、ご主人様の仰せのままに」

 

「だからそれは止めてくださいってば!」

 

というようなやり取りをした後、俺は空いているベッドに横になってカーテンを閉める。

 

それから、目を閉じて眠りにつこうとした時、誰かが保健室を尋ねてきたのがわかった。

 

「御門せんせぇはどうやってそのスタイルを維持してるんですか?」

 

「ゲホッ!?」

 

尋ねてきた人の声を聞き、思わず咳き込んでしまった俺は悪くないはずだ。

 

というか、まだそんなことを聞きまわっていたのか籾岡よ。

 

「・・・・・・あまりそういうことは意識してないわね」

 

「へぇ・・・・・・」

 

「それでそのスタイルとか、さすが御門先生」

 

籾岡の他にも西連寺と沢田もいるようで、御門先生の言葉に相槌をうっていた。

 

「でも、そうね。 綺麗になりたいのなら恋でもしてみるといいんじゃない?」

 

「恋!?」

 

「おぉ! 大人の意見!!」

 

沢田と籾岡が嬉しそうに大きな声を出しながら頷いているような気がした。

 

もっとも、カーテンが閉まっているのでその詳細はわからないのだが。

 

「恋をすれば自分を磨くことに努力するでしょ? 負けるつもりの恋なら話は別だけど」

 

「恋か・・・・・・なら結城から攻めてみようかなぁ」

 

「えっ!?」

 

「ちょ、ちょっと里紗!?」

 

御門先生のアドバイスを受けて籾岡が突然、そんなことを言い出した。

 

その言葉に沢田も西連寺も驚いている。

 

勿論、そんなことを言われた俺も驚いてしまったわけなのだが。

 

「いやぁ、実はさ。 さっきの休み時間に言われたことがちょっと気になっちゃってて」

 

「でも、彼はライバル多いわよ?」

 

「「えっ?」」

 

御門先生の言葉に反応したのは籾岡と西連寺の二人であった。

 

というか、なんで西連寺まで反応したとか、俺がここにいるとか色々と言いたいことがあるんですけど。

 

「ふふふっ、私も最近は彼に興味を持ってもらえるように努力してるしね」

 

「「「えっ? えぇぇぇ!!!???」」」

 

昼休み終了のチャイムがなるまで保健室は阿鼻叫喚な状態になっていたのであった。

 

勿論、御門先生が起こしに来てくれた時は寝た振りをしていたのは言うまでもない。

 

 

 

***

 

 

 

「・・・・・・ん? 誰か来たのか」

 

深夜と言えるくらいの時間帯に俺の部屋に侵入してくる二つの気配。

 

俺は一日の疲れを癒すために眠りについていたのだが、その気配で目が覚めてしまった。

 

「まぁ、いいか・・・・・・」

 

殺気のような俺を害しようとする気配ではなかったため、気にせず目を閉じてそのまま眠りにつく。

 

美柑が俺のベッドにもぐりこみに来たとか、ララが来たとかそんなところだろう。

 

「などと考えていた俺が間違いだった」

 

朝、目が覚めて見てビックリ仰天。

 

俺の両隣にはララの妹で双子のナナとモモが静かに眠っていた。

 

「モモなんて俺の腕を掴んで寝てるし・・・・・・俺は抱き枕じゃねぇんだぞ」

 

「トシ兄ぃ、朝・・・・・・」

 

寝ている二人を起こさないようにと静かに身体を起こしていると、美柑が俺の部屋に入ってきた。

 

「よぉ、美柑。 悪いんだけどさ、ちょっと・・・・・・ぶっ!?」

 

「サイテーだよ、トシ兄ぃ! お、女の子とそれも三人で一緒になんて!」

 

何やら盛大な勘違いをしている美柑から投げられた鞄の角が顔面に当たり、悶絶する俺。

 

「むぅ、なんだよ。 人が気持ちよく寝てんのに・・・・・・」

 

「ふわぁ、何かあったのですか・・・・・・」

 

美柑の声と俺の悶絶での振動で両隣のナナとモモがそれぞれ目を覚ましたようだ。

 

というか、お前らの所為で俺がこんな目にあってるんだぞ。

 

「まったく。 ダメだよ、ナナ、モモ。 人のベッドに勝手に潜り込んじゃ」

 

「いや、お前が言うなよ」

 

