ダンガンロンパ リアルの絶望と学園の希望   作:ニタ

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episode 1 パート 4 (非)日常編

 皆さんお元気ですか? 僕は元気です。

 それでは早速、『河上守の3行クッキング』の始まりです。

 ご飯を炊きます。

 鍋に水を入れ、沸騰させたら出汁の元と味噌を溶かします。

 豆腐を丁度良い大きさに包丁で切り、例の鍋に投入し、5分ほど沸かします。

 出来上がりです!

 

「ふむ。白ご飯と味噌汁だけやけど、まあ十分か」

 

 後は適当に輪切りにしていたネギ(水を沸かしている間に済ませた)を味噌汁にいれるだけで十分か。

 結局は自分の分だけなので、こんなに大雑把になってしまっているけれど、その気になれば肉じゃがだって作れるもん! ……もん!

 ご飯をお茶碗に大盛りに入れて、味噌汁をお椀に注ぐ。コップにお茶を入れて御盆に乗せて台所から食堂に持って行き、食堂の真ん中のテーブルに御盆を置いた。

 

「あ、そうだ。箸を忘れた」

 

 急いで台所に戻り箸を探し、漆塗りの花柄がプリントされた箸があったのでそれを持ち出し、御盆の置いたテーブルまで戻り、箸を置いてから椅子に着席する。

 そして流れるように僕は両手を胸の前に併せて、目を瞑る。

 

「いただきます」

 

 僕は箸を持ち、すかさずお茶碗に箸を進ませる。

 お茶碗にテンコ盛りに入れられた、白く(かがや)かしい色をした米は、さながら夜空に輝くお星様のようだった。

 丁度良い具合に箸に乗せ、米を口の中に運ぶ。

 昔おじいちゃんに「30回は噛んで食べなさい」と言われていたのを瞬時に思い出し、ゆっくりゆっくり咀嚼する。

 その時間は長く感じたけれど、長くなった分、米の甘みが広がっていき、幸せな気分に陥っていた。

 よく噛んだ後は、一思いに米を喉に流し込む。

 

「…………」

 

 こんなに美味しかったんだな、ご飯って。

 僕は食物の美味しさに感動しながらお茶碗からお椀にチェンジ。味噌汁のいただきますだ。

 お椀を口元にまで持ってきて、先ずは匂いを嗅ぐ。

 

「お、ええ感じやな」

 

 味噌の引き出す匂いは、食を進めるのに絶妙な引き立て役なのだ。

 味噌は脇役で、ご飯は主役。

 日本の食文化について考えると、どうしてもご飯と味噌汁の因果関係が関わるが、僕自身、そんな事も考えずとも、答えは出てくると感じている(全て自説)。

 そして僕は、お椀を口につけて、汁を口の中にいっきに流し込む!

 

「…………」

 

 すかさず僕はお茶碗を手に持ち、ご飯を頬張る。そして味噌汁を飲むというサイクルを繰り返す。

 これが、僕の答えだ!

 ご飯は基本、ご飯だけでは興が廃る。ならば、他のものを付け足すとしよう。

 例えば味噌汁でも、お肉でも、冷奴(ひややっこ)でも、お魚でも、スパゲッティでも、焼きそばでも、肉じゃがでも、お茶でも。

 なんでも良いので、ご飯とオカズ一品が自分の目の前にあると仮定しよう。

 君達が先に目をつけるのはオカズか、ご飯か。人それぞれだ。しかし、僕の食べ方は、先にオカズを頂き、そしてご飯を口に放り込む。

 ゆっくり噛むと、一つ一つの味が広がっていき、そして飲み込んでいく。

 この法則を『ご飯オカズの中和の法則』と言う(今勝手に付けただけだけど)。

 中和と聞いて、あまり良い印象はないが、しかし、その中和を表すのは、味と味が平均的になると言うわけでなく、足し算になるのだ。

 味の足し算。

 米は噛めば噛むほど美味しくなる。

 オカズは一つ一つ個性が違う。

 オカズは脇役で、ご飯は主役なのだ。

 脇役は必ず主役を引き立てる。このバランスは誰でも決して揺るがすことができない。

 つまり、僕が言いたいことは、お米は、何でも合うのだ。

 それと、コレを言うと米に対して冒涜している気分になる時はあるけれど、嫌いな料理の時は、お米と一緒にたべると、プラマイ0になることが多い。

 様々の理由を併せて、僕はご飯が好きなのだ。

 

