鎮守府の日常   作:弥識

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皆さんイベント順調ですか?
私は9/1時点でE2クリアどまりです。因みに丙です。
どうもE2で大鯨さんが出るみたいなので、通ってます。
今回のイベで手に入ったレア艦は、『瑞鶴』『瑞鳳』『大淀』『夕張』ってトコですかね。大鯨さん来ない。頑張ります。

さて、ちょっと今回は短いです。
この後に、某艦娘の話を入れようかと思ったんですが、場面的に切り替えた方がいいかな、と。
では、どうぞ。


私の隣、貴女の隣

『全く、摩耶の空気の読めなさ加減には冴香さんびっくりだよ!?』

 

一先ず落ち着いた冴香が、小声で怒鳴るという匠の技をこなす。

 

『や、アタシの事は気にしなくて良いからよ』

『無理。もう無理。あの空気に戻すとか絶対無理!』

 

引き攣った笑顔を浮かべつつもフォローする摩耶だが、時既に遅し。

 

『あー、なんかもう、どうでも良くなってきたわ。色々投げるわ。もう皆、○ねばいいのに!』

『良いから落ち着けって!』

『げふぅし!?』

 

なんというか、色々と駄目な感じになってきている冴香に手刀をかます。

 

『……ちったぁ落ち着いたか?』

『……うん落ち着いた。とりあえず、ちょっとタイムマシン探してくるわ』

『おう、全然落ち着いてねぇからな?』

 

口からナニかを垂れ流しつつ、そうのたまう冴香に、『もうコレは駄目かもしれない』と諦め掛けるが、これでも一応上司なのだ。これでも一応。

 

『大体、アイツに何て言ったんだよ』

『うぇ!?いや、それは……そのぅ……』

 

そう、摩耶は所謂『事後(冴香が事をやらかした後的な意味で)』に来ているため、何故こんな状況になっているのかすら分からないのだ。

内容によっては、流石の摩耶も本腰を入れて事態の収拾に当たる所存である。

 

ということで、改めて冴香に事の次第を聞こうとするが、どうも冴香の歯切れが悪い。

 

 

この辺りで、摩耶は何となく『嫌な予感』がしていた。

 

 

というのも、『宮林冴香』と言う女性。『横須賀の女傑』と言われている程の有名人なのだが。

 

 

 

―――『恋愛』に関しては、『超』が付く素人なのだ。

 

 

―――それはもう、『ポンコツ』と評していい程に。

 

 

 

元々、良家の息女で、その美貌。半端な男にとっては『高嶺の花』だ。寄ってすら来ない。

近寄って来た男共も、『外見』で建てたフラグを露呈した『中身(性格)』で圧し折り。

 

別に鈍感な訳でもないが、そもそも随分前から『某死神』にご執心な為、その中身すら受け入れようとした物好きのアプローチも眼中になく。

 

 

 

―――花束を見せられてからの真・スルー余裕でした。

 

 

 

何て事も茶飯事。

 

艦娘に対するセクハラも、実はボディタッチ止りである。まぁそれでも十分事案なのだが。

 

『一緒に寝よう』発言も、摩耶曰く『顔を近づけるだけでアタフタするので抱き枕が精々』だそうで。

まぁ、『一緒に寝て』は居るので、間違ってはいない。

因みに、『タチネコどっちもイケる』とは本人の談だが、これも摩耶曰く『アイツは完全にネコ』との事。

 

 

尚、何故摩耶がそんな事を『知っている』のかは推して知るべし、である。

 

 

そんな訳で、摩耶をはじめとした宮林艦隊の古参組は、冴香の言動をある意味『微笑ましく』見ていたりする。

 

尤も、其処をからかうと結構本気で拗ねるので、冴香の前でその話題はご法度である。仕事はして貰わないと困るのだ。

 

 

 

『ほら、いいから言ってみろって。聞くだけ聞いてやるからさ』

『なにそのやっつけ仕事感覚!?』

『大丈夫。お前のしょっぱさは知ってるから』

『そんな信頼要らなかったなぁ!』

『そういうの良いから。ほら。言ってみろって』

『あー、うー、その、ね。……しに……ズした』

 

観念したのか、真っ赤な顔でぼそぼそ言う冴香。

勿論、そんなので摩耶が把握できるわけでもなく。

 

『は?聞こえねぇよ』

『だ、だから!………遠回しにプロポーズしたの』

『…………はい?』

 

 

……こいつは今、何を仰りやがったのか?