俺たちの騒ぎを聞き付けたララも合流し、ナナとモモに向かって注意している。

 

その間に俺は美柑への誤解を解いたのだが、途中で思わずララにツッコミを入れてしまった。

 

「で、なんで二人がここにいるんだ?」

 

「やっぱり住むのならお姉様の近くがいいと思いまして」

 

「それで、この家の天井裏に空間を作って姉上と三人で住もうと思ってさ」

 

家主に許可もなく勝手にそんなことをしていたのか、こいつら。

 

だが、ギドに面倒をみてくれと頼まれている分、近くに居た方がいいはずだ。

 

「まぁ、いいか。 あんまり美柑に迷惑かけるなよ」

 

「トシ兄ぃ・・・・・・」

 

飯に掃除、洗濯と家事を全て美柑がやってくれているのだ。

 

住む人数が増えれば増える分、美柑への負担が増えるだろう。

 

「それは大丈夫です。 お風呂もトイレも食事も自分たちのスペースでなんとかしますから」

 

要するに家の中にもう一つの家が出来ると考えていいようだ。

 

ララもそっちの家へ行くようだし、今後はトラブルがあまり起きなさそうである。

 

「その家はもう出来あがっているのか?」

 

「はい、昨日の夜遅くに完成したので、トシアキさんへ報告に行こうと思ってたのですが眠くなちゃいまして・・・・・・」

 

それで俺のベッドで二人揃って眠ったということか。

 

しかし、報告と言われても何故最初に俺になのだろう。

 

「この前に注意されたから最初に報告しようと思ったんだよ」

 

俺の表情を読み取ったのだろうか、ナナが拗ねたようにそう言った。

 

モモも前に俺に言われたことを思い出しているのか、同意するように俯く。

 

「そうか、えらいぞお前たち。 ちゃんとわかってくれてたんだな」

 

「きゃっ!?」

 

「わわわ!?」

 

ベッドに座る二人の頭を思いっきり撫でてやる。

 

俺が言ったことを聞いていて、理解してくれていることがよくわかった。

 

「いいなぁ・・・・・・」

 

「羨ましい・・・・・・」

 

何やらそんな言葉がララと美柑から聞えた気がしたが、あえて聞こえなかったフリをする。

 

「と、とりあえず、昼からララの引っ越しの作業でもするか」

 

俺は思考を切り替えてこれからのことの準備をするのであった。

 

ちなみに二人からの視線に耐えきれず、引っ越しの作業が終わったあとにララと美柑の頭も撫でたのは余談である。

 

 

 

~おまけ~

 

 

「ふぅ、これで最後か・・・・・・」

 

「お疲れ様です、トシアキさん」

 

お姉様の発明品やら一式を私たちの新しい住まいへ運んでくれたトシアキさん。

 

「にしても広いな。 これが本当に天井裏とは思えん」

 

「ふふふっ、空間歪曲の応用ですからね。 今回はお姉様にも見てもらってますので前のゲームのように崩壊はしませんよ?」

 

前回の時は失敗してしまいましたが、今回は大丈夫なはずです。

 

「まぁ、ララも確認してるなら大丈夫か」

 

「うん? トシアキ、呼んだ?」

 

奥の研究室から出てきたお姉様はそう言いながらトシアキさんの傍へ寄って行きます。

 

「いや、この部屋の空間歪曲ってララが確認したんだろって話をしてたんだ」

 

「そうだよ! でも、殆ど修正することなんてなかったんだけどね」

 

殆どということは少し修正したということ、まだまだお姉様には勝てませんね。

 

「それじゃあ、俺は戻るな」

 

「うん! トシアキ、ありがとね!」

 

「おう」

 

そう返事しながら後ろ姿でプラプラと振るトシアキさんの手が気になってしまう。

 

「・・・・・・あの手で私は頭を撫でて貰ったのよね」

 

「うん? どうしたの、モモ」

 

「な、なんでもないです!」

 

少し熱くなった頬をお姉様から隠すようにして私は自分の部屋へ駆けこむ。

 

「お母様に撫でて貰ったことしかなかったですけど・・・・・・」

 

なんだか不思議な気持ちでいっぱいでトシアキさんの顔が頭から離れません。

 

ナナも同じ気持ちだったのか今度聞いてみようと私はそう思いました。


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