「何だか気持ちが楽になってきた」

 

 朝日奈さんは、ドーナッツを食べると元気が出ると言う。

 僕も同じ、ご飯を食べると元気が湧く。

 味噌汁とご飯のパーソナリティーは、リスナーをいつも喜ばせる。

 

「ふぅ……美味しかった……」

 

 僕はコップにあったお茶を飲み干した。お茶の歴史についても説明したかったが、割愛させてもらおう。

 僕は両手を胸の前に併せて、目を瞑る。

 

「ごちそうさまでした」

 

 食器が乗った御盆を持ち、椅子から立ち上がる。

 台所まで御盆を持って行き、食器を(おけ)に入れ、洗い物を始める。

 自分で食べたものは、自分で洗うものだ。

 と、昔の僕では考えられないほど、いつの間にか達観していた。

 とまあ、ここまで来たんだけど……

 

「よくここまで説明できたもんやな」

 

 どんだけ僕食事好きなんだよ。孤独のグルメを思い出したぞ。

 シリーズ化とかしなければ良いけどな。

 

「美味しいね、これ」

「!?!?」

 

 あまりの突拍子のなさに、つい手に持っていたお椀を落としてしまった。まあ、桶の上だからまだ良いけど……じゃないッ!

 

「なんでここにいるんやモノクマ!」

 

 ガスコンロの所に脚立を立て、小皿を持って味噌汁の味見をしているようにモノクマは立っていた。

 

「気性が荒いな、河上君は。お味噌汁の味を褒めてるだけなのに……」

「お前飲めんやろが!」

「あ、バレた?」

 

 せめて中の人が飲みに来いよ!

 

「まあ、美味しそうだし、少しだけ持っていくね」

「それは別にかまわんけど……」

 

 どうやって持っていくつもりだろう。まさかシャッターを開けるとかか?

 そんな疑問をよそに、別の鍋を用意して、お玉を使って鍋から鍋に鼻歌を歌いながら適当に移していた。

 

「空を自由に、飛びたいな~」

「…………」

「ノリが悪いなぁ、もう……」

 

 少しシュンッとさせたモノクマ。

 

「まあいいや、今日はこれでご飯を済ませるしさ」

「まあ、後で感想聞かせてや」

 

 一様は作ったのだから、誰かに感想を聞くのも良いだろう。

 それにもう一つ気になることがあるのだ。

 

「モノクマ。僕はどの部屋で寝ればいいんや?」

「んえ?」

 

 僕に顔を向けて「何を言ってるんだこいつ」みたいな反応だった。

 

「僕の部屋、ないだろう」

「ああ、そういえばそうだったね。味噌汁の気を取られていたよ。実はね、さっき苗木君の部屋に行ってきたんだ。そしたらね、河上君が寝るのは別に構わないって言ってたよ! のけ者の君にそんな優しい言葉を掛けてくれるなんて、優しいよね~」

「……それは本当か?」

 

 モノクマの言葉はいつも信用ならない。根も葉もない嘘ということもありうる。

 

「うん。本当だよ。だって味噌汁くれるんだもん。それ相応のお礼もするよ」

「なんか以外だな……」

 

 もっと残虐非道な奴だと思っていたけれど、もしかしたら、モノクマって優しいのか?

 

「まあ、いつかは部屋を設けてあげるから、今日は早く寝ることだね。食堂はもうすぐ閉じるから。個室以外で寝れば罰則だよ」

「なるほど。それが理由か」

 

 無闇矢鱈(むやみやたら)と罰則をすれば、モノクマも面白くないし、そもそも僕自身はモノクマにとってイレギュラーだ。残しておきたい人材だろう。

 その言葉を機に、モノクマはお玉を鍋においてフタをする。

 

「それじゃ、僕はさっさとお家に帰るから」

 

 そう言うと、モノクマは鍋を持ちながら慎重に脚立から降りて、台所からそそくさに立ち去った。

 

「……僕も行くか」

 

 残りの食器も洗い終えたら、手を拭いてさっさと食堂から退出した。

 誠ちゃんが寝る前にさっさと誠ちゃんの個室へと向かう。

 その時、学校の方へ向かうモノクマが見えたけど、気にすることはしなかった。

 

「このインターホン押せばいいか」

 

