ダンガンロンパ リアルの絶望と学園の希望   作:ニタ

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 今回は割とネガモード


episode 1 パート 3 (非)日常編

 探索し終えた僕は(僕は散歩がてらって感じだったけど)、皆よりも10分も早く食堂に来ていた。と言いたいところだけど、その時には既に舞園さんと誠ちゃんが一緒に居た。どうやら誠ちゃんの調子は良さそうだった。

 

「ありがとう。守君も僕を運んでくれたんでしょ?」

 

 誠ちゃんが先に声を発し、僕もその声に返事をする。

 

「ええよ。大したことはしてへんし」

 

 いや、結構してはいたけれど。大したこと。

 

「ううん。お礼ぐらい言わせてよ。ありがとう」

「どういたしまして」

 

 再びお礼をしてきたので、流石に回避できず、僕は素直に言葉を返す。

 正直、あまりお礼を言われるのは慣れていない。というより、慣れない。どうしても反発したくなってしまうのが、僕は性根の悪い奴だった。

 そういえば、ゲームをやってた時より早く目が覚めたんだな。7時きっかりだと思っていたけど、気のせいだったのか。

 

「それにしても、結構気絶してたな」

「うん、10時間ぐらいかな」

「もしかしたら、疲れていたのかもしれませんね……」

「まあ、気持ちはわかるで」

 

 コロシアイ学園生活を何にも怯えもなく、普通に暮らすなどとは、僕は嫌だった。

 

「それにさ、ちょっとした悪夢もみたんだよ。何だか頬にビンタされたり凹むほど押されたりする夢」

「…………」

 

 ベタベタな夢だった。

 

「そうですか? 私は羨ましいですけど……」

「うん、羨ましいんか? ほっぺたぷにぷにされるの」

「い、いえ! 別にそういうわけじゃ……」

 

 舞園さんの顔が赤くなっていた。誠ちゃんの前で恥ずかしいのだろう。可愛い。

 

「や、やめなよ」

 

 何故だか誠ちゃんも赤面だった。

 

「どしたの誠ちゃん? 赤いよ?」

「ふえぇ!? そ、そんなわけないじゃないか!」

「なるほど。舞園さんにほっぺたぷにぷにされている所を想像したんやな」

「!? す、するわけないだろ!」

 

 にしてはトマトみたいに真っ赤になっていく誠ちゃん。分かりやすいな。

 

「大丈夫。秘密にしておくって。僕、結構口軽いんだぜ?」

「じゃあダメじゃないか!」

「軽口やからって、プライバシーは尊重するって」

「本当かな……」

「なんたって僕は小学生の頃、人の恋バナを他人に()らすのが大好きな子やったからな」

「いじめだ!」

「尊重はするし、誇示もする」

「秘密言ってるじゃないか!」

「知ってるか誠ちゃん。人を信用するのは先ず、僕を信用しなければならないんやで」

「信用した結果がばらされてるじゃないか!」

「敵を騙すには()ず苗木からっていうやろ?」

「聞いたことさえないよ!」

「意味はな、敵を騙すからには苗木を騙さないといけない。だから先ずは僕を信用すれば、皆平和になるし、苗木だけは敵に回る……って意味や」

「全然意味わかんない! もはや自分勝手でさえあるよ!」

「自分勝手なんて単語、僕の辞書には含まれていない!」

「辞書に無いじゃなくて、含まれないと言うのが凄くいやらしいよ!」

「安心せい。僕は誠ちゃんを、信用するから」

「僕は信用できる余地なんて一切ないよ……」

「僕を信用するのは先ず、僕から信用せんとあかんで」

「何を信用すればいいんだ!」

 

 からかいがいのある誠ちゃんだった。

 まあ、結局は自己満足かもしれないけれど。

 

「ま、この調子なら大丈夫やな」

「……へ?」

「ここまで声を出せるなら、体調は良さそうや、って言ったんや」

「な、なんだ……てっきり遊ばれてるかと思ってた……」

「え、気付かんかった?」

「遊ばれてた!!」

 

 おそらくゲーム内では見せてなかっただろうか顔が、僕には見ることができた。

 それは、ツッコミの顔だった。

 

