ダンガンロンパ リアルの絶望と学園の希望   作:ニタ

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episode 2 非日常編 学級裁判1

 

 

 

 

 

 放送後、僕は大和田と一緒に赤い扉の前まで来ていた。しかし、その間に会話などはなく、一切口は利かずに目的地まで歩いて行った。

 何を話して言いかわからない、話し辛いというのもあるんだけど、一番の理由は、学級裁判の事を考えると、少し牽制しあう、見たいな空気なんだと思う。

 思うっていうのは、僕はそういう空気を読めるタイプではないから、あくまで推測で言ったまでだ。

 一様、その理由には根拠がある。

 学級裁判は、誰が被害者を殺したかを決める裁判所だ。つまり、この13人の生徒の中、誰かが舞園さやかを殺したのだ。

 僕らはその殺人犯を突き止めなければならない。クロを導き出さなければならない。

 

紋「開けるぞ」

 

 赤い扉の前に着いて、大和田は端的に要点を述べて、扉を開ける。

 

モ「やっほー! 待ちくたびれたよ」

 

 開けた目の前にはモノクロのクマが居て、そして僕ら以外の連中は既に集合していた。

 

モ「他の人は集まってるのに……遅刻者は課題を出すよ!」

守「あーあー、悪かった悪かった」

モ「しょえぇ! 学園長に対する口の仕方じゃないよ……」

守「そんな驚きの声を上げる学園長も学園長やけどな」

モ「じゃあオマエラ! そこのエレベーターに乗って、いつもの会場に向かって下さい!」

 

 ガン無視したぞ、おい。

 

モ「じゃあ、僕はお先に行っておくんでね」

 

 そう言って、モノクマは姿を消した。

 

 

 

 

 

          ☆

 

 

 

 

 

 エレベータに揺られながら、僕は今まで集まった証拠を頭の中で再確認する。ダンガンロンパ風に言えばコトダマの再確認だ。

 証拠=コトダマだ。

 字が変わっただけやないか。言葉を変えるだけで○○風って言い張っても何も変わってない。ただの置き換えだった。

 そんな脳内冗談を交えつつも、コトダマを一心不乱に思い出す。

 そんなに時間が掛かってないだろうけど、エレベーターに揺られてた時間が長かった気がする。丁度コトダマの整理を終えたタイミングでエレベーターは開き、僕は今回の会場へと足を踏み出す。

 

 

 

 

 

        学級裁判  開廷!

 

 

 

 

 

モノクマ:

  まずは、学級裁判の簡単な説明から始めましょう!

  学級裁判の結果は、オマエラの投票によって決定されます。

  正しいクロを指摘できれば、クロだけがおしおき。

  だけど……クロではなく、クロ以外の人物を間違って指摘した場合……

  クロ以外の全員がおきおきされ、

  皆を欺いたクロだけが晴れて卒業となりまーす!

 

山田一二三:

  えーっと……まずは前回同様、

  どのような凶器を使われたかの解明を迫った方がよろしいでしょうな。

 

葉隠康比呂:

  凶器か……まあそこからだろうな。

 

大和田紋土:

  その前に一ついいか?

 

葉隠康比呂:

  お、どうしたんだ?

  大和田っちが質問なんて珍しいべ。

 

大和田紋土:

  っるせぇよ。

  んでよ、モノクマに訊きたい事あんだよ。

  あの死体発見アナウンスって、別に壊れてねぇよな?

  例えば、誤作動で間違えて動いた、とかよ。

 

モノクマ:

  希望ヶ峰学園のセキュリティは世界一なのです!

  どこかの国よりも、希望ヶ峰学園の方が科学力は世界一ィィィィィ!

  ──なのです!

 

大和田紋土:

  ……つまり、どういうことだ?

 

モノクマ:

  ボクの口達者な芸が理解できなかったの?

  ゆとり世代は知らない事ばかりで、嫌だなぁ……

 

河上守:

  最近のゆとり世代にも結構な人気ありそうやけどな。

 

十神白夜:

  つまりは、誤作動が起きてしまうとか、

  些細な事で壊れることがないということだ。

 

モノクマ:

  流石十神君! サブカルチャーに詳しい方だったんだね。

 

十神白夜:

  ……俺はあんな気持ちの悪いものが好きなわけないだろう。

 

山田一二三:

  何ですとぉぉ!? 貴様ァ! 今、アニメを侮辱しやがったなぁッ!

  わたしの戦闘力は、53万だぞぉ!

 

十神白夜:

  ならば俺はその倍だ。

 

山田一二三:

  な、なんだと……!?

