ダンガンロンパ リアルの絶望と学園の希望   作:ニタ

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episode 1 パート 6 (非)日常編

 僕は小さい頃からとある夢を見ていた。

 それは僕と同じくらいの歳の女の子で、いつも一緒に遊んでいた。他の子達は皆元気で活発な子達ばかりで、根暗な性格な僕はいつも一人だった。そんな僕に、ある一人の女の子がこう言ったんだ。

 

「いっしょにあそぼう!」

 

 僕はその言葉を聞いて、凄く嬉しかった。ちょっと泣きそうになった。でもその子に「なくのは、おとこのこらしくないぞ!」って言われちゃって……。それ以来、僕は泣かないように頑張った。

 その女の子の家とは近所で、それ以来からいつも遊んでいた。トランプだったり、お絵かきだったり、UNOだったり、ポーカーだったり……子供離れしたゲームもよくやっていた。しかも結構強かった。どれぐらいかと言うと、30年ギャンブルで稼いできた男相手に、お茶を飲むよりも簡単だと言わんばかりに全財産を奪うほどだった。そんな彼女も夢があった。僕は結局最後まで聞けなかった。突然、引っ越したのだ。その時僕は何でなのかわからなかった。今思うと、もしかしたら親切な人達に狙われていたと思っている。

 でも、僕はようやく見つけたんだ。その時分かれてしまった、あの人に──

 

「それが、わたくしでしたのね……」

 

 そんな風にセレスさんは傷心に浸っている。昔のことを思い出し──

 

「なわけねぇだろうがビチグソがぁ!!」

「ひぃぃい!!」

「わたくしがそんな晴やかな過去を送っていた覚えありませんわ! しかも幼馴染なんてコテコテな殿方など見たことなどありません! そもそも貴方は大阪出身ですわよね! しかもそれ全部夢でしょうが! そして振りが長い!!」

 

 マシンガントーク並レベルにツッコミを入れるセレスさん。

 

「いやぁ、元気ええなぁ、セレスさん。何かええことでもあったんか?」

「ええ、貴方を真っ先に殺す標的として定まりましたわ」

「……許してちょ!」

「それで許されるのは寛○ちゃんだけですわ」

「……セレスさんの口から○平ちゃんの名前を聞くのは凄く違和感があるんやけど……」

「んなこたぁ知ったこっちゃありませんわよ」

 

 僕はあの後、セレスさんの部屋に訪れて、部屋の中にいた。セレスさんの部屋は、なんと、気前良く部屋に入ることを許可してくれた。まさかあのセレスさんがこんなちょろい女だとは思いもしなかったけど……しかし、セレスさんの部屋に入れたのは僥倖と言えよう。

 

「何だか、無性に腹が立つのですけど……」

「あ、まって。僕にその腹をも(えぐ)りそうな握り拳をこっちに向けないで」

 

 しかもグーの状態で中指を少し出していた。喧嘩慣れしてるのかな……

 

「で、何か御用なのですか? まさか、私を口説く為に来たわけではあるまいでしょうに……」

「…………当たり前だよ」

「…………」

 

 ひしひしと冷たい視線が突き刺さる。やだーこわいよー。

 

「……まあ良いですわ。折角部屋に招きいれたのですから、紅茶ぐらい召し上がってください……」

 

 そう言うと、予めベッドの近くの机にあったガスコンロに火をつけてやかんを置いてお湯を沸かす。

 しかし驚いた。まさかあのセレスさんが僕にお持て成しをしてくださるとは。

 

「流石の私もそれぐらいの常識は弁えていますわよ」

「……え、心を読まれた?」

「エスパーですから」

「ま、まさか……超能力者は実在したんか!」

「赤い玉にも変身できますわ」

「何かとんでもない超能力者やで!?」

「わたくしは、苗木君が神様だと信じています」

「何か急激に胡散臭い話になってきたで、おい!」

「安心してください。貴方は普通の人間ではありません」

「普通の人間や! 生まれてこのかた人間以外になった覚えはあらへん!」

「……わかりましたわよ。では貴方は人間です」

「不本意に人間にする感じをやめんか! 何か自分が信じれなくなってまうやんか!」

「不愉快ですから、人間にしたのです」

「不愉快!? 僕はそんなに人間になったらあかんのか!」

「せめて吸血鬼になってから出直しなさい」

「なにゆえ!?」

「幾ら痛めつけても、傷は回復するでしょう?」

「傷は回復しても痛いもんは嫌やわ! いや痛くなくても嫌やけど!」

「そうですか……それは本当に残念ですわ……」

 

