今回は大分読みやすいようにしたつもりですが、もし何かそういう要望があれば、いつでも申して下さい。いつでも臨場体勢で待ち構えますよ!
朝日奈さんが泣き止んでそのまま俯いてたままだった。朝日奈さんが「ありがとう、河上」と言ったあと、食堂から逃げるように出て行った。
彼女の気持ちを考えると、大変辛いものだろう。突然友達が死んでしまうなんて非現実、想像だにしないだろうから。
一人キッチンで佇み、そんなことを考えていると、
「女の子を泣かすなんて、結構ワルだね~」
とんちきちーな声と嫌みったらしい台詞が聞こえて、僕はキッチン台の方へと前へ向ける。
「こんちゃっす! プレイボーイ(笑)」
憎たらしい称号を言いながら僕に挨拶する。白と黒の半々でカラーリングされた、愛らしい熊の姿を現したのはモノクマであった。
「うぷぷ。なんだかフラグが立ちまくってますねぇ? まさかぁ! ここはラブコメの聖地なのではないのかっ!」
「何アホなこと抜かしとんねん」
「ありゃりゃ? もしかして、女の子と仲良くするの嫌なの? そっち系?」
「ノーマル系や」
「あらそう。どうでもいいけどねぇ」
そういうとキッチン台から降りて僕の前に立つ。小さなぬいぐるみサイズだから、僕は首を下げて目線を合わす。
「今日はね、警告しにきてあげたんだ。君にとってはありがたい話だね」
「警告?」
僕はその不穏な響きに不安を感じさせた。僕はモノクマの正体、外界の状況など何でもかんでも知っている。だからモノクマにとっては僕は最悪の登場人物といえる。と言っても、結局僕は何もできておらず、中途半端な存在ともいえる。しかし黒幕側からは要注意人物という立ち位置は変わってはいない。仮に本当の事をすべて告げたら、すべてが台無しになるだろうから。もし校則がなければ、真っ先に抹殺されているだろう。
モノクマ自身にもルールに拘束されているのだ。だから、直接僕に手出しする、単純なことはできないはずだ。
「そう警告。忠告じゃないよ? 警告だよ?」
「わかってる」
端的に述べる。こいつ面倒くさい。
「自分の身は自分で守るのが一番だよ。でないと、ペーパーみたいにクシャクシャのビリビリになってるかもしれないからね!」
「…………」
「そんな怖い顔しないでよ……せっかく河上君のために警告したのにさ……将来でこに
「そりゃどうもあんがとうござんした」
「うわぁっ! 流石関西人やぁ! 謝り方も大雑把やでぇー!」
棒読みのような関西弁にもイラっとした。
関西弁は本来、どんな人でも結構馴染みやすい方便なんだけれど、関西弁は基本、軽口に近い。大抵の大阪人はラフな人が多い。それに何となく聞きやすいのだ。漫才が盛んになるのもそれらが理由なのだ。しかしながら関西弁は、変にゆっくりと喋ったり強きな口調で言うと、ニュアンスがだいぶ違うのだ。せっかちな人が多く、そしてこだわりが強い人が多いから、訛る関西弁はどうしても受け付けないのだ。
モノクマの場合、ゆっくりなヴァージョンは、関西人にとってイライラするところもある。それと足して、馬鹿にしたような口調なのでプラスアルファーされている。
僕はこれ以上関わりたくなかったので、キッチンから出た。そうすると「まだ話したかったけど、まあいいか」と言うがそれ以上の声は無く、これ以上姿を現さなかった。
その後、僕は一度自室へと戻った。
これから何をしようか思案するのもいいけれど、やはりやることがない。今はみんなの仲違いが激しく、朝食は全員で取るなんて事案はとっくに消え失せていた。昼食もみんなバラバラで、関係は崩壊していると言っても過言じゃなかった。
夕食も一人でとることになるだろう。それ故に夕食までの時間があまりに暇すぎる。呑気なことを言っているように聞こえるかもしれないが、この時間がとても長い。一つ屋根の下に10人ぐらいが寝泊りしているのに、まるで孤独だ。
こうなったら誰かの部屋に遊びにいくか。
先程の話からどうしてそうなったかという声が山彦するように聞こえてくるが、意味はちゃんとある。今、仲間はみんなとの繋がる紐が切れかかっている。この現状下、どうすればいいかなんて一つだけだ。
仲良くなって、絆を深めること!
