葉隠康比呂:
俺は、ただ本当に桑田っちと喧嘩しただけなんだ!
確かにそれが動機になるかもしれんけど、
俺はそれでもやっていないべ!
江ノ島盾子:
自分で動機理由説明してどうすんのよ……
葉隠康比呂:
だーっ! 揚げ足を取るなッ!!
山田一二三:
もうそろそろ自分が犯人だと言うでしょうな。
葉隠康比呂:
こおおおおぅ!! どうして誰も俺のこと信じてくれないんだよぉ!
十神白夜:
お前が胡散臭いからだ。
葉隠康比呂:
そ、そうだったのか?
セレスティア:
そちらの方がショックっぽいですわね。
石丸清多夏:
そろそろ白状しろ! そうすれば全てが終わる!
葉隠康比呂:
くそっ……何か自分のアリバイが証明できるものはないのか……
河上守:
(僕が葉隠の話を聞きに行った時、かなり怒ってたな。
とても嘘には思えんかったけどなぁ……)
石丸清多夏:
そろそろ白状したらどうかね!
葉隠康比呂:
だから何も知らんべ~!
朝日奈葵:
実際、喧嘩してたんでしょ! 殴った時の拍子にやったんでしょ!
葉隠康比呂:
んなことできるわけねぇべ!
山田一二三:
どうやら、クロ確定のようですな。
十神白夜:
葉隠、『お前は10時に桑田を殺した。』間違いないな?
葉隠康比呂:
もういいもん……結局誰も信じて……
河上守:
本当にそうなんか……?
葉隠康比呂:
……ほえ?
十神白夜:
……言ってみろ、河上。
河上守:
いやだって、仮に僕が犯人だとして、殺人を犯しても、
普通自分の洗濯物を忘れるか?
葉隠康比呂:
そ、そうだべ! そんなおっちょこちょいするわけないべ!
朝日奈葵:
いや、凄くしそうなんだけど……
葉隠康比呂:
…………否定できんべ……
河上守:
否定できん程のおっちょこちょいなんか……
山田一二三:
そういえば、関係あるかどうか分かりませんが、よろしいですか?
江ノ島盾子:
どうしたのよ、いきなり……
山田一二三:
実はですな、9時ごろ、食堂へ行く途中に葉隠康比呂殿を見ましてな……
その30分後に、桑田殿が入っていきました。
朝日奈葵:
ほら! やっぱアンタじゃない!
葉隠康比呂:
こじ付け度合いが半端ないべぇ!
腐川冬子:
いい加減認めなさいよ……
河上守:
いや、ちょっと待って。何か違和感あるねん……
苗木誠:
…………殺人をした時間だね。
河上守:
せや。
その前に、一つ気になる事があるんや。
あの洗濯する時間って、何ぼ掛かるんや?
江ノ島盾子:
確か、45分ぐらい掛かったんじゃない?
苗木誠:
そうか…………多分、葉隠君は犯人じゃないと思うよ。
江ノ島盾子:
え、どうしてよ?
河上守:
まず、葉隠は9時にランドリーへ行った。
分かっての通り、洗濯しにいったんやな。
葉隠康比呂:
そうだべ!
河上守:
その30分後、桑田もランドリーへやってきた。
同じく洗濯やろ。
葉隠康比呂:
おう。来た時の桑田っちの顔は今でも忘れんべ……
朝日奈葵:
いちいち横槍入れないでくれる……?
葉隠康比呂:
わ、わかりました……
河上守:
……それでな、葉隠は既に30分の洗濯は終えていたわけや。
つまり、その時点で葉隠は犯人やない。
腐川冬子:
な……何でそうなんのよ……
苗木誠:
モノクマファイルの内容だよ。
桑田君は、いつ殺されたかを思い出してみて。
不二咲千尋:
……確か、午後10時だったよね……
あ! そういうことか!