「まあ、そんなくだらないことはさて置き」

「え? 僕の体調が良くなったのは下らない事だったの?」

「…………それにしても皆遅いなぁ」

「なんなの今の間。答えてよ。僕本当に守君のこと信用できなくなりそうだよ!」

「信用できないのは僕もやから安心せい」

「何に安心しろと!? さっき僕のこと信用してくれるって言ったじゃないか!」

「真実を騙ることが好きやからな!」

「全部嘘だったってことかこの野郎!」

 

 初めて誠ちゃんの暴言を聞けた気がする。

 というか、キャラ崩壊も(はなは)だしかった。

 

「そういえば、河上君の中学って、どんな感じだったんですか?」

「中学……か。まあ、いつも一人って感じかな」

「え、意外ですね」

「んなことあらへんよ。大抵は僕みたいな奴はめんどくさがる」

「ははは……」

 

 舞園さんの完全な愛想笑いだった。

 

「まあ仕方ない。孤高の狼は常に独りぼっちやからな。他の人間とは戯れん」

「…………」

 

 誠ちゃんは完全に引いていた。

 

「冗談はさて置き、これといって特徴もありゃせんかったし、何でこの学園に入れたのかもわからんぐらいの凡人やからな」

「では、どんな才能で学園に入学できたんですか?」

 

 あ、墓穴掘った。

 いや、大丈夫。一様、記憶がないことになってるから……一部を除き。

 

「いやぁ、それが覚えてないんやな」

「そうなんですか?」

「らしいんだ。僕も不思議に思ってたんだけど」

 

 誠ちゃんが少し怪訝そうな顔つきで考え始める。

 うーん、あんまり詮索はされたくないからなぁ。何か適当な嘘をしたほうがいいかもしれない。

 

「まあ、記憶の混乱で、一時的な記憶喪失になったかもしれない」

 

 こういうのを本人が言うと信憑性というのは結構低いが、姑息療法にしかならないけど、今の状況には適してはいる。

 

「まあ、こんな状況じゃ仕方ないかもしれないね」

 

 なんの疑いも無く信用する誠ちゃんには、本当に感謝の言葉しかない。だから皆に好かれるんだろう。まったくもって、僕には程遠い存在だった。

 いやまあ、ゲームキャラだから、程遠いに変わりはないけれど。

 まあ、その信用しやすい性質(たち)のせいで、そこに付け込まれるってことなんだけどね。皮肉なもんだ。

 

「それにしても、もう7時になってるってのに遅いな、みんな」

「そうですね……集合時間ですし、そろそろ来ても言い頃なのに」

 

 と言った矢先、タイミングよく食堂の扉が開いた。

 

「苗木君と舞園訓君と……確か河上君かな。すまない! 自己紹介がまだであったな! 僕の名前は石丸清多夏! 座右の銘は質実剛健! これからよろしく頼むぞ!」

「僕の名前は河上守や。これからよろしく」

 

 石丸清多夏。超高校級の風紀委員と言う様に、風紀に対して厳しい姿勢を見せる。しかも有名私立でテストは常にトップを取り続けるという、何でも知っている神様に選ばれた猫な委員長とタメを張れるんじゃないかとゲーム中思ったものだ。

 石丸は、超高校級と言われているが、本人は天才と呼ばれることを嫌っていて、天才自体も嫌いなのだと言う。テストでトップを取り続けれたと言うのは、彼の努力の賜物であるらしい。

 

「まさか君達が一番乗りとは思わなかった! 僕が最初と思っていたんだが残念だ……まだ気合が足りないのかもしれない……! 次こそは必ずや勝利を収める! 正義は必ず勝つのだ!」

 

 どこの戦隊ヒーローものだ。

 

「大袈裟ですって! もう……」

 

 それから間もなく、石丸に続くように他の連中が次々と集まってきた。

 数分たった頃には、大体集まっていた。

 その時に、大和田が苗木にさっきのパンチの事を謝っていた。よかった……忘れてなくて……。

 

石「よし、全員集合したようだな! ではさっそく会議を始めたいと思う! お互い、学園の調査の結果の報告をし、情報の共有をしようではないか! 一刻も早く、この学園から脱出する為にッ!」

守「その前に」

石「何事だッ!?」

守「……一人おらんね。霧切さんがいない」

石「なんだとぅ!?」

 

 なんだとぅとはなんだ。

 僕がそう言うと、何人かが食堂の回りを見回したが、霧切さんはいなかった。

 

