予定調和。僕にとっては大方ゲーム通りに動いている。皆に何が起きているかは分かる。
だが皆は違う。予定なんてしらないし、一体何が起きているかさえわかっていない。
ただならぬ恐怖。突然の出来事で脳内は混乱している。
まるで友人の死を直面するかのような恐怖。
ただただ恐怖を感じる。
だが、僕は違う。皆とは違い、全てのことを知っている。
これから起きること。これからすること。これから始まること。
僕は、それを止めなければいけない。そう思うことにした。
ここはリアルじゃない。ゲームだ。
葉「やっぱり俺の予想通り、普通の入学式なんだべ」
葉隠の言葉で自意識を取り戻すと、いつの間にか体育館に来ていた。
いつの間に……
記憶にはないが、恐らく無意識に体育館へ向かってたのだろう。
無意識に……?
いや、気にすることではないのか。今までずっとゲームをやっていたのだから、頭に地図があったんだろう。
そう思うや否や、ようやく新展開を迎えようとしていることに気付いたのは、奴が登場してからだった。
「おーい、全員集まった? それじゃ、入学式始めよっか!」
声が聞こえた舞台を皆一斉に見ると、舞台にある演台から白黒のヌイグルミが出現した。
千「ヌ、ヌイグルミ……?」
モ「ボクはヌイグルミじゃないよ! モノクマ!
キミたちの……この学園の……学園長なのだ!」
僕たちの目の前に現れたのは、モノクマだった。
別に驚きはしなかった。一様は知っていたから。
モ「ヨロシクね!」
この状況で発する声ではないぐらいの能天気な声。何となくわかった気がする。誠ちゃんがゲームで言ったいた意味が。
これから起きるであろう出来事に、奈落の谷に落ちるような、恐怖を感じた。
石「い、いえぁっ!? ヌイグルミが……喋った!?」
腐「ス、スピーカーでも仕込んでるのよ……」
モ「だからさぁ……ヌイグルミじゃないって言ってるでしょ!
モノクマ! それも学園長なんだよ!」
山「ぎょぇぇぇぇ! 動いたぁぁぁぁ!」
紋「落ち着けって! きっとどこかにラジコンとかのリモコンが……!」
モ「ラジコンなんてちゃちー物と一緒にしないでよ……ボクはとても悲しいよ。キミたちの妄想力のなさに……
実はボクはアメリカ大統領もビックリな遠隔操作システムが搭載されてるんだ……って、夢をBREAKするような発言をさせるなクマー!!」
セ「クマ、べたですわね」
モ「んなことより、進行も押してるので、さっさと入学式始めるにゃ」
江「キャラブレが猫って……」
モ「はいはい静粛に静粛に! えー、ではでは……」
さ「諦めたな」
モ「起立、礼!
オマエラ! おはようございます!」
石「おはようございます!」
モ「では、これより記念すべき入学式を執り行いたいと思います!
まず始めに、学園長から一言申します。
えー、オマエラのような才能溢れる高校生は、
そんなすばらしい才能を持ってるオマエラの為に、
みんな、仲良く、秩序を守って暮らすようにね!
そして、共同生活の期限を言いますと……期限はありませんっ!! つまり、
因みに、予算は豊富なので、オマエラに不自由はさせないから安心してね!」
そのモノクマの言葉を反発が始まる。
そのときに言っていたモノクマ学園長の話によれば、世界と学園は完全にシャットアウトされていて、助けを呼ぶことはできないらしい。
学園から出るには、皆もお察しの通り、モノクマが学園から脱出したい人向けに提示したルール、卒業だ。
卒業するには、
殺人を犯せば卒業できる、というルールだった。
その後も反発は続いき、葉隠の言葉で状況が変わった。
葉「もういいじゃねぇか。そろそろネタばらしの頃合だろ?」
モ「は?」
葉「だからさ、全部ドッキリの仕掛けなんだろ? いい加減飽きるべ」
紋「もういいどけ」
大和田は葉隠をはけ、最前列に出てきた。大和田の後ろ姿、やっぱり、とんがりコーンにしか見えない。
紋「オイコラ、今頃謝ってもおせぇぞ! 悪ふざけがすぎんだよ!」
モ「悪ふざけ……? それって、キミの髪型のこと?」
紋「あ"ぁぁぁぁぁ!?」
堪えろ。僕……!
