ダンガンロンパ リアルの絶望と学園の希望   作:ニタ

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episode 1 非日常編 学級裁判2

葉隠康比呂:

  俺は、ただ本当に桑田っちと喧嘩しただけなんだ!

  確かにそれが動機になるかもしれんけど、

  俺はそれでもやっていないべ!

 

江ノ島盾子:

  自分で動機理由説明してどうすんのよ……

 

葉隠康比呂:

  だーっ! 揚げ足を取るなッ!!

 

山田一二三:

  もうそろそろ自分が犯人だと言うでしょうな。

 

葉隠康比呂:

  こおおおおぅ!! どうして誰も俺のこと信じてくれないんだよぉ!

 

十神白夜:

  お前が胡散臭いからだ。

 

葉隠康比呂:

  そ、そうだったのか?

 

セレスティア:

  そちらの方がショックっぽいですわね。

 

石丸清多夏:

  そろそろ白状しろ! そうすれば全てが終わる!

 

葉隠康比呂:

  くそっ……何か自分のアリバイが証明できるものはないのか……

 

河上守:

  (僕が葉隠の話を聞きに行った時、かなり怒ってたな。

  とても嘘には思えんかったけどなぁ……)

 

石丸清多夏:

  そろそろ白状したらどうかね!

 

葉隠康比呂:

  だから何も知らんべ~!

 

朝日奈葵:

  実際、喧嘩してたんでしょ! 殴った時の拍子にやったんでしょ!

 

葉隠康比呂:

  んなことできるわけねぇべ!

 

山田一二三:

  どうやら、クロ確定のようですな。

 

十神白夜:

  葉隠、『お前は10時に桑田を殺した。』間違いないな?

 

葉隠康比呂:

  もういいもん……結局誰も信じて……

 

河上守:

  本当にそうなんか……?

 

葉隠康比呂:

  ……ほえ?

 

十神白夜:

  ……言ってみろ、河上。

 

河上守:

  いやだって、仮に僕が犯人だとして、殺人を犯しても、

  普通自分の洗濯物を忘れるか?

 

葉隠康比呂:

  そ、そうだべ! そんなおっちょこちょいするわけないべ!

 

朝日奈葵:

  いや、凄くしそうなんだけど……

 

葉隠康比呂:

  …………否定できんべ……

 

河上守:

  否定できん程のおっちょこちょいなんか……

 

山田一二三:

  そういえば、関係あるかどうか分かりませんが、よろしいですか?

 

江ノ島盾子:

  どうしたのよ、いきなり……

 

山田一二三:

  実はですな、9時ごろ、食堂へ行く途中に葉隠康比呂殿を見ましてな……

  その30分後に、桑田殿が入っていきました。

 

朝日奈葵:

  ほら! やっぱアンタじゃない!

 

葉隠康比呂:

  こじ付け度合いが半端ないべぇ!

 

腐川冬子:

  いい加減認めなさいよ……

 

河上守:

  いや、ちょっと待って。何か違和感あるねん……

 

苗木誠:

  …………殺人をした時間だね。

 

河上守:

  せや。

  その前に、一つ気になる事があるんや。

  あの洗濯する時間って、何ぼ掛かるんや?

 

江ノ島盾子:

  確か、45分ぐらい掛かったんじゃない?

 

苗木誠:

  そうか…………多分、葉隠君は犯人じゃないと思うよ。

 

江ノ島盾子:

  え、どうしてよ?

 

河上守:

  まず、葉隠は9時にランドリーへ行った。

  分かっての通り、洗濯しにいったんやな。

 

葉隠康比呂:

  そうだべ!

 

河上守:

  その30分後、桑田もランドリーへやってきた。

  同じく洗濯やろ。

 

葉隠康比呂:

  おう。来た時の桑田っちの顔は今でも忘れんべ……

 

朝日奈葵:

  いちいち横槍入れないでくれる……?

 

葉隠康比呂:

  わ、わかりました……

 

河上守:

  ……それでな、葉隠は既に30分の洗濯は終えていたわけや。

  つまり、その時点で葉隠は犯人やない。

 

腐川冬子:

  な……何でそうなんのよ……

 

苗木誠:

  モノクマファイルの内容だよ。

  桑田君は、いつ殺されたかを思い出してみて。

 

不二咲千尋:

  ……確か、午後10時だったよね……

  あ! そういうことか!