朝「霧切ちゃん……どこいったんだろ。誰か見た人いない?」

 

 誰も見てないと、全員首を横に振る。

 

千「え……誰も霧切さんのこと……見てないの?」

 

 恐らく、この学園の調査に出ている筈だ。いや、詳しいことは知らないけど、多分そうだと思う。

 だとしたら、霧切さんと共同で行動した方が良いのか……いや、ダメか。いずれ僕が不振なことに気付くだろうし、共同策というのは望ましくないか。

 それか、流石にないかも知れないけれど、殺人を行う準備をしている可能性だってある。

 最悪の手で最善の結果を出せるように。

 予定調和で、あってほしい。

 

石「おのれ、霧切君め……初日から遅刻か……遅刻しているにも関わらず遅刻の旨を伝えないとは、遅刻者としての根性がなっておらんぞ……」

守「どういうことなんや……」

江「言ってること滅茶苦茶だけど、わかってる?」

石「しかし何事も時間厳守だ。仕方あるまい……

  それでは、第1回希望が峰学園定例報告会を開催を宣言するッ!」

守「それじゃ、皆が調査していた報告を始めるとして、確かチーム分けしてたんやな?」

石「ふむ。班分けは、僕と十神君、舞園君は別々で行動した。

  そして、桑田君、葉隠君、江ノ島君、不二咲君のチーム、

  朝日奈君と大神君、大和田君のチーム。

  セレス君と腐川君と山田君が一緒のチームだったな」

守「そうなんか。石丸はどこを調べてたんや?」

石「僕は寄宿舎エリアを調べていたんだが……そこで驚くべき大変な事実が発覚した! 河上君の個室を除く全員の部屋が存在したのだ!」

守「ほえ?」

石「うむ。気になっていたんだ。何故、河上君の個室だけないのか……」

朝「何でないんだろうね、河上の部屋だけ……」

江「でもそれ以外の個室は、ドアにネームプレートが貼られてて、それぞれの個室が指定されていたわね」

さ「ご丁寧に、名札付きの鍵まで用意してあったな……」

十「それなのに河上の部屋だけないとは……」

葉「忘れられてたんじゃねえの?」

守「そのは嫌だ……」

 

 まるでのけ者じゃないか……まあのけ者なんだけど。

 

守「そうやな。後で学園長に問いただすか」

 

 その後の報告は、江ノ島と不二咲ちゃんで個室は防音ということがわかって、他は全個室にシャワールームが完備され、女子の部屋だけ鍵が掛かるらしい。

石丸の情報(というより、皆の情報)が終えると十神がその後に続くように話を始める。

 

十「俺が調べていたのは、俺達を閉じ込めた()()についての手がかりだ。だが、これといった発見はなかった。以上だ……」

石「そ、それで終わりか?」

十「発見があれば報告するつもりだったが、ないのだから仕方あるまい」

石「そ、そうか……了解した……」

 

 そういえば、僕の今持っている情報はいつ言うべきだろうか。今言っても良いんだろうが、でも下手に動いたら何もかもが終わってしまうかもしれない。例えば、外の世界のことについてとか。それこそ絶望の淵に落とすようなもの。

 そう考えたら、言える訳がない。

 十神の番を終え、桑田、葉隠、江ノ島さん、不二咲ちゃんの出番だった。

 

江「あたしらは、教室や廊下の窓の鉄板を片っ端に調べたんだけどさ、どれか外れないかと思ってさ。でも結果は……」

桑「全滅だよ、ぜんめつ……どの鉄板もビクともしねーよ……」

守「強固な螺子で固められていたかんな。人力で取れそうになさそうやで、あれ」

千「やっぱり……逃げ道なんてなかったんだよ……

  この学校は……本当に封鎖されてるんだよ……!」

江「ヤバいヤバいヤバいヤバい……マジヤバいって……

  どーすんのよ、みんな……!」

桑「お、落ち着けっておい……! オレまでビビってくるっつーの……」

 

 モノクマ曰く、外の世界は汚れている。その意味は、外の世界を知ればわかるという。でも僕たちを封じ込めるという。その下りは、禅問答でもしている気分だった。まあ絶対にモノクマを師と思うことはないが。しかも、絶望のことに関しては、生きていく上で完全に支障な奴だった。

 

