ダンガンロンパ リアルの絶望と学園の希望   作:ニタ

14 / 38
『モノクマげきじょう』

 いつもこの小説を見ていただき、誠にありがとうございますとモノクマは深々とお辞儀をしてみたり。
 でも、いつも誰かが見ているってことは、誰かに監視されているってことなんだよね。ボクが生徒を見ているように。
 人は常に人を見続けている。人が常に見続けられる。
 怖いよねぇ……それじゃ、アブナイ本とかも見れないってことだもんねぇ。
 人間はヘンタイさんだね!
 でも、ボクたちは人が人を監視するのがお仕事なのです。
 誰かに見られるという生活は、自らの成長を良き促すのです!


episode 1 パート 9 (非)日常編

 僕は夢を見ていた。とても楽しい夢。

 大神さんがいて、朝日奈さんがいて、大和田がいて、石丸がいて、千尋ちゃんがいて、葉隠がいて、桑田がいて、舞園さんがいて、山田がいて、セレスさんがいて、腐川がいて、十神がいて、戦刃さんがいて、霧切さんがいて、誠ちゃんがいて。

 僕らは皆で遊んでいた。子供の頃に遊んでいたような遊び。鬼ごっことか、かくれんぼとか、だるまさんがころんだとか、缶蹴りとか。

 戦刃さんだけ、鬼にはならなかったような気もする。相手が悪かったのか。葉隠は、しょっちゅう鬼になってたし、セレスさんも、一回は鬼になったけど、まさしく鬼の眼光で襲われて、十神は嫌々付き合ったが、結構ノリノリで、大神さんが朝日奈さんと一緒に逃走するけど、大和田が鬼だったとき、大神さんが朝日奈さんに立ちふさがって、自ら鬼になってしまって。

 桑田は足は速かったけど、大神さんに追いつかれて鬼になった。

 山田は遠くで鬼だった舞園さんを見て、それを腐川が嫌悪して、しかも腐川さんが山田の居場所を舞園さんに知らせた。誠ちゃんと霧切さんは、終始一緒だった。

 そんな、夢を、楽しい夢を長い間見ていた。

 何だかそれが本当のようで、リアルのようで、僕はこの場所が、大好きだった。そんな時間が、続けばいいのに。

 しかし、突然世界は暗くなって、皆が次々と消えていく。

 

戦「貴方は、偽善者。私にははっきりそう見えた」

 

 最後に戦刃さんがそう言い残し、消えていった。

 最後の一人となった僕は、暗い中、出口を探し回った。暗闇で、光なんて一切ない、何も見えない空間を。

 あの楽しい時間を取り戻したい。そんな意思があったのだと思う。僕はいつまでも、暗闇を走り回った。

 しかし、一向に壁さえないまま。僕は立ち止まった。その時、スポットライトが僕に当たった。

 

モ「皆さん! 彼が反逆者なのです!」

 

 突如現れた観客席からブーイングが走る。

 僕を迫害するかのような、怒りの声。僕はがむしゃらに逃げた。

 もう嫌だ。こんな重い心を、思い心を、背負いたくない。逃げ出したい。捨て去りたい。

 自分の身体に、起き上がれない程の金の延べ棒が重くのしかかる。

 重い心から、逃げ切るなんて、不可能だ。背負ってしまった、延べ棒の数は、増えていった。一つ、また一つ。はたまた一つ。されど一つ。もういっちょ一つ。まだまだ一つ。そしてまた一つ。

 いつしかその延べ棒に圧迫され、僕は穴に落ちていた。

 長い穴に落ちて、落ちて、落ちて、落ちて──

 

「河上──く──希望──ちゃダ──」

 

 夢の中で、ある人の声が聞こえた。

 

「大丈──! 河──君なら出──るよ」

 

 そんな救世主の声は聞こえづらかったが、僕は何かが解き放たれた気がした。

 

 

 

 

 

          ☆

 

 

 

 

 

 僕が目を覚ましたのは、白い天井の部屋だった。

 僕はここがどこなのか、確認しようと自分の左右を見る。そしたら、僕の右側に江ノ島さんが僕を心配そうに見ていた。

 