 

 

「……わりぃ。神林さん。ちょっとコイツ借りるな」

「あぁ、構わないが」

 

一応部屋の主である神林に一言伝え、冴香の首を『ガッ』と掴みつつ、部屋の隅へ。

そのまま肩を組み、神林に背を向けて、会議開始。

 

 

『よし、説明しろ。迅速に。正確に。かつアタシに理解できる形で』

『ま、摩耶、目が怖い、目が怖いよ!?わ、わかった、説明する!若干難易度高い気がするけど大丈夫!冴香さんやれば出来る子だから!』

 

 

そんなわけで、摩耶が来るまでのやり取りで、問題の部分を要約すると―――

 

 

 

○話の流れで神林がヘタレる

     ↓

○場の勢いで冴香が『戦争が終わったら、君の隣で色々教えてあげる』と言う

     ↓

○執務室内がなんかいい雰囲気に

     ↓

○摩耶たんインしたお!

     ↓

○一瞬で頭が冷えた冴香、先程の言葉を脳内で反芻する

     ↓

○……あれ、私……遠回しにプロポーズしてね?←今ココ

 

 

 

と、こんな感じだった。

さて、此処まで聞いて、一連の流れを理解した摩耶が思ったことは。

 

『――――いや、どうだろうか?』

 

であった。

 

恋愛初心者の冴香にしては頑張ったと思う。

場を誤魔化す為に安易な下ネタに走らなかったのも、彼女の本気振りが伺える。

ぶっちゃけ話の流れを聞く限り、(邪魔がなければ)なんだかいい感じに話が纏まった気がしなくもない。……そこは素直に悪い事したかな、と思う。

 

しかし。だがしかし。相手は『あの』神林だ。

 

舞鶴に来る前にも何度か冴香から彼の話を聞いている。

ここに来てからも何だかんだで彼を見ていることが多く、彼の人物像もそこそこは掴めていた。

 

思うに神林貴仁という人物は、『恋愛感情』が希薄である。―――それが摩耶の抱いた評価だった。

 

神林は、艦隊所属の艦娘達に慕われている。

その中には、明らかに『上司と部下』以上の想いを向けている艦娘も少なくない。それこそ外様である摩耶の目から見ても分かるほどに、だ。

しかし、神林はそんな艦娘たちに対して、いわゆる『そう言った対応』をしていない。あくまでもビジネスライク、というか、線を引いている感じだ。

まぁ『人の目の無いところでは~~』という可能性もなくはないが、肝心の艦娘たちの言動を見る限りそれもなさそうだ。

 

そんな神林が、だ。

 

果たして、先の冴香の言葉を『そういった意味で』受け取るだろうか。……正直、望み薄じゃなかろうかと摩耶は思う。

経緯はよく知らないが、二人は元許嫁で、その縁談は随分前に破談していると聞く。改めて、そういう発想に行きつくだろうか?

なんというか、『戦争が終わってもずっと友達だよ』位にしか受け取っていない気がする。

 

 

……抑々、彼はウチの提督の事をどう思っているのだろうか?

 

あくまで元許嫁?あるいは友人?それとも只の同僚?

 

……機会があったら聞いてみるのも良いかもしれない。面白そうだ。主にウチの提督の反応が。

 

 

 

とまぁそこまで考えた所で、摩耶は思考を戻す。現実逃避ともいうが。

ともかく、今一番すべきことは―――

 

 

『どどどどどどうしよう摩耶、タカ君の顔まともに見れないよ!

 と、ととととりあえず二人の終の棲家を軽井沢の一等地辺りで見つけるべきなのか(ドゴス!!)でゅん!?』

『とりあえず落ち着け』

 

 

どうしようもない感じに残念なことになっている我らが提督(恋する乙女2X歳)に一撃加えることだと思った。というか実行した。

 

 

 

 

「うううう……舌咬んだー」

「そうか、ちったぁ落ち着いたか?」

「多少落ち着いたところでどうしようもならない時はどうすればいいのかな?」

「ちゃっちゃと玉砕してくれば良いんじゃねぇか?」

「無責任にも程があるでしょ!?」

「骨は拾ってやる。大丈夫だ。問題ない」

「その『大丈夫』ってダメなフラグじゃないかなぁ!?」

 

 

言ってしまえば、冴香と神林の問題だ。あとは二人で解決してもらうしかない。

……決して摩耶の中で面倒になってきたからではない。決して。

 

 

「とにかく何か言っとかないとどうにもならねぇだろ?いつまでも神林さんほっとけねぇし」

「う、確かにそうだけどさぁ……」

「ほら行って来い。見ててやるから」

 

そう言って、冴香の背中を押す。

改めて、冴香が神林の前に立った。

 

「あ、あの、タカ君?」

「……ん?摩耶との話は終わったか?」

「う、うん、さっきの話なんだけどさ」

 

何事も無かったかのように聞いてくる神林に、摩耶は軽く眩暈を覚えた。

 