 心底落ち込んだっぽい残念そうな顔をするセレスさん。……そこまで僕を痛めつけたいのか、セレスさんは……

 

「まあ良いですわ。男なんて星の数ほどいるのですから」

「それはセレスさん、言っちゃあかん言葉な気がするで」

「そんな事より、お湯が丁度良い感じに沸きましたわ」

「ああ、はい」

 

 ……いきなり言うから、変に畏まってしまった。

 

「ふふ……面白いですわね、河上君」

「……お褒めに預かり光栄や」

「そうですわね」

「自分で認めよった……」

 

 セレスさんはガスを止めて、沸かしたお湯をポットと二つあるカップに注いで、やかんをまたコンロに置いてから、セレスさんは立ったまま止まった。

 

「ん、どうしたんや?」

「温めているのです。ポットやカップが冷たいままお茶を入れてしまうと、お湯の温度が下がってしまい、美味しさが損なわれてしまうんです。特にミルクティーを入れるときには重要なことですのよ」

「へー初めて知った」

 

 たまにしか紅茶飲むけど、そんな面倒臭いことはしたことがなかった。それを普通にしているセレスさんは、本当に紅茶が好きなことがわかる。

 カップとポットのお湯を隣の洗面器に流して、ポットに茶葉を入れてやかんのお湯を注ぐ。そしてカップにどこから出したのか、牛乳パックを取り出した

 

 

「その牛乳は……?」

「おいしい方の牛乳です」

「いや、そういうことでなく、どこからそれを取り出したんや?」

「デリカシーがないですわよ。そういうことを訊くのはタブーですわ」

 

 そんな牛乳を二つのカップに適量に注いで、先ほどのポットを持って軽く揺らしてカップに紅茶を注ぎ、ティースプーンで紅茶を混ぜた。

 

「簡単ですが、完成しましたわ」

 

 セレスさんはトレイにカップを乗せて、テーブルに置き、カップを一つ、僕の前に丁寧に置いてくれた。

 

「さあ、召し上がれ」

 

 何だか微妙にセレスさんの対応に違和感を感じたが、僕は気にせずにカップの取っ手を持ち、手前に持ってきて紅茶を何となく確認する。

 

「……ええ匂いやな……甘い香りがする」

「ええ。クロロホルムを入れましたので」

「……………………」

「冗談ですわ。そんな無粋な真似はしませんわよ」

 

 信用できる要素はなかったけど、それでも僕は一口飲んでみる。

 

「あ、美味しい」

「当たり前ですわ。簡単にとは言え、私が作ったのですから」

「自信たっぷりやな」

 

 でも、その自信も頷けるレベルの美味しさだった。こんなに美味しい紅茶を飲んだのは生まれて初めてかもしれない。

 

「こんなうまい紅茶にありつけたのは初めてや」

「お褒めに預かり光栄ですわ」

「……言いかえせん」

 

 何気に返しが上手いセレスさんだった。

 

「わたくしは昔、ボケ殺人とよく言われましたわ」

「何か漫才師を殺しにかかって来そうで怖いな……」

「でもご安心を。わたくし、そんな記憶ございませんので」

「何かようわからん嘘つきよった……」

「ご存知ですか? 嘘つく角に福(きた)るって」

「それを言うなら笑う角に福(きた)るや。そんな嘘で幸せ呼ぶなんて、嫌やんか」

「でも世の中は嘘によって幸せは回ってますわよ」

「例えば?」

「偽善団体」

「確かに嘘の善意で数多の人に幸せを送るって感じの意味やけど、しかし別に偽善団体は偽善をしているわけやない! 本来は本当の善意を持ってその事に懸命に取組んでいる団体や!」

「ゴート札」

「確かに嘘でしかないわ! それに福来るのは刷った人だけやけどな!」

「ガノンド○フは存在しなかった」

「その嘘が続いてる間は平和そうやけど、居た時の絶望感半端なさそう!」

「知らなかった方が良かった真実」

「確かに嘘の方がまだ良かったという事は多々あるけど!」

「ほら。いっぱいあるでしょう? 嘘の方が幸せなことって」

「ブラックジョークすぎるわ!」

 

