リリカルなのは~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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異伝7 その71

 

side 高町 なのは (ミッドチルダ)

 

私の目の前に居るのは、なんだか強面のおじさんとオーリスさんだった。

ただ、オーリスさんが『中将』って呼んでたし、名前もレジアス・ゲイズだったから、多分オーリスさんのお父さん。

 

…………それで、どうして私はミッドチルダ地上本部の重鎮の前に居るんでしょうか? 前にやったあのお兄さん達の件でやりすぎだってことで捕まえられると言うには空気がおかしいし、逆に褒賞を渡すにしては雰囲気が固すぎる。

いったいなんのためなのかな~……と考えていたら、向こうの方から口を開いてくれた。

 

「今回の……ハウンドウルフの件だが、礼を言わせてもらう」

 

ゲイズ中将からお礼を言われたけれど、どうしてだろうあんまりお礼を言われている気がしない。強面だからかな?

つらつらと分割された思考の一つでそんなことを考えながら、私は口を開く。

 

「勿体無いお言葉です、ゲイズ中将」

 

こうして初めの読み合いが始まった。

正直に言って勝てる気がしないけれど、それでも最低限の部分は守らなくっちゃ。

 

「……率直に聞くが、いったいどうやってあの場所を突き止めたのだ?」

「私の特技の一つで。ある意味レアですが、魔法的なレアスキルとは関係ありませんよ。ただ耳がいいだけです」

「ほう? それはどの程度だ?」

 

ゲイズ中将は、ゆっくりと問いかけてくる。もしかしたら私の言った‘耳がいい’という言葉を別の意味で捉えているのかもしれない。例えば、いい情報屋を知っているとか。

あと、私に圧力をかけようとするならイライラしてるさくらさんの半分くらいは出してくれないと畏縮できません。ゲイズ中将のじゃあちょっと足りませんよ?

 

そんなわけで、私は正直に包み隠すこと無く言う。

 

「私を中心とした半径50キロメートルくらいは全部聞こえます」

「……どう言うことだ?」

 

ああ、やっぱりゲイズ中将は情報屋としての意味で取っていたんだと理解。

 

「ですから、私の耳は物理的に50キロメートル以内の音を聞き分けて何があるか、どんな状況かを理解できるんです。魔法的なレアスキルではなく、音楽家を目指す修行の一環として聴力はできるだけ鍛えていますから」

 

私がにっこり笑顔でそう言うと、どうやらふざけていると取られたらしくゲイズ中将の表情が歪んだ。

 

「……ふざけているのか?」

「まさか。真面目な話ですし、事実です。私の50キロメートル圏内は、私の可聴範囲内で………丁度、事件ですよ」

「なんだと?」

 

私の急な言葉に訝しげな表情を浮かべるゲイズ中将の目の前で、今丁度ひったくりの起きたところを指差しながら言う。

 

「名前は知りませんけど、あそこの通りでひったくりです。犯人は凄い改造されてるバイクで逃亡中。ナンバーは………速くてわかりづらいんですけど、多分削られてます。廃棄都市区画に進んでますね」

「廃棄都市区画は50キロ内には無いぞ」

「50キロメートルは通常での話です。聞くのに集中すれば2000くらいは行けますよ? そこまで行くとかなり大雑把になりますけど、そこにいる人が禿げているか否かくらいはわかります」

 

なんだか化物を見る目で見られています。

そしてオーリスさんの簡単な調査で、ついさっきひったくりの通報があったとわかった時には更に凄い目で見られました。

 

「……レアスキルでは無いのか?」

「魔力的なレアスキルとは関係無いですよ。ただ、魔力で強化すれば秘匿念話の傍受も運がよければできますけど」

 

ちなみに私は現在リミッターをかけていてE+程度の魔力しか持っていません。それでも集束魔法を応用すれば普段と変わらず戦闘はできるんですけどね。

隠す理由は簡単。強いとスカウトされかねないから。そんな面倒なのは嫌。なんのためにクロノ君やリンディさんの勧誘を蹴ったのかわからなくなりますし。

 

「……本題だが、お前を地上本部にスカウトするために呼んだのだ。情報のパイプは太い方が良かったからだが……今の話を聞いた後ならば話は別だ。私の秘書として、地上の平和を守ってもらいたい」

「申し訳ありませんが、私はここに喫茶店を持つために来たのです。ですから、地上だろうが本局だろうが入局する気はありません」

 

断られるとは思っていなかったのか、ゲイズ中将はぽかんと私のことを見つめている。

……あ、オーリスさんもだ。やっぱり父娘だからか、雰囲気はそっくりだ。

……顔はかなり違うんだけどね。

 

「それと、そう言うのだったらわざわざ秘書になる理由も無いですしね。喫茶店をやりながらでも情報を集めてお伝えすることくらいはできますから、公にならない民間協力者ってことでお願いできませんか?」

「……給料は弾むぞ?」

「お給金じゃなくて、私の夢の問題なので………お店を開いた後にお客様としてご来店いただけましたら、歓迎させていただきますよ?」

「……………そうか」

 

ゲイズ中将は、椅子に深く座り直した。どうやら諦めてくれたらしい。

オーリスさんはなんだか悲しそうだけれど、どうしてだろうか? 一緒に働けなくて悲しい……なんてことは無いでしょうし、難しいと思います。

 

……それにしても、まさか本当にこんな繋がりができてしまうとは思ってもみませんでした。私ってかなり運がいいんですね。

 

あと、一応報奨も出るそうなので、これからの協力と引き換えに簡単な戸籍の作成とデバイスの所持を認めてもらいました。管理外世界出身だと色々聞きたいことができて大変です。

 

……

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━

 

高町なのは'sステータス(Fate風)

 

 

真名:高町なのは

クラス:(あったら)キャスター

性質:混沌・善悪同棲

身長:計ってないからわからない

体重:教えてあげません

スリーサイズ:乙女のトップシークレットです

 

筋力:D+(B-)……少しは鍛えています。()内は強化中。

敏捷:D-(B+)……ランニングは苦手です。()内は強化中。フラッシュムーブメントで瞬間的にA。

頑丈:E(B-)……虚弱というほどではなく、人間としては普通。()内はバリアジャケット装備時。

魔力:A+……リンカーコアで言うともう少しでSS。

幸運:B……かなりいい。

 

 

スキル

 

【魔術:A】

戦闘以外にも使える便利魔術から殲滅砲撃まで。名前は魔導でもいい。

 

【料理:B+】

そこらのプロと同じくらい。お菓子に関してのみA。

なお、桃子はお菓子に関してはAより高い。

 

【話術:C++】

嵌まれば強い。

 

【分身】

現在まともに使えるのは二体まで。本体含めて三体。

 

【音楽:D++++】

バイオリンと歌のみAを越える。

 

【その他:】

色々な小技を習得している。

 

 

 

 

 

 

 

 

異伝7 その72

 

side 高町 なのは(ミッドチルダ)

 

戸籍を手に入れ、さらにオーリスさんの連絡先まで手に入れてしまった私は、とりあえず義理は果たそうと範囲を400キロメートルくらいに広げてそのなかで起きている軽犯罪を次々メールで位置情報と一緒に送っている。