 

河上守:

  いや、そこ驚くとこやないと思うで?

 

大神さくら:

  ただの負けず嫌いだな。

 

大和田紋土:

  つまり、別にモノクマモノクマアナウンスは壊れていたわけじゃねぇのか。

  ……すまん。特に気にする事じゃなかったな。

 

十神白夜:

  分かったのなら、さっさと何が凶器か解き明かしたらどうだ?

 

大和田紋土:

  凶器つってもよ……何かあったか?

 

葉隠康比呂:

  いや、カッターナイフ落ちてたろ……

  とんだトリ頭だべ……

 

大和田紋土:

  だ、誰がトリ頭だぁッ!?

  ちょっと忘れちゃっただけだろうがよぉ!

 

葉隠康比呂:

  しょへえ!?

  わ、悪かったべぇ!! どうか命だけはご勘弁をぉぉ!!

 

セレスティア:

  ……醜いですわね。

 

腐川冬子:

  ちょっと……落ち着きなさいよ……。

 

大神さくら:

  ともかく、事件現場にあったのは、カッターナイフだけであったな。

 

十神白夜:

  その前に、舞園が本当に他殺なのかどうかを調べるべきじゃなのか?

 

苗木誠:

  え……何を突然言ってるの……?

 

十神白夜:

  舞園が、本当に殺されたのか?

  自殺の可能性もあるんじゃないのか?

 

大和田紋土:

  いや、他殺だろ。頭二回パンチ食らって死んだんだろ?

 

十神白夜:

  葉隠が言っていたトリ頭は、実に的を得ているな。

  もう忘れたのか? 舞園の手元には、カッターナイフがあった。

  そして、その手首には、深い切り傷があった。

  これがどういう意味かわかるか?

 

大和田紋土:

  そう言われてみれば……確かに妙だよな……。

 

霧切響子:

  ……十神君。あなたもしかして、分かって言ってたりしない?

 

十神白夜:

  さぁて。なんのことやら、だな。

  俺は知らない事は言わないし、知っている事も極力言わん主義だからな。

 

葉隠康比呂:

  えらくもったいぶるべ。実は知らないんじゃないか?

 

十神白夜:

  むしろこんな簡単な事が分からない方がどうかしている。

  お前は、他殺か、自殺か、どっちかわかっているんだろうな。

 

セレスティア:

  あらあら。十神君はえらく元気ですわね。

  何か良い事でもありまして?

 

十神白夜:

  ……ふふっ。まさか、この俺がからかわれる時がくるとはな……。

  お前のその余裕も、いつかは破壊されるだろう。

 

セレスティア:

  ふふ……。その意味深長な台詞、肝に銘じておきましょう。

 

朝日奈葵:

  ね、ねぇ……本当に、舞園ちゃんは……自殺、なの?

 

十神白夜:

  自分で考えてみろ。

  他殺か、自殺か。

  考えればすぐに答えは導き出せる。

 

朝日奈葵:

  む、無理だよ……もし、もしも……もしも…………

  ……………………

 

苗木誠:

  ……ねぇ、朝日奈さん。

  僕も、もしも舞園さんが自殺だったらとか考えると、

  胸が張り裂けそうに痛くなる気持ちはわかるよ。

  でも、そこで立ち止まってしまったら、舞園さんが死んでしまった理由が

  分からずじまいに終わってしまうのは、いけない気がするんだ。

  だから、心を強くもって、戦わないといけない。頑張らないといけない。

  朝日奈さん、酷かもしれないけど、逃げてちゃダメなんだ。

  逃げずに、絶望に立ち向かわないといけないんだ!

 

朝日奈葵:

  ……うん、そうだよね。苗木の言うとおりだ。

  苗木も、私以上に悲しかったもんね……。

  ……よし。私も全力を尽くさないと、舞園ちゃんに悪いもん!

  頑張らないと!

 

葉隠康比呂:

  おお、いつもの朝日奈っちに戻ったべ!

 

大和田紋土:

  さっきよりも顔色はマシになったな。

 

朝日奈葵:

  やっぱり悲しいけどね……。

  でも、ここで落ち込んでたら、前に進まないもん。

  だから、決して諦めない。挫けない。舞園ちゃんに誓うよ。

 

十神白夜:

  ならもう一回聞こう。

  舞園は他殺か、自殺か。どっちだと思う。

 

朝日奈葵:

  ……やっぱり、あんまし答えたくはないけど、自殺なのかな……?