 リアルは嘘だらけの方が良いということは、何となくわかった。

 

「世の中には、別に知らなくても良い事は沢山ありますわ。だから貴方はあまり、そういうことに関わらないほうが良いと思います」

「……何でいきなりそんな事を?」

「何となく、ですわ」

 

 その言葉を合図に、セレスさんはロイヤルミルクティーを飲み終えて、トレイに乗せる。僕も何となく急いで飲み干してトレイに乗せると、セレスさんは立ち上がり、先ほどの机の上にトレイを置く。

 

「それでは、わたくしのお持て成しは以上となります。さっさと退出願います」

「あれ、お持て成しって、そんな演目みたいな感じやっけ?」

「退出願います」

「あ、うん……」

 

 語調を強めて言い出すので、少しビックリした。何だか意外なことばかりだな、セレスさんは。

 もう少しお話したくて名残惜しいけど、セレスさんがそう望んでいる以上、長居は失礼かな。

 

「それじゃ、セレスさん。お茶ありがとうな」

「いえいえ、お構いなく。味噌汁のお礼と受けとてください」

「……ありがと」

 

 そして僕はセレスさんの部屋から出た。

 何だか、不思議な体験をした気分だった。セレスさんとの会話も楽しかった。紅茶の豆知識も、いつか使ってみようかな。

 そんな爽快感を胸に、僕は霧切さんの約束を思い出す。

 そういえば、今何時やろうか。ここら辺には時計がないし、時間が分かりにくい。セレスさんの部屋に戻って確かめるのもいいけど、一度出た場所からまた入るってのは結構緊張する。しかも、まるで追い出すかのように部屋を出されたんだ。余計に入り辛い。ならば、食堂へ行くほうが得策だろう。

 僕は早足で食堂へ向かった。食堂の時計の短針は2時を指していたが、長針は10分のところを指していた。

 僕そんなにセレスさんと会話してたのか!? 僕全然気付かなかった!

 僕はダッシュで霧切さんの部屋へ向かい、インターホンを押したが、急に止まれず、そのまま三つほど部屋を通り過ぎた。

 通り過ぎたと同時に、霧切さんの扉は開かれたが、僕からの位置じゃ霧切さんが扉に丁度隠れていた。つまり、霧切さんから見て僕が見えないということだ。

 再び扉が閉じられる。

 

「ちょ、ちょっとぉ!」

 

 僕は急いで霧切さんの部屋へと向かう。

 しかし、もう完全に閉められていたので彼女に声は聞こえなかった。

 何だかピンポンダッシュしたみたいで心苦しかったが、もう一度勇気を出してインターホンを押す。

 

「……貴方ね。ピンポンダッシュの犯人は」

「チガイマス。ナエギクンガヤリマシタ」

 

 緊張で少し片言になってしまったけれど、これで誤魔化せたはず……!

 

「……まあ良いわ。こっちに来て頂戴」

 

 そう言うと霧切さんは部屋を閉めてからしっかりと鍵を掛けて学校側へ向かう。

 僕は慌ててついていくと、霧切さんが向かったのは、学校に入った手前の教室だった。

 

「ここに何の用なんや……?」

「いいから入って」

 

 そう言うと霧切さんは扉を開けて入り、僕もそれに続く。そして霧切さんはすぐに扉を閉めると、僕から少し離れた場所に歩く。

 

「貴方に訊きたいことがあるの。答えてもらえる、河上君」

「何でも訊いてもええで、ギリギリさん」

「私の名前はそんな切羽詰ったような名前ではないわ。私の名前は霧切よ。もしかして今のはわざとなの? それとも本気で噛んだの? ハッキリしなさい」

 

 少しボケただけでこの冷徹さはなんだ……! 今までに無いタイプだ……

 

「すみません……噛みました……」

「違う、わざとよ……」

「噛みまみた!」

「わざとじゃない!?」

「漢字が見た!」

「今までに構想されなかったであろうホラー!」

 

 冷徹な今までにないタイプは、結構ノリノリだった。

 

「……って、私は別にロリコンと小学五年生のノリをやりたかったわけではないわよ」

「もし今の設定が本当なら、霧切さんはロリコンということになるな」

「小学五年生の物真似をしている河上君は気持ち悪いと思うわよ」

「小五が悪い」

「ロリコンが悪い」

 