……結構な頻度で犯罪が起きているけれど、子供の喧嘩や酔っ払いの戯言から始まる喧嘩などの全てを報告する必要は無さそうなので、放っておいたら駄目そうなものだけをピックアップして報告している。

恐らくオーリスさん達のところはてんてこ舞いだろうけど、きっと嬉しい悲鳴に違いない。

 

こうして犯罪の検挙率を上げていけば、少しずつ発生率も下がっていってくれるでしょう。私が暮らすところが平和になるのはいいことです。

私は私のためだけに、適当に働いてお金を稼いでお店をもって見せましょう。

とりあえず、店を建てるのに良さそうなところを探していきましょう。

できればその間にいくつかの違法組織からいくらか頂いて開店資金に回しましょうか。

運営資金にも余裕は欲しいし………お母さん達が店を開いたときにはいくらくらいかかったのか聞いておこうかな。

 

……けど、ミッドチルダと地球とじゃ物価が全然違うし………あんまり参考にはならないかもしれないけどね。

 

まったく、夢を叶えるって言うのは大変ですね。やり方がおかしいのかもしれませんが。

 

 

 

 

 

side 高町 なのは (海鳴)

 

こちら海鳴在住高町なのは十二歳。毎日学業に音楽にお菓子作りにと、忙しいけれど充実した生活を送っています。

ミッドチルダに送り込んだ私の豪運に驚いたり、異世界旅行中の私の悪運に驚いたりしつつ、今日も私はバイオリンを弾き、生地を捏ねる。

 

「なのはも上手になったわね」

「お母さんに教えてもらってるからだよ」

「あらあら」

 

お母さんはそう言って笑うけれど、お母さんは私よりずっと上手にお菓子を作ります。

経験と実績から来る技術の差というものでしょうか? お母さんは捏ねる時の力加減と捏ね方で自由自在に出来上がった生地の緩さを操作します。魔法使いの私が言える台詞じゃありませんけど、まるっきりビックリ人間ですね。魔法使いの私が言える台詞じゃありませんけど。

さすがに私はそこまではできないけれど、お母さんに追い付き、追い越すために修行中です。

 

ちなみに、最近お肌を気にするようになってきたアリサちゃんにほっぺをぷにぷにされました。

その際、どんな乳液を使ってるのかを聞かれたところで『魔法で殺菌して魔力でコーティングして保湿力を上げている』と答えたら魔法を教えて欲しいと言われました。

リンカーコアが無いから難しいと言っても諦めなかったので一応教えてみたところ、大気中の魔力素を集束して体内に取り込み、擬似的に真似して見せました。

 

……ああ、アリサちゃんまで非常識な人間の仲間入りをしちゃった…………。

まあ、アリサちゃんは非常識な部類に入ってもツッコミポジションだったけど。

 

……それじゃあ、焼き上がったスポンジを綺麗に切ってクリームを塗って、フルーツを挟んで形を整えよう。

ようやく私のケーキがお店に並ぶようになったんだから、絶対に手抜きなんてできない。

 

……まあ、今までにバイオリンを弾いていた時と同じように、今までのお菓子作りで手を抜いたことなんて一度も無いんだけど。

手を抜けるほど上手になった覚えは無いし、他のことを考えていても体に技術が染み付いてるわけでもないんだから。

……今みたいにマルチタスクを使えば別だけどね。

 

 

 

 

 

side 織斑 一夏

 

アンダーグラウンドサーチライトの中で目を覚ます。

ベッドと床以外には何も作っていないこの中には、当然のように光源となる物も無い。

そんな中で俺はゆっくりと眠る。

腕の中にはぷちかが一匹。俺にぴったりとくっついたまま眠っている。

 

俺はそんなぷちかの頭を撫でて、うつらうつらと眠りへ落ちていくのを楽しむ。

すぅっと一瞬浮いたような感覚の後、俺の意識はぷつりと途切れた。

 

「―――、―――――」

 

一瞬、この世界で最も多く言葉を交わした相手の声が聞こえたような気がしたが、俺はただゆるりと眠りについた。

 

 

 

 

 

「……いっくんってば、ちょっと目を離すとすぐにどこかに行っちゃうんだから」

「仕方が無いだろう。一夏だぞ?」

「まあ、あたしたちはそんな一夏に惚れたんだし……ほら、惚れさせた者勝ちってやつよ」

「そうだな。また増える可能性もあるが、それも含めて一夏なのだな」

「その通りですわね。できれば私にも構って欲しいのですが……」

「一夏の代わりにはならんが、私が相手をしてやろうか? 拷問術はなかなか得意だぞ?」

「いやいやいやいやなに言ってるのさ!?」

「……静かに。一夏が起きちゃうよ?」

「ふむ、それは不味いな。」

「……大変なことになりそうですよね……いろんな意味で」

「まあまあ、落ち着け。一夏を起こしちゃいけないし、とりあえず目的である無事は確認できたんだし、帰ろうぜ? 起こしちゃいけないし」

 

『異議無し』

 

…………そんな掛け合いのような言葉が、あったとか無かったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

異伝7 その73

 

side 高町 なのは(ミッドチルダ)

 

何度も犯罪者を通報し、犯罪組織の裏金を無断で永久に拝借して通報し、そこらにいる小悪党の意識と一緒にお財布を狩ってから通報する。

半年ほどそんなことを繰り返している間に資金は溜まり、ゲイズ中将との約束の期間も終わった辺りで今度はちょっとした貸し借りを代償に協力関係を組みました。

 

私はミッドチルダで起きる犯罪を報告する。ゲイズ中将は私を情報屋として雇い、上がってきた情報に相応しい額を私に払う。

その中には口止め料らしいお金も入っているけれど、一応それだけは半分だけもらって後はオーリスさん経由で返却している。

 

そんなわけでどんどんとお金は溜まり、私の経営する喫茶店(経営とか仕入れとかって交渉難しいね。なんとか通常経営である程度黒字が出るようにはしたけど)を建てることに成功した。

ただし、従業員は私だけ。

ビルが建ち並んでいた駅前で、とある犯罪組織の人が最後にやぶれかぶれで爆破してなにもなくなった一角を私が買い取って作った、小さいとはいえ庭付きのお店。

ちなみに店の裏は居住空間になっておりまーす♪ 私の住処です♪

 

……ああはい、テンション上がってますよ?すごく嬉しいです。

オーリスさんもゲイズ中将も(少なくとも表面上は)お祝いしてくれましたし、一応宣伝はちゃんとしています。

ちなみにゲイズ中将とオーリスさんからは、自由に世界を移動できる許可証を貰いました。

あと、緊急時に魔法を使ってもいいという許可証も。

貰いすぎだと思わなくも無いですが、貰えるものはありがたくもらっておくことにします。

 

私の喫茶店は、法律的に取り締まりを受けなければならないことなんて開業資金と運営資金の一部以外はありません。

そしてそれも、ゲイズ中将はお見通しのようで黙っていてくれています。無駄に溜め込まれるよりはずっといいですからね。

 

ついでと言っては何ですが、オーリスさんはやっぱり甘いものが大好きだったようです。よく私のお店のケーキを買っていってくれます。

けれど、あの甘さ控えめで少し苦いカカオケーキはオーリスさんの口には合わないと思うんですが………いったい誰が食べているんでしょうね?