守「……今……何時や……?」

江「……11時だよ」

 

 江ノ島さんの口調は、いつもと違っていた。

 

江「……大丈夫?」

守「──江ノ島……さん……?」

江「うん。具体的には違うけど……」

 

 ああ、そうだった。すっかり忘れていた。彼女は江ノ島盾子じゃなくて、戦刃むくろだった。変装していて、全然分からなかった。

 

戦「大丈夫だった? 凄く魘されていたけど……?」

 

 何だか、凄く怖い夢を見ていたような気がする。

 それよりも、何だか頭が痛かった。何だか意識が朦朧としていて、どういう状況か掴めない。一体何が起きているかさえ、思考できなかった。

 

 

戦「…………」

 

 彼女は、いつものチャラけた表情ではなかった。ウィッグを被ってるので、どうしても江ノ島さんに見えるから、違和感があった。その表情は、悲しんでいるのか、辛いのか、僕にはよくわからなかった。

 

戦「ごめんね……こんなことするわけじゃなかったんだ……」

 

 彼女は僕の左腕を見て、そういった。

 その左腕は、包帯でぐるぐるに巻かれていた。まるで大怪我をしていたかのように……大怪我?

 

守「──あ、あああ……」

 

 僕は意識をようやく取り戻した。今まで何が起きていたのかも、粗方思い出す。僕は、戦刃さんを助けた時、左腕に大怪我を負った。

 

守「…………」

 

 結構な時間泣いていたと思う。ただただ、怖くて泣いていた。

 

戦「…………」 

 

 泣きやんだ頃には、僕は上半身を起こして、心を落ち着かせていた。

 そんな中、戦刃さんは何かを言いづらそうにしているようだった。しかし、その顔は次第に無表情になる。その表情は、僕にはとても辛そうにも見えた。

 

戦「私が超高校級の絶望なの、知ってるよね」

守「……ああ」

戦「その超高校級の絶望のリーダーの、江ノ島盾子は、私の妹は、私と一緒に、絶望を作るために、この殺し合いを企んだ。だけど、私は迷っているの……」

 

 一拍おいて、彼女は喋りだす。

 

戦「私は、超高校級の絶望で、どうしたいんだろうって」

 

 その意外な言葉に、僕は驚かされた。だって、戦刃さんは、超高校級の絶望として、僕らを殺しにきていた。確実に、僕らの敵だった。理由は勿論、戦刃さんが正体を偽ったと言う事が、一番の事実だ。そして、黒幕と手を組んでいたのは絶対だ。ゲームの中で証明したし、現に今、自分の口からそう言っていた。なのに、彼女はどうしていきなりそんな事を言ったのか、僕には理解できなかった。

 

戦「私は、盾子ちゃんが喜んでくれたら、何をしても構わなかった。何でも出来た。いつもそうだった。そうしてきた。そんな関係だった。だけど、この学園に潜入してから、疑問に思ったの。それは──私は、本当に盾子ちゃんを手伝っていいのかなって……」

 

 その言葉の一つ一つに、重みがあった。

 

守「……またどうしてなんや?」

戦「それは……苗木君のせい。詳しくは言いたくないけど、私は苗木君のせいで、私はそんな疑問を持った。そして、貴方のせいもある」

守「え、僕?」

戦「……貴方せいで、私は色んなことを考えた。……河上君は、どうして正体を暴きたかったの?」

守「…………」

 

 あの事を根に持っている、という訳ではない。単純に、理由が訊きたいだけだったと僕は感じた。

 

守「僕は……何でそんな事をしたんやろか。僕は黒幕側の敵として戦刃さんを警戒しないといけなかったのに、でも、暴かないと進めないと思って……」

戦「じゃああの時、何で助けてくれたの?」

 

 あの時……グングニルの槍の餌食になりかけた、戦刃さんを僕が助けた時。そのことだろう。

 

守「そんなの決まってる。死ぬところを見るなんて……絶対に嫌やんか」

戦「……ありがとう……あの時助けてくれて……」

 

 少し照れている様子だった。何だかこの学園に来てから色んな人たちの色んな顔を見た気がする。まだまだ少ない気もするけど。

 そして少し落ち着いたのか、さっきの辛そうな無表情から、心を許してくれたのか、威勢の良い無表情をしていた。……威勢の良い無表情というのも変な言葉だけど。

 

戦「……私は、あの攻撃の意味をずっと考えていた。なんで盾子ちゃんは、私を殺そうとしたのかを。台本には、私を殺すような旨は載ってなかったから、正直動揺した」

 

 え、今までのあれって、台本だったの?