傍目からはなるべく変な感じになってないように顔を笑ってる感じにならぬよう維持させる。
それを横目に雄たけびを上げると共に、ドン! と爆発が起きたような音が響いた。
大和田が、足元を蹴り上げる音だった。流れ星のように速く、一直線に獲物に向かって……
紋「捕まえたぞゴラァ! ラジコンだかヌイグルミだか知らねぇが、バッキバキのボッキボキにしてやんよッ!!」
モ「はわわー! 学園長への暴力は校則違反だよー!!」
紋「んなこたぁしるか! さっさと俺らをここから出せッ! でなけりゃ力づくでも……」
すると唐突にモノクマは黙り込み、機械音が鳴り出す。
紋「ああぁ? 何だいきなり黙りやがって! 怖気づいたかッ!!」
僕は今起きている状況をようやく思い出した。そして機械音のスピードは速くなる。
紋「ああ? 何か喋りやがれ! 何さっきから機械音なんか出しやが」
守「投げろッ!!」
紋「ああ?」
守「いいから投げろって!!」
大和田はモノクマを思いっきり天井へ投げた瞬間──
ドゴォォォォン!!
──モノクマが爆発した。
紋「なぁ……!? な、何だありゃ……洒落になんねぇぞ……爆発しやがった……」
爆音による激しい耳障りに、むせ返る火薬の匂い。
テレビやゲームでよくある爆発だけど、まさか、こんなに怖いものとは思わなかった。
手足が、震えている。
千「で、でも、爆発したってことは、あのヌイグルミも……壊れて……」
モ「ヌイグルミじゃなくてモノクマ!!」
そしてどこからともなく、モノクマはまたもや現れた。
桑「な!? 別のが出てきたぞ!」
紋「テ、テメェ……! さっきの……マジで俺を殺そうとしやがったな……!」
モ「当たり前ジャン、マジで殺そうとしたんだもん。 校則違反するのが悪いんでしょ? 今回のは特別に警告だけで許してあげるけど、次は絶対に許さないからね。校則違反を犯すものは、お尻ペンペンレベルの体罰じゃ済まさないからッ! わかった!?」
江「ね、ねぇ……ひょっとして、アンタみたいなのって、他にもたくさんいたりするの……?」
モ「モノクマは、学園のいたる所に配置されております。さらに、学園内には監視カメラも配置されております。そして、校則を違反した者を発見次第、今みたいにグレートでパワフルな体罰を発動させますっ!
うぷぷ……次からは外さないよ……そうならないよう気をつけてね」
守「無茶苦茶やな、おい」
モ「…………」
桑「な、なんだ……?」
モ「じゃあ最後に……入学祝として、オマエラにこれを渡しておきましょう。
なんとこれ、電子化された生徒手帳なのです! その名も、電子生徒手帳! カッコいいでしょ?
……気を取り直して。電子生徒手帳は、学園生活に欠かすことの出来ない必需品です。絶対になくさないようにね! それと、起動時に自分の本名も表示されるから、ちゃんと確認もしていてね。
単なる手帳以外の使い方もあるんでね……
因みに、電子生徒手帳と言いますが、何と完全防水されてるのです! 耐久性も抜群で、象が10頭乗るぐらいなら全然平気だよ!
校則の詳細もここに書いてあるので要チェック!
それと、何度も言うようですが、校則違反はダメだからね。ルールというのは、人を縛りさえするけど、人を守るためでもあるんだ。社会でも、法律がないと平和は成立しないでしょ? それと一緒! だから校則を犯した者には、厳罰は必要なのです!
それでは、第78期生の入学式はここで終了! 長かったね。 でも、その長い説明でこれからのことを理解してくれたと信じて、豊かで暗くて惨い学園生活をどうぞ楽しんでください! グッバ~イ!」
モノクマのマシンガントークが終え、ようやく消えるモノクマだった。
結構堅苦しくなって、何か危ない気はするけど、まあ、いいか♪