 

それと、地球ではフェイトちゃんとはやてちゃん達が正式に管理局入りを果たしました。

私も誘われましたが、全力で拒否。戦うよりも歌と演奏で人を繋いだり、ケーキを作って笑顔になってもらう方が好きなんです。

フェイトちゃんはちょっと残念そうにしていましたが、私はなんと言われようと管理局員をやる気は無いから諦めてね?

 

そう言うわけで友達付き合いは続いていますが、少し遠くなってしまいました。

 

カランカラン♪

 

あ、ドアベルが鳴った。どうやらお客様がおいでになられたようです。

私はにっこり笑顔でお客様に応対します。

 

「いらっしゃいませ、ようこそ『翠屋』へ」

 

さあ、今日もまた頑張りましょう。

カメラをお返ししまーす。

 

 

 

 

 

side 高町 なのは (放浪)

 

次元世界を歩いて回る、次元の旅人高町なのはです。

私はゲイズ中将に頂いた許可証を使い、次元世界で有名なお菓子屋を片っ端から歩いて回っています。

そんな中で思うのは、お母さんのお菓子作りの腕はいったいどこまで凄いのかということです。

 

広い広い次元世界で、お母さんに匹敵するお菓子職人はたったの数人。未来で匹敵しうるのを含めても二十数人。

全てを回った訳じゃないので完全にそうだとは言えませんが、とりあえず私は物凄く恵まれていたということをよーく理解しました。

 

音楽活動で日銭を稼ぎ、時々手を出してくる行儀の悪い人を追い返し、お菓子を食べてはまた次の場所へ。

一応私のファンもできましたし、局員に補導されないように変身魔法を使っていたせいか求婚されることもありましたが、それでも私は世界を回り続けています。

 

こうしていて楽しいのは、たまにインターネットに情報の無い隠れた名店を発見することがあることと、アースラが居た頃は自由に弾くことができなかった狂気の提琴を気ままに弾くことができるようになったことでしょうか。

たまにある魔法文明が存在しない管理外世界では、とても喜んでもらっています。

 

ちなみに、その世界を出ていく時には余ったお金は殆どを寄付していきます。

寄付と言うのができない場合は、そこでお世話になった人にこっそりと渡してから出ています。

そこの世界のお金を外に出したら、困るのはそこの世界の人達ですからね。意味もなく他の人に迷惑をかけるのは好きじゃありません。

もしかしたら私のお店のお客様になるかもしれませんし、どうせ使わないならこうやって自分の好きなように使うのが一番です。

 

……それじゃあ、この世界からもそろそろさよならしましょうか。次はどんな世界に飛ぶんでしょうか?

 

ちなみに、二つほど前の世界は戦争万歳な世界だったので、ちょっと兵士に駆り出されそうになりました。

魔法が使えない世界でも狂気の提琴は使えるので問題ありませんが、必要ないならあまり殺人はしたくないので転移で逃げさせて貰いました。戦いは嫌いです。

 

魔法も質量兵器も何でもありの戦争に巻き込まれた事もありましたが、即座に逃げさせて貰いました。

旅って言うのは、本当に色々なことがありますね。妙に戦争しているところに巻き込まれることも多いですけど、それも含めて充実しているような気がします。

 

……それでは、さようなら、この世界。

 

 

 

 

 

 

 

 

異伝7 その74

 

side 高町 なのは (ミッドチルダ)

 

翠屋・ミッドチルダ支店に、フェイトちゃんとヴィータちゃんがやってきました。二人ともビックリした顔で私のことを見つめています。

 

「いらっしゃいませ、翠屋へようこそ」

「な………なの……は?」

「…………!?」

 

フェイトちゃんもヴィータちゃんも、固まったまま動こうとしません。いったい何が……なんて言う気はありませんが、ちょっと大袈裟に見えます。

 

「……お客様?」

「……へ?」

「なのは……じゃ……ないのか………?」

「私は『鷹牧(たかまき)桃華(ももか)』と申します。喫茶『翠屋』の支店長です」

 

偽名だけどね♪

 

意識が真っ白になっていたらしいフェイトちゃんとヴィータちゃんは、私の言うことを素直に受け入れた。

そして私にすすめられるままにケーキを頼み、そしてぱくぱくとケーキを食べてから店を出ていった。

 

「……あ、なのはの味だ……」

「……ギガうめぇ……」

 

そんな言葉が聞こえた気がしますが、法律上別人と言うことになっていますので努めてスルーします。特にフェイトちゃんの方。

やっぱりよく私のお菓子を食べている人にはわかるものなんですね。びっくり……は、しません。私にもわかりますから。

 

……もしかしたら、あとで冷静になったフェイトちゃんやヴィータちゃんから話を聞いたはやてちゃんがやって来てお話することになるかもしれません。

……その時に海鳴の私から連絡を入れれば騙し通せるかな?

 

……まあ、その時はその時と言うことで。一応準備だけはしておきましょう。

用件は、新しいケーキを思い付いたから、できるだけ多くの人達の意見が欲しいってことにしておこうかな。

 

それじゃあ、そのためにいくつかレシピを考えておかないと……フルーツケーキとチョコレートと……苦みあるコーヒークリームロール。放浪中に美味しいと思ったものを少しずつ真似て改造(改良とは限らない)して作ろう。

重要なことは、ミッドチルダの翠屋にあるケーキは作らないこと。誤魔化しづらくなるからね。

 

 

 

 

 

side フェトソン君

 

「……それ、ほんまか?」

「ほんとなんだよ!なのはがミッドチルダの地上本部のすぐ近くで翠屋をやってたんだよ!」

 

私の前で、ヴィータがはやてにあのびっくりするべき出来事を報告している。

本当は私が報告しようとしたんだけど、私はしゃべろうとするとなんだか凄いことになって通じなかったからヴィータに任せることにした。

そんなわけで、私はヴィータの言うことを頷きながら肯定するだけにして、説明は全部ヴィータに任せることにした。

 

証拠としてお店の映像(『翠屋~midoriya~』という看板を掲げている)と店長さんの映像を見せると、半信半疑だったはやての表情が驚きに染まり、そして真剣な表情に変わる。

 

「……フェイトちゃん。これ、偶然やと思うか?」

「……わからないよ。けど、こっちの翠屋は本当にできたばっかりみたいだし、なにか関係があってもおかしくないと思うよ」

 

こくり、と私とはやては頷き合う。

 

「……なんにしろ、この事件の鍵は」

「うん。なのはだね」

 

事件と言っても大したことはないんだけれど、それでも気になることは気になるんだから仕方無い。

とりあえず私達にできることは、私達の知るなのはと『鷹牧桃華』と言うなのはそっくりの人が別人だという証拠を見付けること。

一番手っ取り早いのはなのはに直接聞くことだけど………ミッドチルダって聞いた瞬間に機嫌が悪くなるから最終手段にしておきたい。

だから、なのはには何も言わずに私とはやてで同時になのはと『桃華さん』に会う。

 

……けど、どうせならヴィータも連れていきたい。あえて私とヴィータでもう一度別々に行けば、もしかしたら尻尾を出すかもしれない。

 

はやてとヴィータの組をミッドチルダの翠屋に、私がなのはのいるところに行くのが一番自然だと思う。

なのはは妙に鋭いから、気づかれないようにするなら万全を期さなくちゃね。

 