 

大和田紋土:

  な、何が分かったんだよ……

 

苗木誠:

  死亡時刻が午後10時ってことは、

  9時半から10時までに、殺したとは思えない理由があるんだ。

 

河上守:

  まず一つに、洗濯が終わるまでの15分。

  この時には恐らく洗濯を回していたはずや。

  つまり、9時45分までに殺す事が可能やとしても、死亡時刻が合わん。

 

苗木誠:

  そして9時45分の後に洗濯物を取り出して乾燥機に入れて乾かす筈。

  乾燥機がなくても、そのまま洗濯物を持って人を殴るのは限度があるよ。

  そもそも、洗濯物は洗濯機の中に入ってたんだ。

  葉隠はおそらく、その前に喧嘩して帰ったんじゃないかな?

 

葉隠康比呂:

  す、すげぇ……本物の探偵みたいだべ……

 

河上守:

  そして、殺したと思った後に、

  自分の洗濯物を洗濯機の中に戻すなんて尚不自然や。

  それに計画的殺人やとしても、そうやなかったとしても、

  洗濯物を同じ場所に戻すなんて、自分が犯人やと言う証拠を

  わざわざ残したりするような真似はせんやろ?

 

苗木誠+河上守:

  つまり、犯人は葉隠じゃない!

 

山田一二三:

  ……何か、二人の間にコンビネーションが出来上がってますな……

 

江ノ島盾子:

  いつの間にこんな友情が……

 

不二咲千尋:

  な、何だかカッコいい……

 

大和田紋土:

  そ、そうなのか……?

 

十神白夜:

  おい。話が逸れてるぞ……

 

葉隠康比呂:

  そうだべ! 俺のアリバイを証明してくれたんだから、

  感謝感激の至りだべ! 

  よし! お前らには1年分の、『俺が占ってあげる券』を差し上げるべ!

 

苗木誠+河上守:

  それは違うよ!(それは違うで!)

 

葉隠康比呂:

  は、はもる程嫌なんかぁ!?

 

朝日奈葵:

  それに賛成だよ!

 

葉隠康比呂:

  おおぅ! 何だこの三方塞がりは!

 

モノクマ:

  ちょっと! ちょっとちょっと!

  いい加減にしてよね! 葉隠君のせいで話が全然進まないじゃないか!

 

葉隠康比呂:

  お、俺のせいなの!?

 

モノクマ:

  それでどうするの?

  結局犯人の目星付いてなさそうだけど?

 

セレスティア:

  そういえば、今までの漫才のせいで全然特定できていませんわね。

 

葉隠康比呂:

  お、俺のせいなんか……?

 

大神さくら:

  ……そういえば、あの引きずった跡はなんだったのだ?

 

不二咲千尋:

  引きずった跡……?

 

大神さくら:

  桑田の倒れておった洗濯機とその左隣の洗濯機の間に、

  引きずられたような跡があったのだ。

 

石丸清多夏:

  ……まさか、桑田君が死んだ後に動いたとか?

 

十神白夜:

  死んだ後に動くなど、出来るわけがないだろう……

 

石丸清多夏:

  で、ではどうやって……

 

霧切響子:

  ……そういえば、その左隣の洗濯機で面白い物を見つけたわ。

 

山田一二三:

  ……制服のボタンのようですな。それと白い糸くずも……

 

朝日奈葵:

  でもさ、それの何が面白いの?

 

霧切響子:

  桑田君の左隣の洗濯機に、犯人の洗濯物があったのかもしれないわ。

 

山田一二三:

  な、なんですとぉぉぉぉ!!

 

霧切響子:

  犯人は恐らく、殴った時に偶然、

  自分の洗濯物を入れた洗濯機に桑田君が倒れてしまったのよ。

 

河上守:

  そうか……じゃあ、あの引きずった跡って言うのは……

 

霧切響子:

  恐らく、犯人が動かしたものでしょうね。

  血だまりの量からもそう推測できるわ。

 

苗木誠:

  じゃあ……そのボタンと糸くずは……

 

セレスティア:

  犯人の忘れ物、ということでしょうね。

 

大和田紋土:

  それじゃあ、その持ち主が分かれば犯人も分かったも同然じゃねぇか!

 

河上守:

  (しかし、これだけで本当に犯人なんて分かるんか?

  犯人がきっちりした性格でもない限り、ボタンの有無なんてわからんし……)

 

石丸清多夏:

  しかし、それだけで本当に犯人がわかるのか……?

 

霧切響子:

  ええ。もう目星は付いてるわ。

  恐らく、読者以外のここにいる皆は分かった筈よ。

 

山田一二三:

  どういうことかさっぱりですが……

  つまり、我々にはすぐにわかる程の証拠なのですか?