 ロリコンと小学五年生にいちゃもんをつける二人の高校生が居た。

 僕と霧切さんだった。

 

「私は貴方とコンビネーションを育もうと呼んだわけじゃないわよ」

「え、そうなん?」

「その意外そうな顔やめなさい。何でそんな顔になるのよ……」

「え、だって霧切さんとキャキャウフフできるもんかと……」

「その反吐が出る妄想しながら私に会いに来たのね……」

「それほどでもないって……」

(けな)しているのよ」

「むしろ(おとし)めてほしいです」

「警察に連絡するわね」

「本当にごめんなさいもうしませんから堪忍してください心よりお願い申し上げますからポケットに手を入れないでぇ!!」

「日本語が滅茶苦茶だけど、まあいいわ。許してあげる」

 

 霧切さんはポケットに入れた手を再び取り出す。

 

「それで、訊きたい事ってなんや?」

「貴方は、どこまでこの学園のことを知っているか聞かせてくれる?」

「……いつ気付いたん?」

「そうね。怪しいと思ったのは昨日のことよ。貴方だけが部屋がなかったらしいから」

「なるほどなぁ……」

 

 まあ、普通怪しいよな。一人だけ部屋がないなんて。しかしだからと言って逃げたいというわけやない。

 僕がこの学園に来たのは、予定調和を()()するという理由で来たんだと思っている。本当の理由はわからんけど、僕には関係ない。僕は全員を救い出すために、希望ヶ峰学園に来たと思っている。

 だけど、それにはやっぱり人材というものは必要だった。ならば、一番来たい出来る霧切さんが居れば、右に出るものはないと言ったところかもしれなかった。

 

「分かった。僕も霧切さんに協力したかったしな」

「そう……まったく想像つかないのだけれど」

「協力する理由か。それは霧切さんの才能を見込んでの話や」

「……私の才能?」

「ああそうか。そういえば霧切さんは──」

「ストーーーーーーップッ!」

 

 突然大きな声が発され驚き、気付いたら教卓の上にモノクマが立っていた。

 

「ちょっと河上君! それは禁則事項なの! トップシークレットなの! 幾らなんでもそこまで寛容にボクはなれないよ!」

「モノクマ、いつの間に……?」

「いつの間に? じゃないよ! 君はもう少しで禁忌を犯そうとしたんだよ! 止めに来るよそりゃ! 本当にデリカシーがないな河上君は!!」

 

 モノクマは今までとは考えられないほど激怒していた。ゲームでもあの時以上の怒りだった。

 

「ハァ、ハァ…………まったく……いきなり叫んだから息切れしちゃったじゃないか」

「それよりもどういうことなの。私の才能を知られることが禁忌なんて」

「ふぅ……そそっかしいなぁ、霧切さんは……だからそれは禁則事項なの」

「…………」

「そこまで言ったらダメなんか?」

「うん。だって面白くないじゃん」

 

 モノクマにとって、霧切さんのその才能を生かされすぎるのは、自分の危機を表す。才能に突き動かされる者は、意外と才能に貪欲な人が多い、とゲーム内で何となく思ったことだった。

 

「とにかく、それは絶対に言っちゃダメだからね! もし言ったら木っ端微塵じゃ済まないよ!」

 

 背筋が凍りつくような感じがした。

 モノクマの殺意は、操縦者とかなり離れている筈なのに、ハッキリと伝わってきた。

 

「……じゃあ、一体何なら大丈夫なんや」

「大丈夫なものなんて一つもないだろ! お前は本当にミステリー潰しな野郎だな!」

 

 言い得て妙だった。

 

「わかったよ……それじゃ、あくまでミステリーの患部につかない程度に僕が教えてあげるよ……」

 

 そういうと、モノクマは深呼吸をする動作をして、それを言う。

 

「なんとボクは、メカニックの手によって作られた遠隔操作型のロボットだったのです!」

「…………」

「…………」

 

 僕と霧切さんは目を細めた。

 

「ふ、ふーん! 仕方ないもーん! 僕から言えそうなことなんて、コレぐらいしか思いつかないんだもーん!」

 

 そんな感じにそっぽを向いたモノクマだった。

 