……それでも、勝てる気は全然しないんだけど。

 

 

 

そんなこんなで作戦開始。ミッドに居ることの多いはやてとヴィータがミッドの翠屋に行っている間に、私がなのはと一緒にいれば証明終了。なのはと桃華さんは同一人物じゃないという確証がとれる。

もしも一度もなのはと桃華さんが一緒にいるところを見ることができなければ、なのはと桃華さんが同一人物かもしれないという疑いが強くなる。

 

私は、震える指でなのはの家のチャイムを鳴らした。

 

ピンポーン♪ と、軽快なチャイムが鳴る。暫くして出てきたのは……。

 

「はーい……あれ? フェイトちゃん?」

「お久し振りです、美由希さん」

 

なのはのお姉さんで、こっそり猛毒料理人と呼ばれたりもしている高町美由希さんだった。

 

「えっと……なのはは居ますか?」

「え? なのは? なのはなら、何日か前に『ちょっと食い倒れ旅行に行ってくる』って言って旅行中だけど……聞いてなかったの?」

 

いきなり計画は頓挫した。

はやてに聞いてみると、ミッドの翠屋は通常業務中らしい。桃華さんは笑顔で接客中だと言っていた。

 

けれど、なのははいない。なのはが旅行に出たのは数日前で、ミッドの翠屋はそれ以前から毎日営業中だから違うと思うけれど、確定じゃないからなのはならありえる。

 

……これから、長くなりそうだ。

私はそんな予感を持ちながら、地球の翠屋のタルトに舌鼓を打った。

 

……んむ……おいふぃ♪

 

 

 

 

 

 

 

異伝7 その75

 

side フェトソン君

 

「なあ、注文ええか?」

「はい、何にいたしましょう」

「シュークリームを一つとショートケーキを一つ、あと季節のフルーツロールを頼むわ。なのはちゃん」

「かしこまりました。それと、私の名前は桃華です」

 

……なんだか凄く空気が痛いです。だれか助けてください。

そう言っても、わざわざ張りつめたような空気を醸し出しているのははやてだけで、桃華さんの方は前に見たままの柔らかな空気で応対しているんだけどね。

 

あれから暫く同じようなことを繰り返してみたけれど、どんな時でもなのはと桃華さんが同時に現れることは無かった。

なのはを見ていれば桃華さんは姿を消し、桃華さんが居る時にはなのはがいない。

数日ならともかく、もう数週間にも渡ってそんな状態じゃ、疑いを強めることに躊躇いなんて産まれない。

 

桃華さんは、変身魔法を使ったなのはに違いない。それが私とはやての間で出された共通の見解だ。

 

証拠は無いけれど、そうとしか考えられない状況が出来上がってしまっている。

確かにレイジングハートを持ってはいないし、魔力もそんな凄い量を感じる訳じゃあないけれど……そんなのはどうとでもなることだ。

肝心の年齢だって変身魔法でどうにでもなるし、魔力はリミッターをかければ誤魔化すことはできる。レイジングハートはそもそも別のどこかに置いておけばいいだけの話だ。

 

そう考えて、はやてはこうして桃華さん……いや、なのはにカマをかけてみたんだけど、なのはは笑顔で大人の対応をして流して見せた。

はやてはなのはが見えなくなるまでは笑顔だったけれど、なのはが見えなくなった途端に表情をちょっと崩して悔しそうな顔をした。

 

『……チッ!上手くかわされたわ………桃子さんや士郎さんに無断でこんな店開いてるっていう弱味握ってからかおう思ったっちゅーのに!』

『そんな話聞いてないよ!?』

『言うてへんからな!』

 

どうやらはやてはお腹の中身が真っ黒に染まってしまったみたいだ。

昔は(ちょっとえっちだったけど一応)普通の(おっぱい好きな)女の子(ただし、かなりおっさん臭い)だった(過去形。ここ重要ね)のに、いったいいつからこんなに真っ黒になっちゃったんだろう?

 

……なのは? なのはは元々黒いでしょ?

 

『フェイトちゃん酷いわ!だれがそんな腹黒狸や!』

『え? だってはやてって『ほんとは【邪駝神(やたがみ) 疾風(はやて)【っていう名前だったけど、狸だから【た】が抜けて【八神 はやて】っていう名前になった』って聞いたよ?』

『ものごっついデマやな!? 誰から聞いたん!?』

『なのは』

『………あかん、キレそうや』

 

でも、なのはも誰かから聞いたって言ってたなぁ……なんて思いながらも、私ははやての呪詛たっぷりの声をビクビクしながら聞き続けた。

 

「お待たせいたしました。シュークリーム一つとショートケーキ、そして季節のフルーツロールです」

 

なんだかなのはが天使に見えた。原因はなのはの筈なのに、なんでかなのはが天使に見えた。

 

「……なあなのはちゃん? なんでそんなに隠したがるん?」

「……ですから、私は鷹牧桃華です」

「どう見たってなのはちゃんやないか!」

「は、はやて。周りの人に迷惑だから……」

「あぁん?」

「ヒッ!?」

 

こ……怖い……はやてが怖いよぉ………。

 

私がカタカタ震えていると、急に私の携帯端末に連絡が入った。

意識を切り替えて端末を取り出して、誰からの通信か確認してみて………目を疑った。

 

とりあえず目を擦ってみる。うん、変わってない。

ぴしゃぴしゃとほっぺを叩いてからもう一度。……うん、変わってない。

頼んだフルーツケーキをぱくりと一口食べて、味わってからもう一度。…………やっぱり変わってない。あと、凄く美味しい。

 

「は……はやて、はやて」

「なんや!」

「あの……これ………」

「ん? これがどうし……た………」

 

【着信:高町なのは】

 

「………………へ?」

「……出るよ?」

 

ぴっ、と出てみると、画面に映ったのはいつも学校で見る通りのなのはがそこにいた。

 

『あ、ようやく出てくれた。忙しかったの?』

「え、えっと……ううん、大丈夫。遅くなってごめん」

『そう? じゃあ、ちょっと新しいケーキの試作品ができたんだけど、商品化にあたってできるだけ多くの人の意見が欲しいんだ。フェイトちゃん、お願いできる?』

「う、うん、いいよ」

 

私がそう答えると、なのはは花開くような笑顔を見せてくれた。

 

『よかったぁ……この後はやてちゃんにもお願いするつもりだったんだけど、やっぱり多い方が良いもんね』

「はやてはここに居るから、私の方から伝えておくよ」

『そう? ありがと、フェイトちゃん』

「いいよ。なのはのお願いだもん」

 

しゅん、と画面が消えて、そこには沈黙だけが残る。

視線をずらしてみると、固まったままのはやてがそこに居る。桃華さんはどうやら他の人に呼ばれたらしく、店の反対側で眼鏡の女性の応対をしている。

 

「……はやて? 間違いだったわけだけど、どうするの?」

「あ……あはははははは……………」

 

なんだかはやての顔に『やばいやばいひどい間違いしたわぁこれがなのはちゃんにバレたらフラバス祭り(フラッシュバスター連打)されてまうよしかも理由あれやし知られたらフラバス祭りからのスターでライトなブレイカー食らうわいやいや私はまだ死にたないででも回避する方法も思い浮かばんなぁあははははマジオワタ\(^o^)/』って書いてある。すごいはっきり見えるんだけど、大丈夫?