朝「私たちは学校エリアを調べたんだけどさ、外への手段はないかなーって思ったんだけどさ、何も見つからなかったよ……」

紋「玄関ホールにあった入り口の鉄の塊をを何とか出来ねぇか試してはみたんだけどよ……オレと大上が束になっても歯が立ちやしねー。いくら机や椅子でぶっ叩いても駄目だった。

  ありゃ、まるで鉄みてーな硬さだったぜ……」

守「まあ、鉄やしな」

紋「……とにかく、正攻法で鉄をぶち破るってのは無理みてーだった……」

 

 その続きは長くなるので簡単に言うと、学校と寄宿舎には2階へ続く階段があるが、シャッターがあり通ることができないという。スイッチらしきものもないらしく、渡ることはできない。

 

さ「しかし、この1階よりも、2階より上には、まだ可能性が残されているということだ。脱出口が存在するという可能性がな……」

 

 そして最後のチームとなるセレスさんと腐川と山田のチームの報告になる。

 

セ「そうですわね……わたくし達は、とは言っても『一緒に行動してた』ではなく、『一緒に何もしていなかった』ということになりますわね。ずっと体育館にいただけですから。

  だって、学園内を駆けずり回って調査するなんて、わたくしのイメージではありませんし……」

江「何にもしないで体育館に居ただけなんて、アンタら、何考えてんの?」

腐「だって……誰も誘おうとしなかったじゃない……一緒に行こうって……言ってくれなかったでしょ……!

  あたしをのけ者にするのが……いけないのよ……それがいけないのよ……!」

 

 過去の僕も脳内ではこんな感じでした。懐かしいなぁ……。まあ、流石に声には出

さなかったけど。

 

江「なによ、一緒に来たかったら、自分から言えばいいじゃん!」

守「それが中々できない奴もいるんやって」

江「アンタは黙ってなさい」

守「はい」

 

 すげぇ……江ノ島さんすげぇ……演技とは思えないほどの迫真の演技……マジパネェっすわ……。

 

腐「そもそもアンタみたいな……汚ギャルと一緒なんて……こっちから願い下げよ……」

江「汚ギャル……?」

 

 意味はわかってなさそうだった。

 

守「つまりやな、汚らしいギャルってことや」

江「黙りなさい」

守「はい」

腐「あたし……あんたみたいに頭も体も軽そうな女って……せ、生理的に……吐き気をもよおしちゃうのよ……」

江「ビックリ仰天だわ……ほぼ初対面でそこまで人の悪口言えるなんて……」

 

 いやまあ、さっき僕に対する言動も結構怖かったよ?

 

葉「お2人さん、冷静に話し合うべ。こんなん肌にも悪いし、な?」

江「お前は究極的に黙れ」

舞「少し落ち着いてください! ケンカするほど仲が良いんですか? どうなんですか?」

守「舞園さん、それ……いや何でもない」

 

 時には、正しき選択というのもある。かもしれない。

 

守「じゃあ次は……」

舞「じゃあ私から」

 

 舞園さん、積極的やなー。

 

舞「私は、この食堂を調べていたんですけど……奥の厨房にある冷蔵庫の中に、びっしりと食材が詰まっていましたよ。食糧の心配はなさそうですね」

山「しかし、いくら豊富とはいえ15人もいたら何日持つやら……」

腐「あ、あんたは……ゴマでも食べてなさいよ……」

山「え? 僕は鳥?」

守「パンクズもお勧めやな」

山「鳥じゃありませんよ?」

舞「心配いりませんよ。冷蔵庫には、毎日食糧が追加されるらしいんで。……と、モノクマさんが言ってました」

江「……あったの!?」

 

 まるでハエだな。どこにでも現れる。

 

舞「冷蔵庫を調べていたら飛び出してきて、それだけ言って、またどっか行っちゃいました。ラジコンとは思えないスピードでした」

千「神出鬼没の動くヌイグルミ兵器って……怖いのか怖くないのかビミョーな設定だね……」

守「あの性格さえなけりゃ儲けもんやのに」

江「なに生々しいこと言ってんの……」

朝「でも大丈夫だった? クマに食われそうになったりしなかった?」

山「く、食われる……? ねぇねぇ、それってどういう意味? 食われるって、どういう意味で食われるの?」

朝「ちょ、ちょっとぉ……!」

守「オタクの風上にも置けん奴やな……」

桑「てかお前ら、オタクってそんなアグレッシブなのかよ! タチの悪い酔っ払いかよッ!」

葉「つか、タチの良い酔っ払いなんていないべ」

江「ちょっとッ!」

 

 江ノ島さんのその声で皆の煩かった喧騒は鳴り止む。

 

江「アンタら、ふざけてんじゃねーよ! 寝ぼけてんの? 私ら監禁されてんのよ?

