episode 2 パート1 (非)日常編
学級裁判の翌日。いつものように朝のモノクマコールが耳に入る。
その軽快な朝の報告は、とても昨日に何かあったとは思えないぐらいだった。
その悲惨な、凄惨な、虐殺的な程の恐怖の学級裁判は、確かに昨日あった。その悲劇は、確かに起きたのだ。
今も考えると、絶望的な気分が戻ってくる。
何なんや、これは……
そんな薄暗い雰囲気をまといつつ、僕はベッドから起きる。
昨日エントランスに戻ってきた時、僕はどこで寝ようか少し思案していた。あんな事があって、誰かと一緒に寝るなんて真似、正直僕には到底できない。そんな事が出来るのは、モノクマぐらいのものだろう。だったら保健室で寝ようとしたが『校則に個室以外での故意の就寝禁止』と言うのを思い出し、踏みとどまった。
何とかできない物かと寄宿舎周辺を回っていたら、何故か個室が増えていた。場所は山田とトラッシュルームの間にあった。そして扉には『カワカミ』と書かれたプレートが掛かってあった。
僕はその扉を開けてみると、誠ちゃんの部屋同様、素っ気無い感じの部屋だった。そして僕は何も考えずにベッドに横になって、泣きながら寝ていた。気がする。
そして僕が起きた時の枕の横には、涙の染み込んだ世界地図があった。
という言い方をすると、凄く嫌な思いでが
僕は特に部屋ですることもなかったので、とりあえず食堂に向かう事にした。
ふと僕は、皆が居るかどうかが気になった。
そういえば、僕の記憶に、朝に食堂へ集合する、という記憶はない。いや、この場合、忘れたというわけじゃなく、その時寝ていたから知らない、という意味で。
もしかしたら、僕が寝ている間にしていたかもしれないけれど、この五分五分の状態じゃ、どっちなのかはわからない。しかし、それでも行くけど。
僕はドアを閉めようとした時、そういえば、鍵を忘れていたので、部屋に戻って鍵を取り、次はちゃんと施錠してから食堂へ向かう。
霧「おはよう。河上君」
守「……あ、霧切さん。おはよ」
いきなり現れるもんだから、言葉が少し詰まってしまった。まさかこんなタイミングで霧切さんと出会うとは思わなかった。
しかし、こんな早朝に何の用だろう?
霧「少しいいかしら。質問したいの」
守「なるほど。ならヒントならじゃんじゃん答えれるかんな。まかせとき、キリギリス!」
霧「その舐めきった名称を聞いて本気で殴ろうと思ったけどこの状況だから押さえとくとして、私の名前は霧切よ……」
守「すまん……噛みました……」
霧「違う、わざとよ……」
守「噛みまみた!」
霧「わざとじゃない!?」
守「
霧「室内温度は高い筈だからそれはないわ!」
よかった。いつもの霧切さんだ。
霧「待ちなさい。私はエスパーでも何でもないけど、その思いは斬らせてもらうわ」
守「な、なんやと!?」
霧「私は別にいつもこんなノリの良い性格ではないわ。私は、いつも冷静にならなくてはならないの。そうしないと……いけないの。どういうことか分かるわよね?」
守「いや、分かるも何も……ノってきたんは霧切さんの方やん──」
気付くと、本当は彼女の才能は忍者なのではないか、と言うぐらいのスピードで僕の真後ろに立ち、喉を手刀で狙っていた。
霧「私は、私のキャラを守らなければならないの。分かった?」
守「はい。読者にキャラ崩壊の理由に保険を掛けたことはわかりまうぅっ!?」
ほ、本気で喉をぶっ叩きやがった! もうこの時点でブレまくりだ!
霧「…………それで、質問いいかしら」
守「ゴホッ……」
少し喉を休めてから、僕は手でオッケーサインを出す。
霧「質問いくわよ……貴方は何者なのか教えて」
守「…………」
正直、戸惑っていた。その質問のヒントは、というより答えは一つしかなかった。
守「…………超高校級でない、一般高校生や」
霧「……そう。やっぱりそういうのね」
予め分かっていたような素振りだった。
霧「次の質問。……貴方は、どうやってここに来たの?」
守「え……?」
そういえば、何でだろう? 考えた事はあまりなかったけど、どうして僕はこんな所にいるんだろ?
僕は確かダンガンロンパをやり終えて寝た。そして起きたらダンガンロンパに出てきた教室にいた。……? どうして僕はここにいるんだ? どうやって僕はここに来たんだ?
霧「どうしたの?」
守「あ、いや…………ごめん。わからん。気付いたらここにおったからな……」
霧「そう……」
まさか、僕も何らかの理由でこの学園に来たんだろうか。いや、ありえない。まず僕の世界に希望ヶ峰学園なるものはなかった筈だ。
あくまでゲーム。
あくまでリアル。
なら、どうしてこんな事になっているんだろうか。ここは、希望ヶ峰学園の似て非なる場所って事なのか? そしたら、何となく理由はつくけど……
霧「河上君」
僕もいつの間にか考え事を始めていたら、霧切さんが僕を呼んでいた事に気付いた。
守「……ん、ああ、ごめん。力になれんで……」
霧「いいえ。今の所大きな謎は貴方でもあるのよ」
守「……ん? どういう事?」
霧「この希望ヶ峰学園は、確かに途轍もなく大きな謎があると思う。だけど、その大きな謎に、貴方も入っているの」
守「……どうしてなんや?」
霧「貴方の情報が、あまりにも不安定すぎる」
情報が不安定。
霧「貴方は普通の高校生と言い張り、本当の才能は誰もわからない」
守「ちょっと待って。僕は嘘はついてへんで」
霧「信用に値するものではないわ。貴方が黒幕に手を貸している可能性もある。貴方は、存在が不安定なの」
はっきりと、そういった。
彼女の辛辣な発言を、僕の心は抉られた。
どうしてそこまで言う? 霧切さんは、そんなに僕のことが嫌いだったのか?
霧「貴方は、とても不安定すぎるの。何に置いても不安定。貴方の安定の無さが、私は裏切るんじゃないかって思うの」
不安定。安定の無い僕。それを意味するのは、皆への裏切り。
反逆者だと、疑っている。
霧「……少し、言い過ぎたわね」
守「…………」
霧「……私は、貴方を最後まで信じるわ」
そう言って霧切さんは去っていった。
今までの言葉のきつさ。言葉の鋭利さ。言葉の抉り。
こんなに心がすっからかんになるのは初めてだった。凄く虚しい感情が溢れ出た。それ以外、何も考えられずにいた。
不安定。そうなのかもしれない。ここまで簡単に心が揺らぐとは、やっぱり弱いのかもしれない。
いつも、僕は精神は強いと心の中で豪語していたが、僕は案外弱いんだ。
貧弱な身体に、屈する精神。強い要素なんて、一切ない。
だけど、そんなんじゃダメだ。
こんなところに来たからには、僕は動かなくちゃならない。
屈強な身体に、不屈の精神は、ないかもしれないけど、でも、僕には身体も精神もちゃんと生きている。ならば、できる筈だ。
皆に出来ない事が、僕には出来るかもしれない。
それが、僕のやらなければならない事なのかもしれない。
守「……絶対モノクマを倒す。二倍以上返しでだ!」
声に出して、心意気をあらわし、僕は食堂へ向かった。
哀夢争吏と千休さん (非)日常編
ちょいっと雰囲気くらいです。