 

 

 

 

 

side 高町 なのは (海鳴)

 

一番いいタイミングでフェイトちゃんの携帯端末に連絡を入れて、言いたいことを言ってから通信を切る。

ミッドチルダの私を通じて一番いいタイミングでやってみたんだけど、どうやらフェイトちゃんもはやてちゃんも完全に私と『鷹牧桃華』が別人だと思っただろう。

実際、私が二ヶ所に同時に存在できると知らなかったら普通は騙されるけどね。

 

……さてと。それじゃあケーキを作らないとね。三種類。誤魔化すのも大変だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異伝7 その76

 

side 高町 なのは (放浪)

 

ミッドチルダの翠屋事件から一年とちょっと。私は今、ミッドチルダに来ています。

よくよく考えてみたら、ミッドチルダではあんまり食べ歩きと言うのをしていなかったので来てみたのですが……どうしてか凄く注目されてしまいます。

きっと翠屋の評判のせいだと思うのですが、結構面倒ですね。

 

そう考えながら空港内部の『あんまり美味しくないけどけして不味いとは言えない食堂』を一軒一軒回っていると、突然爆発事故が起きたようで回りが凄いことになってしまいました。

翠屋は空港からかなり離れていたので怪しい魔力の波をゲイズ中将に伝えることはできなかったのですが……伝えておけばよかったかもしれません。

 

ちなみに、地図と爆音の発信源からすると爆発元は特別貨物室。さらに細かく言うならば、そこにあった荷物の一つが突然爆発したというところだと思われる。

特別貨物室と言っても、密輸品の一時預かり所みたいなものだけどね。

 

そんなわけで音響魔導師たる私は、音の反響やソナーを使って一応生存者探し。避難はあらかた終わっているだろうけど、まだちょっとだけ生体反応がある。

まあ、私の言う生体反応って言うのは、心音とか呼吸音とか声とかそんな感じの音源の集合体なんだけどね。

 

私以外に三つあるうちの一つは、自力で脱出することができそう。ちょっと人間にしては体内に機械的な細工がありすぎるような気がするけど、多分人間だろうと思えるレベル。

 

一つは新しく現れた聞き覚えのある音の集合体に連れられて外に出ようとしている。妹さんのことを心配しているみたいだけど、多分もう一人の子だろうね。

この子も体内に機械的な細工があるような音がするけど、まあ、私は気にしない。

 

そして最後の子。泣きながら姉の名前を呼び、ふらふらと歩き回っている。

この子も体内に以下省略。わざわざ三回も言う必要は無いよね。

 

そんなわけで、私は自力じゃ助からなさそうな子の所に向かっている。けれど、どんどん危ない方に逃げていくのはどうしてかな?

 

私はその子に向かって声を送る。念話ではなく、実際に個人単位で肉声を届ける『木霊法』で。

なお、私はこのように一年で狂気の提琴の音だけではなく、声もかなり操れるようになった。ある意味必殺技もできるようになっちゃったけれど、それは内緒。

 

……さてと。それじゃあ……すぅ………。

 

《そっちは危ないよ》

『っ!?』

 

あ、届いた届いた。

 

 

 

 

 

side スバル・ナカジマ

 

ギン姉と一緒に来た空港で、私は突然起きた爆発事故に巻き込まれた。

その前から一人で空港の中を歩き回っていた私は、事故が起きてからもギン姉と会うことなくさまよっていた。

 

運よく爆発で怪我とかはしなかったけど、炎に巻かれて自分がどこに居るかもわからず、泣きながらギン姉の名前を呼んで歩き回っていた。

 

そんなときだった。突然、私の耳元で声がした。

 

《そっちは危ないよ》

 

ビクッ!? として周りを見渡してみるけれど、私の周りには誰もいない。

 

《驚かなくていいよ。ちょっと違うけど念話みたいなものだから》

「え……でも………」

《いいから、そっちには行かない方がいいよ。天井が崩れそうだからね》

「えぇっ!?」

 

その言葉に私は後ずさる。こんなに怪しい声をどうして信じてしまうのかはわからないけれど、私にはそれを疑う余裕さえ持っていなかった。

 

《とりあえず、こっちにおいで。回れ右で、しばらく真っ直ぐ歩く》

「は、はい!」

《うん、いい返事》

 

私はくるりと振り返り、声に従って真っ直ぐ続く道を歩き始めた。

 

そして私が出会ったのは、とても綺麗な女の人。

長い髪を頭の後ろに流し、触れようとする炎を散らしながら歩いてくる。

 

その人は、私を見つけてこう言った。

 

《「初めまして、迷子のお嬢さん」》

 

その笑顔に、私は見とれてしまうのだった。

 

 

 

 

 

side 高町 なのは (放浪)

 

スバルと言うらしいその子と手を繋ぎ、燃え盛る炎の中を歩く。

私とスバルを中心にして熱を遮断するバリアを張っているため熱くもなんともないけれど、スバルはどうも怖いらしくてたまにびくびくと怯えることがある。

その度に私は手を握り返してあげて、意識を怖いものから逸らす。楽しい話をして、危ないところを避けながら、歩いて空港の出入り口に進んでいく。

その過程で、私は色々なことを知った。

 

スバルの好きなもの。嫌いなもの。特技。苦手なこと。嫌いなこと。家族の話。本当に色々。

スバルはどちらかと言うと活発で人懐っこい方らしく、一つの事を聞くと5や10ほど返してくれる事が多い。こういうタイプは相手をしやすいから嫌いじゃない。

 

そんな考え事をしながら、私はまだ生きている出口へと歩を進めていくのだった。

 

 

 

シールドとバリアを駆使しながら空港の道を安全に歩いていって、最終的に少し高めの割れた窓から飛行魔法で飛んで、人気のないところに飛び降りた。

スバルはお姫様だっこで抱えたけれど、なんだか恥ずかしそうにしていてとても可愛らしい反応をしてくれた。

 

「……それじゃあ、ここでお別れだよ。スバル」

「……え?」

 

あれ? どうしてスバルは泣きそうになってるのかな?

 

「大丈夫。もう危ないものなんてなにも無いから。あっちの方に歩いていけば、スバルのお父さんやお姉ちゃんに会えるよ」

「……お姉さんは?」

「私? 私は、まだやることがあるからね。……ほら、お父さん達が心配してるよ」

 

とん、と優しく背中を押して、スバルを歩き出させる。

 

「あの……お姉さん!」

「ん? どうしたの?」

「お名前、教えてくれませんかっ!」

 

スバルに言われて思い出す。……そう言えば、自己紹介もなんにもしてなかったね。

私は、くすりと笑って口を開いた。

 

「そうだね………じゃあ、石竹(セキチク)とでも覚えておいてよ」

 

まあ、ピンク繋がりの偽名だけどね。

 

そして私は今度こそ、スバルに背中を向けて歩いていった。

………似合わない人助けもしたことだし、美味しいご飯でも食べに行こうかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

異伝7 その77

 

side 高町 なのは(ミッドチルダ)

 

そうだ、さくらさんをミッドに呼ぼう。そうすればいつも一緒に居られる。

そう思い付いたので、打診してみたら即座にOKが出た。

そしたらシュテルちゃん、レヴィちゃん、ディアーチェちゃんも一緒に来ると言うので、どうやら海鳴リリカル楽団は私とすずかちゃんとアリサちゃん(時々フェイトちゃん)の三~四人でやっていくことになるみたいです。

 

……そう思っていたら、なんと驚愕の新事実。シュテルちゃんレヴィちゃんディアーチェちゃんの三人は、実はさくらさんの分身と変装と演技の賜物だったのです。

つまり、人数を増やしてできる曲を増やしたいがためにあの三人は居た訳ですね。

 

……ただ、モデルが私とフェイトちゃんとはやてちゃんというのはわかったんですが、どうして当時知り合いでもなんでもなかったフェイトちゃんとはやてちゃんの姿を知っていたんでしょうか?