 

セレスティア:

  そのようですわよ。とんだお間抜けさんですが……

 

大和田紋土:

  さっぱりわかんねぇぞ……

 

河上守:

  (……ああ、確かに読者以外の皆なら分かる決定的な証拠かもな……

  やけど……やけどさぁ……なんでお前やねん……)

 

十神白夜:

  ふ……知ってるか? 馬面は視野が狭いということを。

 

大和田紋土:

  ……もう校則がなんぼのもんだゴラァッ! こいつ殺すぅッ!!

 

大神さくら:

  よさぬか、大和田よ! そしていちいち刺激するでない、十神よ!

 

朝日奈葵:

  そ、そうだよ! 今は犯人探しが先でしょ!

 

河上守:

  ……なぁ、知ってるか……?

 

大神さくら:

  …………どうした、河上よ。

 

河上守:

  人はなぁ、笑うと寿命が延びるんやってさ……

 

石丸清多夏:

  な、何で今そんなことを……!

 

河上守:

  本当は犯人なんて、正直とても思えんねん……本当になぁ…………石丸。

 

石丸清多夏:

  ……なぁ!?

 

苗木誠:

  ちょ、何を言って──

 

石丸清多夏:

  何を言うんだいきなり! 僕が何で犯人なんだ!

 

霧切響子:

  ……貴方は風紀委員よね。そんな乱れた格好してていいの?

 

石丸清多夏:

  何を言っているんだ──あ……あれ……?

  何故……何故……第一ボタンが……ない……の……だ……?

 

セレスティア:

  石丸君制服のボタンと洗濯機にあったボタン……

  確かによく似てますわね。

 

大和田紋土:

  ……どういうことだよ、おい……

 

石丸清多夏:

  ぼ、僕じゃない……僕は……何もしていない……

 

江ノ島盾子:

  ごめんね。今更なんだけど思い出した事あったわ……

  本当に嫌なタイミングで思い出したけど……

 

霧切響子:

  思い出した事って、何なの?

 

江ノ島盾子:

  霧切も一緒にいたから覚えてると思うけど、

  あたし10時直前まで食堂に居たんだよね。

 

霧切響子:

  確かに、居たわね。

 

江ノ島盾子:

  霧切が先に食堂から出て行って、アタシも夜時間になる直前に出たの。

  そしたら石丸がさ、同じ制服持ってランドリーから個室に走ってたよ。

  その時別に気に留めてなかったから忘れていたけどさ……

  あれって、アンタが洗濯した制服だよね?

 

石丸清多夏:

  あ……あ…………

  …………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  僕は知らない。

 

江ノ島盾子:

  ……は?

 

石丸清多夏:

  知らないったら知らない! 僕は何も知らない!

  お前が勝手にそんな風に想像しているだけだろう!

  僕は何も知らない!

 

江ノ島盾子:

  ちょ、ちょっと──

 

石丸清多夏:

  そもそもお前ら! 僕がそのボタンの持ち主とは限らないだろうが!

  同じようなボタンなんて、いっぱいあるぞ!

  それを僕の物だと決めつける程最低なんだなお前らは!!

 

河上守:

  だけど現に、石丸の第一ボタンがないやないか!

 

石丸清多夏:

  それは失くしただけだ! 今ないだけだ!

 

河上守:

  お前やったら風紀を正しく精神で、

  絶対にそんな時の為にスペアがある筈や!

 

石丸清多夏:

  違う違う違う違う違う!

  何もかも全てが端から端まで何が何でも100パーセント絶対に違うッ!

 

河上守:

  じゃあ何で着替えへんねん!

 

石丸清多夏:

  違う違う……え?

 

河上守:

  石丸、確かお前、服に水を盛大に零した言ってたな。

  それを風呂場で絞って乾かしたって。

  ……なんで、他の制服に着替えへんかったんや?

 

石丸清多夏:

  …………

 

河上守:

  そもそも、ランドリーへ行って乾燥機使えば一発やんか。

  なのに……なんで乾燥機を使わずに……絞ったんや?

 

石丸清多夏:

  あ、ああ……ああああ…………

  ………………………………………………

  …………………………………………はは。

 

河上守:

  ……石丸?

 

石丸清多夏:

  もう……別に隠しても意味がない……

  ここまでバレているのに、隠した所で何も得ない。

  大人しく負けを認めるのも、風紀を正す為に──

  風紀を戻す為には、必要なのかもしれない……

 

河上守:

  石丸……

 

石丸清多夏:

  僕は……死ぬのが怖かった。

  だが、今頃命乞いをしたところで、どうにかなるわけではないだろう。

  僕は……僕は…………風紀委員として、最悪な手段を取ったのだから。

 

 


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