大和田紋土:
な、何が分かったんだよ……
苗木誠:
死亡時刻が午後10時ってことは、
9時半から10時までに、殺したとは思えない理由があるんだ。
河上守:
まず一つに、洗濯が終わるまでの15分。
この時には恐らく洗濯を回していたはずや。
つまり、9時45分までに殺す事が可能やとしても、死亡時刻が合わん。
苗木誠:
そして9時45分の後に洗濯物を取り出して乾燥機に入れて乾かす筈。
乾燥機がなくても、そのまま洗濯物を持って人を殴るのは限度があるよ。
そもそも、洗濯物は洗濯機の中に入ってたんだ。
葉隠はおそらく、その前に喧嘩して帰ったんじゃないかな?
葉隠康比呂:
す、すげぇ……本物の探偵みたいだべ……
河上守:
そして、殺したと思った後に、
自分の洗濯物を洗濯機の中に戻すなんて尚不自然や。
それに計画的殺人やとしても、そうやなかったとしても、
洗濯物を同じ場所に戻すなんて、自分が犯人やと言う証拠を
わざわざ残したりするような真似はせんやろ?
苗木誠+河上守:
つまり、犯人は葉隠じゃない!
山田一二三:
……何か、二人の間にコンビネーションが出来上がってますな……
江ノ島盾子:
いつの間にこんな友情が……
不二咲千尋:
な、何だかカッコいい……
大和田紋土:
そ、そうなのか……?
十神白夜:
おい。話が逸れてるぞ……
葉隠康比呂:
そうだべ! 俺のアリバイを証明してくれたんだから、
感謝感激の至りだべ!
よし! お前らには1年分の、『俺が占ってあげる券』を差し上げるべ!
苗木誠+河上守:
それは違うよ!(それは違うで!)
葉隠康比呂:
は、はもる程嫌なんかぁ!?
朝日奈葵:
それに賛成だよ!
葉隠康比呂:
おおぅ! 何だこの三方塞がりは!
モノクマ:
ちょっと! ちょっとちょっと!
いい加減にしてよね! 葉隠君のせいで話が全然進まないじゃないか!
葉隠康比呂:
お、俺のせいなの!?
モノクマ:
それでどうするの?
結局犯人の目星付いてなさそうだけど?
セレスティア:
そういえば、今までの漫才のせいで全然特定できていませんわね。
葉隠康比呂:
お、俺のせいなんか……?
大神さくら:
……そういえば、あの引きずった跡はなんだったのだ?
不二咲千尋:
引きずった跡……?
大神さくら:
桑田の倒れておった洗濯機とその左隣の洗濯機の間に、
引きずられたような跡があったのだ。
石丸清多夏:
……まさか、桑田君が死んだ後に動いたとか?
十神白夜:
死んだ後に動くなど、出来るわけがないだろう……
石丸清多夏:
で、ではどうやって……
霧切響子:
……そういえば、その左隣の洗濯機で面白い物を見つけたわ。
山田一二三:
……制服のボタンのようですな。それと白い糸くずも……
朝日奈葵:
でもさ、それの何が面白いの?
霧切響子:
桑田君の左隣の洗濯機に、犯人の洗濯物があったのかもしれないわ。
山田一二三:
な、なんですとぉぉぉぉ!!
霧切響子:
犯人は恐らく、殴った時に偶然、
自分の洗濯物を入れた洗濯機に桑田君が倒れてしまったのよ。
河上守:
そうか……じゃあ、あの引きずった跡って言うのは……
霧切響子:
恐らく、犯人が動かしたものでしょうね。
血だまりの量からもそう推測できるわ。
苗木誠:
じゃあ……そのボタンと糸くずは……
セレスティア:
犯人の忘れ物、ということでしょうね。
大和田紋土:
それじゃあ、その持ち主が分かれば犯人も分かったも同然じゃねぇか!
河上守:
(しかし、これだけで本当に犯人なんて分かるんか?
犯人がきっちりした性格でもない限り、ボタンの有無なんてわからんし……)
石丸清多夏:
しかし、それだけで本当に犯人がわかるのか……?
霧切響子:
ええ。もう目星は付いてるわ。
恐らく、読者以外のここにいる皆は分かった筈よ。
山田一二三:
どういうことかさっぱりですが……
つまり、我々にはすぐにわかる程の証拠なのですか?