 

さくらさんにそう聞いてみたところ、たった一言で納得させられました。

 

「俺だから」

 

納得せざるをえない、溢れ出る説得力に脱帽しました。

 

そんなわけで、10年続いた海鳴での演奏会は、創始者のさくらさんを含めて主力メンバーの半分以上が抜ける結果となりました。

そのため、その事を伝えて暫くお別れすることになるからと盛大なライブを行うことになり、その事を知った町のみんなが集まって、本格的にお祭り騒ぎになりました。

そこで私はさくらさんの本気を初めて目の当たりにして(まさか30人に分身するなんて……しかも演奏も完璧)、更なる努力を決意しました。

それに、さくらさんが集まってくれた人達に料理を振るまい、いろんな人のプライドをポキッとしたりもしました。何を隠そう私もその一人。ただのアップルパイが何であそこまで美味しくなるの…………わからないよ……。

 

それでようやく私とさくらさんの二人暮らしが始まりました。

こうしていれば、いつか手を出してくれたりしないかなぁ……と、ほんのちょっとだけ期待していたりもします。

 

……エロい娘? まあ、人は選びますけど間違いではないですね。

 

ただ、スタッフとして大体21歳くらいの姿のシュテルちゃん、レヴィちゃん、ディアーチェちゃんの三人を雇うことになりました。

その時、シュテルちゃんと私の違いは目の色と口調くらいなので、わかりにくいと言ったらシュテルちゃんは髪を縮めて差異を作ってくれました。

変装ってそんなことまでできるんですね。びっくりです。

 

………それが、いったいどうしてこうなっているんでしょうか?

いえ、これまでの経緯は私が一番よくわかっていますが……ちょっとした現実逃避の一環です。

 

始まりはさくらさんの一言。『暇潰しにちょっくらインターミドルに出てくる』から始まりました。

そのために私はレジアス中将(そう呼んでいいと言われました)にお願いしてさくらさんの偽造戸籍(本名がわからなかったから聞いてみたら『さくら』が偽名だと判明しました。が、もう慣れちゃったのでさくらさんで通すことにしました。そんなわけでさくらさんの名前は私が死ぬまでは法律上は『鷹牧さくら』です)を作ってもらいました。

貸しは数えるのが面倒な程度にはありますから、今までも何度か簡単な仕事をお願いしてちょこちょこ消費してきています。

具体的にはちょっとテロ組織を個人的に潰す許可を貰ったりだとか、強盗やひったくりをボロボロになるまで痛め付ける許可を貰うことだったり、いつでも世界間移動をしてもいいという許可をもらうことだったりしますが、中将の権限なら実に簡単なことだったらしくあっという間に頂くことができました。

 

さくらさんの戸籍もそんな感じで簡単に用意してもらえたのですが、なんでかさくらさんはそこから自力でシュテルちゃん、レヴィちゃん、ディアーチェちゃんの戸籍を用意してしまいました。

 

……そして、さくらさんが『キャプテン・ブラボー』として試合に出て優勝を目指すのと同時に、私も何故か強制参加。………しかも私の出る方にはシュテルちゃんとしてさくらさんが出るらしい。

 

使う技はいつも通りシュテルちゃん縛りをするらしいけれど、どう考えても勝てる気がしない。

ルール的には勝てなくもないけど……本当に難しい。

でも、さくらさんが一度言い出したら引っ込めないことをよく知っている私は、今回だけという約束でインターミドルに出ることにしました。

さくらさんはその事も読んでいてやったんでしょうが、ちょっと酷いと思います。

 

……結局私はさくらさんの思い通りに動いちゃったわけですけど。

 

つまり、私は現在『陽光殲滅魔導の使い手である高町なのは』としてインターミドルの舞台に立っているわけです。

……立っているわけなんですが……………なんでさくらさんは(奥の手を出すなら更に奥の手を用意しておくという言葉を守るために秘密で作ったために)一度も見せたことの無い筈の私の奥の奥の手を知っているんでしょうか?

まあ、当然更に奥の手も用意してるんですが……使うことは無いでしょうね。多分。

 

さあ、私の番です。頑張ってみましょう。とりあえずは選考会からですね。

さくらさんはSN(スーパーノービス)でシュテルちゃんも同じですから、私も続くことにします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異伝7 その78

 

side リリ・ルルー

 

私はリリ。槍使いだ。

年は16で、身長と体重は……まあ、平均値と答えておこう。

特技は槍を使った近接から中距離戦闘で、砲撃や射撃はあんまり得意じゃない。

ついでに言うと、インターミドルに参加するのは今年で三回目。上位に入るような実力は無いけど、いつもそこそこの成績を出している。

今年こそは都市本戦まで行きたいとは思ってるんだけど………やっぱり難しい。

 

そんなわけで地味な私は今年も始まりは選考会から。いつもならよっぽど相手が強すぎたりしない限りは勝ち抜けるんだけど、今回の相手はなんだか怖い。

相手は可愛い系の女の子。見た目からして14くらいだってのはわかるんだけど、ずっと喋らないし表情の一つも変えない。まるで石像でも見てるかのようだ。

使う技は『星光殲滅魔導』。名前は『シュテル・イーストエッジ』。なぜだかできるだけ戦いたくないタイプの気配がする人です。

 

それでも試合は始まって、私は相手の意表を突こうと最速で槍を構えて突撃する。

相手の子は何にもしないで私のことを眺める。私の突き出す槍の穂先を、柄を、握りを、腕を、そして全身を。

 

そしてその子はなんの躊躇いもなく素手で槍の横腹を弾いて軌道を逸らし、そして左手で柄を掴み取る。

 

「え……」

 

そして私の視界が拳と桜色でいっぱいになり、衝撃が走って目の前が真っ暗に―――

 

 

 

 

 

side シュテル・イーストエッジ(を演じる織斑一夏)

 

顔面に一撃入れたら相手が動かなくなった。ブラボーの状態でもそうだが、やっぱりこの世界の人間はそれなりに普通なんだと再確認。

とある世界では体内に雷霆が走ってもピンピンしている奴とか、巨大隕石の衝突以上の威力を持ってる攻撃を片手で弾く奴とか、そんな奴も居たりするからな。

普通でよかったとちょっと胸を撫で下ろす。

 

さて、ブラボーの方は適当に殴り倒していくとして、シュテルの方はどこぞの『星河の喚び手』のあれと“頂の座”の『(アステル)』で基本は埋めよう。

後は、思い付いたら適当に追加していくと言うことにして………今はこれだけでいいや。

さて、頑張ってみようかね。

なのちゃんも、がんばれー。

 

