リリカルなのは~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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side 高町 なのは(ミッドチルダ・翠屋)

 

年中無休の翠屋・ミッドチルダ支店ですが、私に休みが無いかと言えばそう言うわけでもありません。

何しろ私は自分の分身を作って操ることができるので、仕事中に外にいる分身に意識の中枢を移して本体に変えてしまえば、いつでも休暇をとることができるからね。

 

翠屋はそんなに遅くまでやっているわけではないので自由時間も結構多いけれど、時には自由時間外にお酒を飲みたくなったり歌ったりバイオリンを弾いたりしたくなる時だってあるのです。

今日も何となくお酒を飲みたくなったので一度抜け出して、それからのんびりと近くの酒屋さんで美味しそうなお酒を買って、家に帰って飲む。私はそれなりに強い方なので、ゆっくり飲んでれば結構な量を飲んでも大丈夫。核金もあるしね。

 

そんなわけで何度か目の買い出しに出掛けたんだけど…………見知らぬ誰かに話しかけられた。

 

「インターミドル・チャンピオンシップの覇者、高町なのはさんとお見受けします」

 

そう言って現れたのは、バイザーをつけて顔と視線を隠し、街灯の上に立って私のことを見下ろしている女の子。変身魔法を使っているらしく、それなりの量の魔力が全身を覆っている。

でも、中身は年端もいかない女の子だよね。ヴィヴィオよりは年上みたいだけど、ミッドチルダで翠屋を始めたばかりの頃の私と同じくらいに見える。

 

「……とりあえず、貴女の用件を聞く前に一ついい?」

「はい、なんでしょうか?」

 

私の言葉を聞く気はあるらしく、その子は黙る。うん、いい子なんだけどね。

 

「そんな格好でそんなところに立ってると、パンツ見えるよ?」

「……え? きゃっ!」

 

一瞬何を言われたのかわからなかったのかその子は呆然として、それから顔を真っ赤にしてスカートを押さえた。まあ、押さえてもその長さじゃあ焼け石に水なんだけどね。実際まだ見えてるし。

 

「え、あ、あうぅ……」

「……あんまり意味無いから、早く降りてきたら?」

「ぅ……はい……きゃあっ!」

 

顔を真っ赤にして恥ずかしがるその女の子は、焦りすぎたのか街灯から足を滑らせて落ちてきた。

……まあ、受け止めるくらいはしてあげてもいいかな?

 

女の子の落下地点に先回りして、軽く浮遊魔法をかける。受け止めるだけなら必要ないけど、今はお酒も持ってるからね。

それに、女の子の両手はスカートを押さえることに忙しいみたいで、着地には使えなさそうだから。

流石にあの高さから落ちたら、例えそれが尻餅だったとしてもかなり痛そうだ。そんなわけで落ちてくる女の子の背中と両膝の裏に腕を入れて、横抱きにして受け止める。

 

……変身した身長は私より高いのに、私より体重が軽いのは何でかな? なんでカナ? ……答えは浮遊魔法をやめてないからだけどね。

 

「あ……ありがとうございます」

「どういたしまして……えっと……痴女さん?」

「違いますっ!」

 

わぁ必死。理由もわからなくはないけどね。

 

「それで、私に何の用かな?」

「あ、その……私と貴女、どちらの力が勝るのかを確かめたく……」

 

………………。

 

「つまり、通り魔?」

「うっ!」

 

通り魔呼ばわりされても仕方ないことをしていると言う自覚はあるのか、痛いところをつかれたというような表情を浮かべる女の子。純粋で素直な子なのに、シグナムさんと同じバトルマニアだなんて……。

 

「……まあ、相手するのは構わないけど……筋肉の着き方からしてスタイルは徒手格闘技でしょ? それも足技も結構あるやつ」

「? はい、そうですが……?」

「……パンツ見えるよ? それとも見せたいの?」

「見せたい訳じゃありません!それにこれはバリアジャケットなんです!パンツじゃないんです!」

 

私の腕の中でパタパタと暴れる女の子。まあ、この年で痴女扱いされちゃたまらないか。

……でも、やってることは痴女なんだよね。残念ながら。

 

「……まあ、別にいいけど……買い物帰りだからこれ置かせてくれる?」

「はい。……それと、そろそろ降ろしてください」

 

ずっとお姫様抱っこしたままだもんね。

 

そう思いながら女の子を下ろし、手に持っていた荷物を適当に引っ掻ける。ちなみに触った人にはフォトンスマッシャーがプレゼントされるのでおすすめしません。

 

「防護服と武装の展開を」

「残念だけど、今の君じゃあ私にジャケットを展開させる事もできないよ。悔しかったら実力で展開させてごらん」

 

私がそう言うと、その子はムッとした表情を浮かべた。やっぱり素直だね。

そしてその子は見慣れない構えを取って、私に向き合った。

 

「……覇王流、ハイディ・E・S・イングヴァルト……参ります」

「陽光殲滅……は、使うまでもないか。篠斑神拳高町式、高町なのは。お相手するよ」

 

まあ、初めは『見』でいいかな。正直あんまりまともにやる気もないし。まともにやったらきっと消えないトラウマ植え付けちゃうし。

 

「……そうそう、そのバイザーは取っておきなさい。狭くなった視界で私には勝てないし、壊れた破片が目に入ったら危ないからね」

「……わかりました。忠告感謝いたします」

 

そう言ってその子はバイザーを取る。うん、やっぱり素直で、ついでに美人さんだね。

ヴィヴィオとは色違いの虹彩異色も、神秘的な雰囲気に合ってていいと思うよ? あくまで個人的にはだけと。

 

「ついでにそのスカートもなんとかしない? 蹴りの度にパンツが見えるよ?」

「いい加減パンツから離れてくださいっ!」

 

そんな力の抜ける発言と共に、私と小さな覇王の戦いは幕を開けた。

 

 

 

 

 

 


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