 部屋にはついたけど、寝る前に迷惑かな、と思ったけど、立ち往生って訳にもいかなかったので、インターホンを押した。

 と押すが否や、ドアが開かれた。

 

「あ、守君か」

 

 誠ちゃんの顔が部屋からひょっこりと出され、僕と確認するかのように名前を言った。

 

「うん。実は、今日ここで寝かしてほしいんよ」

 

 モノクマから事情は受けてる筈だろうけど、確認は取らないといけない。礼儀だからな。

 

「うん、大丈夫だよ」

 

 何もない部屋だけど入って、と誠ちゃんは部屋に戻り、僕は部屋に入る。

 看病していた時とはやっぱり変わらず、強いて言うなら箪笥(たんす)の上に張ってあった紙がなくなっていた。

 

「一様、あそこに布団があるんだ」

 

 と誠ちゃんが言うと、ベッドの方向を指差した。

 

「え、まあ、布団はあるけど……二人で一緒に寝ようってこと?」

「違うよ! ベッドの向こう!」

 

 と僕はベッドの反対側を覗いてみる。

 そしたら、床に布団が敷いてあり、シーツと枕もあった。

 

「ああ、布団敷いてあるな」

「うん、モノクマが用意したんだってさ」

 

 あいつ、鍋持ちながらそんな器用なことしたのか?

 

「そうなんか。それじゃ、そろそろ寝るか」

「そうだね。それじゃ、おやすみ」

 

 僕は布団にさっさと潜ると、目を瞑り、明日のことを考える。

 

「そうだ。味噌汁直すの忘れてた」

 

 一様冷蔵庫に入れておかないと、腐ってしまうかもしれないし。

 まだ、モノクマ校内放送はなってないよな。

 

「ごめん、少ししたら戻る」

「え、うん……」

 

 不審そうに僕を見ていたが、気にせず僕は食堂に向かう。

 食堂に入って時計を見ると、まだ10時まで5分あった。

 

「間に合うかな」

 

 冷蔵庫に入れるのに2分も掛からないし、大丈夫か。

 僕は何も考えずに台所へと入る。

 

「……江ノ島さん?」

 

 キッチンの方に、ツインテールをした制服姿の江ノ島盾子がいた。

 江ノ島さんは片手に小皿を乗せて、こちらに振り向いた。

 

「あ、え……河上?」

 

 どうやら僕の登場に驚いたようで、目が点になっていた。

 

「なにやってんの? こんなところで……」

「聞きたいのはこっちの方やけどな」

「え、いや……私は味噌汁の味が気になったから味見を……」

 

 何だか本調子じゃないらしい。

 

「なんで、味噌汁のこと知ってるの?」

「……食堂に来て、味噌汁の匂いを嗅ぎつけて……美味しそうな匂いだったし……」

 

 なんだこの可愛いの。

 

「うん。ならええよ」

 

 とりあえず、全面的に許した。そして嬉しかった。なんでかって? そんなの決まってる。

 

「で、味はどうやった?」

「え、美味しかったけど……」

「そ、そうかそうか……」

 

 まさか、ゲームのキャラが僕の料理を美味しいと言ってくれるとは……! 感激の至りだよ!

 

「でも、冷蔵庫に片付けたいから、そろそろ味見は終わりな」

「うん……」

 

 さっきからこの謎の反応はなんだろう。固まっていると言ってもいいかもしれない。

 僕は鍋をフタして、冷蔵庫の開いているスペースに入れた。

 

「なんか……意外だね……」

 

 口調がおかしくなっているがツッコムことはしない。

 

「料理のことか?」

「そうだけど……さっきのおちゃらけた調子と全然違ったから……」

 

 あれ、そうだっけ?

 

「まあええけど……はよ出た方がええんちゃうか? 校内放送始まるで」

「あ……そうだね」

 

 言うが否や、僕達は食堂から出る。

 出てきた瞬間、江ノ島さんは僕の方へと向く。

 

「今日のことは、ナイショだかんね!」

 

 それだけを言って、江ノ島さんは寄宿舎の方へと走っていった。

 

「どういう意味なんやろね」

 

 よくわからなかったけど、とりあえず、好感度は上がったのか?

 そしてモノクマの校内放送が始まった。

 僕はそれをBGMに誠ちゃんの部屋に戻り、就寝に着いた。

 

 




 何故か食について熱く語る河上君。
 個人的にご飯と味噌汁は最大のカップルだと思います。

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