 

 

 

 

side 高町 なのは (放浪用inミッドチルダ)

 

はい、頑張ります。

 

そんなわけで、初戦です。いつも通りの戦闘をしようと思いますが、相手の情報が無いために少しやりづらいです。

が、実戦なんて大抵そんなもの。情報が無いなら戦いながら集めていけばいい。

そんなわけで、私はレイジングハートを持ったまま、目の前で無手で構えている女の子の前に立っています。

今回はスターライトブレイカーを使う時間的な余裕は無さそうなので、きっとクイックやフラッシュ系統の技を使うことが多くなると思う。

私の技は基本的に起動から発射までの速度が速い。時間がかかるのは、切り札の一枚目でもあるスターライトブレイカーと、魔力散布を終わらせてなければかなり時間がかかる『陽光殲滅魔導(さくらさん命名)』。どちらも私の特技である集束魔法をフルに使う大技で……かなり疲れる。

けど、上手く使えば魔力をBランクくらいまで抑えていてもSランク以上の攻撃を行うことができるようになる。燃費は最高だし、体外魔力のみで魔法を使っている間は回復に集中できる。

欠点は……圧縮しすぎると暴発が怖いこと。まあ、そのあたりはどんな魔法でもそうなんだけどね。

 

……さてと。バインド設置バインド設置。できることはできるうちにやっておかないとね。

正面に五つ、後ろに三つ、上に三つで後は開けておく。私は触れても平気だけれど、一応ね。

私のバインドはフェイトちゃん曰く『薄いのに妙に固い』そうなので、多分大丈夫でしょう。

あと、これも発動から捕縛までが

 

『レディ・ゴー』

「はあぁぁぁぁっ!」

 

バギンッ!

 

「う……嘘っ!?」

 

……早いんだよね。

ちなみに、本当は事前にバインドを設置するのはいけないことなんだけど、私は頑張れば体外魔力で直接バインドできるから速度は大して変わらないんだよね。

 

「それじゃ、さようなら」

『フラッシュバスター・ラッシュ』

 

バインドが全壊して相手が倒れるまでに、撃ち込めた発数が18発。一発ごとに相手のライフはどんどん減っていって、魔力ダメージで気絶してしまった。

 

勝ち名乗りを上げてからリングを降りると、私そっくりの人が出迎える。

……って言っても、私の分身(最低限の能力のみ)なんだけどね。修行中で完全操作はできないけれど、こうやって外見を整えてある程度動かすだけの薄い分身ならなんとかなる。

私は今も修行中だから、このくらいは成長してるんだよ? そろそろ魔力量的な延びしろは無くなりそうだけど、魔力の密度を上げたり質を上げたり、操作能力を上げたりするのには上限はほとんど無いからね。

いつも通りに体内の魔力を集束し続ければ勝手に魔力の密度は上がるし、濃くなったら威力は上がるけど精密に動かすのがやりづらくなるから、その分しっかり魔力を操作できるようにしないとね。

 

……射撃や砲撃だけじゃなくて、防御とかそういうのもね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異伝7 その79

 

なんだか久々な気がするが、それはつまり俺の睡眠時間が増えていると言うことなんだよな。

こっちに来てからは大抵寝るか曲を改造するか寝てるかなのちゃんの修行か寝るかだったから、出てない時は寝れるつまりは睡眠時間が増えていると言うわけだ。

 

……いいことじゃないか。うん。

 

それはどうでもいいからそこら辺に放っておくとして、なんでか俺は周囲をいろんな奴に囲まれている。

具体的にはテレビ局の取材陣らしき奴とか、そんなやつらに。

 

理由は大体想像がつく。恐らく、こうして都市本戦に優勝しても初試合からの累計ダメージが0だったから、物珍しいんだろう。

一応できるだけ避けようとは思っていたが、失敗したときのことも考えてシルバースキンを着ていた俺にダメージを入れるのは結構難しかったと思われる。

これから一応世界戦に出るわけだが……多分、こっちも今まで通りノーダメで終わるだろう。

と言うか、ここまで来たら終わらせる。ノーダメで。

 

あと、女子の方はなのちゃんが優勝した。決勝の相手はシュテルな俺だったんだが、なのちゃんも成長してくれて嬉しいね。

シュテルでの戦闘としてはかなり本気だったんだが(とは言え一応身体能力はかなり抑え気味。魔力ダメージじゃなかったら負けてないと思うが)、負けてしまった。弟子の成長は嬉しいもんだな。

そんなわけで山も谷もなく全員速攻で近づいてワンパンで終わらせた俺の試合なんかより、なのちゃんの試合を見た方が楽しめるだろうと言うことで……決勝のビデオを用意してみた。

ちなみにマジでビデオテープ。DVDとか普通にデータで記録って言うのもあるけど、今はテープしか出してない。理由は特に無い。

 

そんなわけで、なのちゃんvsシュテルの『DSAAインターミドルチャンピオンシップ決勝戦 ~ちょ、なにこの最終戦争~』をご覧頂こう。

 

……いや、自分で言うのもあれだが……それなりに最終戦争だぞ? 割とマジで。

 

 

 

 

 

side out

 

『さあ、いよいよ始まります、都市本選の最終戦!なんとなんと、どちらの選手も今年初参加のルーキー対決!そしてまさかの同じ顔!世界には同じ顔の人間が数人いるという話は聞いたことがありますが、流石にここまでのそっくりさんはなかなかいないでしょう!』

 

大判狂わせを繰り返してきた二人に、観客席から大きな歓声が浴びせかけられる。

そんな中でも解説者は声を張り上げ、両選手の紹介をしていく。

 

『まずはレッドコーナー、シュテル・イーストエッジ選手!星光殲滅魔導の使い手にして、僅か14才にして決勝まで登り詰めた少女です!星光殲滅魔導の腕は確かなのか、ほぼ全ての試合を魔力付与打撃の連続攻撃で終わらせてきていますが、なんとその殆どはTKOというハードにしてテクニカルな面も併せ持つ戦法を取ってきています。しかしその戦いは殲滅魔導とはあまり関係がない様子。詳細な能力は不明ですが、今回は本気で行くと事前のインタビューにてお言葉を頂きました!』

 

紹介文に一切の興味を見せず、シュテルはフィールドに上がっていく。

その感情をよく見せない目は、反対側の入り口からこちらをうかがっているなのはを正確に捉えていた。

 

『続いてブルーコーナーからは、高町なのは選手!出身は第97管理外世界ですが、いったいどこでこれほどの実力を身に付けたのかと呆れるほどの能力を持っています!こちらもほぼ全ての相手に傷を受けていませんが、拳撃ではなく射砲撃を得意としているようです!陽光殲滅魔導は射砲撃が主体のようですが、近接戦が得意なシュテル選手とどのように距離をとって戦うか、そこが重要になってくるでしょう!』

 

名前を呼ばれ、少し恥ずかしげに白いバリアジャケットを着た少女がリングへと上がる。「頑張れよー!」という声援に慌てたようにぺこぺこと頭を下げながらも、その体には緊張などは見受けられない。

そうして鏡写しのようによく似た二人は、リングの中央でお互いを見つめ合う。

 