そうすれば、亀裂の入った関係から少しは脱却する糸口になるだろう。
といっても誰のとこに行こうと思う。しかし、どうするか。誰に会いに行くかはともかく、一人で暇つぶし出来ること、尚且つ誰かと遊ぶ。普通に考えれば、吟味せずとも意味不明な条件だが、当てはまる条件はないということはないだろう。
友の家へ遊びに行っては漫画やゲームを一人でやり倒すというグループ兼孤独の遊びは、しょっちゅうのことだった。漫画なんかも虫のように漫画を読み、全巻を制覇したこともあったか。
ならば漫画を読んでみたいと思ったが、何となく気分ではない。漫画を読んでいれば、それなりに時はすぎるだろうが、それじゃあ孤独を必死に隠しているために漫画を読んでいるみたいで、虚しさを感じる。
だとしたら虚しさを感じさせないものとはなんだろうか。周りからみて哀れむようなものを見る目で見られないもの……、うん。小説がいいのかもしれない。
漫画よりもボリュームは遥かに高く、それにその虚しさを味わうことはないかもしれない。周りの目から見れば悠長だとかマイペースだとか思われるだろうが、この状況下、誰一人ともタッグを組もうとする奴はいないだろう。
そうと決まれば本を探そう、そう意気込んだが、しかしながらどの本を読めばいいのかわからない。そもそも本を使ってどう仲間の関係を作ればいいんだ。いや、本を使って、仲間と会話を繰り広げれば言いか。だったら誰かと面白そうと思える本を、図書室で探せばいいんだろうけれど、もしかすれば十神の野郎が占領している可能性がある。なるだけ対面は避けたい。
もしかすると腐川さんならば何か本を持っているのかもしれない。彼女の専門としている、純文学(たしか恋愛小説だったかな)はあんまり見たことがない。教科書で夏目漱石の『こころ』とか『我輩は猫である』ぐらいしか目にしたことがない。
そうと決まると行動は早い。僕は部屋から出て、腐川さんの部屋へ直行した。
インターホンを鳴らすと、扉が開き腐川さんの顔を覗かせた。
「……あ……な、なによ……」
「あー、いやぁ……」
扉が開いたのはほんの5センチ程度で、辛うじて腐川さんの顔が少し確認できるぐらいだ。そこからの会話の開始に、僕は少し戸惑いを感じた。
いやさ、もうちょっと積極的になってもいいんじゃないかな?