 

戦「どうしても結論を出せなかった。私には、出来なかった。でも、貴方の言葉を聞いて、私は結論を出せた、かもしれない」

守「その心は?」

戦「盾子ちゃんはあの時……私を殺そうとした」

 

 そんな物騒な言葉を戦刃さんは少し躊躇ったが、そう言った。

 

戦「盾子ちゃんは、私を殺して、自分の姉を殺すことによって、絶望を感じようとしていたのだと思う」

守「……また、何と言ったらええかな……」

 

 僕は江ノ島さんが戦刃さんを殺そうとした理由は予め知っていたけれど、だからって、何かを言えたものでもなかった。

 

戦「……ごめんね。こんな話しちゃって……」

守「……ええよ、別に」

 

 話はここでようやく切りあがった。

 とりあえず、他に何か話題がないか探ってみる、と思ったら僕自身に、大きな話題があるじゃないか。

 

守「そういえば、この包帯って、誰がやったんや?」

戦「うん。治療を施して、包帯を巻いたのは全部盾子ちゃんがやったよ」

守「わーうちぜんぜんわからへんわー」

 

 医者でもないのにそんな事していいのかよ! 大丈夫なのか、僕の左腕!

 

戦「大丈夫だよ。霧切さんが色々問い詰めたから、手術の問題はないよ」

守「確かに霧切さんの言葉攻めに右に出る者はいないやろうけど、僕が聞きたいのは、何故医療免許も所持していないにも関わらず、手術が出来るか、ということや」

戦「盾子ちゃんは絶望の妨げになることに関しては、天才的な集中力と学習能力があるから」

 

 そこまで黒幕を追い詰めたのか、霧切さん。何だか、もう尊敬できる。その口達者脳達者な霧切さんに、流石の江ノ島盾子でも適わなかったようだった。まあ、江ノ島さんもやっぱり凄いけど。

 

守「僕のこの傷は、どうなるんや?」

戦「最新技術を行使しまくった、って盾子ちゃんは言ってた。多分、大丈夫」

守「…………」

 

 何を安心せいっちゅうんや。

 

守「そういや、僕は何ぼほど寝てたんや?」

戦「……うん。確か、二、三日は寝てたかな」

守「そんなに寝てたんか……」

戦「一様、河上君が起きた時の為に、順番で看病している」

守「そりゃまた……えらいタイミングで起きたな、僕は……」

戦「でも、私、結構長い時間いたから……不思議じゃない」

守「そんなにおったんか?」

戦「うん。20時間ぐらい」

 

 引いた。普通に引いた。

 それと同時に、彼女の真摯な行動に感動もした。普通、一日近くも知らぬ存ぜぬの他人を看病なんて出来ない。普通は嫌がる。居心地が悪くなるはずだ。なのに、彼女は拒んだ様子は無かった。

 

戦「……どうしたの?」

守「……ありがとな、看病してくれて」

戦「……うん」

 

 彼女は微笑んで、そう言った。

 すると突然、この部屋の扉が開けられたかと思ったらそこから現れた誠ちゃんが息切れしながらも何かを言おうとしたが、僕の事に気づいて、一瞬止まった。

 

苗「…………」

江「ど、どうしたの、苗木……」

 

 戦刃さんは江ノ島盾子に戻って誠ちゃんに話す。戻ってって言っても、最初からウィッグとか化粧もしていたし、戻ったのは口調だけだった。

 しかし、そんな気楽な考察に呆けていられたのは、ものの数秒だった。

 誠ちゃんが、僕たちに向かって、ハッキリこう言った。

 

苗「()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     episode 1 絶望メイド隊 非日常編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。