「……今回は、私が勝ってみせるよ。シュテルちゃん」

「返り討ちです。高町なのは」

 

二人の中心に火花が散ったように見えたが、それは一瞬で消えて二人は開始線に立つ。

お互いに相手から目を離さず、互いに牽制を始める。

既に周囲はビリビリとした空気に覆われていて、審判の背中を冷や汗が滝のように流れ落ちていく。

 

「……辛かったら、もう少し離れた方がいいですよ? 私達に巻き込まれますから」

「巻き込むのは基本的にシュテルちゃんでしょ。一緒にしないで」

「似たようなものでしょう。互いに広域殲滅用の魔導の使用者同士、仲良く殺し愛ましょう?」

「願い下げかな」

 

二人から放たれる圧力が、さらに大気を圧迫していく。

ギリギリと空間を軋ませ、ガリガリと精神力を削り取り、ゴリゴリと意思力を抉るような空気が流れ、そして凍りついたように動きを止める。

 

それからゴングが鳴るまでのほんの数秒が、まるで永遠のように引き延ばされる。

 

そして、戦闘開始のゴングが鳴り響き―――多数の観客が見詰めるリングは、瞬きの間で戦場へと姿を変えた。

 

(アステル)よ」

 

シュテルが飛び退きながら呟く。

 

「陽光よ」

 

なのははその場に陣取ったまま、同じように言葉を紡ぐ。

 

「流れたまえ」

「輝け」

 

そして、個人と個人の戦争の火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異伝7 その80

 

side out

 

突然の閃光、そして爆音。一瞬にして魔力の残滓が煙のようにリングを覆い隠すが、覆った時と同じように即座に消える。

煙が立ち込める前と比べて変わっているものは、リングに立つ二人の姿勢のみ。

黒い少女は右の掌を白い少女に向け、白い少女は自らの杖を黒い少女に向けたまま固まっている。

 

……いや、他にも大きく変わっている部位がある。

それは、二人の頭の上の空。黒い少女の頭上には桜色の砲撃が星空のように広がり、その全てが白い少女に照準を着けている。

対する白い少女の頭上には、膨大な魔力を集束させてできた、白い光源体が一つ浮いている。それはまるで、光によって星を覆い隠す太陽のようにも見える。

 

無数の桜色の砲撃と、たった一つの集束された魔力の塊。確かにそれらは彼女達の流派、星光殲滅魔導と陽光殲滅魔導の名を冠するに相応しい光景だった。

 

……ちなみに、この時点でリングの上にいた審判は巻き込まれることを恐れて場外まで避難している。

 

「我ら星なり、歌う星なり」

『輝く光で、歌う、星なり』

 

黒い少女の口から、朗々と歌が紡がれる。その度に頭上から砲撃が降り注ぐが、

 

「輝き、凪ぎ払え!」

 

白い少女の操る白色の魔力塊から放出された瞬間の閃光に相殺され、何一つ破壊することなく消えていく。

しかしそれでも、黒い少女は止まらない。

無数に存在する砲撃を、流星のように降り注がせて白い少女を狙う。

白い少女もそれら全てを撃ち落としながら、大気中に存在している魔力だけを引き寄せ、消費した魔力を常に回復し続けている。

 

「我ら鳥なり、火を放つ鳥なり」

『天の世界を縦横に飛び渡り』

 

黒い少女の上空の砲撃群……『星』が、その動きを変える。

ただ上空から降り注ぐだけだったそれが、上下左右を構わず展開される。

 

「斯くして我ら、星と鳥は」

『輝き燃える、銀河となる』

 

無数の『星』が白い少女に集っていくかのように流れ、着弾する。

 

「輝き、放て」

 

……その寸前に、白い少女の頭上の『太陽』から万にも届くかと思われる光条が飛び、それらが次々に『星』を撃ち落としていく。

 

黒い少女の『星』を撃ち落とす度に白い少女の『太陽』はじりじりと縮んでいくが、大気中に散布される魔力を再び集束し、膨張する。

 

「輝き、回れ」

 

ある程度まで膨らんだところで、今度は白い少女が攻撃に転じる。『太陽』の表面から棘のような物が数多く突き出され、リングの表面も戦闘区域と観客席を分けるバリアも相当高い天井も、全てを抉りながら乱回転を始める。

『太陽』は『星』を砕き、大地を貫き、空間すらも削り取る。

しかし、黒い少女は無表情のまま自分の周囲に小さな『星』を展開する。

そして、その小さな『星』を『太陽』から突き出された棘の根本に撃ち込み、呟く。

 

「爆ぜよ」

 

バゴンッ!と言う鈍い音が響き、『太陽』の棘が根元から砕け落ちる。

 

「流れたまえ」

「く……!」

 

殆どの棘を落とされ、『太陽』のサイズが縮小したところに『星』の群れが白い少女を襲う。

幾つものシールドで迫り来る『星』をいなすが、一発がシールドの無い部分から白い少女の左腕を撃ち抜いた。

 

 ダメージ:2380

 LIFE:12620

 クラッシュエミュレート:左腕強度打撲、骨折、中度熱傷

           】

「……我らこの日に」

『為し得るは一つ』

「っ!?」

 

黒い少女が再び歌い始めると同時、今度は空ではなく地上が『星』に覆われる。

白い少女は慌てて飛び上がるが、一瞬間に合わずに右足が焼かれる。

 

 ダメージ:370

 LIFE:12250

 クラッシュエミュレート:右足軽度熱傷

           】

「雄々しい地の獣として」

『猛烈に駆け抜け、戦う』

 

黒い少女の歌に合わせ、地上の『星』が竜巻のように吹き上がる。

白い少女は集束を続け、漸く使える大きさにまで戻った『太陽』を使い、『星』を片端から撃ち落として行く。

その間にも白い少女は黒い少女に閃光を浴びせようと『太陽』からの砲撃を浴びせるが、黒い少女の『星』に真正面から迎撃されている。

 

「また我ら、この日に鳥として」

『生の艱難を前に強く羽撃く』

 

吹き上がり続けていた『星』の流れが急停止し、白い少女を中心とした荒い球形を作り上げる。

 

「ちょっ……輝き、放て!」

 

白い少女は慌てて『太陽』からの砲撃で包囲を崩して突破するが、その直後に寸前まで白い少女の居た場所に『星』が集う。

的を無くしてお互いにぶつかり合った『星』は、消滅することなく『月』へと変わり、そして地上の白い少女に向けて落ちる。

 

『フラッシュムーブ』

「輝き、防げ!」

 

白い少女は直撃前に高速で上空に移動し、魔力集束を続ける『太陽』を楯にする。

純粋な魔力の塊である『太陽』の約半分を切り離し、円錐形のシールドにして『月』の落ちた場所にその先端を向ける。

 

その次の瞬間。リングに接触した『月』が爆ぜ、周囲に魔力的な衝撃を振り撒いた。

 

 

 

【高町なのは

 ダメージ:4660

 LIFE:7590

 クラッシュエミュレート:全身打撲、軽度脳震盪、左腕骨折、強度打撲、強度熱傷、右足軽度熱傷

           】

 

【シュテル・イーストエッジ

 ダメージ:420

 LIFE:14580

           】

 

 

 

 

 


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