 いつ殺されても、おかしくないのよッ!」

 

 実際は軟禁だけど、細かいことに言及はしない。

 

紋「その女の言う通りだ……ふざけてる場合じゃねーぞ。マジで何とかしねーとよ……」

 

 そう言いかけた大和田の言葉を遮るように、今まで発されていなかった声が上がる。

 

霧「随分騒がしいのね……余裕があるの? それとも現実を受け入れてないだけ?」

石「霧切君! 今まで何をやっていたんだ!! とっくに会議は始まっているんだぞ!」

 

 そんな言葉もお構いなしにテーブルまで来て一枚の紙をテーブルの上に投げた。

 

苗「これって……?」

霧「希望が峰学園の案内図らしいわよ」

石「待て……どこで、これを?」

霧「……どこだっていいじゃない」

石「いい事あるかぁ! 激しく気になるじゃないかぁ!!」

 何だか、煩わしそうにあしらったが、色々気になる。

守「落ち着きぃや、ちょっとは……」

江「……そんな事よりさぁ、この紙にどんな意味があんの?」

霧「この見取り図を見る限りだと……いま、私たちがいる建物は、希望が峰学園とまったく同じ構造みたいよ」

苗「つまり、ここは正真正銘……希望ヶ峰学園って事?」

霧「構造だけはね。でも、色々と妙な改築は入ってるみたいよ」

守「改築?」

霧「詳しいことはわからないわ。手に入れた見取り図は、1階部分だけだったし……」

 

 その後も、色々とみんなが揉めていたけれど、僕は別のことを考えていた。

 そろそろ腹括って皆に話すべきか……?

 しかし正直、言う覚悟が、言える覚悟がない。僕にはそんな重い責任を担げない。

 でも、どうしてそんなことを考える。皆の為だろ。どうして言わない。もしかして、僕は誰かに欲してほしいのか? 期待されてほしいのか?

 いや違うか。皆に注目してほしいのか。いや、皆より上に立ちたいのか。

 挙句に誰かと仲良くなりたいのか? それとも、誰かと友達になりたいのか? もしかしたら、誰かと恋人になりたいのか?

 なんだこれは。何を考えているんだ、僕は。

 何を、考えて……しまっているんだ。

 僕はそんなみみっちぃ人間だったのか。そんな小賢しい人間だったのか。

 どんだけ、矮小なんだろう。

 身長が小さいように、僕の心は小さい。

 身長と心は比例するのか。

 何をやってるんだよ一体……。

 僕は個人的には日常になっているネガティブモードにいつの間にか突入していて、皆の話が半分入ってこなくなっていた。

 なので、この時話し合っていた内容をゲーム内記憶で補完すると、『夜時間の出歩きは禁止』とのセレスさんの提案したのだ。

 夜時間とは、モノクマが毎夜10時と毎朝7時に定期連絡をするのだが、その夜10時と朝7時の時間帯が夜時間に当たる。その夜時間に『個室からの外出は禁止』と決めた。

 しかし、校則で守られているわけではないので、誰かに闇討ちされないようセレスさんは防止策を打ったわけだ。

 そして皆はそのルールに賛成して、今日は解散となった。

 食堂で一人になった僕は何をするかと言うと、何もすることがなかった。

 戻る場所がないから。

 どうしよっかなー。

 流石にこのままという訳にも行かないだろうし、だからといい、誰かの部屋で寝るってのも迷惑だろう……。

 

「よし。料理でも作るか」

 

 とりあえず、夜時間までまだ時間はあったので軽いご飯を作ってお腹を太らせることにした。

 朝日奈さん言葉という訳ではないけれど、ご飯を食べればおのずとポジティブになれるのだ。

 

 

 

 

 

 




 守君の「禅問答」の下り、「師匠」と「支障」が掛かってたんですね。
 いやはや、うまいと言えるかどうかは自分では判断しにくいですが、瞬時に思いついたので、我ながらうまいとは思いました(自慢)。えへん

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