  カッターナイフで手首を切るって事は、

  やっぱり嫌なことがあったんだと思うし……

 

苗木誠:

  それは違うよ。

 

朝日奈葵:

  ……やっぱり、違うんだよね。

 

霧切響子:

  苗木君。まさか、舞園さんが自殺するわけないじゃないか、

  という訳の分からない根拠で話す気はないわよね。

 

苗木誠:

  ち、違うよ! ちゃんと根拠はあるよ。

 

山田一二三:

  根拠といいますと……何があるのですかな……?

 

苗木誠:

  カッターナイフで手首を切るってのは何にしても、

  相当な意思と決意が必要なはずなんだ。

 

葉隠康比呂:

  まあ、確かにそうだな。

  といっても自殺なんかしたことねえけど。

 

苗木誠:

  もしその意思と決意を持って手首を深く切ったんだとしたら、

  右手首の近くにカッターナイフが落ちているのはおかしいんだ。

 

大和田紋土:

  ……そうだよな。普通右手首を切るんだったら左手で切るだろうし、

  落ちてるのが右手側ってのはおかしいよな。

 

山田一二三:

  ということは、舞園さやか殿は自殺ではなく、他殺なのですな!

 

十神白夜:

  果たしてそうか?

 

河上守:

  ……なんや? まだ納得いかんのか?

 

十神白夜:

  自らの腕を切って、それをその場に落としてしまい、

  カッターが右側になるように仰向けに倒れてしまった、といえば、

  自殺の可能性は残っているぞ。

 

苗木誠:

  ……深く切るんだったら、勢いよく思いっきりしたら、

  多分、他の場所に飛ぶ筈だと……思う。

 

十神白夜:

  その程度の脳味噌をしているのか、お前は。

  お前にはまだ、ちゃんと考えれる力があっただろう。

 

河上守:

  ……え?

 

十神白夜:

  なんだ、河上……。

 

河上守:

  え、ああ……いや、なんもあらへんよ。

  (なんや今の違和感は……何か、とても十神が言いそうにない言葉やったで?

  仲が良い、というよりも、信頼を持っての言葉に聞こえたけど……?

  というよりも、前から知っていた……?

  ……今は舞園さんの件についてや。気にしたらあかんな)

 

霧切響子:

  舞園さんの状況を思い出してみて。

  舞園さんの傷は、カッターナイフだけじゃなかった筈よ。

 

苗木誠:

  ……なるほど。そういうことか。

  舞園さんが自殺したのは不自然なのか。

 

朝日奈葵:

  ……どうして、自殺じゃないの?

 

苗木誠:

  舞園さんはカッターナイフで手首を切っただけじゃなくて、

  後頭部に二回ほど殴られた痕があったんだよ。

  もしも本当に舞園さんが自殺したとして、

  舞園さんが自らの手首をカッターナイフで切って倒れた後、

  それを見つけた人が頭を二回も、それも倒れている人間を殴るなんて事は不自然なんだよ。

  そんな事をしたら、もし生きてたら、その追い討ちをかけたその人が犯人ということになる。

  そのままにしておけば、誰も……舞園さん以外が犠牲が出ずに済む。

 

十神白夜:

  なるほどな……。

  つまりは、舞園が自殺したとして、

  他の人間が倒れた舞園を二回も殴るのは不自然という事か。

 

山田一二三:

  要約されて頂きましたッ!

 

十神白夜:

  まあ、今はそれで良いだろう。

  それを念頭に入れて、今まで手に入れた情報交換を始めるぞ。

 

河上守:

  え、それだけでええんか?

  もっと根本まで考えていると思ってたんやけど。

 

十神白夜:

  お前らの為に、順番に話を進めてやっているだけだ。

  色々かっ飛ばして犯人はお前だ、と言って、それを信用できるか?

  できないだろう。だから俺が道順を与えてやってるんだ。

 

葉隠康比呂:

  十神っちがいつも以上に上から目線だべ……。

 

腐川冬子:

  と、十神君は、その方が才能が開花するのよ……。

 

十神白夜:

  ……貶しているだろ。

 

河上守:

  上から目線が、才能ってのはな……。

 

腐川冬子:

  え、ええ? ち、違うわよ! 私はただ……十神君のことを……。

 

十神白夜:

  うるさいぞ。それ以上喋るな、腐川。

 

腐川冬子:

  は、はひぃッ!

 

朝日奈葵:

  な、何か腐川ちゃん、従順だね……。

 

十神白夜:

  ともかく、これから情報開示だ。

  俺の知らない事やお前らの知っている事、

  洗いざらい聞かせてもらうぞ。

 

霧切響子:

  指揮どころか独裁政治の域ね……

 

 

 

 

 




 To be コンテニュー!

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