「も、もう……! なんなのよ一体……っ!」
そんな待たせてもないはずなのに、明らかに不機嫌そうにそう言って、僕の言葉を急かさせる。
「い、いやぁ、さ。腐川さんの本読んでみたいなー、思うてな」
「え、あたしの……?」
形勢逆転というべきか、次は彼女が言葉が詰まっているようだった。
「な……何を、企んでるのよ……。も、もしかして、それを、こ、こ、口実に……私を襲う気、なの……?」
「んなわけあるかい」
「……じゃあ何のようなのよ……」
僕のツッコミを聞くと調子を戻し、被害妄想はすぐに終わった。
「いや、やからなぁ、腐川さんの本を貸してほしいんよ」
「……図書室から借りればいいじゃない……」
「せやけどさ……」
「…………分かったわよ」
ちょっと待ってて、と言い残すと扉を閉めて、鍵をかける。何事かと思ったが、一分後に施錠がはずれる音が聞こえ、扉が開く。
「こ、これ……」
腐川さんの手に持っていたのは、若い女性の間で漁師が憧憬の的となるほど大人気を博したと云われる『磯の香りの消えぬ間に』の本だった。大人気を博したと言っても、ゲーム内の話であるが。
そういうと、何だかこの本も実はそこまで面白くないのではないかと思えてしまう。いや借りに来てそんな事を思うのは失礼な話であるけれど、しかし「ゲーム内の話」と語尾につけると胡散臭くなって仕方がない。
「ど、どうせ……流行に後れないように、とか……そ、そんなこと思って……借りに来たんでしょ……」
「え? いやちゃうって。僕はただ読みたい本がその本だっただけで」
「やっぱりそうよ……! 読んでないと、あ、あ、アンタの友達が相手してくれないとか、そういうのって分かってんのよ……!」
「えー?」
とんだ被害妄想だ。ここまで奇天烈なもの、しかも相手が僕なんて胸焼けしてしまう。といっても腐川さんの被害妄想は、現実の境がないから止めれるとは正直思えない。……胸焼けまっしぐらやないかい。
「さ、さっさと持っていって、出て行きなさいよ……!」
明らかな敵意を当てつけ、本を渡された。そして大きな音を鳴らしながらドアを閉められた。
いや、僕何もしてないのに、そこまでされるとしょげちゃうよ……。
僕は肩を落としながら自室へ戻ってとりあえずベッドへ寝転がった。何度かごろごろと繰り返していると目が回ってきたのでやめた。
僕は天井に向きなおして、腐川さんから借りた本を一枚目を
小説はよく読むほうなのだが、分類は基本ライトノベルだから、可愛い女の子のイラストがないと正直読む気が失せてしまう。
本屋さんに行ったりしてキレイで華やかな本の表紙や、可愛いイラストをみると買ったりしてしまうことが多々あるけど、読んだ
結局は表紙なのだ。
表紙を見て興味を出し、大半はそれにはまる。特にライトノベルはキャラの
ライトノベルがよくアニメ化するけれど、やはりイメージしやすいのが理由の発端だろう。タイトルとかは最近如何わしいものがばかりだけれど、内容は想像しやすく、読みやすい。イラスト効果も高いだろうが、読みやすいのは一番受ける。漫画のように感情移入がしやすく、世界が自分も体験しているような気分になる。
よく主人公に対して「いやお前、そこは○○ちゃんのとこに行けよ!」とか「主人公の行動、憧れるなぁー」など他にも登場人物に対して指示したり、可愛がりたい気持ちになるときだってある。
小説は漫画と同じで、様々な表現方法もあり、それに関して味のあるものが沢山ある。小説と漫画の違いで言えば、漫画は一つのイメージから人はそれを受け入れる。簡単に言うと、進○の巨人に出てくる超大型巨人の大きさは果てしなくでかいけれど、絵で見たら迫力がありすぎる。文章にしてみたら、その大きさのイメージがつきにくいのだ。
小説と漫画の違いはそういうことなのだ。
最近では、ライトノベルの最初のページに漫画形式になってるものが多いが、イメージ付けするのに漫画は最適ということもある。
つまりどういうことかというと、やっぱライトノベル面白いね! ということだ。
どういういことだよ。何長々しく語ってたくせに、そんなしょうもない結果に終わるんだよ。
簡潔に述べると、絵があるほうが読みやすい、ということだ。
あれ、何か簡単に結論出たよ? あれれ?
僕の脳内は腐川さんの小説を読むより、小説についての評論になってしまっていた。流石に途中で考え飽きて、僕はちゃんと小説を読むことにした。
読んでみると結構はまってしまい、気付いたら夜時間のモノクマアナウンスがなっていた。
切りのいいところでやめようと思ってたが、その切りのいいところを見つけても続きが気になって切りがない。
読み終えて時計を確認した時はもう二時だったことに驚いた。僕は明日のために布団をかぶり、目を閉じた。そして僕は脳内でささやく。
やっぱり本って面白い!