対応がニュートラル過ぎる。恐らく、先程の摩耶達の会話も毛程にも気にして居なかったに違いない。

先程摩耶が感じた『甘酸っぱい雰囲気』は幻覚だったのだろうかとすら思えてきた。

 

まぁ背中を押した手前、応援はする。頑張れ冴香。超頑張れ。骨は拾うから。……あ、冴香の耳すっごい赤い。

そんな冴香が、意を決したように顔を上げる。

 

 

 

「あ、あれ!所謂一つの『ズッ友宣言』ってやつだから!改めて的な?あはははは!」

「あ、あぁ、よろしく」

「うん、宜しく!あははははは!……はぁ」

 

 

……ヘタレた。最後の最後でヘタレた。

 

多分、神林の『曇りなき眼』的な何かで冴香の何かが折れたのだろう。まぁ仕方ない。頑張った方だ。冴香にしては。

 

改めて、冴香の隣に立つ。

 

『……なぁ冴香。こういう時、アタシはどんな顔すれば良いんだろうな』

『笑えば良いんじゃないかな?ははは、笑えよ、摩耶』

『別に笑ったりはしねぇよ。……ま、今回は仕方ねぇな。アタシは応援する。頑張れ』

『……うん。頑張る』

 

神林に聞こえないように小声でやり取りした後、本来の目的を果たすことにした。

 

「監査の書類諸々をまとめてきたぜ。確認してくれ」

「ん、ありがと」

 

そう言って、摩耶から渡された書類の束を確認していく。

 

因みに、冴香が座っているのは神林の机ではなくソファだ。

そこで彼との距離をとってしまうあたり『そんなだから』と思ってしまうが、まぁ仕方ない。

先は長そうだが、冴香の思うようにすればいい、と摩耶は思った。

 

 

「……うん、問題なさそうだね。ありがと、摩耶」

 

満足そうに言う冴香に、神林が訪ねる。

 

「監査報告は纏まりそうか?」

「そうだね、ここまでくればもう終わったようなもんかな。

 んー、『色々』あったし時間も掛かったけど、これで舞鶴ともお別れだなぁ」

 

伸びをしながらそういう冴香に、手元の書類から目をそらすことなく神林が呟いた。

 

「……そうか」

「お、なになに?冴香さんが居なくなるからって寂しくなっちゃった?」

「あぁ……そうかもな」

「うんうん、そっかそっk……え゛?」

「何だかんだで、お前とは付き合いが長いからな。騒がしくもあるが……お前の隣は落ち着く」

「え、あ、うん。はい」

「まぁ今生の別れというわけでもないし、連絡は幾らでも取りようが……どうした?」

 

ふと神林が顔を上げると、冴香が何故か書類で顔を覆っていた。

 

「何でもないよ。仕事続けて」

「……そうか」

 

そんなやり取りに、摩耶は小さく笑う。

どうやら、冴香の耳が真っ赤になっているのが神林からは見えないらしい。

 

「……なんなのさ、摩耶」

「いーや?確かに、こういう時は笑うしかねーな、って思っただけさ」

「……もう」

 

書類の陰から真っ赤な顔で此方を睨んでくる冴香に、苦笑いで答えた。

 

 

―――こりゃ、応援する必要ねぇかな?

 

 

何となく、そう思う。

 

恐らくライバルは多いし、本人も無自覚だし、そもそもそこまでの感情が彼に有るのかどうか甚だ疑問ではあるが。

 

少なくとも、望みはありそうだ、と思う。

 

 

―――ま、アンタに『任せた』手前、最後まで応援するけどさ。

 

 

尤も、『全部』を任せる心算はない。

自分にだって、思うところはあるのだ。

 

 

―――手を取り合って、貴女の隣に。

 

 

慕う相手の隣に立ちたい、と願うのは、摩耶だって同じ。

 

幸い、人の手は二本有る。艦娘も然り。

なら、二人で隣に立てばいい。なにも、相手の『領分』まで踏み込むことは無いのだ。

抑々、彼女は自身が『向こう側』に踏み込む事を良しとしないから。

 

 

―――貴女を挟んで、私は此方側。貴方は彼方側。

 

 

そういうのも有りかな、と。

未だに赤い顔でうーうー言う彼女を見て、そう思った。




先日、『メアリー・スー テスト』なるものをやってみました。
なんというか、色々考えさせられましたね。
あ、『メアリー・スー』についてはニコ動やpixivに記事が。ニコ動の記事にはテストへのリンクもありますよ。

さて、今回も提督メイン。
以前から、冴香さんのヘタレっぷりはそれっぽく出してましたけど、やっぱりヘタレでした。

安易に誰かとくっつける気はありませんが、たまにはこういうのもね。

さて、次回こそ某艦娘のお話です。今月中に上げたいなぁ……

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