「まあこれでわかったわ。貴方から聞いても、貴方は答えてくれないのね」

「当たり前だよ。僕は答えは教えられないよ」

「なら、ヒントを聞いても良いのね」

「…………」

 

 突然そんな事を聞かれたモノクマは、少し考え事でもしているのか、少し固まっていた。

 数十秒でモノクマは結論を出したらしく、腕を組むポーズを取る。

 

「……良いでしょう。認めます。ただし! 霧切さんが学園に(まつ)わる質問をしない限り、河上君はヒントを言ってはいけません! 勿論、穴埋めクイズみたいなのや、なぞなぞ形式にして分かりやすくヒントを言うのも却下です! もし守れなかったら、君達には木っ端微塵よりもグロテスクな思いをしてもらうからね! 僕は帰るけど、監視カメラは起動していることも忘れずにね。じゃ!」

 

 そう言うと、モノクマは早足で教室から出て行った。

 

「……正直言うと、話に着いていけないわ」

「ご(もっと)も」

「それで。貴方は何が言えるの?」

 

 そういうと、早速切り替えてくる霧切さんは、やっぱり強いんだなということが窺える。

 

「さっきモノクマが言っていたように、霧切さんから質問せんと木っ端微塵よりも酷いことになるで」

「違うわよ。河上君自身の事について、何か言える事はないのかって意味」

「ああ、僕のことについてか……」

 

 そういえば、モノクマは僕のことについては言及してなかったな。

 

「せやな。そらなら普通に言っても大丈夫やろう」

「そう。なら教えて。貴方は何者なの?」

「普通の一般的などこにでもいる何の才もない愚かな人間どもと同等の価値観を持つれっきとした高校生や」

「……生憎、私にツッコミスキルを求めるのは間違いよ」

「まあ、つい昨日まで希望ヶ峰学園以外の高校に通っていた超高校級の才能を持たない生徒や」

「そんな貴方が、何故希望ヶ峰学園なんかに……」

「それが分かれば苦労せんな」

 

 苦労はしてないけど、実際の理由はわからない。ただここにいるだけなのかもしれない。

 

「貴方は黒幕側からの刺客ということは?」

「本当にそうやったら、こんなことは言わんと僕は思う」

 

 怪しまれるのだけは勘弁だからな。

 

「それもそうね。最後に。貴方はどうやって希望ヶ峰学園に来たの?」

「……また、突飛な質問をするな、霧切さんは」

「貴方の正体を見極めるための質問よ」

 

 しかし、どう答えたらいいのか……正直、僕がここへ来たというよりも……

 

「……寝ていたらここに着いた、てのが正しいんかな……?」

「……直接足を運んできたわけでなくて?」

「せやで。ゲームをしてから寝て、そして起きたらこの学園の中やった」

 

 そういえば、その時変な夢も見た。空ろ空ろしか覚えてないから言わなかったけど。

 

「そう……貴方も結構ミステリーね」

「なんやそれ、カッコええな……」

「…………」

「……それで、何か僕のことについてわかったんか?」

「ええ。貴方が黒幕側の人間の可能性が薄いと言うことが分かったわ」

「それはありがたい。けど、出来れば皆に報告はせんといてな」

「わかってるわ。そんな事を言うまで、私はお人よしではないわ」

 

 それはどういう意味か、少し考えてみたが、結論を出す前に霧切さんは教室から出て行こうとする

 

「霧切さん」

「なに? 河上君」

「僕は霧切さんに全面的に協力する。……力になるかどうかわからんけど、僕は出来ることなら最後まで協力するで」

「……そう。心強いわね」

 

 そう言うと、霧切さんは教室の扉を開ける。

 

「足元をすくわれないことに気をつけなさい」

 

 そう言って霧切さんは退室した。

 そしてその時、思い出した。霧切さんは必ず近場にいなかった。肉体的にも、精神的にも。必ず、どこか遠くで観察する癖を持つような人だったことを思い出した。

 私はお人よしではないわ。

 その言葉は、僕への名誉の為だけでなく、もしかしたら遠くで観察する為にも言わない、という事だったのかもしれない。

 そういう才能を持つ少女だから。

 才能に突き動かされる者は、意外と才能に貪欲な人が多い。

 実はそういうことなのかもしれなかった。




 気付いたら楽しくていっぱい書いてた。

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