セレスティア:
そのようですわよ。とんだお間抜けさんですが……
大和田紋土:
さっぱりわかんねぇぞ……
河上守:
(……ああ、確かに読者以外の皆なら分かる決定的な証拠かもな……
やけど……やけどさぁ……なんでお前やねん……)
十神白夜:
ふ……知ってるか? 馬面は視野が狭いということを。
大和田紋土:
……もう校則がなんぼのもんだゴラァッ! こいつ殺すぅッ!!
大神さくら:
よさぬか、大和田よ! そしていちいち刺激するでない、十神よ!
朝日奈葵:
そ、そうだよ! 今は犯人探しが先でしょ!
河上守:
……なぁ、知ってるか……?
大神さくら:
…………どうした、河上よ。
河上守:
人はなぁ、笑うと寿命が延びるんやってさ……
石丸清多夏:
な、何で今そんなことを……!
河上守:
本当は犯人なんて、正直とても思えんねん……本当になぁ…………石丸。
石丸清多夏:
……なぁ!?
苗木誠:
ちょ、何を言って──
石丸清多夏:
何を言うんだいきなり! 僕が何で犯人なんだ!
霧切響子:
……貴方は風紀委員よね。そんな乱れた格好してていいの?
石丸清多夏:
何を言っているんだ──あ……あれ……?
何故……何故……第一ボタンが……ない……の……だ……?
セレスティア:
石丸君制服のボタンと洗濯機にあったボタン……
確かによく似てますわね。
大和田紋土:
……どういうことだよ、おい……
石丸清多夏:
ぼ、僕じゃない……僕は……何もしていない……
江ノ島盾子:
ごめんね。今更なんだけど思い出した事あったわ……
本当に嫌なタイミングで思い出したけど……
霧切響子:
思い出した事って、何なの?
江ノ島盾子:
霧切も一緒にいたから覚えてると思うけど、
あたし10時直前まで食堂に居たんだよね。
霧切響子:
確かに、居たわね。
江ノ島盾子:
霧切が先に食堂から出て行って、アタシも夜時間になる直前に出たの。
そしたら石丸がさ、同じ制服持ってランドリーから個室に走ってたよ。
その時別に気に留めてなかったから忘れていたけどさ……
あれって、アンタが洗濯した制服だよね?
石丸清多夏:
あ……あ…………
…………………………………………
僕は知らない。
江ノ島盾子:
……は?
石丸清多夏:
知らないったら知らない! 僕は何も知らない!
お前が勝手にそんな風に想像しているだけだろう!
僕は何も知らない!
江ノ島盾子:
ちょ、ちょっと──
石丸清多夏:
そもそもお前ら! 僕がそのボタンの持ち主とは限らないだろうが!
同じようなボタンなんて、いっぱいあるぞ!
それを僕の物だと決めつける程最低なんだなお前らは!!
河上守:
だけど現に、石丸の第一ボタンがないやないか!
石丸清多夏:
それは失くしただけだ! 今ないだけだ!
河上守:
お前やったら風紀を正しく精神で、
絶対にそんな時の為にスペアがある筈や!
石丸清多夏:
違う違う違う違う違う!
何もかも全てが端から端まで何が何でも100パーセント絶対に違うッ!
河上守:
じゃあ何で着替えへんねん!
石丸清多夏:
違う違う……え?
河上守:
石丸、確かお前、服に水を盛大に零した言ってたな。
それを風呂場で絞って乾かしたって。
……なんで、他の制服に着替えへんかったんや?
石丸清多夏:
…………
河上守:
そもそも、ランドリーへ行って乾燥機使えば一発やんか。
なのに……なんで乾燥機を使わずに……絞ったんや?
石丸清多夏:
あ、ああ……ああああ…………
………………………………………………
…………………………………………はは。
河上守:
……石丸?
石丸清多夏:
もう……別に隠しても意味がない……
ここまでバレているのに、隠した所で何も得ない。
大人しく負けを認めるのも、風紀を正す為に──
風紀を戻す為には、必要なのかもしれない……
河上守:
石丸……
石丸清多夏:
僕は……死ぬのが怖かった。
だが、今頃命乞いをしたところで、どうにかなるわけではないだろう。
僕は……僕は…………風紀委員として、最悪な手段を取ったのだから。